賢い医者の選び方、医者との接し方

医者と向き合う心がまえのようなものを知っていると知っていないでは治療をすすめるときにもきっと大きく役立つでしょう。
「さわらぬ神に崇りなし」と言えば言いすぎでしょうが、医者にかかわることなく人生を送ることができれば、それが一番なのは言うまでもありません。しかし現実には、医者とかかわりをもたなければいけない場面もあるかと思います。
ある時期までは、医者との接し方なんか考えたこともなかった人が大手術のために大病院で入院したり、ガンになって病院のお世話にならなければいけない日が案外簡単にやってきます。

患者にはならない

医者に一切かかるなという意味ではないので勘違いしないでいただきたいと思います。医者にかかる際のみなさんの姿勢を述べているのです。「患者」の立場にまで、自分の身を貶めてはいけない意味なのです。

みなさんが素直に〝患者″」になりきってしまいますと、それはまさに医者の思うツボです。医者は「患者」に接する場合には、安心して医者を演じることができるのです。そして医者は強者、患者は弱者という図式が、どこまでも変わらなくなってしまいます。インフォームド・コンセントや、患者の権利、セカンド・オピニオンと言ったところで、所詮は強者である医者が、強者であることをカムフラージュするための1つの手段にすぎないのです。

医者と患者の立場がはっきりしている限り、医者としての建前が前面に立ちはだかり、まさに医者主導の、建前通りの治療が展開されることになつてしまいます。なぜならば医者にとってはそれが一番慣れているスタイルであり、快適な形ですから。
相手の土俵で相撲を取るのは負けが決まっているようなものです。それは医療現場でも同様です。医者に接するときに、「患者」という立場はすこぶる不利になります。
理想は「友人」そうでなくても最低限「クライアント」という立場を崩してはなりません。そうでなければ、本音の医療はどんどん遠いのいてしまうでしょう。

したがって「先生」「お医者様」「患者」「診てもらう」「治してもらう」「薬をいただく」「お任せします」などという言葉は死語にしてしまうほうがいいのです。

主治医は自分と考える

そもそも、自分の命は自分自身のものなのですから、自分の命の責任は自分自身が持つべきです。このことは、なにも医者に一切かかわることなく、すべて自分で対処しろということではありません。
もちろん専門家である医者を活用することが賢明な場合も多々あるでしょう。医療機器や医療施設のお世話になることも当然あると思います。

しかし、最終決定は自分でするべきだということです。なんでもかんでもすべて医者任せというのは、いただけないことです。
家を購入する際には、住宅メーカー任せという人はいないはずです。自身で情報を集め、ある程度の知識を得る努力をされるのが普通です。

家に限らず、大切な物を購入したり、あるいは人生を左右する重大事を決めたりする場合には、いろいろとアドバイスは受けるかもしれませんが、最終的には自身で決定するはずです。大きな手術や治療が医師任せになってしまうのはおかしいのです。

知識を付けて、自分自身で考える

無知は明らかに寿命を縮めます。たとえば家を購入するとき、予備知識もなく、情報収集することもなく、いきなり住宅メーアーを訪れるということはないはずです。
ある程度の知識、少なくとも質問をする程度の予備知識は持って、業者と接するはずです。まして自分の命にかかわることとなれば、ある程度、病気や健康、心身についての知識を持つことは、自分の命を守るための必須条件だと思います。そういったことに全く無関心ということであれば、それは健康を放棄したことと同じと言えます。家を購入する例で言えば、家を買う資格がないということです。

ただし、情報を数多く入手すればそれでいいということではありません。集めた情報を取捨選択する力も必要です。そのためには科学的なもののとらえ方、論理的な考え方も必要になります。

科学的、論理的という言葉が難しければ、自然な考え方、まともな発想と言い換えてもいいかもしれません。まずは、自分の頭で考えて判断することが大切です。
特に日本人は、他人の頭に頼る傾向が強いようです。テレビ、知り合い、うわさで判断するのではなく、情報を入手したら自分の頭で考えるということです。他人はあなたのためではなく、他人そのものの利益のために考えているだけなのです。

たとえば「肥満症」のところでも触れましたが「今までにない画期的なダイエット! 」というキャッチフレーズを見つけたとしましょう。
もしかしたら、本当にそうなのかもしれません。しかしその確率はどうでしょうか。そこで考えてみるのです。今までに星の数ほど多くのダイエット方法が出現しては消えていった事実。

なぜ今までに決定打がなかったのか、なぜ今回は決定打なのか。星の数ほどあるというそれ自体が、決定打はないことの動かぬ証拠ではないだろうか。そう考えるのが、自然な発想ではないでしょうか。「ここだけのいい話」というのも同じだと思います。おいしい話に釣られる人が意外に多いのには驚きますが、そのようないい話があなたのところにやってくる確率を、まずは考えてみてください。

競馬の予想屋もそうですね。もしもその予想屋が当たるとすれば、2つの理由で矛盾します。1つは、なぜその予想屋がそこにいるのか? 本当に良く当たるなら、その予想屋自身がとうに大金持ちになって、予想屋などしているはずがありません。また、よく当たるのであればレースのオッズが変わってしまうはずですから、あなたの配当金は微々たるものになるはずです。
少し脱線してしまったので元に戻しますが、もしもみなさんが医者にかかって、薬を出されたとしたら、なぜ薬をのむ必要があるのか? その根拠(※エビデンス) は? 効果と副作用は? 副作用で命を落とす確率は?

その他の方法はないのか?のまなければどうなるのか? いつまでのむのか? コストは? 根本的に治るのかどうか? 対症治療にすぎないのかどうか? 医者であれば本当にのむのか? くらいは最低限訊く必要があります。医療相談をしていてがくぜんも、意外に多くの方が、服用している薬の名前すら知らない事実に惇然とします。

なぜなら薬は毒の一種です。副作用は必ずありますし、命を落とす可能性もあるのです。薬をのめと言われて、はいわかりましたと、何も訊かずに素直にのむ神経が、私にはとうてい理解できません。それはまるで、顔も性格も年齢もわからない相手と結婚するようなものだと思います。人生を賭けたギャンブルです。

病院での診察は演技?

病院(医院) をあらためて定義してみますと、「医者と患者が芝居を演じる舞台」ということができると思います。芝居はあくまでも芝居ですから、いくら迫真の演技であったとしても、所詮は虚構の世界です。とどしたがって、病院(医院) とは必要最低限のつき合いに留めるのが賢明です。決して長居をするところでも、ずっと通うところでもありませんし、その必要もないと思います。

医者とは、本来は病院外でつき合いたいものです。そうすればこそ、建前ではなく、初めて本音のつき合いができるのです。
つまり、人間同士のつき合いが始まるのです。少し極端な言い方になりますが、痛院の中だけで医者と会っている限り、みなさんにとって有用なことは何もないと思います。
医者が患者と本音でつき合えるほどの余裕を持つことを、病院という舞台は執拗に拒むのだということを、みなさんにはぜひ知っていただきたいのです。

いい医者と友達になる

自分で病気を治す力を高めるために欠かせないことは、本音でつき合いができるいい医者が身近にいるかどうかです。しかし、先ほどから述べているように、「医者と患者」の関係でいる限り、本音のつき合いはなかなか難しいように思います。

医療現場では、医者はもっばら建前で患者さんと接することになります。とはいっても、3分くらいしか接点はありませんので、打ち解けた関係になるには無理があるのかもしれません。したがって、プライベートでいい医者を見つけておくといいでしょう。

医療相談で、こんな事例がよくあります。主治医は「薬をしっかりとのまなくてはいけない」と言うが、親しい医者に相談してみたら「ここだけの話だけど、この薬は確かに効果は抜群だけど、のみ続けるとがんになる可能性がけっこう高いので、どちらかといえば服用は勧めない」と言われたというのです。ちなみにこの場合、主治医も親しい医者も、いずれも某国公立大学病院の教授です。

ここだけの話にしないでほしいと、いつも思います。そんな場合には、ほとんど「往々にして医者としての意見よりも、友達としての意見のほうが信憑性が高いですよ」と私は答えるのですが、大方の場合はそれで正解です。

医者も人の子。親しい人にはついつい本音で接します。個人的には心根の優しいのが医者の特徴です。場合によっては小心と言うべきこともありますが。

ただ、大学の教授や、大病院の院長や部長ともなれば、立場上なかなか本音でものを言うことがはばかられるのかもしれません。公の発言ともなると、やはり歯切れが悪くなるのは致し方ない部分もありますので、なんとかプライベートでつき合える、いい医者を早く見つけてください。

信用してもいい医者の条件

そうはいっても、本音で話せる医者がすぐに見つかるとは限りません。そこで、医者の友達が見つかるまでの当座は、医者を専門家の1人としてうまく活用すればいいと思います。

ただ、医者に依存しすぎては逆効果です。がん患者さんを対象に医療相談をやっていますと、医者を信用したあまりに死期を早めた方が意外に多いことに驚きます。医者の資質の低下も原因の背景としてあるのかもしれません。しかし、患者さんの方にも自立する気持ちがなければ、自己治癒力がなかなか働かないのかもしれません。

医者を活用する場合に、みなさんが留意しなければいけない焦点は次の2点です。

1つは、その医者がきっちりとカテゴリー分けをしてくれるかどうか。もう1つは、健診結果をきっちりと評価してくれるかどうかでささいす。この2点さえ外さなければ、あとはむしろ些細なことです。

次に健康診断(健診) の受け方を考えてみましょう。健診は漫然と受けるのであれば、意味がありません。何か疾患を想定して、的を絞って受けるのが得策です。その的とは、多くの場合は「がん」ということになりますが、40歳を超えると1年に1 回、健診を受けたほうがいいと思います。健診についてはいろいろな論議があって、受けても意味がないという意見もありますが、がん患者さんの記録を見る限りにおいては有用です。

また、少し乱暴な言い方ですが、がん以外の疾患は、ほとんど手遅れになることはありません。したがって、早期発見をあまり気にしなくてもいいと思います。やはりがんに的を絞って、健診は受けるべきだと思います。
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ただ、健診で重要なことを2つ、付け加えておかねばなりません。lつは、健診は決して万能ではないということ。「健診で大丈夫だったからまったく問題ない」ということではありません。
あくまでも1つの目安です。

2つ目は、健診はあくまでもできるだけ早期に発見するための手段であり、予防の手段ではないということです。健診もうまく活用すれば有用ですが、それよりもやはり、自己治癒力を高める生き方を優先すべきでしょう。

医者に遠慮は禁物!

医者の大方の習性として、どちらかと言えば押しには弱いところがあります。したがって医者にはあまり遠慮せず、どちらかと言えば厚かましく接する方が、結果的には得をする場合が多いと思います。

がん患者さんを見ていると非常によくわかるのですが、積極的で、自己中心的で、少々厚かましいくらいの人の方が、断然予後が良好です。私は日々がん患者さんの医療相談を行なっていますが、患者さんを大きく2つのタイプに分けることができます。

1つは非常に謙虚で、遠慮深く、あまり質問のしてこないタイプ。もう1つのタイプはしつこいくらいに質問を投げかけてくる夕イプ。相談される側としては前者のタイプの方がやりやすいのですが、結果放としてあまり予後がよくないのはつくづく感じさせられるところです。

一方、執拗に何度も質問をしてくるタイプの患者さんは、正直うるさいなと感じることもままありますが、結果的にはコみゅにケーションもより取れることになり、治癒率も高くなるのです。積極的で前向きな姿勢そのものがプラスに作用していることは確かかもしれませんが、えてして有意な情報がそういった押しの強い患者さんに流れやすいという事実もあるように感じます。
また、医者の気もどちらかと言えば押しの強い患者さんの方へ、優先して流れていくような印象を受けます。

受診時には、筆記用具や録音機器を

受診の際にメモすら取らない方も中にはいらっしやいますが、はなはだ疑問に思います。ひょっとすれば命にかかわるかもしれない大事な場面に手ぶらで来るとは、よほどの認識不足と言わざるを得ません。

これは、私だけでなく他の医者もそうだと思いますが、真剣に治そうといなう気が萎えてしまいます。患者さんの其撃な姿勢が、医者の真剣さと感応し、初めて相乗効果をもたらすのだと思います。

もちろん医者から得るものは情報だけではないでしょうが、漏れなく情報を把握するためにも筆記具もしくは録音機器の携行は必須だと思います。また、そういった情報はセカンド・オピ:オンを求めるときにも非常に有効です。そしてそういう真剣な態度を示すことにより、医者の本領も発揮されるのではないかと思います。

治療方法は定期的に見直す

今自分が受けている治療がどのようなもので、どのような意味があるのか、そしてどのような副作用(デメリット)があるのかということは、少なくとも把握しておくべきです。

もちろん、ほとんどの医者は常に全力で患者さんに臨むわけですが、ある誹一定の確率でミスも起こります。また、医者は数多くの患者さんの主治医をしており、把握できる範囲にも限界があります。したがって、すべてを医者任せにするのは非常にリスクがあると言わざるを得ません。

医療相談をしていても、残念ながら、単純なミスや見逃しによって病状が悪化してしまったと思われるケースも少なくないのが現状です。

具体的には、自分の病状や治療内容を把握しておくと同時に、定期的に治療内容を見直す機会を作ることが大切です。たとえば、薬を処方されている場合には、ずっと同じ薬剤を言われるままに服用し続けるのは問題です。時間が経過すれば病状もきっと変化するはずですし、そうであれば処方内容も変えることが必要です。慢性疾患の場合、往々にして同じ処方、同じ治療方法が漫然と続くことがあります。

それは厳密に言えばありえないことなのですが、ついつい見逃されてしまうこともあります。したがって、折に触れ、自分から治療内容の見直しを医者に促すことも必要です。

医者への「お礼」は「虚礼」

少し切り出しにくそうに、「こんなこと訊いていいのかどうか迷ったのですが、周りの方もしていらっしやるようだし 、いくらくらい先生に包んだらいいのでしょうか? よかったら相場を教えてもらえませんか」と、そんな質問を受けることがたまにあります。

「そんなこと、あんまり気にしなくていいですよ。それよりもご自身が治ることを一番に考えましょう」「「別にお礼なんか要らないですよ。病院の待合室や病室にも、お礼はしないようにと、張り紙がしてあるでしょう。どうしてもお礼をしたいのなら、退院のときにでも、2000~3000 円くらいまでで、なにか気のきいたものをプレゼントすればどうですか? 」最近、ほとんどの病院には、あちこちに「お礼はしないでください」と、まるで動物園の「えさをやらないでください」の看板のように、張ってあるのが目に付きます。

まだまだ「お礼」の悪しき風習がしぶとく残っていることの現われだと思います。昭和30年代までは、医療費そのものが公定価格ではなく自費だったので、それぞれの患者さんが自分の収入に応じて、それなりのお礼をしていたこともありました。
その名残の「お礼」だけが習慣として生き残っているのかもしれませんが、結論から言いますと、あまり好ましい風習ではありません。ここで言う「お礼」とは、手術の前などに、こっそりと主治医や執刀医に手渡しする少し高額なお金のことを指します。これとは別に、退院のときなどに感謝の気持ちを表わしたくて、看護スタッフや主治医に自分の好きなものをプレゼントするというのは、全く自然で、何も問題ないと思います。

こそでのお礼は堂々と渡しますので「堂々タイプのお礼」と呼び、前者の袖の下のごとく、こっそりと手渡しするお礼を「こっそりタイプのお礼」と区別しておきます。もちろん、ここでの話は「こっそりタイプのお礼」ですが、それがなぜ好ましくないかを説明しましょう。

理由はいくつかあります。最大の理由は、医者と患者さんの問に、大きな隔たりを作ってしまうことです。たとえば友達とのやりとりを考えてみてください。仮に友達に何かをしてもらったときに、法外なお礼をあらたまってするでしょうか? おそらくそんなよそよそしいことはしないと思います。そのかわり、そう金額ははらないもので、友達が気に入りそうなものを贈るはずです。

もちろん逆の立場でもそうだと思います。したがって、贈る方にとっても、もらう方にとっても、ごく自然なやりとりだと思います。結果として、友達関係はより円滑になることはあっても、悪くなることはないでしょう。もうみなさん、おわかりだと思います。みなさんが、あらたまったお礼を医者にすることは、とりもなおさず、よそよそしさ、水臭さの感情をメッセージとして医者にぶつけていることになり、受け取った医者は当然、それを受け止めますので、以後、そのような関係で振る舞うことになります。患者さんの心のどこかで、自分だけを特別扱いにしてほしいというあざとい気持ちと、みんながやっているのだから自分だけがやらないと、損な扱いを受けるのではないかという不安な気持ちとが、ごちゃまぜになっているのだと思います。

しかし、いずれにしてもそのようなお礼はやはり「虚礼」です。あまり意味がないですし、むしろマイナスかもしれません。

まともな医者ならば、お礼を受け取らないと思いますが、断るやりとりそのものが、気まずさを誘うことになります。また、お金で左右されると思われたことにプライドを傷つけられる医者もいるでしょう。また、私であれば「きっと周りに言われてそうしたのだろうな、無用な気遣いをさせてしまったな」と思うでしょうし、ある医者にとっては、受け取ってかえってプレッシャー になるかもしれません。はたまたお礼をもらうことに慣れっこになっていて、なんとも思わなくなってしまった名医もきっといるでしょう。きずないずれにしても、お礼によって、医者との心の群が深くなることは万が一にもないということです。かえって、よそよそしくなるのが関の山です。

もちろんお礼がなかったからといって、なおざりにする医者もほとんどいないはずです。まれにお礼の有無や金額によって、扱い方を逐一掛酌する医者もいるかもしれませんが、その場合にはぜひご一報いただき、断固糾弾していきましょう。少し話が逸れますが、医者もピンからキリまでいます。卒業したての医者と百戦錬磨のベテランの医者との差、能力・資質の個人差は、厳然とあります。そういったいろいろな医者がいる中で、誰もがいい医者にかかりたいと思うのは当然のことです。そういった希望を踏まえ、患者や医者が、医者を評価するシステムを構築し、その結果を公表し、その評価いかんによっては診療報酬などで何らかのランク分けを行なうことも、考慮する必要があると思います。

さて、話を元に戻します。医者にとっては、患者さんがお礼をくれる「おいしい患者」になるのではなく、心の触れ合いもできる、友達感覚でつき合えるような関係になつてくれた方が、結局は治療もやりやすくなり、治癒率を高めることができるはずです。そういう意味でも、医者へのお礼はしないい方が、医者にとっても患者さんにとっても大きなメリットになるでしょう。

医者の本当の正体は白衣を脱げば小心者、白衣を着れば慢心者

医者にはどんな人間が多いのでしょうか? 実を言うと、今までに同じ質問を数多くの方々に投げかけてきました。その結果、良い悪いは別にして、医者は自分たちとは違う人たちだというイメージを持っている方が多いようなのです。

でもそれは大いなる誤解です。なぜこのような質問をするかと言いますと、良きにつけ悪しきにつけ、みなさんが医者を特別視すればするほど、医療は本音から遠ざかり、建前だけの実効のないものになっていくように感じられてならないからです。みなさんが医者を特別視すればするほど、医者もますます医者を演じなければいけないのです。

つまり、医者は「決して患者になることはない医者」を演じるのです。医者は患者を客観視し、自分が患者になることがないという錯覚に陥ってしまうのです。要は、医者の偽装が常態化してしまうのです。

しかし正体は全く異なります。医者も患者になりえますし、医者が特別に長生きするというデータもありません。あるいは、「医者は聖職」などと誰かが無責任に言うから、みなさんの誤きせん解を招くのです。

聖職などというものがこの世にあるはずもありません。それほど優秀ですばらしい人たちばかりが医者になっているわけではありません。多くの医者は、かつての私も含め、白衣を脱げば小心者、白衣(権威) を着れば慢心者なのです。それは医者に限らず他の職業にも共通するところではないでしょうか。

逆らわず、従わず

昔からよく、「並のバカなら怖くはないが、なまじ権力(学問) を持ったバカほど怖いものはない」と言います。確かにその通りだと思います。

したがってその対処法として、「逆らわず従わず」が最も有効です。これは、もちろん医者に対してもあてはまります。本当に優秀で、人格もすばらしい医者に出会えればそれは幸いです。しかし、それは宝くじに当たるようなものです。

すべての医者が人格者というわけではありません。本当にどうしようもなく頭の堅い医者もいるものです。ただ、こういう輩に対していたずらに喧嘩を売るのは得策ではありません。

まずは、医者から有意な情報やアドバイスを入手できれば、よしとしましょう。うまく持ち上げて医者を活用すればそれでいいと思います。要するに、彼らよりも賢く振る舞うことが重要です。

現代医療を非常識な視点で見る 完全ガイド – メモ(健康・美容)

健康と病気のちょうどその境目について考える

健康とは?病気とは?

現代医療は、ずっと医者にかかり続けなくても治ってしまう、あるいは医者にかかる必要もない、そんな分類の方が、残念ながら数多く病院に押しかけ、いわゆるおいしい患者さんになっているのが現状です。

それでは、そんな分類の方たちが、経営のための医療につきあわなくてもいいようにするには、どうしたらよいのでしょうか。

もちろん自ら治癒する術を知り、それをしっかりと身につければいいのですが、まずその前に、健康と病気との境界をしっかりと把握しておくことが大切だと思います。そもそも健康とはどういう状態を指し、病気はどんな状態を指すのでしょうか?

