スランプ時は脳をしっかり休める

日本人のスポーツ選手は練習のしすぎであるとよく指摘されます。過剰な練習が原因で本番でよい結果が出せない。という話をよく聞きます。

人より多く練習することが、上達の秘訣であるように思われてきました。精神論を重んじる日本の従来の訓練法では、それでよかったかもしれません。

しかし、科学的なトレーニング方法が取り入れられるにつれ、過度の練習はかえって上達を妨げることがわかってきました。脳の記憶のメカニズムもそれに非常に似ています。運動も記憶力と密接に関係しています。

水泳や走ることなどは、小脳機能が大きく影響します。もっとも効率のいい走り方を訓練すると、そのプログラムは小脳に記憶されていきます。小脳の記憶は手続き記憶ですから、なかなか忘れません。しかしその分、最初に正しいプログラムを記憶させないといわゆる悪い癖が残り、上達がしづらくなります。

そして1度誤ったプログラムを記憶してしまうと、いくら繰り返し練習しても直すことは非常に困難になります。それだけに初めが肝心で、最初に習うときは上手な人に教わることが重要になってくるのです。

練習を続けてもなかなか上達しなくなると、スランプというものに陥ります。たとえば、野球選手が、いままでヒットを打てていたピッチャーから、急にヒットが打てなくなることがあります。これは、相手のピッチャーがバッティングフォームを崩すようなボールを投げたため、悪いスイングが小脳に記憶されてしまい、一番好調なころの記憶が消えてしまうことによって起こります。

こうなると、いくら練習しても誤ったフォームを繰り返すだけで、なかなか元に戻れません。そして、「こんなに練習しているのに、どうしてダメなのだ」と自分を責めてしまい、ますますスランプに陥ってしまいます。

スランプから抜けだす方法としては、猛烈に練習して誤った記憶を消し去り、また新たに一番いいフォームを記録し直すというやり方があります。しかし、これは、肉体的にも、精神的にも非常に苦痛が伴います。

やはりまず、十分な休養を取り、悪いフォームを忘れ去ることが重要です。休養するメリットは、からだを休めるというだけではありません。

休むことで、脳の中の運動プログラムが整理され、もっともいい状態のプログラムに変わっていくのです。いくら練習しても上達しないなど、スランプに陥ったときには、ゆっくり休ませ、それから、冷静に自分の置かれた状況を分析し、方法を考えていくべきでしょう。

日本人特有の勤勉さとかまじめさがかえってうまくいかない場合もあるので注意が必要です。