「健康」「病気」、いずれもみなさんが会話で頻繁に使う、非常になじみのある言葉ではありますが、それだけに意味を聞かれると「?」となってしまうのはどうしてでしょうか?現場で働く医者に訊いても、おそらく的確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

ちなみに、みなさんもよくご存じのWHO(世界保健機関)の定義では、「健康とは、完全な肉体的、精神的および社会的福祉の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」となっています。

しかし、言葉が抽象的でイマイチわかったようなわからないよう、そんな印象を受けます。

そんな定義はさておき、健康な状態をひらたい言葉で具体的に述べてみれば、「朝の寝覚めがよく、体に痛みや違和感もなく、食事をおいしく摂ることができ、排泄もスムーズで、仕事や勉学への意欲があって、不自由なく活動ができ、人に思いやりを持つことができ、そして夜には穏やかに眠りにつける」ということになるかと思います。

ただ、私たちが日常生活で求められる健康な状態というのは、必ずしも完全無比で、完壁な不動の状態を指すのではないことを、おさえておかなくてはなりません。1つの例です。

私たちの体の中では、毎日がん細胞が発生しているといわれています。しかし私たちは、がん患者ではありません。それはなぜでしょうか。それは発生したがん細胞が、うまく成長することができないからです。つまりがん抑制遺伝子が働いて、正常な細胞にひき戻されるか、そうでなければリンパ球やマクロファージによって、ことごとく処理されてしまうからなのです。そのおかげで、私たちはがん患者になることなく、ことなきを得ているわけなのです。

生体というのは、物質の出入りのない固定した塊ではありません。私たちの体を構成している細胞も原子も分子も、見かけは変わらないようですが、実は常に入れ替わっているのです。

今から1年経っても、私たちの姿形はあまり変わることはないでしょいなう。

私たちの1年前の細胞は、神経細胞などごく一部を除き、もちろん二の腕のだぶつきやおなかのでっばりの原因となっている脂肪細胞も含めて、すべて入れ替わっています。原子や分子レベルの話になれば、完壁にすべてが入れ替わっています。
l年前の私を形作っていた細胞、原子、分子は、今はまったく存在しないのです。常に古い細胞が死んで、新しい細胞が生まれながら、全体としては何も変化していないように見えるだけなのです。

これを恒常性(ホメオスターシス)が保たれていると言います。そしてこの恒常性、あるいは健全性を保とうとする力を「自己治描癒力」と呼んでいるのです。

この「恒常性」は、生物を無生物と区別する1つの大きな特徴でもあります。言い換えれば、「生物(生A叩) は、物質の出入りも何もない固定した存在ではなく、絶え間なく物質が出入りしているという動的な平衡を保った存在」であるという定義も成り立ちます。

つまり生命は、常に細胞(分子や原子も)が入れ替わりながらも、恒常性を保っている不思議な存在なのです。しかも、この恒常性は、実は姿形だけの話ではありません。みなさんの生命維持に直接かかわってくる「機能」においても、恒常性(健全性)を保とうとしています。

たとえば体温がその典型です。夏の暑い日であろうが、冬の寒い日であろうが、私たちの体温はほぼ一定の36.5度に保たれます。それはその温度が生体の運営に最も適した温度だからなのです。そしてこの恒常性が健全に保たれている快適な状態を「健康」と言い換えることができると思います。
いっぼう、「病気(疾病)」というのは恒常性が崩れてしまって、元に戻らなくなっているか、あるいは元に戻りづらくなつた状態だと考えると、わかりやすいと思います。

「末病」を治せば「病気」にならない!

健康に戻るか、病に陥るかの分岐点での対処の仕方が大切です。その分岐点は、中国の伝統医学である「中医」の「未病」というキーワードを理解すれば、わかると思います。

「未病」とは、恒常性が崩れかけていて、そのままほうっておけば完全に崩淵れてしまうような危うい状態を指します。

「未病」を軸に、体の状態を要約してみますと、次のようになります。

  • 状態1 恒常性が健全に保たれている状態(健康)
  • 状態2 恒常性が崩れかけている状態(末病)
  • 状態3 恒常性が崩れ、そのままでは元に戻らなくなっていて、悪化している状態(病気)

ただ、それぞれの間に明確な境界があるわけではなく、連続的に移行しているのが実態です。

中医で「未病」と診断されるのは、検査で明らかな異常がなく、明らかな症状もないが、少し調子の悪い状態で、病気になる前段階の心身の微妙な変化を挿します。この大事な変わり目を早急にとらえ、速やかに改善を図れば未然に発病を阻止することができるのです。つまり病気になることを防ぐことができるのです。

中国には「上工治未病」(上工は未病を治す)という古い言葉があります。「上工」とは本物の医者のことで、本物の医者は発病してからでなく未病の段階で異常を察知し、速やかに対処するものだという意味で、言い得て妙だと思います。

一方、西洋医学では、未病を見過ごし、発病してはじめて治療に取り掛かります。すなわち、検査で異常が発見されるか、明らかな症状が出るようになるまでは病気とは見なしません。治療の対象にもなりません。病気だという明らかな証拠を示さなければ、医者は動いてやらないということなのでしょう。

たとえてみますと、西洋医学は火事が発生してから対処しようという考えです。

その点、中医は火事になってから対処しようというのではなく、火事になりそうな危険な場所をあらかじめ点検したり、燃えそうな建材はあらかじめめ不燃材に交換したりしておこうという考えなのです。Jもちろんいったん火事になってしまえば、とりあえず燃え盛る火の勢いを抑えなくてはいけませんので、西洋医学も必要です。

しかし、それだけでなく火事の防止を考えたり、再発を防いだりすることも非常に大切な考えだと思います。

例えば、がんの場合、いったん発病してしまいますと、治療に多大なエネルギーを要するようになります。したがって、西洋医学のように発病するまで待っていて、発病したら対処しようという考えはあまり得策とは言えません。
中医のように、未病の段階で、微細な異常を的確に察知し、自己治癒力を高めて早く対処しておこうという考えが重要です。「待つ」のが西洋医学とすれば、重篤な病には悠長すぎる考えと言えます。それに対し、事前に対処する中医は「攻め」の考え方と言えるのではないでしょうか。

「中医」の考えは自己治癒力を高めること

「中医」の考えは自己治癒力を高めることで、病気や「未病」を治そうというもので、非常に理にかなった考えです。したがってうまく「中医」を取り入れることは、私たち日本人にとっても有用だと思いますし、むしろ取り入れない手はないと思うくらいです。

ちなみに「中医」と「漢方」とがまったく異なるという事実を、ご存じの方は少ないのではないでしょうか。江戸時代の末期に蘭方医学(近代西洋医学)が日本に導入された際に、それ以前からあったもともとの医学を「漢方(元をたどれば中国から伝わったものだから)」と称したのが、「漢方」という名のはじまりです。ですから、漢方とは日本の伝統医学を、「中医」とは中国の伝統医学を意味するのです。西洋医学は、特に20世紀にはすばらしい進展を見せました。

抗生物質が発見され、有効なワクチンが次々と開発され、生命を脅かす感染症は激減しました。一方、食をはじめとした生活習慣や生活環境が急速に様変わりガン、心疾患、脳血管疾患、アレルギー疾患、メタポリックシンドローム、膠原病などの慢性疾患が急増しました。

これらの慢性疾患は、西洋医学的な治療法だけでは限界があり、根本治癒も困難です。根本治癒にはどうしても、生活習慣などを是正し、自己治癒力を高めることが不可欠となりますので、心と体を一体としてとらえ、体全体のバランスとリズムを取り戻すことで病を癒すという、心身一如の思想に立脚した東洋医学、特に「中医」の考え方が必須となります。

さらに「中医」には「気」という生命エネルギーの概念も古くからあり、生命を単なる機械、臓器を部品と見なす西洋医学(近代医学)の立場とは異なり、全人的な視野に立って医療を施すところに特長があります。

日本の医療の中に「中医」の考え方を浸透させることが、大きく治癒率を向上させ、患者さんの信頼を取り戻す大きな原動力になりうるはずですし、そうすることが義務ではないかとさえ私は思っています。少なくとも数千年かけて積み上げられてきた先輩医師たちの英知を無視することは、多大な損失だと思いますし、患者さんへの人権侵害だと思います。

最近中国では、西洋医学と中医のいいところをうまく組み合わせた手法を中西医結合医療と呼び、がん治療など慢性疾患の治療の主流になってきています。西洋医学で初期治療を行ない、そのあと中医を用いて養生をしていくという非常に賢明な考え方なのです。ぜひお隣の国のすばらしい英知を、日本にも取り入れるべきだと考え、個人的に学んでいるところです。日本でも、もっともっとポピュラーになればと考えています。

ちなみにがん治療の場合、西洋医学が主流の日本では、手術や抗がん剤治療などの初期治療のあとは、基本的に放置するのみです。生活指導ももちろん、中医を奨めることもありません。ただただ再発・転移を待つのみです。そのためでしょうか、実際に半数の人が再発・転移で亡くなります。積極的に再発・転移を抑えていれば、結果は大きく異なるはずだと思うのですが、いまだに西洋医学一辺倒なのが、日本の悲しいがん医療の現状です。

分かれ道は、健康と病気の境日

では中医のキーワードである「未病」をポイントに、典型的な糖尿病の経過を例にして、健康と病気の境目を述べてみましょう。
みなさんの中にも、きっと甘いものには日がないという方が大勢いらっしゃると思います。その甘党のみなさんが、甘いおまんじゆうを一気にたくさん食べたとしても、あるいはコーラ1リットルを一気に飲み干したとしても、血糖値は一時的にはかなり高くなりますが、数時間以内には、元の値に戻ります。

それは、膵臓のβ 細胞が分泌するインスリンというホルモンの働きによって、血糖値がうまくコントロールされるからです。要は体の中で、恒常性を保つ機能が健全に働いているからだと言えます。これは「青信号」と言えます。

しかし、その後、みなさんが忙しさにかまけて運動をあまりしなくなったり、過度にストレスのある生活が続いたりすると、どうなるでしょうか。内臓脂肪が多くなると、だんだんと恒常性を保つ能力である「自己治癒力」が小さくなり、血糖値がなかなか元に戻らない状態になります。この、恒常性を保つ能力が小さくなった状態、あるいは元に戻る力が低下した状態を、「未病」と言います状態は。「黄信号」です。

この状態は、実は非常に大切な時期なのです。まさに運命の分岐点とも言うべき時期です。しかし、みなさんも、そして残念ながら医者も、それほどこの分岐点を注目していません。

さて、のこの時点で、みなさんが健康診断を受けると、おそらく空腹時の血糖値126 mg/dl 以上でしょう。是非はともかく、現在の基準値では125 mg/dlまでが正常、126 mg/dlからは異常とされているため、はれて「糖尿病」というお墨付きをいただくことになります。堂々と血糖降下剤といわれる謎の薬の処方がいただけるようになるのです。そして、ちゃんと薬をのまないと「目が見えなくなってしまう」「腎不全になって透析を受けないといけない状態になってしまう」「足の先がなくなってしまう」と散々脅されJることになります。

みなさんは不安になって、薬局へ急いで駆け込むことになり、素直に血糖降下剤をのみはじめることになります。そこから道は、大きく2つに分かれます。まさに分岐点です。

1つ日は、あまり事態を深く考えずに、素直に薬をのみ続ける道です。非常に楽な選択のように見えます。なぜなら、薬をのむだけで済むわけですから。薬をのむと最初のうちは容易に血糖値が下がりますので、みなさんは治ったのではないかと錯覚してしまいます。ついつい油断して、食生活の是正や運動習慣の取り入れなどの話は、完全に忘却のかなたにいってしまいます。つまり薬さえのんでいれば、節制などくそ食らえという、大きな気持ちにとらわれてしまうのです。

薬を素直にのんでも、それは対症治療にすぎません。膵臓β 細胞からのインスリンが増量するわけではありません。むしろ逆でインスリン量は減量していきます。血糖降下剤を服用することによって、治る方向とはまったく正反対の方向に進んでしまうのです。

それはどうしてかと言いますと、血糖降下剤を服用することによって、インスリンを分泌するβ 細胞はいよいよ仕事をサボるようになっていくからです。賢明な私たちの体は、合理的に物事を判断しますので、きっとこう考えるはずです。

血糖降下剤がちゃんと血糖値を下げてくれるのだから、何も自分たちが一生懸命努力して元のように仕事をしなくてもいいのではないかと。確かにそれは合理的です。しかし、物事はそう甘くは続かないのです。本来ならば運動や食習慣の是正、ストレス対処などをうまくやりこなすことで自己治癒力を高め、インスリンの分泌能、もしくはインスリンの感受性を改善させなければいけないところを、まったく逆のことをやっているわけです。
いくら薬をのみ続けても、治るどころかどんどん悪くなるのが道理です。やがては血糖降下剤もあまり効かなくなり、合併症も出てきて、遅かれ7早かれインスリンの注射を受け続けることになります。そしてついには、目が見えなくなったり、腎不全になって透析をしなくてはいけなくなったり、足を切断しなくてはならなくなったりと、坂道を転げ落ちていくような悲惨な状況になってしまいます。

つまり、赤信号状態に進むのです。さて、分岐点で2つ目の道を選択するとどうなるでしょうか。つまり、安易に医者に頼る前に、まず自己治癒力を高めることをいつも意識して、今までの生活習慣をうまく変えていくことに努めるのです。

少し時間はかかるかもしれませんが、確実に、いずれ「状態1」に戻るでしょう。これは決して医者に行くなというのではなく、医者に頼る前に「未病」であるかを自ら確認し、仮にそうであれば、努力をして生活習慣や考え方を是正してみることが非常に大切だということなのです。

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うつ病早期発見のために

うつ病のサインに気づく

うつ病と思わせるサインのようなものがあります。そのサインに気づいたら、なるべく早く専門医に相談することが、早期治療・早期回復につながります。
うつ病の症状は多様で、しかも似たような症状をあらわすほかの病気もありますので、うつ病かどうかの判断はそれほど容易なことではありません。

まして、それまでうつ病についてほとんど予備知識のない人(家族)が早期発見をするのはかなりむずかしいことです。
そこで、ここではうつ病のサインにはどのようなものがあるのか、もう少し具体的にみていきます。
サインは、「これまでとくらべて、どうも調子がおかしい」ということに気づくことが基本になります。
以前に比べて

  • よくとりこし苦労するようになった
  • 過去にしてしまったことを、「とり返しがつかない」と、いつまでもくよくよ後悔するようになった
  • 自分は不必要な人間だと感じるようになった
  • 特に男性の場合は、セックスに興味がなくなった

というようなこともサインとなります。次に、家族やまわりの人たちが気づくサインとしては次のようなものがあります。
以前に比べて

  • 元気がなくなった
  • 何をするにも億劫に見える
  • 口数が減った
  • ゴルフや映画鑑賞、旅行など好きだった趣味に興味がなくなった
  • 仕事が遅くなったりミスが目立つようになった
  • タバコの酒の量が減ったり、増えたりしている
  • 主婦の場合、料理や掃除洗濯な家事をするのが億劫そう
  • 女性の場合、服装や化粧に関心がなくなった

これらはほんの一例です。自分自身で気づくにしても、また家族が気づくにしても、こうしたことは日常的にはそれほど珍しいことでもないため、つい見すごしてしまいがちです。

判断は、長く続いているかどうかです。要は、「いつもとちょっと違う」ということに早く気づくことなのです。「これまでと何か違う。しかも、その違いの程度も強いし、それがいつまでも続いている」と感じたら、早めに専門医に相談する必要があります。

専門医の受診が遅れてしまうと

早期発見のためには、できるだけ早くうつ病のサインに気づくことが肝心であると述べました。ところが、せっかくこうしたサインに気づきながら、受診が遅れてしまうケースがあります。

ひとつは、精神科を訪れることに対して、いまだに抵抗感がある人の場合です。心の病気についてはメディアでもよくとり上げられ、偏見や誤解があまりなくなってきたおかげで、一般の人々の精神科に対する抵抗感はかなり薄くなったといわれます。しかし、それでもまだまだ精神科には行きづらいと思う人は多いようです。

本人も家族も、せっかくうつ痛のサインに気づいていながら、なかなか病院に行く気になれず、ぐずぐずしているうちに症状が重くなってしまうことがあるのです。また、本人が「どうも、おっくうだ」とか「どうも、このごろ憂うつだ」と心の変調を感じていても、家族やまわりの人が「たいしたことはない」「気のせいだ」と勝手に決めつけてしまう例もあります。

たしかに、だれでもこうした気分になることはよくあることなので、家族がそう思ってもしかたがないかもしれません。まして、家族にそれまで心の病気になつた人がいなければ、経験も知識もありませんから、まさか精神面の病気だとは気づかないのです。

そうしたケースとして、産後うつ病があります。女性が出産をきっかけに発症するうつ病を産媒僚期うつ病といいますが、夫や家族は産婦のいつもと違う様子に気がついても、「お産という大役をしたあとなのだから、疲れて元気がなくなるのはあたりまえ」と考えて、まさかうつ病などとは思わないことがあるのです。
産後うつについてはこちら

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別の病気だと勘違いしてしまう

更年期障害の場合も、この障害についてはよく知られていますから、うつ病のサインがあらわれていても、「それも更年期障害のせいだろう」と考えて、専門医にかかるのが遅れてしまうケースがしばしばあります。

同様に、「仮面うつ病」では体の症状が前面に出ますから、どうしても体の症状ばかりが気になり、結果として精神科の医師にみてもらうことが遅くなって症状を悪化させてしまう例が少なくありません。また、神経症と軽症うつ病の症状は非常によく似ています。

このため、本人に元気がなくなっても、「単なるノイローゼだろう」と軽く考えて、受診が遅れてしまうこともあります。もちろん神経症であっても、きちんとみてもらう必要があるわけですが、ノイローゼというと軽くみられる風潮もあって、専門医にみてもらう機会を逸してしまうことが多いのです。
女性特有のうつの症状

うつ病は心だけでなく、 体全体の病気である なまけているように見える場合も…正しい知識を

うつ病というと、心の変調ばかりに目がいきがちですが、その症状のあらわれ方は実にさまざまです。まず、うつ病の症状の全体像もとても重要です。

「うつ病は心の風邪」という意味について

最近、どうも調子が出ない。何をやろうとしてもおっくうで、「よし、やろう」という気力が出ない。気分が落ち込んで、いやなことばか暑えてしまう。もしかすると、うつ病かもしれない、うつ病は、テレビや雑誌、新聞、書籍、さらにはインターネットなど、さまざまなメディアでとり上げられるようになって、かなりよく知られた病気になっています。

それだけに、ちょっと心の調子が悪いと、もしかすると自分はうつ病かもしれないと考える人がふえてもおかしくはありません。最近、うつ病について語られるとき、たびたび使われるのが「うつ病は心のカゼ」とい、言葉です。

その意味は、うつ病はカゼのように、だれもがかかる可能性のある、ごくありふれた病気だということです。つまり、うつ病は特別な病気というわけではなく、カゼのようにごく身近な病気であるとともに、多くの人がかかる病気であるということを言おうとしているわけです。

ところが、「カゼ」という言葉から、まるで別の意味に解釈してしまう人がいます。「カゼぐらいだったら、たいした病気ではないのだ」と軽く考えてしまうのですが、それはまちがいです。たしかにカゼであれば、市販の薬を飲めば治ることもありますが、だからといつて、カゼをばかにしてはいけません。

「カゼは万病のもと」といわれるように、軽くみてはいけないのです。まして、うつ病はけっして放置しておいてよい病気ではありません。うつ病を軽くみて、治療をおろそかにしていると、さらに重症化したり、ときには自殺に至る、非常にこわい病気であることをまず知っておく必要があります。

心と体に症状があらわれる

うつ病の症状は精神面ばかりでなく、体の面でもさまざまなあらわれ方をします。つまり、うつ病は心と体、つまり体全体の病気なのです。やっかいなことに、精神面の症状は、目には見えないこともあり、なかなかわかりにくいところがあります。
まわりの人はもちろんのこと、軽い場合などでは自分自身でもうつ病と気づかないこともあります。まず、うつ病の症状の特徴をざっとみてみます。

典型的な症状としてよくいわれるのが、気分の落ち込み、疲労、食欲不振などです。
気分としては、

  • 憂うつ
  • 気分が晴れない
  • 気分がふさぐ
  • 悲しい
  • ツライ
  • 苦しい

などという感じが、長く続きます。こうした気分に、不安が重なったり、眠れなかったり、また性欲がなくなったりもします。体調としては、

  • だるい
  • 下痢
  • 食欲がない
  • 頭痛
  • 肩こり

などがみられます。これだけみても、うつ病の症状は実にさまざまであることがわかると思います。しかも、これらの症状は日常の中でだれもが経験することばかりです。それだけに本人はもとより、家族などまわりの人たちもうつ病と疑わずについ見過ごしてしまう場合もあります。

生活のリズムに変調をきたす

日常生活のリズムの中で基本となるのは、睡眠と食事です。うつ病になると、これら基本的な生活にも大きな影響を与えます。うつ病の症状として、最も大きな特徴にといわれるのが、いわゆる「日内変動」です。

うつ病の人の気分は、1日中同じ状態というわけではありません。一般的には、朝方に気分がとても悪く、夕方から夜にかけて調子がよくなっていくという傾向がみられます。これを日内変動といいます。

このことから、うつ病の診断でも、この日内変動があるかどうかがひとつの目安となります。朝の落ち込み方が激しいため、寝床からなかなか出られず、洗面や歯磨きはもとより、新聞を読んだり、テレビを見ることすらおっくうになります。気力や意欲もあまりありませんので、学校や会社に行くことができないこともあります。それが夕方から夜になるにつれて、少しずつ改善されていきます。

症状のもうひとつの大きな特徴として、「不眠」があります。不眠にはさまざまなタイプがありますが、うつ病では「早朝覚醒」といって、かなり早い時間に目が覚めてしまいます。早朝といっても、深夜に近い午前3時とか4時に日が覚めます。

熟睡したために、そんな時間に目が覚めてしまうことはよくありますが、うつ病の人はよく眠れていないにもかかわらず、早く目が覚めてしまうのです。しかも、再度、眠ろうとしてもできません。目が覚めたとたんに、頭の中に次から次へといやなことや悪いことばかりが浮かんできてしまうためです。いやな考えがどんどんふくらんでいって、さらに落ち込んでいきます。そのため、ふとんの中で悶々とすることになります。

こうしたことから、うつ病の人の朝の気分は最悪となってしまうのです。食欲がなくなり、その結果、体重も減っていきます。それとともに、うつ病では消化器系、循環器系、呼吸器系、泌尿器系など、体のいたるところに不調が出てきます。

周囲からはなまけているように見えてしまう

うつ病の人は、このように心と体にさまざまな症状が出ます。

しかも、その多くはうつ病ではない人でも日常生活の中でよく経験することです。このため、まわりの人たちは自分の経験をもとにして、うつ病の人をみてしまいがちです。うつ病の人の症状は、一見さぼっていたり、なまけているようにみえます。
家族でさえ、「ぐずぐずしないで」と文句のひとつも言いたくなるほどです。

たとえば、「よくため息をつく」「ごろごろ寝てばかりいる」「やらなければいけないことを、少しもやらない」「仕事や勉強をなまけている」というようにみえてしまうのです。しかし、家族やまわりの人がまずいちばんに注意しなければいけないのは、うつ病の人の様子をみて、なまけていると誤解してはいけないということです。このような誤解は、うつ病の症状をよく知らないために起こってしまうものです

5分間セロトニントレーニング

脳を動かす冷静な覚醒

私たちの身体は、身体の内外で感じたことをすべて情報としていったん脳に集めます。脳はその情報を判断し、それに対してどういう行動(アクション)をとるのか、身体の各部署に情報を伝達しています。こうした「情報の通り道」になっているのが、神経です。

神経は神経細胞の集合ですが、細胞同士はぴったりとつながっているわけではなく、ほんの少しだけ間隔を空けながら連携しています。その神経細胞同士の隙間を移動し、情報を伝えているのが、「神経伝達物質」です。

例えるなら神経細胞はリレーの走者、神経伝達物質はバトンのようなものです。神経細胞には、「軸索」と「樹状突起」と呼ばれる2種類の突起があります。この突起が互いに手を伸ばし合うようにして神経細胞は「神経」を構成しています。
これらの突起は、それぞれ働きが違います。樹状突起は情報の取り込み口、軸索は情報の出力口です。

つまり、樹状突起から情報を受け取った神経細胞は、インパルスと呼ばれる電気信号を使い軸索の末端までその情報を伝え、そして軸索の先端にインパルスが到達すると、そこから神経伝達物質が放出され、次の神経に情報が伝わるのです。

この神経細胞同士の接合部分を「シナプス」といいます。これが、一般的な神経の構造と働きです。普通の神経は、1つの情報に対して1つの信号を発し、次の情報が来るまで自分からは何もしません。

ところが、セロトニン神経は、他の神経から刺激がなくても、規則的にインパルスを出すという通常の神経にはない性質を持っています。そのインパルスは、他の神経からの刺激とは関係なく、自立的に一定のリズムで発せられ続けます。そんな他の神経の影響を受けないセロトニン神経の活動に、規則性を与えているのが、睡眠と覚醒のサイクルです。

セロトニン 神経は、目覚めている間、つまり脳が覚醒している間は、1秒間に2~3回の間隔でインパルスを出し続けています。
しかし眠ると、その頻度はまばらでグッと少なくなります。さらに、レム睡眠という深い眠りに入ると、インパルスはまったく出なくなります。そして、朝になり再び目覚めると、またもとの1秒間に2~3回という規則的なインパルスに戻るのです。

セロトニン神経は、脳幹の縫線核という部分から脳全体に軸索を張りめぐらせています。そして、起きている間はずっと、一定の頻度でインパルスを送り続けます。そのため、セロトニン神経からは、起きている間はずっと一定量のセロトニンが放出され続け、脳内のセロトニン濃度が一定に保たれるということになります。

セロトニンは、脳に「クールな覚醒(静かな覚醒)」をもたらすので、セロトニンがある程度出続けている間、脳は覚醒し続けます。そして眠るとインパルスの頻度がまばらになり、それに伴って脳内のセロトニン量が減り、覚醒状態も失われるというわけです。

こうしたセロトニン神経の働きは、ちょうど車のエンジンのアイドリングとよく似ています。車はエンジンをかけると、低速で規則的なエンジン回転が始まります。脳も目覚めると、セロトニン神経が低速度で規則的なインパルスを出し続けます。

私たちは、よく寝起きがいい日と悪い日がありますが、実はこの「寝起きがいい」という状態は、覚醒してすぐから、セロトニン神経のインパルスが規則正しく発せられている状態のことなのです。目覚めとともに、脳がセロトニン神経の働きによって、クールな覚醒状態にスムーズに移行した状態、それが私たちが感じる「爽快な目覚め」です。

反対に目覚めが悪いというのは、セロトニン神経の働きが低下し、インパルスが規則的に出ていない状態です。これは、エンジンでいえば、アイドリングが安定せず、すぐにエンストしてしまうような状態です。アイドリングが安定しなければ、快適なドライブができないように、脳もセロトニン神経のインパルスが安定しないときちんと働くことはできません。そうならかいためにも、普段からセロトニン神経を鍛え、活性化させておくことが大切なのです。

心身を健康にする「5つの働き」とは

セロトニン神経の役割というと、「うつに効く物質」にすぐに結びつけてしまう人がいますが、それは大きな間違いです。また、セロトニン神経が活性化すると、クールな覚醒や平常心がもたらされると言いましたが、セロトニン神経の機能は、決してそれだけではありません。

ここでセロトニン神経の働きをまとめておきましょう。セロトニン神経には、全部で5つの機能があります。

  1. クールな覚醒
  2. 平常心の維持
  3. 交感神経の適度な興奮
  4. 痛みの軽減
  5. よい姿勢の維持

1つ目の「クールな覚醒」は、大脳皮質の活動を適度に抑えながら、その働きを高いレベルで維持するという、人間の脳にとって理想的な覚醒状態をもたらす働きです。すでに触れましたが、この働きは、脳の中のセロトニン濃度が一定のレベル以上に保たれることによってもたらされます。

2つ日の「平常心の維持」というのは、心の状態を整える機能です。セロトニン神経は、ノルアドレナリン神経とドーパミン神経という、ときには暴走してしまう2つの神経に働きかけ、暴走を抑え適度な興奮状態にとどめることができます。
そのため、セロトニン神経がきちんと働いていれば、精神的なストレスのコントロールがしやすくなり、多少のストレスがあっても、それに負けてイライラしたり、キレやすくなったりすることもなければ、逆に嬉しいことがあっても、はしゃぎすぎたり舞い上がってしまうこともなくなります。もちろんつらいことはつらいし、嬉しいことは嬉しいと感じているのですが、そうした自分を冷静にコントロールできている状態が「平常心」です。

こうした平常心の大切さは、アスリートの人たちを見ていると痛感させられます。スポーツにはミスがつきものです。
たとえば野球のピッチャーが配球を間違えてヒットを打たれたとしましょう。そこで動揺してしまったら、その後、いい球を投げることは難しくなってしまいます。でも、失敗は失敗と理解して、心を落ち着かせることができれば、自分の投球を取り戻し、失敗を挽回することができます。冷静な判断が重要です。

平常心というのは、適度な緊張をもって、その人の能力を最も発揮させることができる心の状態なのです。

3つ目は、「交感神経の適度な興奮」です。私たちの身体は「交感神経」と「副交感神経」という2つの自律した神経の働きによって支えられています。自律神経というのは、私たちの意志とは関係なく働いてくれる神経です。

たとえば、私たちの身体はものを食べると、消化器官が勝手に消化し、勝手に栄養を吸収してくれます。私たちはこれを意識的に行うことも、意識的に止めることもできません。こうした意識的にコントロールできない働きを行ってくれているのが自律神経です。

この自律神経も、セロトニン神経と同じように睡眠と覚醒のサイクルに合わせて変動します。覚醒しているときは交感神経が優位に働き、眠ると副交感神経が優位に働くようになるのです。副交感神経から交感神経へのスイッチングには、セロトニン神経の規則的なインパルスが重要な働きをします。

そのため、セロトニン神経が弱まりインパルスに乱れが出ると、自律神経のスイッチングにも乱れが生じ、自律神経失調症になってしまうのです。そうなると、めまいや立ちくらみが生じたり、体の一部が震えるなどの症状が出ることもあります。
自律神経失調症に分類される13の症状と病気

ここで注目すべきところは、セロトニンが交感神経を「適度に」興奮させるという点です。交感神経が非常に強く活性化した状態というのは、簡単に言うと「ストレス状態」です。
たとえば、激しい運動をしているときや精神的に興奮したとき、私たちは心拍数が1分間に120~180ぐらいにまで上昇します。いわゆるドキドキした状態です。これが、交感神経が強く活性化した状態ですが、心身にストレスが加わった状態であることがその心拍数から充分におわかりいただけると思います。
では、適度な興奮状態とはどのようなものなのでしょう。そのよい例が、スッキリとした朝の目覚めの状態です。寝ているとき、私たちの心拍数は1分間に50回程度しかありません。

それが目覚めると、70~80回ぐらいまで上昇します。明らかに交感神経が興奮しているのですが、それは運動したときのような激しい興奮ではありません。穏やかだけど、活動する準備の整った状態、それが交感神経の「適度」な興奮です。

4つ目の機能は「痛みの軽減」です。実はセロトニンというのは、脳内で鎮痛剤の役目を果たすのです。普段私たちは痛みを、身体のさまざまな部分で感じているように思っていますが、実は痛みを感じているのは「脳」なのです。

歯の治療をするときなど痛みをなくすために麻酔薬が使われますが、あれは、その部分の神経を一時的に薬で麻痺させて、脳に痛みの情報が伝わらないようにするので痛みが感じられなくなるのです。
でも、セロトニン神経を活性化させると痛みが軽減されるのは、神経が麻痺するからではありません。

そのため、痛みがあることは明確に認知されます。痛みはあるのですが、それほどつらくは感じないですむ、というのがセロトニン神経による痛みの軽減の特徴です。こうしたことが起きるのは、セロトニンを活性化させることによって「痛みの伝導」を抑えることができるからだと考えられます。

つまり、ストレスによる神経の伝導をセロトニンが抑制してくれるために、一定の痛みに対しても、それほどつらさを感じなくなるというわけです。そのため、身体的ストレスのコントロールがずっとしやすくなるのです。

大したケガでもないのにひどく痛みを感じたり、自分は他の人より痛みに弱いのではないかと思う人は、セロトニン神経が弱っている可能性があります。普段からセロトニン神経の活性化を心がけるようにしてください。

最後の5つ目の機能は、「よい姿勢の維持」ができるようになるということです。セロトニン神経は、「抗重力筋」につながる運動神経に直接、軸索を伸ばし刺激を与えています。抗重力筋というのは、姿勢を維持するのに重要な、文字通り重力に逆らって働く筋肉です。

首筋、背骨の周りを支える筋肉や下肢の筋肉、そしてまぶたや顔の筋肉も抗重力筋に含まれます。しかん抗重力筋は、寝ているときは弛緩して休み、目覚めると持続的に収縮を続け、姿勢を整えるとともに引き締まった表情をつくり出します。

セロトニン神経が弱ると、抗重力筋の緊張も弱まるので、きちんとした姿勢を維持するのがつらく感じられ、ついついゴロゴロしてしまうことが多くなります。また、表情も目元に力がなくなり、何となくダラッとした印象になってしまいます。

このように、セロトニン神経の働きは、私たちの心身に多くの影響を及ぼします。セロトニン神経が活性化していれば、頭がクリアになり、元気がみなぎり、心は安定し、ストレスや痛みに強く、姿勢も表情も引き締まるのですから、いいことずくめです。
反対にセロトニン神経が弱ると、これとまったく逆の症状が表れるので、仕事はもちろん生活のクオリティまで下がってしまいます。その上、心の病気にもなりやすくたたなるのですから、まさに弱り目に崇り目です。

セロトニン神経の活性は、抗ストレス能力の1つですが、単にストレスに強くなるだけではなく、あなたの人生のクオリティを上げることにもつながるものなので、ぜひ生活の中に取り入れていただきたいと思います。

セロトニン神経とストレスの関係性

セロトニン神経は、それ自体は直接ストレスの影響は受けません。ストレスがあろうがなかろうが、関係なく一定のリズムでインパルスを送り続けます。しかし、セロトニン神経の「機能」はストレスによって低下してしまうのです。

なぜこのようなことが起こりうるのでしょうか。セロトニン神経は日々の食事から吸収した「トリプトファン」を材料にセロトニンを合成します。そして、軸索の末端(神経終末)から放出し、その放出されたセロトニンは、受け手の神経細胞にある「セロトニン受容体」に結合し、受け手の神経を抑圧したり興奮させたりします。

このとき、セロトニン受容体に結合するセロトニンの量が多ければ影響は強く、少なければ弱く表れます。セロトニンはインパルスの頻度に合わせて放出されるので、インパルスの頻度が高ければ、分泌されるセロトニンの量は多く、頻度が低ければセロトニンの畳も少なくなります。

では放出されたセロトニンの中で、セロトニン受容体に結合しなかったものはどうなるのでしょう。実は、あまったセロトニンは、「セロトニントランスポーター」という運撒役によって、もとのセロトニン神経の末端にある再取り込み口から吸収され、リサイクルされるのです。

一定の頻度でセロトニンを放出し続けるセロトニン神経には、自分の働きを自分で点検し、ちょうどよい状態に整える「自己点検回路」というものがあります。セロトニン神経の軸索は、途中から何本にも枝分かれしてさまざまな標的神経につながっているのですが、

その中の1本がぐるりと細胞に戻り、「自己受容体」につながっています。ここで自分が出しているセロトニンの量を把撞し、多すぎれば抑制し、少なければ多く出すようになっているのです。さて、ストレスはこうした構造のどこに影響を与えるのかというと、セロトニンの分泌土そのものに作用するのです。

ストレスを受けるとストレス中枢である視床下部・室傍核に刺激を与えます。その結果、縫線核を経由してセロトニン神経のインパルス発生を低下させてしまい、セロトニン量そのものを減少させてしまうのです。
つまり、ストレスが溜まり、ストレス経路が動き出し、ストレス中枢の室傍核が刺激されると、それによってセロトニンの分泌そのものが阻害され、慢性的なセロトニン不足が生じ、セロトニン神経の機能が低下してしまう、ということなのです。

なぜセロトニンが不足するとうつ病になるのか

慢性的なセロトニン不足が続くと、標的神経にも変化が表れます。不足しているセロトニンをもっと多く受け取るために、セロトニン受容体の数を増やしてしまうのです。しかし、いくら受容体を増やしてもセロトニンの量がもともと不足しているのです。残念ながら効果は上がりません。

こうして脳内のセロトニン量が慢性的に不足することによって、脳の活動が全体的に低下し、その結果「うつ病」を引き起こしてしまうのです。
うつ病と脳内セロトニン濃度の低下が関係していることは、うつ病で自殺した人の解剖結果からも明らかになっています。誤解がないように言っておきますが、すべてのうつ病がセロトニンの不足によって生じるわけではありません。
うつ病の原因はさまざまです。うつ病でよく見られる9つの症状

うつ病には、もともとの遺伝子の問題からセロトニン不足が生じて発症する先天的なうつ病と、生活習慣などからセロトニン不足が生じて発症する後天的なうつ病の、2種頬があります。
先天的なものは家系的に発症者が多かったり、うつ状態と操状態が繰り返されるなど、特有の症状が見られます。

セロトニン不足によって生じるものは、最近増加傾向にある「心の風邪」といわれるような、比較的軽いうつ病です。現在の日本で、こうした軽いうつ病を患っている人の数は、約300万人といわれています。潜在的にはもう少し多いのかもしれません。

現在の日本の人口は約1億2000万人なので、100人いれば2人ぐらいはうつ病の人がいるということになります。でも、人によっては、600万人という数字を掲げている人もいるぐらいですから、実際にはもっと多いのかもしれません。でも、
これは本当に最近のことです。50年前はどうだったかというと、いなかったとは言いませんが、これほど多くの人が発症することなどありませんでした。それこそ、戦時中などは、衣・食・住あらゆる面においてストレスはかなり大きかったはずですが、それでもうつ病が問題になったことなど、まずありませんでした。

今、増加しているうつ病は、不規則な生活やコンピューター浸けの生活など、現代生活特有の問題に起因しています。つまり、うつ病は生活習慣病と考えられるのです。しかし、生活習慣病であるということは、生活習慣を改善しさえすれば病気はちゃんと回復するということでもあるのです。
どのように治っていくのか

現在、うつ病の治療によく用いられる薬に、SSRIというものがあります。
セロトニン濃度を高めるSSRI – うつ病

SSRIというのは、「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」といって、セロトニントランスポーターの働きを抑える薬です。先に受容体に結合しなかったセロトニンは、セロトニントランスポーターによって再取り込み口に運ばれると述べましたが、実はセロトニン神経の末端の他にもセロトニントランスポーターは存在しています。

それは、脳の血管内皮です。この血管にあるセロトニントランスポーターによって、余分なセロトニンは血管の中に取り込まれ、最終的には尿として排泄されてしまいます。SSRIを用いると、セロトニンの再取り込みと同時に脳血管への流出が抑えられるので、受容体と結合しなかったセロトニンは、軸索の先端と標的神経の間の空間に漂い続けることになります。

なぜこれによってうつ病の症状が改善するのかというと、隙間にとどまるセロトニンが増えることで、脳内のセロトニン濃度が高くなるからです。でも、これは見せかけの改善でしかありません。なぜなら、セロトニンを放出するインパルスの頻度は、低いままだからです。

うつ病を根本的に改善するためには、セロトニン神経のインパルスの頻度を高め、セロトニンの放出量そのものを増やすことが必要です。そのためにはセロトニン神経を活性化させるよう生活習慣を改善するとともに、リズム運動を積極的に行うことが必要なのです。もちろんうつ病治療には、それぞれの患者の状態によって薬の処方が必要なケースもあるので専門医の治療を受けることが必要ですが、その場合でも生活習慣の改善を併用することはよい結果につながります。
そして、うつ病自体が軽いものであれば、薬に頼らなくても、生活習慣の改善とリズム運動だけで充分回復させることができると考えています。
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セロトニン神経を鍛えることで「遺伝子」も変わる

セロトニン神経を「鍛える」といっても、いったい何ができるのでしょうか。理想的なのは、標的神経の受容体の数が少なく、そこに充分な量のセロトニンが結合し、刺激が強く伝わるという状態です。「鍛える」といって一番イメージしやすいのは、筋肉を鍛える場合でしょう。

毎日、筋肉に適度な負荷を与える運動を続けると、筋肉は見た目でもわかるほど太くたくましいものに変化します。これは日々のトレーニングによって、筋肉の構造自体が変化した結果です。つまり、「鍛える」とは「構造を変える」ということなのです。

でも、神経の構造を変えることなどできるのか、と疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。神経の構造を変えられるのはセロトニン神経など、限られた神経だけなのです。そういう意味でも、セロトニン神経は特殊な神経といえるでしょう。

セロトニン神経が構造を変えることができるのは、「自己点検」の回路を持っているからだと考えられます。構造を変化させるうえで重要なのが、自己点検回路の中の「自己受容体」です。セロトニン神経は、この自己受容体に結合するセロトニンの量を感知することで、「そんなに出さなくていいな」とか「もっと出さなきや」という判断をし、インパルスの頻度を調節しています。

この回路があるからこそ、セロトニン神経はドーパミン神経やノルアドレナリン神経のように暴走することがないのです。でも暴走しないということは、別の見方をすれば、せっかくセロトニンの量を増やそうと刺激を与えても、簡単には増やすことができないということです。増えると自己抑制機能が働いてしまい、すぐにまた放出量を少なくしてしまうからです。

ではどうすればいいのでしょう。すぐに増えなくても、多く出すように働きかけ続けるのです。筋肉を鍛える場合も、すぐには変化しません。毎日根気よくトレーニングを続けることで、筋肉は構造を変えていきます。セロトニン神経の場合も同じです。

すぐには変化してくれませんが、毎日セロトニン神経を活性化させ続けていると、構造自体が変化し、セロトニンの放出量が多くなるのです。どのように構造が変化するのかというと、セロトニン神経を活性化させ続けていると、まず自己受容体の数がだんだんと減っていくのです。

自己受容体の数が減ると、セロトニン神経が感知するセロトニン量が減るので、抑制が弱まります。こうして抑制機能が弱まることで、セロトニンの放出量そのものが増えていくのです。実は、この自己受容体というのは、タンパク質でできているのですが、タンパク質をつくる命令は、遺伝子から出ています。つまり、自己受容体の数が減るということは、それをつくらせている「遺伝子が変わる」ということなのです。

すべては最初の「3ヶ月」で決まる

同じ状況を繰り返し続けることで、遺伝子のスイッチが切り換わり、セロトニン神経の構造が変化します。では、どのぐらいの期間やり続ければ変化するのでしょう。3ヶ月間、セロトニンを増やすための「セロトニントレーニング」を続けると、セロトニン神経の構造が変化し始めます。

そして6ヶ月ほどたつと、かなりよい状態にまで変化します。しかし、トレーニングを繰り返すことによって遺伝子構造が変わるということは、セロトニン神経を弱らせるような生活習慣を続けてしまえば、悪い方に構造が変化してしまうということでもあります。この場合も、やはり3ヶ月ほどで弱った状態が固定されていきます。ですから、セロトニン神経を鍛えるトレーニングは、よくなったからと、そこで終わりにするのではなく、生活の一部としてずっと続けていくことが効果的なのです。
でもまずは3ヶ月間を目指してください。それだけでこれまでの生活を確実によくできるのです。そのためにも最初の3ヶ月間だけは、休まず頑張ってトレーニングを続けることが何よりも大切です。なぜなら、最初の3ヶ月感を続けることが、実は最も難しいことだからです。

トレーニングを始めた当初は、必ず少し調子が悪くなります。なぜせっかくよくなるための努力をしているのに調子が悪くなるのか、きちんと知っておかないと、トレーニングをしたために調子が悪くなったのだと思い、トレーニングを続けるのが嫌になってしまいます。
トレーニングを始めて症状が悪化しても、それはセロトニンがちゃんと増え始めた証拠だと思ってください。なぜならその不調は、セロトニンが増えたため、自己点検回路が働き、セロトニンが抑制されたことによって生じたものだからです。

もちろん、この不調は一時的なものです。そのままトレーニングを続けていれば、今度は自己受容体が減少し、恒常的にセロトニン放出量が増えていきます。そうなれば、それまでの不調は消え、心身ともに元気が出てきます。最初の3ヶ月間さえ続けることができれば、後はどんどん調子がよくなっていくのを実感できるようになるでしょう。

「冬季うつ病」の治療法とは

ここからはいよいよセロトニン神経を活性化させるための具体的な方法をご紹介していきましょう。セロトニン神経を活性化させるものは、主に2つあります。1つは「太陽の光」、もう1つは「リズム運動」です。

まずは、「太陽の光」の方からお話ししましょう。みなさんは「冬季うつ病」という病気をご存じでしょうか?文字通り冬になると発病するうつ病なのですが、これは北欧など、冬に極端に日照時間が短くなる地域に多く見られる病気です。

この治療には、冬でも比較的日照時間が長く暖かな地域への転地療法が効果的です。

たとえば、北欧で冬季うつ病になった人を、南イタリアの太陽が燦々と輝くところへ連れていくのです。すると、それだけでこの病気は回復してしまいます。それは、この病気の原因が「日照不足」にあるからです。私たちの生命活動には、私たちが思っている以上に太陽光が密接に関係しています。

たとえば、私たちはものを見るとき、光を必要とします。「見る」ということは、光によって媒介される映像が網膜から入り、視神経を経て、最終的には大脳皮質の視覚野で映像として認識されるということだからで影響を与えています。

私たちの身体は地球の自転に合わせ、約24時間サイクルで変動する「生体時計」を持っていますが、この生体夏時計のズレを修正してくれているのも太陽の光です。
脳は、日没とともに、自律神経を副交感神経優位に切り換え、生体の活動レベルを下げ、エネルギーを蓄積する冬ように司令を出します。そして、太陽の光を受けると、自律神経を交感神経優位に切り換え、活動レベルを上げるように司令を出します。

海外旅行へ行くと、時差ボケに苦しむ人が少なくありませんが、これは生す。網膜から入ってきた「光」の信号は、「見る」以外にも、脳のさまざまなところに体時計の周期と、光による調節作用の間に生じた大きな「ギャップ」によって起きる不調です。

同じように、網膜から入った光信号の影響を直接受けるのが、セロトニン神経です。セロトニン神経は、覚醒と睡眠によってインパルスの頻度を変えますが、このスイッチングに影響を与えているのが光信号なのです。網膜から入った太陽の光が信号として達することによって、セロトニン神経は興奮し、インパルスの頻度を上げ、脳の覚醒状態を演出する、ということです。おもしろいのが、このようにセロトニン神経を興奮させる光信号は、「太陽の光」でなければダメだということです。

最近は、冬季うつ病の治療には、必ずしも太陽の光でなくても、2500~3500ルクスという太陽光と同じ程度の強さの光であれば、その効果が確認されています。
ですから、正しくは、「太陽の光のような強い光」がセロトニンを興奮させるということです。冬になると、どうも気持ちが落ち込みやすいという人や、雨や曇りが続くと気分がうつうつとしてくるという人は多いと思いますが、これは日照不足からセロトニン神経の機能が低下し、その結果、脳内のセロトニン濃度が低くなったことによって軽いうつ状態が生じているのです。
ちなみにうつ病には必ずきっかけとなる出来事があります。
うつ病になったきっかけ(私の体験談)

規則正しい生活とは

「規則正しい生活」といったとき、多くの人は自分の生活のリズムを、時計に合わせようとしていますが、実は、時間そのものに意味はありません。しかし、私たちは、規則正しい生活が、心身によいことを知っています。

うつ病の治療でも、必ず「規則正しい生活をしてくださいね」と医師は言います。そして朝7時に起きて、8時に朝食をとって、12時に昼食をとって、午後5時には仕事を終えて、夜7時には夕食をとって、11時には寝る、という生活を送るようになります。しかし、医師は決してそういうつもりで、「規則正しい生活」と言っているわけではないと思います。

確かに時間は目安になりますが、時間そのものに意味があるわけではありません。大切なのは脳に刺激を与える「太陽の光」なのです。私たち人間は、それこそ何百万年という長い年月をかけて進化し、身体をつくり上げてきました。身体に備わっているさまざまな機能も、それを動かすシステムも、その長い年月の間につくり上げられたものです。

そして、自律神経の交替サイクルや、脳の覚醒と睡眠のサイクルといった生存にとても重要な機能のスイッチングが光信号によってなされているというのは、人間が長い間、太陽のサイクルを自らの生活のサイクルにしてきたことを意味しています。

事実、ほんの百年ほど前まで、ほとんどの人は太陽とともに起き、太陽が沈むと休むという生活をずっと続けてきていました。不規則な生活や、昼夜逆転の生活が可能になったのは、電灯の普及によって、「夜でも明るい世界」が生まれてからなのです。それまではどんなに仕事が忙しくても、夜になったら暗くなってしまうのですから仕事などできません。寝るしかなかったのです。

でも今は、人工的な明かりによって、しようと思えば仕事ができてしまいます。私たちを取り巻く環境は変わっても、長い年月をかけてつくられた身体のシステムは簡単には変わりません。私たちの身体は、今も太陽の光とともに活動して、太陽が沈んだら休むことを前提に、すべての機能が整っています。

ですから、うつ病やキレやすいといった現代社会ならではの生活習慣病の改善のために規則正しい生活を心がける場合は、太陽の光を取り入れることを第一に心がけることが大切なのです。まず、朝起きたら、カーテンや雨戸を開けて、朝の日の光を部屋いっぱいに取り込みましょう。通勤・通学をしている人なら、なるべく日の当たる場所を選んで歩く、通勤の必要のない人は、太陽の光を感じながらウォーキングやジョギングをするといいでしょう。

セロトニンは朝につくられるので、朝の太陽光を浴びることが、セロトニン活性には最も効果的なのです。太陽光を浴びる時間は短時間で充分です。あまり長時間光刺激を受けてしまうと、かえってセロトニン神経の自己抑制機能が働いてしまうからです。

最も効果的にセロトニンを活性化させるのは、太陽の光を30分程度浴びることです。そして、いくら光刺激が必要だといっても、直接太陽を見るようなことは、網膜を傷めてしまうので絶村にしないように気をつけてください。太陽の光の降り注ぐ場所で景色を眺めるだけで、セロトニン神経は充分に活性化します。朝、部屋の中に陽光をたっぷり取り込み、家の近くを少し散歩する。
または、通勤通学のときになるべく日の当たる場所を選んで座ったり歩いたりする。特別なことをしなくてもそれだけで、太陽の恩恵は充分に得られるので、ぜひ毎日の生活に取れ入れてください。

セロトニンは不眠症も解決する

私たちの脳は自前の「睡眠薬」を持っていて、夜になるとちゃんとその睡眠薬を出すことで健やかな眠りについています。その睡眠薬というのが、脳の中の松果体という部分から分泌される「メラトニン」というホルモンです。

そして、メラトニンが出る条件は何かというと、太陽が沈み、「暗くなる」ということなのです。ですから夜になっても寝られないという人は、このメラトニンが不足していることが原因で不眠になっているのです。そして、このメラトニンの材料となっているのが、実はセロトニンなのです。

うつ病の人やストレスの多い生活を送る人は、不眠を訴えることが多いのですが、これもセロトニン不足から説明ができます。つまり、日中にセロトニンがきちんとつくられていないと、夜になっても充分なメラトニンがつくれず不眠になってしまう、というわけです。

日中に身体を使ってよく遊んだ子供は、夜になるとぐっすり眠りますが、これも、日中身体を使ったことでセロトニンがたくさんつくられているからです。セロトニンとメラトニンの関係が明らかになる以前は、睡眠薬が処方されることが多かった不眠外来でも、最近では生活習慣を聞き、セロトニン不足が原因だと判断した場合は、薬に頼らず、「寝られなかったら、朝早くからウォーキングをしてください」と指導します。そうして日中にセロトニン神経を活性化させておけば、夜は電気を消しさえすればたっぷりメラトニンが出て安眠できるからです。

このメラトニン、きちんと分泌されると、実は安眠の他にもよいことがもう1つあるのです。それはアンチエイジングの効果です。メラトニンは抗酸化物質の1つで、夜ぐっすり眠らせてくれると同時に、日中活動している間に発生してしまった悪玉物質「活性酸素」を処理してくれるのです。日本やヨーロッパ諸国ではメラトニンは医薬品ですが、そのアンチエイジングの効果の高さから、アメリカではメラトニンがサプリメントとして販売されています。

メラトニンは化学的に合成することも可能ですが、やはり最も安全なのは、自分の脳がつくるメラトニンです。メラトニンの豊富な睡眠をとるために心がけていただきたいのは、まずは日中に太陽の光やリズム運動によってしっかりとセロトニン神経を活性化させておくこと。
そしてもう1つ。夜、太陽が沈んでいる間に睡眠をとるということです。徹夜で仕事をして朝になってから寝る人がいますが、これはメラトニンの分泌を考えるなら、最悪の睡眠です。なぜなら、太陽が昇ってからではいくら寝てもメラトニンは分泌されないからです。

つまり、体の疲れはとれるかもしれませんが、アンチエイジングの効果はまったくないということです。ですから、深夜勤務があり不規則な生活を余儀なくされている人や、徹夜仕事が続いている人は、手入れをしても肌荒れがなかなか治らないという人が多いのです。

しかし本当に怖いのは、その肌荒れの奥に潜んでいる活性酸素の存在です。すす私はよく活性酸素を、火を燃やしたときに出る「煤」に例えるのですが、メラトニンが出ない睡眠を続けるということは、体の中の煤掃除が行われず、ずっと煤が溜まっていくということです。煙突の中に煤が溜まると火を燃やしても不完全燃焼を起こしてしまうのと同じで、私たちの身体も活性酸素が溜まると、多くの場所で病気の原因となってしまいます。

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太陽とともに起き、日没とともに眠る。そうした太陽に合わせた規則正しい生活を送ることが、人間が健康で生きるために最もよい生活サイクルなのです。

「ちょっとしたエ夫」でリズム運動を習慣化する方法

これまではセロトニン神経を活性化させるものの1つ、「太陽の光」について詳しく見てきました。しかし、太陽に合わせた生活をすることがよいとわかっていても、現代社会の中で生きる私たちには、さまざまな事情でそれができないことも数多くあります。

また、太陽を充分に浴びたくても、冬になると雪が多く、なかなか太陽が姿を現してくれない地域に住む人もいます。仕事で1日中パソコンと向かい合っているので、セロトニン神経がダメージを受けやすいという人もいるでしょう。
どんな環境にも負けず、日々セロトニン神経を活性化させるためには、太陽に合わひけつせた規則正しい生活を心がけるとともに、セロトニン神経を高めるもう1つの秘訣、「リズム運動」を行う習慣を身につけることが必要です。

たとえ太陽の光を浴びる環境でなくとも、リズム運動を取り入れるだけでストレスは解消され、生活は大きく変わります。リズム運動にはさまざまなものがありますので、ぜひ自分の生活に合ったものを選び、取り入れてほしいと思います。

リズム運動というのは、「一定のリズムを刻みながら身体を動かすこと」なので、人間は、生まれてから死ぬまでずっと、意識をしなくても何らかのかたちで「リズム運動」を行っているといえます。たとえば、産声とともに始まる「呼吸」は、人間が最初に行うリズム運動です。お乳を吸うのも、泣き続けるのも、赤ちゃんにとっては立派なリズム運動です。そして離乳食を食べるようになると、食べものをかむ「阻囁」のリズム運動も加わります。また、ハイハイや歩くことができるようになると、リズム運動の幅はぐっと広がっていきます。

リズム運動は、成長に伴いさらにその種類を増やしていきます。ウォーキング、ジョギング、マラソン、サイクリング、水泳、エアロビクス、スクワット、ダンス等々。リズム運動は一定のリズムを身体が刻みさえすればよいのですから、激しさは必要ありません。

もちろん、座禅に用いられる腹筋を使って、ゆっくりとしたリズムで行う腹式呼吸も、立派なリズム運動です。同様にヨガや太極拳、お経を上げたり念仏を唱えることも呼吸を意識して行うものなので、立派なリズム運動といえます。

たたちょっとユニークなものとしては、ガムをかむことや、太鼓を叩くことも一定のリズムで行えば、リズム運動となり、ちゃんとセロトニン神経を活性化できるのです。セロトニン神経を活性化させるという点では、激しい運動の方がより効果が高いというようなことはありません。ウォーキングもマラソンも、同じようにセロトニン神経を活性化させるので、無理に激しい運動をする必要はないのです。むしろセロトニン神経を鍛えるためのトレーニングでは、無理は禁物です。疲労してしまうとかえって効果が低くなってしまうからです。

幼稚園の園児を対象に、運動とセロトニン神経の活性度について、さまざまなデータを取っていますが、その中にとても興味深いデータがあります。それは、同じセロトニントレーニングを行っても、遠足の翌日はトレーニングをしたことによってかえってセロトニンの数値が下がってしまう子供が多いというものです。

見た目には、園児たちは普段と変わらず元気に運動しているように見えたのですが、やはり身体には前日の遠足による疲労が蓄積されていたのでしょう。それほど大きな下がり幅ではありませんでしたが、平均値でおよそ10~20% 下がってしまったのです。

リズム運動は、最低5分間行えば、脳の中でセロトニン神経が活性化し、セロトニンの放出量が増えることがわかっています。たったの5分です。ですから疲れているときはあまり無理をせず、その日の体調に合わせて5~30分の間で、時間を調節しながら行うようにしてください。リズム運動を行う時間は、長くても30分程度で充分です。長くやったからといって、それだけ多くセロトニンが出るわけではありません。

大切なのは「長時間」行うことではなく、「長期間」続けて行うことです。セロトニン神経は、毎日の生活の中前で、少しずつその機能を低下させてしまいます。ストレスに勝つことのできない人間にとって、それは仕方のないことです。でも、だからこそ毎日セロトニン神経を活性化させて、日々ストレスで下がってしまう初期値をもとに戻すことが大切なのです。

リズム運動自体は何を行ってもいいので、自分で楽しみながら続けられるものを選んでください。これなら一生続けられる、そういうものを選ぶのが理想です。もちろんいくつかの運動を組み合わせて行うというのもいい方法です。

たとえばジョギングを行うと決めていても、雨が降るといきなりテンションが下がってしまいます。そんなときは晴れたらジョギング、雨だったら室内で呼吸法と決めておくと、毎日続けることができます。病気で安静が必要な人や、身体が不自由な人も、呼吸法やガムかみ、歌を歌うなどのリズム運動であれば生活に取り入れることが可能です。

普段の生活の中で行っていることを、ちょっと意識してセロトニン神経を活性化させるために行う。たとえば、朝の通勤時にだらだらと惰性で歩いていたのを、リズムを刻むという意識で歩けば、それだけでも効果はあるのです。ぜひみなさんも、日々の生活の中で、工夫してみてください。

リズム運動の効果を「最大」まで高める方法がある

では、いくつか代表的なリズム運動を取り上げ、どのようなことを意識して行えばセロトニン神経が活性化するのか、具体的に見ていきましょう。

呼吸法

呼吸は生まれてから死ぬまで、絶えず行われているものです。この、普段は無意識に行っている呼吸も、ちょっと意識して行えば、セロトニン神経の活性化につながります。普投の呼吸をトレーニングに変える最大のポイントは、腹筋の収縮を意識して行うということです。

お腹を出したり引っ込めたりして行う呼吸を「腹式呼吸」といいますが、実はこの腹式呼吸には、横隔膜呼吸と腹筋呼吸の2種類があります。実はこの2つ、見た目には似ているのですが、身体の中で使われている筋肉は全然違うのです。
もちろん、その効果も違います。そして、セロトニン神経に活性化をもたらす呼吸法は、腹筋を使って行う腹筋呼吸の方なのです。では、両者の呼吸は何が違うのでしょうか。

まず横隔膜呼吸の方から見てみましょう。「お腹を使って呼吸をしてください」と言ったとき、ほとんどの人は、まずお腹を膨らませながら息を大きく吸い込みます。この、初めに「吸気」から入るのが、横隔膜呼吸です。普段のフラットな状態から、横隔膜を意識的に下げることで肺の容量を広げ、呼吸の量を増やすのが横隔膜呼吸なのです。

横隔膜呼吸で意識するのは吸気、つまり息を吸うときです。めいっばい息を吸い込めば、吐くことは意識しなくても自然と行われます。これに対し腹筋呼吸法は、まずフラットな状態から「呼気」、つまり息を吐くことから始めます。吐いて吐いて、もうこれ以上は吐けないというところまで息を吐くと、吸気は意識しなくても自然と行われます。これが腹筋呼吸法です。例えるなら、バネを引き伸ばしてバッと手を離すようにして行う呼吸が横隔膜呼吸。バネをこれ以上縮まないというところまで圧縮してバッと手を離すように行う呼吸が腹筋呼吸ということです。座禅でもヨガでも太極拳でも、リズム運動に用いられている呼吸法は、すべてこの「呼気」を意識して行う腹筋呼吸法です。意識するのは、「まず呼気から行うこと」それだけなので、慣れてしまえば簡単にできます。この呼吸法は、ウォーキングやサイクリングなど、日常のあらゆる場面に用いることができるので、呼吸法の基本としてしっかりと身につけていただきたいと思います。

座禅

座禅は、深い腹筋呼吸に瞑想を組み合わせたものです。お寺などで行う場合には、足の組み方や、姿勢を維持すること、雑念の祓い方などの指導も行われますが、セロトニン神経活性化のために個人で行う場合には、あまりいろいろなことを意識せず、まずは腹筋呼吸を徹底的に極めるという意識で行うことをおすすめします。

姿勢を気にしても、セロトニン神経が弱っている人は、抗重力筋も弱っているので姿勢を維持することができないからです。姿勢は、セロトニン神経が活性化されれば、抗重力筋が強化され自然とよくなっていきます。座禅のときに行う腹筋呼吸は、無理のない程度で、でもできるだけ吐ききることを意識し、ゆっくりとしたテンポで行うようにします。

禅宗の僧侶など座禅に熟達した人の中には、30秒かけて息を吐き、10秒以上かけて息を吸うという驚異的にゆっくりとした腹筋呼吸ができる人もいますが、これは何十年もの修行の結果です。一般的には12秒ぐらいかけて吐き、8秒ぐらいかけて吸うという1呼吸20秒程度の呼吸を目指すのがいいでしょう。

もちろん最初は20秒で1呼吸も難しいと思います。初めのうちは無理をせず、苦しくならない範囲で、できるだけゆっくりとした腹筋呼吸を心がけるようにしてください。もう1つ、座禅を行う際に注意してほしいのは、目を閉じないことです。座禅では「半眼」といって目を閉じずに行うよう指導されますが、これは脳の働きからみても大きな意味があることなのです。

目を閉じると、心身ともにリラックスしたときに現れる脳波「α波」が出るのですが、これは、α 彼の中でも8~10ヘルツというゆっくりとしたものです。でも、目を開けたまま座禅を行っていると、5分を過ぎたあたりから、目を閉じたときとは異なるα 波が出てきます。これは10~13ヘルツという速いもので、りそうかいラックスと同時に脳が「爽快ですっきりした感覚」になったことを示すものです。実は、この速いα 披こそがクールな覚醒をもたらしているものだったのです。

ウォーキング・ジョギング

一定のリズムで歩けば、セロトニン神経はそれだけで活性化します。でも、あまりだらだら歩いてはいけません。セロトニン神経を活性化させるためには、時速5~6キロ程度のスピードで20~30分程度のウォーキングを行うのがいいでしょう。このとき、腹筋呼吸を併用すると、効果はさらに上がります。ウォーキングの場合は、歩くテンポに合わせることが必要なので、「ハッハッハッ」と腹筋を使いながら3回続けて呼気を行い、次いで「スー」と1回リズミカルに吸気を行うようにしてください。

基本的にはこの呼吸は鼻で行いますが、苦しい場合は口から吐いてもかまいません。でもその場合も吸気は鼻で行うようにしましょう。ジョギングの場合のスピードは、最初は時速八キロぐらい、慣れてきて物足りなくなったら10kgぐらいまでピッチを上げてもいいでしょう。ピッチが速くなると、呼吸量も多くなるので、ウォーキングのときの「3呼1吸式」を「2呼2二吸式」、つまり「ハッハッ、スースー」と、2回吐いて2回吸う呼吸にすると、リズムにも乗りながら楽に呼吸ができるようになります。

咀嚼

ものをかむことがリズム運動になるなんて、と思うかもしれませんが、これも意識して行えば、ちゃんとセロトニン神経を活性化させてくれます。朝ご飯を抜いた子供は、朝ご飯をきちんと食べた子供と比べて、午前中の授業に対する集中力が低いといいますが、これは朝ご飯を食べるときの岨噂によって、セロトニン神経を活性化させたか、させていないかの違いでもあるのです。

ガムも一定のリズムでかめば、セロトニン神経を活性化させることができるので、忙しい人にも手軽にできるリズム運動といえます。ただ、リズム運動は同時に言語脳を使ってしまうと効果が下がるので、あまりいろいろなことを考えながら行うのではなく、ある程度「かむこと」に集中して行った方が効果は高くなります。
楽しみながら気持ちよく食べると栄養吸収もアップする

言語脳とは、言葉をしゃべったり、本を読んだり文章を書いたりするときに働く場所です。テレビや映画を見るのも、言葉を聞き理解することが必要なので言語脳が働きます。ですから、リズム運動をするときは、こうしたことをしながら行うのは避けなければなりません。映画やテレビを見ながらのリズム運動はよくありませんが、リズミカルな音楽を聴きながら行うのは、集中力が増すので効果が高まります。

リズム運動は、上手に組み合わせると、相乗効果が望めます。たとえば、朝のさわやかな陽光の中でリズム運動を行ったり、ウォーキングに呼吸法を合わせたり、リズミカルな音楽を聴きながらジョギングをしたり。どれも単独で行うより高い効果が表れます。
上手に組み合わせて、無理なく楽しみながらストレスに強い身体づくりを工夫してみてください。

セロトニン神経の達人になれば「できる」人になれる

毎日ハードなスケジュールで忙しく仕事をしているのに、心身ともにいつも元気な人はいます。普通の人よりも多くのストレスを受けているはずなのに、そんな様子はまったく見せないのです。
芸能界で活躍している人、経済界で活躍している人、スポーツ選手。そういう人たちの生活習慣を聞くと、みんな何らかのかたちでリズム運動を上手に日常に取り入れていることがわかります。

80歳を過ぎても舞台で主役を務めている森光子さんが毎日スクワットを行っていることは有名ですが、あれも典型的なリズム運動の1つです。

故人ですが、楽壇の帝王と呼ばれた世界的な指揮者カラヤンは、指揮をする前に必ずヨガを行っていたといいます。会社の経営者やエグゼクティブと呼ばれるビジネスマン、政治家や医者など、ストレスの多い世界で活躍している人の多くも、朝ジョギングをしたりジムへ通っていたりします。中には座禅や瞑想を習慣にしているという人も珍しくはありません。こういう人たちに「お忙しいのに、よく続きますね」と言うと、ほとんどの人が「やっていると、調子がいいからね」と答えます。

セロトニン神経の活性化の恩恵を、彼らは自分の身体で実感しているのです。スポーツ選手は基本的に日々身体を動かしているので、セロトニン神経が活性化している人が多いのですが、その中でも飛び抜けてよい成績を残しているイチロー選手は、まさにセロトニンの達人といっても過言ではないと思います。イチロー選手を見ていると、守備につくまでのランニングや守備位置についてからの身体の動かし方など、絶えずリズミカルに動いています。

どんな世界でも第一線で活躍している人は、人前では言わなくても、みんな自分なりのやり方でリズム運動を生活の中に取り入れているということです。セロトニンを高める秘訣は「太陽の光」と「リズム運動」。決して難しいことではありませんので、ぜひ今からでも実践してみてください。それだけで、身体的ストレス、さらには人間特有の「脳ストレス」にも確実に強くなれるのです。

快眠ぐっすり酵素「セロトアルファ」

5つの厳選された成分が凝縮されており「幸せ成分」が安眠効果を発揮します。

  1. 大麦発酵酵素
    日本酒を発酵させる際に使われ、大麦を麹で発酵させた物質を体内で効率よく吸収できるよう研究開発を重ね大麦発酵酵素の製品化に成功。
  2. ビフィズス菌
    脳は第2の脳と言われています。善玉菌、悪玉菌をバランスよく機能させることで健康な状態を維持することできます。セロトアルファにはビフィズス菌BB536が含まれ、他のビフィズス菌に比べて酸や酵素に強く、生きたまま腸に到達すること出来ます。
  3. 各種アミノ酸
    最近、話題のアミノ酸の一種であるグリシンをバランス良く配合させています。自律神経の調整に不可欠です。
  4. 焼成カルシウム
    牡蠣の殻を特殊製法で微粉末にした「焼成カルシウム」は長時間にわたり酸化還元作用が確認されています。

成分表

原材料名
発酵大麦エキス末(発酵大麦エキス、デキストリン)、焼成カルシウム、 ビフィズス菌(乳成分を含む)
PMC、加工澱粉、グリシン、トレハロース、ステアリン酸カルシウム、フェルラ酸、パントテン酸カルシウム、着色料(カラメル)、二酸化ケイ素
内容量
34.6g【1粒重量385mg(1粒内容量300mg)×90粒】
保存方法
直射日光を避け、風通しがよく湿気の少ない場所に保管してください
発売元
アイシー製薬株式会社
東京都大田区蒲田5-29-3 酒巻ビル9F
うつ・不眠でお悩みなら。全く新しいサプリ【セロトアルファ】
栄養成分表示
栄養成分表示【3粒(1.15g)あたり】
エネルギー 4.33kcal たんぱく質 0.28g 脂質 0.05g 炭水化物 0.70g ナトリウム 2.47mg(食塩相当量 0.01.g)

ストレスを感じているのは脳

まずはストレスに負ける

私たちは、日々さまざまなストレスを感じながら生活しています。言い換えれば、生きている限り、ストレスから逃れることは不可能です。サラリーマンもフリーターも、主婦も学生も、お年寄りも、みんなそれぞれの生活の中でストレスを感じています。ある人にストレスになっていることでもある人にはストレスでない場合もあります。

これに例外はありません。ストレスというと、私たちはすぐに仕事のプレッシャーや人間関係のトラブルなどかゆ精神的なものをイメージしがちですが、痛みや痺み、寝不足や疲労、空腹やのどの渇き、暑さや寒さなどもストレスです。

私たちの脳は、心身が不快に感じることはすべて、「ストレス」と認識するのです。つまり、毎日仕事が忙しい人や悩みを抱えている人はもちろん、ストレスとは無縁のようなお気楽な人も、誰もが羨むような幸せで満ち足りた生活を送っている人も、人はみな生きているだけで、何らかのストレスを感じているということです。

では、なくすことができない、逃れることができないこのストレスと、私たちはどのようにつきあっていけばいいのでしょう。この間題に、世界で最初に取り組んだのが、仏教の開祖であるお釈迦さまでした。お釈迦さまは、生きることは「苦」だと言って、悟りをひらきました。

この「苦」を文字通り「苦しみ」と解釈してしまうと、人生が苦しいだけのものに思えて厭世的な気分になってしまいますが、「苦」とは、「ストレス」のことだと考ええんせいれば、納得がいきます。人生は「苦=ストレス」だと知ったお釈迦さまは、出家してさまざまな苦行を行っています。

そして六年後、苦行で人は救われないとして苦行をやめ、菩提樹の木の下で静かに座禅をし、悟りに至ります。でも、お釈迦さまはなぜ六年も苦行をしたのでしょう。私は、この六年間、お釈迦さまはストレスと徹底的に戦ったのではないかと思っています。自分の体を使った壮大な「ストレス実験」です。おそらく、自分の肉体を徹底的にいじめ抜くことで、人間に秘められたストレスを像を絶するようなストレスを味わうことで、ストレスに対する「免疫」をつけようと考えたのだと思います。

でも、残念ながら、結果は完敗でした。人間にそんな力はなかったのです。どんなに頑張っても、人はストレスに打ち勝つことはできない。これが六年間苦行を積んだお釈迦さまの結論だったのです。ただ、お釈迦さまのすばらしいところは、それだけでは決して終わらなかったことです。

実はこのとき、お釈迦さまはもう1つ、とても大切なことを悟ります。それは、どんな「苦=ストレス」も永遠には続かないということでした。仏教でいう「諸行無常」ですね。すべてのものは変化し変わらぬものは何もない、というのは、ストレスにも当てはまるのです。

たとえば、タンスの角に足の小指を引っかけたとき、その瞬間はとても激しい痛みを感じます。でも、その痛みは一瞬のもので、時間の経過とともに少しずつ軽減され、やがて消えていきます。いずれ消えてしまうものなら、無理にそれと戦うのではなく、ストレスにじっと寄り添って消えるのを待とう。これがお釈迦さまの到達した境地でした。

ずいぶん消極的だと思うかもしれませんが、これが六年間もストレスに真正面からしんし向き合った結論なのですから、私たちは実勢に受け止めなければなりません。ストレスを受けたときに、しっかりと対応できる人と押しっぶされてしまう人がいますが、その最も大きな違いは、「ストレスには勝てない」と気づくこと、たったそれだけなのです。そして、それに気づいた人こそ、ストレスを「受け流す」ことのできる人となるのです。

海底数千メートルにおけるストレス

当時、スキューバダイビングをしていた頃、とある研究の一環としてテストダイバーの役をかって出たのです。模擬実験とはいえ、内容は海底3000 メートルの場所で3週間過ごすというものでした。そしてこの体験が、私にとって、大きな転機となったのです。

生きていくことは「苦= ストレス」であり、ストレスに対してはただそれが消えるまでじっと寄り添って消えるのを待つことしかできません。厳しい現実ですが、この現実を受け入れないと、ストレスとの上手なつきあいは始まらないと考えるようになりました。

これは、何も私がお釈迦さまのことだけから判断しているわけではありません。実は、私自身も、ストレスに押しっぶされるような日々を経験して気づいたことでした。その中でも、海底3000メートルで過ごした3週間は、今も忘れられません。

3週間といっても実際に海底にいたのは1週間で、海底まで行くのに1日、そして海底から地上に戻るまでに2週間かかります。これは地上まで一気に戻ってしまうと、水圧の違いから「潜水病」になってしまうからです。海底の暮らしは1週間とはいえ、想像していたよりもずっと過酷で、とても人が住めるような環境ではありませんでした。

室温が1度がるだけで汗がびっしょりになり、室温が1度下がるだけで今度は震えるほど寒くなるのです。食事は地上で料理したものを「圧縮」してタンクから運ばれましたが、何を食べても「歯にくっつくような感じ」がして、とても食べた気持ちにはなれません。

吸っている空気も地上のものとは明らかに異なっているため、少なからず、確実に、たストレスは溜まっていきました。1間がたち、2週間、3週間と、本当に長い時間が過ぎ、ようやく地上に出たときには、心身は疲弊しきって鼻血が出ていることにも気づかない始末でした。

海底に潜ったときには、「人間は海底というストレスフルな環境にも住めるかもしれない」という可能性を信じていたのですが、そんな思いはすぐに消え去りました。そして、「人間は人間でしかない。ストレスには勝てないし、いくらストレスを経験しても、免疫力がつくわけでもない」ということを痛感したのです。その経験があるからこそ、今はストレスを受け流して生きているように思います。みなさんの中には「ストレスには勝てない」という現実を実感できない人もいるかもしれません。しかし、わざわざストレスに立ち向かうことは、決しておすすめいたしません。負けるだけです。私は40年近くたった今でも、あのときのことを思い出してしまいますが、そのたびごとに思うのは、「死ななくてよかった」、ただそれだけです。

ラットは死を選ぶ

ストレスはやがて消えると言いましたが、現実には、身近な人との人間関係や職場のストレス、病気による痛みなど、なかなか消えてくれないストレスもたくさんあります。もし、ストレスが長く続いたら、生き物はどうなってしまうのでしょう。

20世紀の初頭、この間題に取り組んだハンス・セリエというカナダの免疫学者がいます。彼はラットを使った実験で、さまざまなストレスが生き物にどのような反応を引き起こすのか検証しました。
彼がこの実験を行ったのは、まだ「ストレス」という言葉が認知される以前のことでした。実はストレスという言葉は、セリエの提唱した「ストレス学説」によって初めて認知されるようになったものなのです。

彼はもともとホルモンの研究をしていたのですが、その中で、生物が刺激の種警問わず、不快な刺激を受け続けると、ある共通のホルモンを出すことを発見しました。

実は、このホルモンこそ、現在「ストレスホルモン」といわれているものなのです。ストレスを感じると、生体はストレスホルモンを出します。では、ストレスが繰り返され(あるいは長時間続き)、ストレスホルモンがずっと出続けたら、その生き物はどうなってしまうのでしょう。セリエはラットにさまざまなストレスを加え続けることで、それを調べたのです。

  1. 雪の降る寒い冬の夜に、ラットを入れたゲージを屋上に置きっばなしにする。
  2. 一定の間隔でラットに電気刺激を与え続ける。
  3. ラットを強制的に泳がせ続ける。
  4. 板にラットを磔にしておく

結果はどれも同じでした。ラットは死んでしまうのです。ストレスが与えられた当初は、どの実験でもラットは激しく抵抗します。何とかしてストレス状態から脱しようとするのです。しかし、どんなに抵抗してももがいても、ストレス状態から脱することができないとわかると、ラットはやがて何もしなくなります。

何もせずに、ただじっとストレスに耐えるのです。強制的にラットを泳がせ続ける実験では、最初ラットは出口を求めて必死に泳ぎます。ときには水の中に潜ってまで出口を探します。でも、しばらくすると泳ぐのをやめ、エネルギーの消耗を防ぐため、じつと動かなくなります。

そうして、状況が好転し、逃げられるようになるのをじっと待ち続けるのです。もちろん、この状態でもストレスから解放されれば助かりますが、ストレスが続けば、やがて死に至ります。調べてみると、ストレスが加わってから死に至るまでの間に、実験の種類にかかわらず、すべてのラット体に、「胃潰瘍」「胸腺・リンパ腺の萎縮による免疫力の低下」「副腎皮質の肥大」というまったく同じ3つの反応が生じていたことがわかりました。

これが後に「セリエのストレス三兆候」としてまとめられる、生体がストレスを受けたときに生じるストレス反応です。この三兆候は、人間においてもまったく同じことが起きることがわかっています。よくストレスで胃潰瘍になるといわれますが、ストレスが続けばどんな健康的な人でもそうなるのです。

心と体でストレスの流れは異なる

セリエの実験によって、ストレス状態が長期間続くと、生体はやがて死んでしまうことがわかりました。そしてその際、「胃潰瘍」「胸腺・リンパ腺の萎縮による免疫力の低下」「副腎皮質の肥大」といった、さまざまなダメージを身体にもたらすこともわかりました。

では、なぜストレス状態が続くと、副腎皮質が膨れてストレスホルモンが出るのでしょう。調べていくと、脳の下垂体というところから、ACTHという副腎皮質を刺激するホルモンが出ていることがわかりました。

では、なぜ下垂体がそうしたホルモンを出すのでしょうか。身体の中で起きる反応を遡って調べていくことで、ストレスによって身体が病気になっていくメカニズムが次第に明らかになっていきました。今では身体的ストレスが加わったとき、身体の中のどこでどのような反応が起き、最終的にどういった病気になるのかという「ストレス経路」がわかっています。

これにより、今までは曖昧だったストレスと痛気の関係が明らかになりました。身体が最も強く反応する身体的なストレスは「痛み」です。痛みは「情報」として、身体の中に張りめぐらされた神経を通って、まず脳の視床、そこから、大脳皮質あるいは大脳辺緑系を介して、ストレス中枢である視床下部・室傍核に行きます。

情報を受け取った室傍核は、CRHという副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを出します。ちょっとややこしい名称ですが、「副腎皮質を刺激するホルモン」を出せと命令するホルモンを出すということです。このホルモンが下垂体を刺激し、ACTHという副腎皮質刺激ホルモンを出します。そして、このホルモンが副腎皮質を刺激することによって、副腎皮質の肥大とストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が起きるのです。

この副腎皮質ホルモン「コルチゾール」の大量分泌が、高血圧や糖尿病を引き起こし、病気をつくり出していくのです。一方で、副腎皮質ホルモンというのは、薬にも用いられる物質です。皮膚科で火傷やアトピー性皮膚炎の治療に用いられる「ステロイド」も副腎皮質ホルモンです。

つまり、副腎皮質ホルモンは、身体には必要な物質なのですが、出すぎると高血圧や糖尿病、骨をもろくするなど、かえって身体に悪影響を及ぼしてしまうのです。身体的ストレスが、こうした「ストレス経路」をたどることによって、私たちの身体に病気をもたらすことがわかりました。

しかし、ストレスによって生じるのは、もちろん身体の病気だけではありません、ストレスによって精神的な病気が起きることも私たちは経験的に知っています。特に最近、社会問題にまで発展するほど急増している「うつ病」などは、ストレスがその大きな原因の1つだといわれています。

しかし、ストレスホルモンが出る経路では、うつ痛の発生を説明することはできません。多くの研究家が最初は、ACTHやコルチゾールといったホルモンが、うつ病に関係する神経に何らかの影響を与えているのではないかと予測して調べを続けていたのですが、いくら調べても、この予測を裏付けるデータは出てきませんでした。

いったい、ストレスはどのような経路をたどって、うつ病を引き起こしているのでしょう。これは近年になってわかってきたことですが、実はストレスが精神に影響を与える経路は、身体への影響経路とはまったく別にあったのです。

スタートが脳の中の視床下部であることは同じですが、精神への経路はそこから下垂体へは行かず、直接脳の中の脳幹部分、具体的に言えば「縫線核」という部分に影響を与えていたのです。つまりストレス経路には、視床下部から下垂体へ行く「身体的ストレス経路」と、視床下部から脳幹・縫線核へ行く「精神的ストレス経路」という2つのストレス経路があったのです。

脳幹というのは、脳の中でも最も深い部分に位置し、人間の生命維持にかかわる働きを担っている部分です。その脳幹のほぼ真ん中に位置する縫線核は、うつ病やパニック障害など、精神的な病気と深いかかわりを持つ「セロトニン」という神経伝達物質を出すセロトニン神経のある場所です。

視床下部から縫線核にストレス情報が伝わることによって、セロトニン 神経の働きが阻害されます。そしてうつ病やパニック障害といった精神的な病気が生じていたことがわかったのです。セロトニン神経というのは、セロトニンという物質を使って情報を伝達している神経ということです。

これこそがストレスに立ち向かうための「特効薬」なのです。ここではセロトニン神経の働きが弱くなると、精神的な病気を引き起こしてしまう、ということだけ覚えておいてください。ここで注目すべき点は、精神的ストレスの正体は、「神経伝達物質を通して脳が感じるストレス」だったということです。

精神的ストレスの経路がわかったことにより、そのストレスを抑制するための機能もわかってきたのです。それでも「精神的ストレス」という名称のために、どんなストレスなのか具体的によくわからない、治療法も人それぞれではないか、という印象が少なからずあるように思います。

そのため、私は副腎皮質を経由する身体的ストレスに対して、精神的ストレスのことを「脳ストレス」と呼んでいます。精神的ストレスは、脳が感じるストレスであるということ、そしてそのストレスをコントロールする機能が確かにあるということを、少しでも理解してほしいという思いから命名いたしました。「脳ストレス」という言葉が、もしみなさんの口から自然に出てくるようになれば、それは、精神的なストレスを解消するための第一歩を踏み出しているということに他なりません。

動物もうつになる

身体的ストレスについてはお話ししましたが、もう1一つのストレス、「脳ストレス(精神的ストレス)」に対しては、私たちの身体はいったいどのような反応をするのでしょうか。実は、脳ストレスに対しても、生体は、身体的ストレスとまったく同じ影響を受けることがわかっています。

つまり、身体的ストレスでいうところの「高血圧」や「糖尿病」といった症状が表れるのです。このことがわかったのも、セリエによるラットの実験のおかげでした。よく精神的なストレスは、人間だけが感じるもののようにいわれていますが、それは違います。ラットのような小動物も、精神的なストレスは感じているのです。

それは、次のような実験によって立証されました。まず、2匹のラットをそれぞれ別々のゲージに入れ、ゲージを並べた状態で、片方のラットだけに電気刺激という身体的ストレスを与えます。つまり、身体的ストレスを与えられるのは、

一方のラットだけで、もう一方のラットは、身体的刺激は何も受けません。でも、すぐ隣のゲージでは、電気刺激を受けているラットが悲鳴を上げ、脱糞するという大変な状態を繰り広げています。もう一方のラットは、それをずっと見せられ、カ悲鳴を聞かされ、漏らした糞尿の臭いを喚がされ続けるのです。

人間だったら、これは耐えられない精神的ストレスです。それは、ラットも同じでした。つまり、何も身体的刺激を受けていなくても、そうした環境に置かれただけで、ラットは実際に身体的ストレスを加えられたときとまったく同じように、ストレス経路が動き出していたのです。ただし、この実験でわかったのは、動物も精神的ストレスを感じ、それによって身体的ストレスを感じたときと同じように病気になり、ひどいときには死に至ることもあるということだけです。精神的ストレス回路については、脳の働きを調べることによって最近わかってきたことなので、脳の構造の違う動物を使った実験では、きちんと証明することはできなも感じられるものの他に、「脳を発達させた人間だからこそ感じるストレス」というものもあるので簡単には証明できないのです。

それに、言で精神的ストレスと言っても、人間の場合は、ラットのような動物にも感じられるものの他に、「脳を発達させた人間だからこそ感じるストレス」というものもあるので簡単には証明できないのです。ただ、身体的、精神的、いずれのストレスでも、それが肉体的、精神的病気の引き金になっている、このことは疑いようのない事実なのです。

人間の2大ストレスは「依存症」と「逆恨み」

人間ならではのストレスとは、いったいどのようなものがあるのでしょうか。私は、特徴的なものとして次の2つがあると考えています。

  1. 快が得られなくなることによって生じるストレス
  2. 自分が相手のためにと思ってしていることが、正当に評価されないことによって生じるストレス

まず1つ目の「快が得られなくなるストレス」ですが、これは人間にとってよくあるストレスであり、かつ、とても大きなストレスです。たとえば、パチンコで大当たりして玉がたくさん出るのは、気持ちのいいものです。つまり、「快」ですね。ところが、どんな大当たりでも玉が永遠に出続けることはありません。いずれ玉は出なくなります。すると、それまで大きな快を得ていただけに、玉が出ないことが「不快」つまり「ストレス」になってしまうのです。思い出してください。

お釈迦さまは、ストレスは永遠に続かないと「無常」を曹ました。しかし、それは同時に「快」も永遠には続かないということでもあるのです。ストレスの場合は、なくなれば楽になるのでまだいいのですが、快の場合は、なくなるとそれが「ストレス(不快)」になってしまいます。

アルコールという「快」を得すぎたために、アルコールがないとイライラしてしまう人1 。そのストレスの大きさは計り知れません。性や暴力の快に没頭する人もいれば、インターネットやゲーム、買い物に没頭する人もよく耳にします。
アルコール依存症についてはこちら。

これが厄介なのです。なぜ厄介かというと、失った快を求める気持ちが強くなりすぎると、「依存症」という病気になってしまうからです。失った快に執着しすぎ、心のコントロールが効かなくなった状態、それが「依存症」です。そして、これは誰もがなりうることなのです。

なぜ?私をほめてくれないの?

もう1つの「自分が相手のためにと思ってしていることが、正当に評価されないことによって生じるストレス」もなかなか厄介なストレスです。なぜなら、これは自分1人では解決するのが難しいストレスだからです。しかも、程度の差こそあれ、このストレスはほとんどの人が経験しているものです。

たとえば、毎日家族のことを思って家事をしているのに、「ありがとう」の一言も言ってもらえない主婦。上司やクライアントのために徹夜までして仕事をしたのに、評価してもらえなかったサラリーマン。また、一生懸命勉強しているのに、もっともっとと言われてしまう受験生。恋人のことを考えて選んだプレゼントを、気に入って3 6もらえなかった彼(彼女)みんなこの「正当に評価されない」というス.トレスを感じています。ただ、自己評価と他者評価の間にギャップが生じるのは、ある意味仕方のないことなのです。

必ずしも自分が悪いわけでも、相手が悪いわけでもありません。ここをはき違えることで、つい、「逆恨み」のような言い争いに発展してしまうのです。だからこそ、解決することが難しいのでしょう。私は、お釈迦さまは偉大なストレス研究家だと思っているのですが、そのお釈迦さまは、弟子に「苦は3つある」と教えています。

それは、

  1. 痛みのような単純な苦
  2. 快が満たされない苦
  3. 他者に認められない苦

の3つ。まさに身体的ストレスと、人間ならではの脳ストレスの2つを見事に指摘していたのです。でも、お釈迦さまがすでにこうしたストレスを指摘していたということは、考えてみれば、人間は当時から約2500年もの間ずっと、同じストレスに悩まされ、結局何1つ克服できずにいるということでもあるのです。

怒りっぽい人は朝より夜にキレる

最近、電車の中でキレる人を見かけます。少し前までは、電車の中で暴れるのは酔っぱらいか、普段から暴力的な人と相場が決まっていました。でも、最近は違ってきています。しかも、普段はとてもおとなしく、礼儀正しい人なのに、ついカツとしてキレてしまったという人がとても多いのです。

受けたストレスをコントロールすることができず、感情を爆発させ、普段では決してしないような行動をとってしまう、これがいわゆる「キレる」という状態です。この「キレる」という行為、原因を簡単に言うと「ストレス」です。「そんなの当たり前じゃないかJ と思う人もいかかもしれません。

かし脳科学的にいえば、少し話は違います。ストレスがかかったとき、普段なら脳はそのときの神経経路を別のものに切り換えて、暴走を防ぐのですが、その「切り換え」ができなくなって暴走してしまう。まさに脳ストレスの蓄積による症状です。
これがキレた状態といえます。

では、普段なら切り換えられる脳のスイッチが、なぜ切り換えられなくなってしまうのでしょう。キレてしまった人の多くは、「自分でもよくわからないのですが、ついカッとなって…」「あのときに限って、どうにもがまんができなくて…と言います。

つまり、普段はそれぐらいのことではカッとならないし、がまんもしているということです。では、なぜ普段していることができなくなるのか?そこには何か原因があるはずです。私は、これはまさに「セロトニン神経」の機能低下が原因だと考えています。

セロトニンは脳に静かな覚醒をもたらします。これは別の言い方をすれば「平常心」をもたらすということでもあります。平常心を保つというのは、脳の切り換えがスムーズに行われ、どこも暴走も興奮もしていない状態のまま、スムーズに働いているということです。

さらに、セロトニン神経の機能が低下すると、その生き物は残虐な行動をとることも動物実験で明らかになっています。

これはラットを使った実験ですが、セロトニン神経を破壊したラットとマウスを一っのゲージに入れておくと、普通、ラットはそんなこと決してしないのですが、マウスをかみ殺して食べるという残虐行為を見せるのです。

そして、その残虐になってしまったラットに、セロトニンを補給すると、いつものおとなしいラットに戻り、残虐性はウソのように消えてしまうのです。このラットの症例をそのまま人間に当てはめることはできませんが、セロトニン神経の機能が低下すると、感情や精神状態を普段の冷静な状態にキープすることが難しくなることは充分に推測できます。

そしてこのことは、キレる人が朝の満貞電車よりも、夜の帰宅時に多いということからも証明されます。

通勤列車における単純な身体的ストレスでいえば、帰宅ラッシュよりも朝の出勤ラッシュの方が、時間帯が集中する分ハードです。にもかかわらず、朝からキレる人はほとんどいません。これは朝の方が、セロトニン神経が活性化しているからです。

1日社会で生活すれば、上司に怒られたり、同僚からグチを開かされたりと、さまざまなストレスによってセロトニン神経は弱ります。その弱り切ったセロトニン神経ではストレスに耐えきれず、負けてしまう。それが夜の方が「キレる」人が多い理由だと思います。

ストレスに対抗する手段はひとつではない

「ストレスには勝てない」

ストレスが続けば生き物は死んでしまうのですから、間違いなくそれは真実です。

でも、それだけでは人はあまりにも無力だと思いませんか。ストレス実験で動かずに、ただじっとしているラットと何ら変わりありません。私たちは本当に何も対抗策はないのでしょうか。結論から言いましょう。私たちに対抗策はあります。
しかも、1つではありません。ストレスに対して有効な方法を、私たちは自分の状況に沿って選択できるのです。

たとえば、ストレス研究の先駆者であるお釈迦さまは、1つの方法を私たちに教えてくれています。お釈迦さまが教えてくれた「苦=ストレス」への対抗策、それは「座禅」を組むことです。6六年間も苦行をしたのに悟りに至れなかったお釈迦さまが、座禅によって悟りに至ったのは、脳科学的にみると決して偶然ではないのです。実は座禅によって、お釈迦さまは、脳のとても「大切な部分」を活性化させていたのです。

座禅というとただ座って瞑想しているだけのように思われるかもしれません。

もちろん慧首とても有意義な活動の1つです。しかし、座禅で最も大切なのは「呼吸」です。腹式のゆっくりとした呼吸を意識して規則正しく繰り返す、それが、座禅における呼吸法なのです。実は、こうしたゆっくりとした腹式呼吸を妄時間続けると、脳の「大切な部分」に変化が表れるのです。その変化が表れる場所というのが、うつ病やパニック障害と深いかかわりを持つ「セロトニン神経」です。

一定のリズムを刻む運動を「リズム運動」といいます。腹式呼吸も、腹筋を一定のリズムで動かすので、リズム運動の1つです。

セロトニン神経は、そうしたリズム運動によって活性化するというおもしろい特徴を持った神経なのです。セロトニン神経が活性化するというのはどういうことかというと、具体的に言えば、セロトニンという神経伝達物質の量が増えるということです。このセロトニンには、「クールな覚醒」といって、脳の状態を、落ち着いた状態でありながら非常にクリアにするという効果があります。お釈迦さまが座禅によって悟りに至ったのも、こうした静かな覚醒のおかげと考えられます。

また、セロトニン神経が活性化することによって、うつ病やパニック障害といった精神的な病気になりにくくなるだけでなく、物理的な痛みにも強くなることがわかっています。その上、精神的に「クールな覚醒」がもたらされれば、ストレスに対しても冷静な判断や対処ができるようになるのです。

それでも、それだけでは、ストレスに対して絶対的な強さを持つ対抗策だとはいえません。どんなにセロトニン神経が活性化していても、強いストレスが襲ってくれば、ストレス経路は動き出し、私たちの身体も心も病んでしまうからです。

セロトニン神経の活性化は、強いて言うなら、「ストレスを上手に受け流すよう心身の準備を整える」ということだと思います。しかし、整えるだけでも、セロトニン神経を普段から活性化させていれば、多少のストレスなどスルッと受け流すことができるのですから、するとしないとでは大違いです。

ただ、この機能は、ラットなど他の動物にも基本的には備わっている能力です。この機能を充分に発揮させ、セロトニン神経を高めることができれば、私たち人間だけでなく、生物はかなりのストレスを受け流すことができるようになります。

おそらく、この能力は、生き物が進化する過程で獲得した、とても基本的な能力だからなのでしょう。でも、思い出してください。人間には他の動物にはない「精神的ストレス」があるのです。他の動物より感じるストレスが多いのに、できるのは同じセロトニン神経の活性化だけというのは、少し不公平な気がしませんか。

実は、これは私もセロトニン神経を研究している過程で気がついたのですが、人間にはもうひとつ、他の動物にはない「抗ストレス能力」が備わっていたのです。しかもそれは爆発的な効果を持つ、秘密兵器のようなものでした。

それは「涙」です。涙なんて他の動物でも流すじゃないか、と思うかもしれませんが、涙には3つの種類があり、その中には人間にしか流すことのできない「涙」があるのです。そして、それこそが、脳の中のストレスを-気に洗い流してくれる秘密兵器だったのです。

その、人間にしか流せない涙とは、「情動の涙」と呼ばれる涙です。類人猿の中でも高い知能を持つチンパンジーは、人間と99% の遺伝子が一致するといわれていますが、そのチンパンジーですら「情動の涙」を流すことはできません。
嬉しいとき、悲しいとき、感動したとき、そして他人に同情したとき、人は涙を流します。私たちは何気なく泣いていますが、これは生物学的にみると、人間にしかできないとてもすごいことなのです。



大声出してストレス発散「叫びの壷」

脳の発達=ストレスのはじまり

では、なぜ人間だけが「情動の涙」を流せるのでしょう。人間だけが情動の涙を流せるのは、他の動物にはない脳を人間が持っているからです。それは、「前頭前野」と呼ばれる脳です。前頭前野というのは、脳の中ではとても新しい部分で、人間への進化の過程で生まれた脳です。

他にも前頭前野を持つ動物はいるのですが、人間ほど発達した前頭前野を持っている生き物はいません。だからこそ、涙を流せるのは人間だけなのです。先ほど、人間だけが感じる精神的なストレスが二つあることをご紹介しました。

「快が得られなくなるストレス」と「他人に認められないストレス」です。人間だけがこの2つをストレスと感じるのも、実はこのストレスが前垂削野の発達と関係しているからなのです。つまり人間は、前頭前野という脳の領域を発達させたことによって、他の生き物では感じないストレスを感じるようになってしまった。だが、それと同時に、他の動物にはないとても効果の高い「抗ストレス能力」もまた、手にしたということです。

私たちは、涙を流した後は気持ちがスッキリとし、精神的にも楽になることを経験的に知っています。でも、それがなぜなのかは長い間わかっていませんでした。つまり、私たちはこれまで、人間特有のストレスは受け続けながら、人間特有の抗ストレス能力にはまったく気づかずに生きてきたのです。

実は、泣くとスッキリするのは、脳の中で「ストレス状態からリラックス状態へ」という、決定的な「スイッチング」が行われているからなのです。人間にこうした能力が備わっているというのは、とても大きな福音です。

私たちの生活は、多くのストレスに満ちています。そして、繰り返しますが、そのストレスに勝つことは、できません。それは、私たちの身体がそういうふうにできているのですから仕方のないことです。また、「脳ストレス」という意識をいつまでも持たないでいると、「心のストレス」という得体の知れないストレスに悩み続けることになりかねません。

しかし、意識さえすれば、私たち人間には、優れた2つの抗ストレス能力が備わっているのです。もちろん、それが脳ストレスを「消す」ためのキーワードになります。1つは、セロトニン神経を活性化させることで得られる「ストレスを受け流す力」。

もう1つは、人間にしか流せない情動の涙を流すことによって得られる、「ストレスをリラックスに変えるスイッチング能力」です。この2つの能力を上手に活用しながら、ストレスと寄り添って生きていくこと。それこそが、人間がその人生を幸せに歩むための、最もよい方法だと私は考えています。

生命の危機(糖尿病)はこうして脱した

多くの糖尿病患者が糖尿病という病気をなめている

糖尿病と言われても、どこも痛くない。何も困らないから、治療なんて必要ない。第一、忙しくて病院なんか行く暇はありません。そうでしょう。よくわかります。私自身もそうでした。私自身が、糖尿病をなめていた張本人ですから。
糖尿病が強く疑われる人、約890万人。糖尿病の可能性が否定できない人、約1320万人。合計、約2210万人と推定(2007年厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。糖尿病と、その予備軍といわれる人たちの数です。

日本の人口の約6分の1 、40歳以上の3人に1人は糖尿病か、その疑いあり、なのです。しかもこの数は、10年前の1.6倍。糖尿病は年々、うなぎのぼりに増えています。

にもかかわらず、医療機関で治療を受けている患者の数は全国で237万人(2008年時点)。すでに糖尿病を発症しているか、糖尿病が疑われる人の、わずか10人にl人という少なさです。こんなに糖尿病が蔓延しているのに、なぜ、治療を受ける人が少ないのか。それは、みなさんが糖尿病をなめてかかっているからではないでしょうか。

右を向いても糖尿病。左を向いても糖尿病。「糖尿病、みんな一緒なら怖くない」そんな心境ではないでしょうか。しかし、みなさんは糖尿病の本当の怖さをまだ知りません。糖尿病が進行して、重大な合併症を併発すると、5年生存率はわずか50%です。

糖尿病は、ガンに並ぶほど生命の危険のある病気なのです。そして何を隠そう、この私こそ、いまも生命の危機に瀕している糖尿病患者なのです。そもそも、「糖尿病」という名前がよくありません。これでは糖尿病がどんな病気か、わかりません。糖尿病は「尿に糖が出る」といった曖昧な病気ではなく、血管がボロポロ、ズタズタになる病気です。
むしろ、「血管ボロボロ病」とでも名づけたはうが、よはど病気の危険性を意識できるのかもしれません。

「病気には2つのタイプがある」ということです。「病気」と開いて、みなさんの頭にどんなイメージが浮かぶでしょうか。風邪をひいたとき、薬をもらったら3日で治った。ガンが見つかったけど運よく早期のガンで、手術で取り除くことができた。多くの人はこういう、医者が介在すればおおむね解決できるような病気を想像するのではないでしょうか。

ところが、世の中にはもう1つ、別のタイプの病気があります。自覚症状がないまま進行し、発見されたときにはすでに発症から何十年もたっていて、体はボロボロ状態。突然血管が破れたり詰まったりして倒れるまで、本人にはほとんど自覚症状がありません。

そんな病気の代表が、糖尿病や高血圧症や、それに引き続いて起きる腎不全です。糖尿病は、みなさんが思っている以上に、恐ろしい病気なのです。
糖尿病の場合、糖尿病と診断されたときには「血糖値が高い」とか「ヘモグロビンA1Cが高い」と言われるだけで自身には特段、自覚症状がないのです。

糖尿病でも何一つ困らない

私が最初に糖尿病を指摘されたのは、30歳くらいのことだつたと思います。自分のことなのになぜはっきり覚えていないのかというと、医者のくせに糖尿病に何の興味もなかったし、そんなに怖いものとも思っていなかったからです。

たしかその頃計ったヘモグロビンA1C、6.1% 以上は糖尿病の可能性がきわめて高い) は、7.2 %くらいでした。身長は182cm、体重は140kgを超えていました。当時研修医だった私は、毎日を手術の際の麻酔に従事していました。研修医ですから、無論、サービス残業はあたりまえ。むしろ、サービス残業を自分から買って出て、一例でも多くの症例を体験することをよしとしていた時期です。

月~金曜日は朝7時までにはオペ室に入り、その日の麻酔の準備をします。受け持ちの手術が早く終わると、長くかかっている手術の応援に行きます。当直ではない日でも、帰りが20~21時になるのはあたりまえの毎日です。

はじめのうちはみんな無給ですから、土日はアルバイトに行きます。休みらしい休みはたまにめぐってくる5週目の土日だけ。いま考えるとブラック企業のような労働環境だと思ってしまいます、驚くことに、忙しいのは研修医だけでなく、それを指導する先輩医師たちも、当然のように夜中まで働き続けていました。

本当に、先輩たちには頭が下がりました。そんな忙しい毎日の中で楽しみといえば、やっぱり食べることでした。いまでも思い出します。病院近くの定食屋の牛めし、レストランのミックスフライ、救命センターの前にあった店の激辛カレーうどん。

手術のあと、あるいは手術の合間をぬって、5分で食べてまた手術場に戻ります。早食いの典型でした。夕方になって少し手が空いて医局に戻ると、昼飯を食いっぱぐれた人の残りの弁当が必ず1つや2つありました。私はデブの大飯食らいなので、残っている弁当はありがたくいただき、そのあと9時過ぎ頃から、夜の町で食事兼お酒の毎日です。

焼き鳥、焼き肉、なべ、中華、そしてシメは豚骨ラーメン。夜中の1~2時頃家に帰り着き、仮眠程度に休むと5時30分には起きて7時までには手術場に入ります。そんな不健康な毎日のなか、私が糖尿病に気づいたのはアルバイト先の総合病院でした。

急に気分が悪くなり、内科の医師に診ていただいたところ、大先輩にあたるその先生から、「君、糖尿病だよ」と指摘されました。気分が悪くなった原因は糖尿病ではありませんでしたが、考えてみれば、あたりまえのことです。

身長が182cmぁっても、体重は130kg台をウロウロ。こんな状態で、糖尿病ではないほうがおかしいくらいです。しっかり生活習慣を改善しないといけないと強く思ったのは数字だけでこのあと自分が糖尿病であることをいっさい無視しました。

あのときなぜ糖尿病と向き合わなかったのか。いくつかの理由はあります。糖尿病だからと仕事を休んだり、早退するなんてことは考えられませんでした。また、糖尿病になると食事制限がつきものなので、食べられなくなることがいやでいやでしかたがありませんでした。そして極めつけは、糖尿病だからといっても、私自身まったく不自由を感じていなかったのです。

ヘモグロビンA1Cは、10%を超えて腎機能も急激に悪化

その後約10年、なんら治療をするでもなく、食事に気を遣うでもなく、好きなものを食べ夜中の遅い時間まで酒を飲んで、毎日楽しくやっていました。そんな私でも、40歳を迎える頃、変なことに気がつきます。140kgあった体重が、食事制限をしたわけでもないのに、130kg、120kg、110kgと減り始めたのです。「こいつはもしかして糖尿病は治っているのかもしれない」などとバカな期待をしながら血液を調べると、ヘモグロビンA1Cは10%を超えていました。

この頃はインスリン療法をスタートさせたばかりで、たしか朝と昼に4単位くらいのインスリンの注射を打っていました。当時の記憶がほとんどないのは、私にまったく糖尿病だという意識がなかったからです。

しかしこのときも、何も驚きませんでした。だって、口が渇いてたくさんお茶を飲む以外、何も困ったことはなかったからです。健康診断もなかなか受けるところまで気が回らないのが本当のところです。
私が毎年健診を受けるようになったのは、10年ぐらいたってから公務員になってからです。公務員になると、毎年きちんと健診を受けるように通知が届き、受けないと何度でも書類で通達をしてきます。

これには私も根負けをして、しぶしぶ健診を受けました。この頃から「まずいな!」と思い始めたのは、尿にタンパクが出だしたのです。尿タンパクは陰性(-)が正常ですが、私は2+でした。じつは、私は腎臓の奇形があり、腎機能自体やや低いことは学生時代から指摘されていました。そこへもってきて、どうも糖尿病性腎症がすごいスピードで進んでいるようです。
私はあわてて、血圧のコントロールを始めました。腎機能を保つためにまずするべきことは、血圧を下げることです。ごこの期に及んでもなお食事制限がいやで、糖尿病の食事療怯はしませんでした。薬で何とかなるなら、薬で何とかしたい!

降圧剤で130mmHGを超えないように努力しました。血圧の勉強をまじめにするようになったのも、この頃からでした。

クレアチニンの基準値は男性で0.6~1.1mg/dlですが、1.2→1.6→2.0mg/dlと悪化していきました。
これはいずれ透析導入は間違いないと腹をくくったのが45歳の時です。実を言うと、このときもそんなに危機感はありませんでした。だって透析をするからといって、私自身そんなに困るとも思えなかったのです。透析の大変さ、つらさを何もわかっていなかったのです。
現在は、クレアチニンを下げるこういった健康食品「純炭粉末 きよら」もあります。きよらは、クレアチニンを下げる以外に糖尿病で悪化要因となっているAGEも排泄してくれます。
まずは、糖尿病が恐ろしい合併症を招く病気だということをしっかり認識しなければ意味がないのです。

食前野菜療法を開始

この年の9月は、私の減量の歴史のうえでも忘れられない時期です。それは私が、キャベツダイエットの講義を東京で拝聴する機会を得ました。l時間の講義のあと、私は素直に「やってみよう」と思いました。腎不全が進行している最中になぜダイエット? 自分でもわかりません。糖尿病に腎不全が重なれば、食事療法はますますむずかしくなります。

正直なところ、私はパニックに陥っていたのかもしれません。何とかしなくては。何をしたらいいんだろう。糖尿病治療かな? とりあえずやせなければいけない!。こんな感じだったと思います。12月に私が本気でダイエットを開始した日です。体重は、120kg、ヘモグロビンA1Cは、12%。このダイエットで、キャベツにはいちばん世話になりました。

でも、キャベツだけだと飽きてしまう。それにキャベツだけしか食べられないなんて、お先真っ暗です。私は、吉田先生の考え方のエッセンスを私なりに解釈して、野菜全般をたくさん食べることにしました。とにかく1 回の食事で400~500g、なるべく食事の最初のうちに野菜だけを食べて、そのあとおかずを食べる。ご飯が大好きな私は、この野菜とおかずを食べ終わったあとで、200gくらいのご飯をつくだに少量の漬け物や佃煮でいただきました。
ダイエットを始めて、最初の2週間で約15kg減りました。あとは少しずつ、でも確実に、ときどき停滞期を迎えながら、体重は減っていきました。同時に、ヘモグロビンA1Cも8.6 % に、そして7.4%→6.6%→5.1% と、劇的に低下していきました。

体重は6ヶ月間で40kgの減量に成功しました。これが、私がいま行っている「食前野菜療法」の基本型です。大昔からの日本人の食性を考えたとき、ある程度(食事からの総摂取カロリーの50~60 %)の糖質をとりながら、グルコーススパイク(食後の急激な血糖の増加)を避ける。そんな方法はないかと模索するうちに、料理を食べる順番がとても重要であることに気づいたのです。

この食事療法を始めて、みるみる体重が減り、みるみるヘモグロビンA1Cも減っていきました。この頃、1日40単位打っていたインスリンは、低血糖を起こし始めたので思い切って中止しました。

いまでは何の薬も使わずに、ヘモグロビンA1Cは4.2~4.6% の間です。このくらいがんばれば、私の腎不全も進行が止まるかなと期待しました。しかし、クレアチニンは少しずつ、でも確実に上がっていきます。2.0→2.2→2.6。

これはまずいぞと、次には低タンパク食(弱っている腎臓にタンパク質は過剰な負担をかけるため、タンパク質の量を減らした食事内容)と減塩にチャレンジです。体重1kgあたり0.6g のタンパク質と、1日総量で4~6 g の塩分。大好きな肉は極力減らし、味つけもダシを効かせるなどして、薄味にしました。

このへんまでくると、食事療法もけっこう楽しくなってきます。なぜなら、努力したら努力した分だけ体重、血圧という数字に毎日跳ね返ってくるからです。

当然、お酒もいっさいやめました。減量することを考えたら、晩酌のお酒がばかばかしくなって飲む気がしなくなったのです。たまに結婚式などのつきあいで飲むと、次の日は必ず体重が1kgは確実に増えています。これを戻すのに1週間かかります。そのことを思うとだんだん飲酒から遠ざかり、いまではまったく飲んでいません。あんなに好きだったお酒を飲まない日がくるとは夢にまで思いませんでした。

本気ダイエットのおかげで体重、血圧、ヘモグロビンA1Cも好調だが…

どういうことでしょうか?
血圧は、120mmHG台。食事でとるタンパク質は体重kgあたり0.6g、塩分は1日4~6 g。腎不全によいと思われる薬は、ほぼすべて飲んでいます。それなのに、クレアチニンは6.0mg/dl向かって、少しずつですがまっすぐ上がり続けています。

いま血糖値がコントロールできていても、そう簡単に糖尿病はおとなしくしてくれません。そんな中、やややけを起こしたと思えないのですが、海外旅行を計画しました。
前から言ってみたかったロスに行く計画をたてたのです。

年末にアメリカへの旅行を計画したのです。しかし、尿毒症で気分は悪く、足はパンパンにむくんで、痛みで歩くのも一苦労です。せっかくのラスベガスの年越しの大花火のとき、私は気を失って倒れてしまうありさまでした。

帰国後、観念して病院に行くと、主治医のN先生は、「よくここまでがんばったと思いますよ」と声をかけてくれました。しかしすでにアシドーシスを起こすほど、尿毒症は進行していました。そのまま、入院。そして前年から準備していた、腹膜透析カテーテルを使い、CAPD(腹膜透析) のスタートです。

透析には腹膜透析と血液透析、そして両方を上手に利用する方法があります。私が腹膜透析を選んだ最大の理由は、自宅でできるからです。血液透析だと、週に3回、病院まで行かなければなりません。

実は当時から、すでに血液透析も自宅でできるようになっていました。それでも私が腹膜透析を選んだのは、「残存腎機能」というもう1つの理由があったからです。腎臓は尿をつくる臓器ですが、それ以外にも命をつなぐための大事な仕事を人知れずしています。

それを残すには、腹膜透析のほうが好ましいと考えたのです。

しかし、腹膜透析にはいくつかの問題点もあります。その1つが、細菌感染しやすいこと。糖尿病はばい菌に弱い病気です。それに加えて、お腹にいつも直径5mmの管(カテーテル)が刺さっているのですから、トンネル感染しやすく、そこから腹膜炎を起こすこともあります。

私も、トンネル感染を起こし、MRSAという抗生物質の効かないばい菌に感染しました。それはともかく、腎不全で90kgまで増えた体重は、腹膜透析の開始により10日で8kg減り、82~83kgをキープできるようになりました。
尿毒症、尿量の減少で起きていた浮腫が解消したからです。ここで調子に乗ったのがまた私のバカなところで、「この際、80kgを切ってみるか」などと変な目標を立てて再び食事療法を開始。すぐに具合が悪くなって中断。

主治医「ある程度タンパク質をとりなさい」と叱られて終わりです。以来私は、84~87kgの体重を維持しており、ヘモグロビンA1Cも毎月4.0~4.7% の間、早朝の上の血圧は上で140mmHGとやや高めですが、すでに糖尿病についてはほとんど克服したつもりでいました。

恐るべし糖尿病! 合併症との闘い

私が糖尿病の恐ろしさを本当の意味で心底感じたのは、頭に「糖尿病(性)」とつくさまざまな合併症に襲われたのです。糖尿病性腎症についてはすでに述べたように、私は腹膜透析をしています。この糖尿病性腎症のほか、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病に合併することが多いといわれる歯周病、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病性神経障害からくる動眼神経麻痔や下肢の知覚障害、さらに免疫力が低下して起きるさまざまな感染症、CAPD カテーテルのトンネル感染、足の爪白癬(爪水虫) などなど。

歯周病・虫歯

私は、糖尿病になってから歯が悪いです。何本かの虫歯がありました。ありましたというのは、ここ1年で死ぬような思いをして3本の虫歯を抜いてもらったからです。ことの始まりは、5年前、まだ腹膜透析を始める前のことです。右の鼻の中に違和感を覚え、中をさわりすぎるとしばしば鼻血が出るようになりました。

そのうち、いやな臭いの鼻水が出るようになり、「こいつは鼻茸だな」と自己診断していました。鼻茸とは、鼻の副鼻腔(鼻腔の周りを囲んでいる骨にある空洞。鼻腔に通じている)にかたまりキノコのような白い瘤状の塊ができるもので、別名「鼻ポリープ」ともいいます。慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症) やアレルギー性鼻炎にともなうことが多く、私も副鼻腔炎で鼻の粘膜に炎症を起こしていたのです。糖尿病はばい菌に弱く、炎症を起こしやすいためです。初期のうちだとナタマメがよく効くそうですが、かなり病状が進行してしまった状態だと治療をしないと改善しません。

勤務先の診療所の直径5mmの胃カメラで鼻の穴の奥を観察してみると、見事なY3型、つまりエノキタケのようにくびれを持った鼻茸です。自分で何とかならないかといろいろ試したあげく、ペアンという物をつまむ道具でつまんで引きちぎつてしまいました。

耳鼻科の先生にひどく怒られました。ビックリするほど出血しましたが、このときは何とかおさまって、一時期治ったかに見えました。しかし、素人の荒療治。そんなにうまくいくわけがありません

半年もすると、再び鼻水がいやな臭いになり、再び鼻の奥に違和感が出ました。今度ばかりはバカな私も観念して耳鼻科の先生に診てもらいました。「全身麻酔で手術しないと治りませんよ」その際に「腎臓悪いの? 」そうなのです。この頃は、そろそろ透析しなければいけないかもしれない?と観念し始めていた時期でした。

「鼻がクサイから耳鼻科へ行って! 」女房のひと言で耳鼻科に行きました。耳鼻科の先生は、別件で10日ほど前に撮っていた私のMRIの画像をを見ながら、「何もありません。少なくとも上顎洞はきれいです」。そして、「いまのところ何も所見はありませんよ」

では、この異常な臭いは、何が原因なんだ?「歯が原因で骨髄まで炎症が達することはありますか?」つまり、虫歯のクサレが骨をつきやぶってのどまでくることはありますか、と聞くと、「ないことはないですね」と耳鼻科の先生。透析をする前から3本の虫歯がある私は、「歯を抜いたら治るかもしれませんね」と言われましたが確実ではない雰囲気でした。

ここで、一大決心をして中のよい歯科医に診てもらいました。菌を抜く前にレントゲン写真を振ります。いちばん疑わしい右の上の奥歯の写真です。歯根の骨はだいぶ溶けてボロボロですが、歯の根っこにできるのう胞は見あたりません。どうも、ただの虫歯らしいのです。

ところが、実際に歯を抜いてビックリ! 写真には写らなかったのに、立派なのう胞が、歯根にぶら下がっていたのです。これでクサイのは治るかもしれません。しかし、驚いたのはこれからです。歯ぐきからの出血は2 時間ぐらいで完全に止まったのに、鼻をかむと真っ赤な大量のクサーイ血液が、次の朝までどんどん出てくるのです。

こいつは、誰が何と言っても、奥歯のクサレが骨を食い破ってのどまで顔を出していたのだな?と、確信しました。

鼻からの出血は、2日間少しずつ続いたのち、ようやく痛みも臭いもなくなりました。恐るべし、糖尿病患者の虫歯。あのままなら、敗血症でも起こして死んでいたかもしれないと、少し背筋が寒くなりました。糖尿病の患者さんは、口がクサイことが多い。私もすごく気を追っています。毎日歯ブラシを持ち歩いていますし、家では超音波の歯ブラシでていねいに磨き、歯間ブラシも欠かせません。
糖尿病になってしまったら虫歯の治療は欠かさずに行いましょう。

網膜症・白内障

運転免許の更新のときです。もともと1・5以上の視力を内心自慢にがくぜん思っていた私は、免許センターでの視力検査で博然としました。視力は0.6、何とか合格という屈辱的な経験をしたからです。同時に、老眼のメガネが合わなくなってきて、メガネ屋さんで新しいものを作ろうと視力検査をすると、技師さんに言われました。

「一度眼科を受診されてはいかがですか」もとの病気が病気ですから、いやーな考えがたくさん浮かびました。意を決して、内科の主治医がすすめる眼科医院で診てもらいました。診断は、「糖尿病性白内障」。

衝撃的でした。5年前からヘモグロビンA1Cは、5.0 %を超えたことがない私なのに、この期に及んで糖尿病性白内障が進行していたのです。8月頃はとくに左眼の視界が白っぽくなり、患者さんの耳の穴などを検査しょうとしても、ラーメンの湯気でメガネが曇ったような状態でした。どこを見てもうっすら白くて、満足に検査もできなくなってきました。

さらに私を不安に陥れたのは、この5年で完壁にコントロールしたはずだった網膜症が、増殖性網膜症に進行していたことです。網膜症は目の奥の光を受けるところ(網膜)の血管が詰まって血流不足を起こしている状態。

増殖性網膜症は、血流不足を補うためもろくて破れやすい血管が異常に発育して、被れやすくなった状態をいいます。これまた、かなり進行するまでまったく症状はなく、眼科に行かなかったら一生わからなかったかもしれません。

この網膜症で、これまでレーザー手術を左眼3回、右眼も4回経験しました。1回の手術で150発くらい、ジジジッツ とやられ、目の奥に何ともいえないいやーな痛みが走ります。この網膜症、放っておくと、失明します。7 回目のレーザー手術を終えて、そのときの眼科医、先生は言いました。「ハイ、これで10年後も失明することはないと思いますよ」私は失明の危機を何とか乗り越えることができました。しかし、人間は現金なもので、10年後に目が見えていても、10年前のレーザー治療のおかげだなんて、きっと思わないのでしょうね。

私には忘れられない日があります。私の父親が失明した日、私はそこにいました。父は寝たきりに近い状態で、再婚した女性に面倒を見てもらっていました。元来、左眼は事故でほとんど見えなくなっていたので、もっぱら右眼だけでモノを見ていましたが、ある日、外を眺めて父はこう言ったのです。「おい!今日は夕日がきれいだなぁ」まだ昼過ぎで、夕日が見える時間帯ではありません。

父の色覚がどうもおかしい…よく聞いてみると、見えていないところがあるようです。すぐに主治医に連絡を取りましたが、やはり眼底出血を起こしていたようです。その後、父は、両眼ともに視力を失い、これを契機に認知症が進行しました。

私が見舞っても兄との区別がつかず、いろいろなことがわからなくなっていきました。何も見えない。何もできない、わからない。父は、深い失望の中にいたのだと思います。しだいに何も語らなくなり、まるで人形のようになっていきました。私が27歳、医師になったばかりのときでした。実は父も糖尿病を患い、腎不全となって透析をし、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)をも併発していたのでした。

そのときは、この父の姿が30年後の自分の姿だとはイメージできませんでした。白内障はわかりやすい病気です。明らかに視界が自っぼくなって、光が異常にまぶしく感じられて、モノが見えなくなります。ところが手術をすると、ウソのようにはっきり見えるようになります。

左眼を手術しました。右眼は急がなくてもよい程度でしたが、2週間に1度レーザー手術を繰り返すうちに、右眼の白内障も急速に悪くなりました。たった半年の間に、明らかに右眼の視界は白っぽなり、立体感がつかみにくくてイライラしました。「白内障が進んでいて、レーザーが届きませんね。なんだか急速に進行しているみたいです」と眼科の医師。そこで、右眼も白内障の手術をして、そのあとにもう一度右眼のレーザー手術をすることになりました。約半年かけて両眼の白内障手術、両眼の網膜のレーザー手術を終え、とてもさっぱりした気分です。

糖尿病性動眼神経麻痺(外転神経麻痺)

これでもう失明することもなければ、視野が白っぼくなることもありません。しばらく大丈夫と思っていたら、また、異常があらわれました。なんだか、チラチラします。モノがよく見えません。両眼の焦点が合っていないようです。

手でおさえて片方ずつで見ると、けっこうよく見えます。なのに両眼ではむずかしい。指を前にかざしてみると、なんとダブって2 本に見えるのです。「複視」が出現しています。左側にあるものは1つに見えるのに、右側にあるものは2つに見えます。鏡を見ながら近くを見て、寄り目にしてみます。若干縮瞳(瞳孔が収縮すること) した気がします。

この反射を「輻輳反射」といいます。脳神経病学のうろ覚えの知識でいろいろ考えてみると、MLF症候群(脳幹のMLFと呼ばれる場所に障害が生じ、一眼または両眼に内転障害が起きる病気。一眼の場合は脳幹部の脳血管障害が疑われる)
だとすると、本当にマズイ。すぐに脳神経外科の先生に連絡をとりました。「すぐおいで」と言ってくれたのですぐに行ったら、その場でMRIを撮ってくれました。さすがにこのときは覚悟を決めて、女房にも一緒に来てもらい、脳神経外科の先生の話を山開きました。

「MRIではどこにも異常がないので、糖尿病性の動眼神経麻痺でしょう」また、糖尿病の合併症かと落ち込みました。糖尿病の末梢神経麻痺は、多くの場合、3ヶ月ぐらいで治ります。手足のしびれや知覚障害は治りにくいのですが、目は治りやすい。

ホッとして家路につきましたが、やっぱり気持ちが悪い。右側にあるものはすべて2つに見えます。つまり、うるさい女房が右側にいると、女房が2人いるわけです。こいつは何とも気分の悪い話で、女房はなるべく自分の視界の左側にいてもらうようにしています。発症から約1ヶ月、まだ右側は二重に見えていますが、まっすぐ、はっきり、しっかり見えるようになりました。本当にありがたいことだと思います。

水虫(足の爪白癬)

私と水虫とのつきあいは、女房とのつきあいより深く長い。その始まりは、大学時代にさかのぼります。太ってはいたけれど、まだ糖尿病を自覚していなかったその頃、皮膚実習の指導教員から、「お前は糖尿病が出たら、一生水虫が治らないよ」と言われたのをよく覚えています。

それから約30年、よくなったり悪くなったりを繰り返し、たぶん一度も治癒しないまま、足の指の皮膚はボロボロとはげやすい状態です。糖尿病の患者さんは、爪を切るときに注意が必要です。

第一に、深爪しても糖尿病性神経障害のため痛くありません。切りすぎで深爪になると、すぐ出血します。そして最悪の場合、その傷から感染して壊疽の原因になります。ですから、私の診療所では、お年寄りの爪切りは必ず私がします。

私が診たわけではありませんが、糖尿病の足壊痕で、足白癬がスタートだった人がいました。この人は自分の足の具合を見るのが怖くて、数年の間靴をぬがなかったそうです。ある日、思い切って靴をぬいだら、足の指が全部取れていたといいます。

私の大先輩が経験した症例で、こんなケースもありました。実験で使っている液体窒素が足にこぼれてヤケドをしました。その人は医者でありながら、ご自分が糖尿病であることを知りませんでした。ヤケドが悪化して壊疽が始まり、結局足のくるぶしから下を切断するところ獲で進行したそうです。

糖尿病患者のフットケアの重要性はかなりものです。ここ4年ぐらいで、いつのまにか私の足の爪も一部白癬菌に侵されてきました。私は体が硬いので、自分の爪を上手に削れません。女房にお願いして電動ヤスリで磨いてもらいます。

歳をとったせいか、冬になると足のかかとがひび割れします。これもパックリと割れると、とても痛い。実は糖尿病患者の足は自律神経障害のために汗腺の働きが悪くなって、カサカサになることが多いのです。このかかとのひび割れがもとになって足の壊痘に進行した人を知っているので、足のひび割れのお手入れは必ずします。へたにひび割れを指ではがしたりすると、あとで痛くなったり血が出たり、最悪の場合は壊痘になります。

幸い私は壊痘を起こしたことはありませんが、起こしたら怖いので、1週間に1回のペースで白色ワセリンを足に塗っています。フットケアの研究会で勉強していると、非常に悪化した症例ばかりをたくさん目にします。でも、多くの症例に共通しているのは、「前からきれいにしていればこうならなかったのに」ということです。
【第3類医薬品】大洋製薬 白色ワセリン 500g
ですから私も、一生懸命フットケアをしています。

睡眠時無呼吸症候群

糖尿病と合併率の高い、睡眠時無呼吸症候群(SAS)。最新の研究によると、2型糖尿病患者の36% はSASを合併していることがわかりました。どうやら睡眠中に呼吸が止まると、交感神経が緊張し、インスリンの効きが悪くなって血糖値が高くなるようです。

数ある糖尿病合併症のなかでも、私がいちばん最近になって指摘され、治療を開始したのがこのSASでした。SASが太った人に多いことは、2003年の山陽新幹線の運転士の居眠り事件で有名になりました。

私も130~140kgの巨体であった頃、夜中に突然いびきが止まって、「グアーグググ(約1分の沈黙)、再びグアーグググ」となっていることを女房に指摘されて、知っていました。このような、のどが閉まって息が上まるタイプを「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)といいます。
気になるいびきや歯ぎしりの対処方法と応急的処置

では、SASの何がよろしくないのか。教科書をひもとけば、いろいろあります。まず、昼間耐えがたい睡魔に襲われます。車の運転中や会議中は、とくに我慢できない睡魔がやってきます。自覚症状はこの睡魔と倦怠感。いくら寝ても寝足りない感じというやつです。

しかし、本当に怖いのはそんなことではありません。「血圧が下がらないこと」と「突然死」。この2つが、実はいちばん恐ろしいことなのです。私は、やせてから「OSAS]は治ったものと思っていました。実際、夜中のいびきはなくなり、女房も何も言わなくなりました。

ところが、ある日研究会の席で知り合いの医師から「あなたSASでしょ? 」と声をかけられました。「ウソだろう。SAS は治ったはずだけど」。でも、そういえばこの頃会議中、車の運転中、妙に眠い。この先生のすすめで、睡眠中の酸素飽和度を調べてビックリ。1時間に50回も息が止まっている! しかもspo2の最低が80%。

spo2というのは、指先で計る酸素飽和度です。健康な人なら通常、spo2は99~100% です(お年寄りやタバコを吸う人は96 %くらいが多い)。

研修医時代、測定機器で指をはさんでみんなで息を止めて、どこまでspo2が下がるか実験(競争)したことがあります。顔を真っ赤にして2分くらい息を止めても、spo2は96~97 %。救命救急センターに息も絶え絶えな状態で搬入されてくる気管支ぜんそくの人でも、80~90% です。

80%とは、ほとんど死にかけている状態です。「毎晩こんなことになっていたら、いつか死ぬ」本当にそう思ったので、すぐに治療を始めました。私のSASは、OSASとCSAS(中枢神経系の異常によって起きるもの。胸、お腹の呼吸ができなくなるSAS)の混合タイプでした。毎晩CPAP(持続陽圧呼吸療法)というマスクをつけて治療しています。

鼻から肺まで4~8mmHgの軽い圧がいつもかかっていて、空気の通り道を確保するのです。CPAPをスタートしてから、運転中の居眠りや会議中の眠気はいっさいなくなりました。そして何よりも、朝160mmHGを切ることのなかった上の血圧が、140mmHGを切るところまで下がってきたのです。これはうれしかった。

何を隠そう、私は筋金入りの治療抵抗性高血圧症(薬の効かない高血圧症)なのです。腎症を持つ治療抵抗性高血圧症は、上の血圧が150mmhGまで下がれば上出来とまでいわれていましたので、いつ脳卒中になるかとヒヤヒヤしていました。

20年前、私はCTのテスト運用の試験台になって、右側頭葉にあずき大の脳梗塞が見つかりました。その後も何回か別の病気の疑いでCTやMRIを撮るたびに、この右側頭の脳梗塞を指摘されてきました。

この脳梗塞は、いまも軽いままです。「SASなんて夜中に息が止まっているだけの病気だろ」と、みなさんバカにしていませんか?

でも、本当はとても怖い合併症なのです。こうした糖尿病の合併症と闘いながら、さらに追い討ちをかけるような事態が起こりました。1日250~500cc出ていた尿が、この1年で、1日50ccしか出なくなっていたのです。腹膜透析をしているにもかかわらず、腎症は確実に進行していることが身にしみました。さらに、CAPDカテーテルの出口部が感染したため、カテーテルの出口変更手術を行いました。このように死の何歩か手前までに、何回か行った年でした。
これだけは、忘れないでください。糖尿病は治りません。ヘモグロビンA1Cの数値がよくなっても少しその環境がよくなっただけのことだったのです。ヘモグロビンA1Cや血糖値の数値が安定して合併症の症状もよくならなければ次々、症状があらわれるのです。

血糖コントロールだけではだめなのか?

そうです。糖尿病は、血液の数値がよくなったらそれで治ったというわけにはいかないのです。AGEという糖尿病の合併症を引き起こす重大な原因の1つでもある物質のおかげで、そのあとも長いこと体のいろいろなところが壊れていきます。

AGEはタンパク質と糖が結びついた物質で、日本語では「終末糖化産物」といいます。いうなれば、糖の燃えカスみたいかもの。血液の中で過剰になった糖は、糖化反応によって血管壁のコラーゲンなど、さまざまなタンパク質と結合します。この糖が一部変性して、さらに糖と結合します。これが体内の細胞に取り付いて、細胞が死ぬまで体を傷め続けるのです。
ヘモグロビンA1C 8.0以上が10年続くと網膜症になりAGEの蓄積で黄斑変性の危険大
私の血糖値はこの5年間で完璧に下がりました。にもかかわらず、このAGEという物常によって私の糖尿-柄は見えないところでまだ進行しているのです。

血糖コントロールなんかする必要がないのか。ところが、この研究はそれだけで終わりませんでした。その後、従来療法と強化療法の敷居をなくし、さらに追跡調査したところ、2年もたたないうちに従来療法・強化療法の間でヘモグロビンA1Cの差はなくなったにもかかわらず、10年後には全死亡率、心筋梗塞、さらに脳卒中までも、かつての強化療法のほうで従来療法より良好な予後が得られたのです。

この結果は、何を意味しているのでしょうか?糖尿病は、10年くらいの短い期間で考えると、血糖のコントロールなどさほど意味のないように思えますが、20年、30年という長い期間で考えると、なるべく早い時期からきちんと血糖コントロールをすることが非常に重要だということを教えているのです。

私のように、途中からまじめに、徹底的に治療をしても、ほったらかしにしていた時代が長いと、体はその時代のことを忘れてはいないらしいのです。これが前述した「レガシー・エフェクト」、つまり遺産効果です。なぜほったらかしにしていた時代のことを体が覚えているのか、本当のところすべてがわかっているわけではありません。おそらくは、糖の最終代謝産物であるAGE がいつまでも体内に残り、少しずつ、しかむしばし確実に体を蝕んでいるのだと思います。もし私が20年前に治療を開始していたら… おそらく、腹膜透析など受けていなかっただろうし、5年生存率50%などという死の恐怖も味わっていなかったでしょう。

しかし、いまそんなことを思っても、所詮しかたのないことですが

手遅れにならないための「3つの習慣」

手遅れにならないための「3つの習慣」5年生存率50%。ガンの治療などでよく聞く言葉です。これは、病気がわかった5年後に生きている確率が50%という意味です。糖尿病が進んで、透析を行うようになったり、大血管障害などを起こすと、5年生存率は50%。

大血管障害とは、脳や心臓の大きな血管の動脈硬化が進み、脳卒中、心筋梗塞などを起こすことです。ガンの治癒率は向上しているのに、糖尿病は、一部のガンよりタチが悪い。これが現実です。もう1度言います。みなさん、糖尿病をなめていませんか。何を食べてもいいですよ。お酒を飲んでもいい。肉を食べてもいい。運動しろと言われても、忙しくてできませんよね。しかたない。そうなんです。しかたないのです。何より、境界型だろうが糖尿病だろかうが、痛いわけでも痺いわけでもない。糖尿病は、一見どうということのない病気です。けれども、そのまま放置すれば、確実に「死」がそう遠くない未来にあるのです。それをまぬかれるには、まず、私が実践した「3つの習慣」を始めることです。死の淵に片足を突っ込んでいた私は、それによってこちら側に少しだけ連れ戻されました

「毎朝血圧を計る」「毎朝体重を計る」「食事は野菜から食べて、なるべく植物性のメニューにする」。長い糖尿病で膵臓がくたびれ果てた人は別ですが、たったこれだけでヘモグロビンA1Cがみるみる下がっていきます。
この私でさえみるみる下がりました。私のまわりでも、たくさんの人のヘモグロビンA1Cが下がっています。決定打ではないにせよ、かなりの人がこれでよくなる! そして、親がこの習慣に目覚めたら、子どもたちも自然によい習慣が身について、糖尿病になることはない。そう考えたら楽しくなつて、みんなにやってみようと、私の住む大岡地区に広めました。私たちの取り組みはあとで述べますが、少なからぬ人がインスリン注射から離脱でき、食事だけで血糖値をコントロールできるようになりました。

糖尿病は総力戦

私は、20歳代後半で糖尿病を発病し、それから20年近く放置していました。糖尿病は、この5年ほどは飼い慣らされたように見えて、本当はいまだに暴れ狂っています。高血圧症、脂質異常症、腎不全、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障。

そして近頃では、睡眠時無呼吸症候群、右眼の糖尿病性外転神経麻痺、足の爪白癬菌、足の知覚障害などなど、すでに紹介してきたように本当に病気だらけです。

いまとなっては最善を尽くして、生き残る50%に入る努力をコツコツと完成させていくのみですが、内心は怖いです。本当に怖いです。たぶん、糖尿病は止まりません。残された身体能力をどれだけ大事に温存しながら生きていくか。私の人生はすでにそういうステージに来ていることを実感しています。この本は、20年後のあなたの恐怖を記しています。その恐怖を解決する方法にも触れています。
私は、自分の経験を通して、2つの大きな宝を得ました。1つは、患者さんの苦痛や悩み、そこへ陥るワナをみずから経験し、人の痛みや心境を共有する能力を得たことです。そしてもう1つは、この7年間取り組んできた、血圧管理、体重管理、塩分制限をはじめとする食生活が、私の家族にもキチンと受け継がれていることです。

私の寝室の枕元には、夜中毒素を排泄するCAPDというシステムが置いてあります。子どもたちは私の姿を見て、「エネルギーを充填している宇宙人みたいだね」と笑います。本当によい時代です。もし、薬やこのような機械の助けがなければ、私はいつあの世という宇宙に行ってもおかしくありません。

私たちが闘っている糖尿病という病気、そしてベースに横たわる動脈硬化というパケモノ。この闘いの相手は、姿も、気配も、痛みもなく、私たちや子どもたちをいつのまにかとりこ虜にして、ボロボロにします。
まるで幽霊を相手にするような、先の見えない闘いです。

でも、lつはっきりさせておかなければなりません。いま、人類はこの大きな闘いのさなかにあります。これは、総力戦です。全面戦争なのです。私は、願わくばこの私の経験を、賢いみなさんの転ばぬ先の杖にしていただきたくて、記録したつもるです。糖尿病が疑われるあなた、予備軍と言われたあなた。いまからでも遅くありません。私が実践した3つの習慣を、ぜひ実行してください。そして、進歩した医療の力を借りながら、総力戟で闘っていきましょう。

糖質制限食による血糖値を下げる効果とダイエット効果

糖質制限食に関わる問題、実施するに当たって遮るハードルとは?

主食という言葉をいったんクリアーにしてみる

日本人の食事は、基本的に「ご飯(主食)とおかず」です。つまり、漬け物や焼き魚やおひたしなどを「おかず」にして、お茶碗1~2杯分のご飯(白米)を食べる、という食習慣です食べるターゲット、いわゆる主食はあくまでも「ご飯」で、おかずはそのための補助・手助け、という位置づけです。

たとえていえば、おかずは、ショパンのピアノ協奏曲におけるオーケストラ、寄席における前座、結婚式における花婿のようなものです。主役はあくまでも、ご飯であり、ピアノであり、裏打ちであり、花嫁なのです。

炊いた白米の味は、基本的にほんのりと甘くて香りがよく、しかもそれ自体の味はくどくないため、塩味や辛みで味付けされた「おかず」と非常によく合います。

実際、美味しい塩辛や漬け物さえあれば、どんぶり飯が何杯も食べられると豪語する人もたくさんいます。

そして、ご飯(主食)とおかずには、上下関係が厳然としてあります。どんなにおかずが豪華であっても「ご飯が主、おかずは従」なのです。(だから主食という言葉が存在する)。

大多数の日本人の意識としては、「ご飯を食べるためのおかず」であり、「おかずを味わうための添え物としてのご飯」という発想はありません。

これは「酒(日本酒)と肴」の関係と似ています。肴はあくまでも酒の引き立て役であり、酒の味を邪魔してはいけないのと同じです。

この「ご飯とおかず」のスタイルは、外食の基本です。コンビニや持ち帰り弁当店の唐揚げ弁当、のり弁当、ハンバーグ弁当は、すべてご飯と、ご飯をたいらげる助けとなる味付けをしたおかずとの組み合わせです。定食屋のホッケ焼き定食も、唐揚げ定食も、豚汁定食も、同様です。レバニラ妙め定食、八宝菜定食も、同じ発想で組み立てられているし、日本の誇る井物(天丼、カツ丼、中華丼、鰻丼、牛丼) も鰻重も、基本はどれも、「ご飯とおかず」です。

さらに言えば、ねこまんま(冷えたご飯に味噌汁をかけただけのもの) も卵かけご飯も、お茶漬けもふりかけご飯もおにぎりも、カレーライスもお寿司も、同じ範疇に入り、どれも「ご飯とおかず」という基本構成です。
豪華なおかずもあれば、貧相なおかずもありますが、その真ん中に白米が鎮座している構図はどれも同じで、白米を食べ切るまで食事は終了しません。

ちなみに、このような「ご飯とおかず」という食べ方の様式が日本に生まれたのは、平安時代であり、その成立には、「米は神が授けてくれた神聖な食べ物」という、米信仰ともいうべき意識が働いていました。逆にいえば、「ご飯とおかず」という食事の概念は、人類普遍のものではなく、かなり特殊なのであります。

英語やフランス語などのヨーロッパ系言語には、日本語の「主食」に相当する単語がないか、あっても、日本語の「主食」とはニュアンスがまったく異なっています。糖質制限食のすごいところは、この日本人の食の原点ともいうべき「主食」を完全否定している点にあります。

だから、実際にやってみると、たいしたことなく簡単に始められるのに「主食を食べない」というだけで、心理的乱轢や多大な葛藤を生むわけです。とりあえず、頭から「主食」という言葉を追い出すことが重要となります。この切り替えができなければ糖質制限食を行うことは難しいでしょう。

個人で取り組むのはとても簡単

糖質制限食は、実行すること自体は非常に簡単です。必要な知識は、食材に含まれる糖質の量だけであり、それ以外の知識も努力も不要です。「今日の昼飯から、ご飯を食べないようにしてみるかな」と思い立つだけで、始められるわけです。

しかし、糖質制限食を朝食や夕食だけでも始めようとすると、物事はそんなに簡単ではないことにすぐに気づきます。家族の食事をどうしたらいいのか、という大問題にぶつかるかります。家族全員に糖質制限について理解してもらおうとすると、これはかなりハードルが高くなります。

むしろ、最初は理解してもらえないことがほとんどでしょう。とくに小さな子どもがいる場合、子どもに糖質制限食を実施しても大丈夫なのか、成長期の子どもが糖質を摂取しないで成長が妨げられないのか?と、まだ結論が出ていないことがたくさんあることに気づきます。場合によっては、献立を2種類作る必要さえあるケースもでてくるでしょう。

そして家庭の主婦にとっては、それまで慣れ親しんだ「ご飯とおかず」という黄金の方程式が、通用しなくなってしまうことになるのです。

日本人の食事の基本は、「白米と、白米を美味しく食べるためのおかず」という組み合わせであり、それを数百年間続けてきたのです。まさに日本人の食の原点とえるでしょう。そういう「白米を美味しく食べるためのおかず」を作るためのさまざまなノウハウが積み重ねられ、世代を超えて引き継がれてきたのです。

糖質制限食は、そういう数百年間の積み重ねを一挙に崩壊させてしまいます。日本人にとっての「主食」という概念は簡単に崩せないものなのです。

個人と組織

それまでの常識が一挙にひっくり返ってしまうような変化のことを、パラダイム・シフトと呼ぶ。「個人が変化を受け入れるのは容易ですが、集団が変化を受け入れるのは難しい」ことになります。じつはこの糖質制限食も、パラダイム・シフト級の変化であり、それゆえに、「個人で糖質制限食を始めるのは簡単ですが、集団に糖質制限を導入するのは困難」ということになります。

家庭という社会の最小単位ですら容易ではないのですから、会社とか地域社会のような大きな単位になればなるほど、糖質制限食というパラダイム・シフトは、さらに受け入れ困難となるのは当然です。組織は大きくなるほど保守的になり、大きな変化を受け入れたがらないものです。

しかし、変化を受け入れることができる個人は必ず存在します。つねに脳みそのアンテナを伸ばして、新しい考えをキャッチしようとします。やがて、そのような人間の説明を受け入れる人間が次第に増加します。そして、社会を構成する人間の世代交代により、「社会の常識」はいつの間にかひっくり返り、パラダイム(=社会の常識) が大転換します。

天動説から地動説へのパラダイム・シフトはまさにこれです。おそらく糖質制限食も同様だと予想します。

現時点では、糖質制限食はまだ、ごく一部の人間が実行しているだけですが、糖質制限食を始めた人で、元の糖質食に逆戻りした人はほとんどいません。それは、糖質制限食をすることで体調がよくなり、体型がスマートになるという効果を実感しているからです。そして、いったんその絶大な効果を体験してしまうと、もう元の「糖質食生活」になんて戻りたくなくなるものです。
糖質オフ効果はこちらで紹介されています。

いったん痩せられて体の調子もすこぶるよいのに、みっともないデブ体型になんて戻りたくないのは誰も一緒です。つまり今後、糖質制限食をする個人が増えることはあっても、減ることはないはずです。これは、一度でも携帯電話を使ってみれば、もう以前の、公衆電話を探して電話をかけていた時代には戻れないのと同じで、一度でも車に乗ってしまうと、それ以前の歩きの生活には戻れないのと同じです。

単身赴任者、独身者ほど、糖質制限生活を始めやすい

このように考えると、糖質制限を実行しやすいのは、独身者と単身赴任者です。自分で食事をコントロールできるからだ。「そんなことをいわれても、自分は料理も作れないし、料理の知識もない。バランスのとれた食事なんて自分1人で食べられるわけがない」と反論される人がいるかもしれませんが、これが大間違いです。

独身者・単身赴任者の糖質制限には、「コンビニ」や「居酒屋」という強い味方がいます。そして、居酒屋やコンビニ食では、じつに理にかなった糖質制限食が可能になります。最近のコンビニは「おかずだけ」で売っていて、種類もかなり豊富にそろっています。単品の豆腐サラダも売っていれば、レバニラ妙めの単品もあります。

ガッツリ食べたいなら、唐揚げとトンカツの合わせ技で食べてもOKです。もちろん、揚げ物の衣には糖質(小麦粉、パン粉) が含まれていますが、パンやご飯の糖質の量に比べれば許容範囲内ですからOKです。

唐揚げ1人前でも、おにぎりl個の糖質よりずっと少量なのです。そして何より、糖質制限ではカロリーを気にする必要はないし、脂質も食べ放題です。

コレステロールが多いとか少ないとか、まったく考えなくてOKなのです。そして夜は、お気に入りの居酒屋のカウンターに座って、「肉野菜妙め定食のご飯抜き」とか「ホッケ焼き定食のご飯抜き」と、「チゲ鍋一人前」でも注文して、ハイボールや焼酎のオンザロックを飲めば、ほぼ完壁な糖質制限となってしまいます。

さらに、帰宅して飲み足りなければ、ミックスナッツ( アーモンド、クルミ、マカダミアナツツの組み合わせが最高。ジャイアントコーンは糖質の塊なのでダメ) をツマミに、フルボディの赤ワインでも飲めばいいでしょう。

いずれも帰宅途中にあるコンビニで購入できる立派な糖質制限食です。

「なんだか食事の量が少なくて、満足できるのかなあ」、と心配される人もいるかもしれませんが、糖質制限食を始めてみるとわかるのですが、じつはそれほど量を食べなくても満足するように変わります。実際「糖質制限にしてみたら、1日2食で大丈夫になった」という人も、多いのです。

お昼にラーメンと炒飯を大盛りで食べていた人でもベビーチーズ2つとナッツを10粒だけで、夜まで何も食べなくても大丈夫という体質に変えることができます。

ようするに、1日3食でなく、1日2食という食事になるのです。ご飯やうどんを食べていた時、あれほど「満腹」という感覚にこだわり、1 日に3度、必ず食べていたのに、それらを食べなくなると、「満腹ではないが満足」という感覚が生まれてくるようになります。

ちなみに、人類はつい数百年前まで、1日2食が基本でした( 日本は朝食と夕食の2食、ヨーロッパは昼食と夕食の2食)。

3食になったのは、人類史ではつい最近のことです。。人間本来の食生活(=糖質をほとんど摂取しない) では、1 日2食が自然であり、3食腹一杯食べる食生活のほうが、むしろ不自然なのです。

高級和食、本格中華、イタリアンの問題

居酒屋やコンビニは「糖質制限に最適」と書いたが、これは味付けが比較的単純で、使われている食材もわかりやすいというのが理由です。たとえば、焼鳥屋さんで「焼き鳥は塩とタレ、どちらにしますか? 」と店員に聞かれたら、「塩で」と答えればいいし( タレには砂糖が多く含まれている)、「じやがバタ」なら原料がジャガイモ、「マグロの山かけ」なら山芋が使われていて、どちらも根菜類だからダメと明快です。

また、居酒屋さんで焼き魚には甘いタレがかかっている可能性はほとんどないし、その他の料理に使われている原料もだいたい見ればわかり、メニューを見てあれこれ悩む必要もないのです。

難しいのは「割烹料理屋」「懐石料亭」のような高級・本格和食店と寿司店、そして、本格的中華料理店での食事です。どちらにも、味付けの基本として砂糖が入っている食事が多いからです。中華料理の場合は、料理そのものが、基本的に「陰陽五行説」に基づいて設計されており、「味付けとは、複数の味を組み合わせて行なうもの」という基本ルールが最初にできたため、いろいろな調味料を使用するのが当たり前です。

だから中華料理では隠し味として砂糖が頻繁に使われています。そしてそれが和食の世界にも影響しているのです。

和食には「塩を振っただけの料理」も存在しますが、本格的中華料理に塩味だけの料理が存在しないのは、「料理は複数の味を組み合わせるもの」という原則があるようなのです。

さらに寿司屋にいたっては、高級店ほど、出てくる料理は「魚とデンプン」のみであり、それ以外の栄養素といったら、ガリか刺身のツマくらいしかありません。寿司屋での食事コースといえば、最後は握り寿司と決まっているわけだが、その寿司のシャリだけ残してネタだけ食べるのは、寿司屋の店主(たいていは気難しい) に対する冒涜行為に等しく、店主に嫌な顔をされるのがオチでしょう。

できるだけお寿司屋さん、とくに高級店には近づかないようにするのがいいでしょう。また、一般的なイタリアンのお店も鬼門です。パスタとピザとサラダくらいしかメニューにない店があるからです。みんながパスタをバクついているのを見ながら、1 人、サラダだけを食べる勇気が、あなたにあるでしょうか。

まわりに嫌な顔をされるのがオチです。だから、数人で会食をしたり宴会をする場合には、イタリアンのお店や寿司店にならないよう、十分な裏工作と根回しをしたほうが自分の為です。ちなみに、糖質制限メニューを売り物にしている和食のお店やレストラン、中華料理店が次第に増えています。これらのお店では、「プロの技を込めて作った糖質制限食」が楽しめるが、プロが本気で作れば、糖質制限でもここまで本格的な料理が作れるのかと、驚嘆するはずです。


角砂糖に換算

たとえば、コーラの代名詞とも言うべき超有名商品には、355 ml で39g、590ml(=20オンス) で65g、1 リットルでは108gの糖分が含まれ、それぞれ角砂糖に換算すると、約10個、約17個、約27個となる。同様に、清涼飲料水として有名な某商品は、590ml で7g(約20個)、エナジードリンクの某商品は250ml で27g(約7 個) です。

各商品の前に積み重ねられている角砂糖の量にびっくりするはずだ。「590ml で65gの砂糖が含まれている」と言われてもピンときませんが、「590ml で約17 個の角砂糖が含まれている」と言われれば、誰でもそれが尋常ではない量だということがわかります。

ようするに、コーエフ590mlを一気飲みするのは角砂糖約17個を一気食いするのと同等なのです。

角砂糖約17個を一気にむさぼり食えば、血糖が急上昇するのは当然です。まさに砂糖の塊、砂糖漬け飲料なのです。

以上はアメリカの飲料水であるが、日本の製品はどうなのでしょうか?もちろん、ジュース、缶コーヒーなど、どれもかなりの量の糖分を含んでいますが、案外盲点なのが、スポーツドリンクと呼ばれている商品です。

たとえば、スポーツドリンクの代表であり、「スポーツで汗をかいたあとのイオン補給」という概念を普及させた某有名ドリンクには、500ml中3.5g、「スポーツ後のアミノ酸補給」といううたい文句で有名な某ドリンクには、500ml中32.5gの糖分が含まれています。

つまり、大きめの角砂糖8個分を超える量なのです。糖分が少なめのスポーツドリンクにしても、500ml 中23g、つまり角砂糖6個弱です。ちなみに、これらの糖分の少ない商品には、人工甘味料が加えられていて、甘みを調整しています。

500ml のペットボトルに角砂糖8個超が入っている様子を想像してみてください。想像するだけで胸焼けしてしまう人もいるはずです。だがここで疑問です。実際のスポーツドリンクはそれほど甘くなく、むしろ、酸味や塩味の印象が強いからです。

いったいどういうことでしょうか。これは、スポーツドリンクを自作してみればすぐにわかります。

たとえば、500 mlの水に3g(角砂糖8個超)の砂糖を溶かし、飲んでみてください。

甘ったるくて飲めた代物ではないはずです。しかし、この砂糖水に、ちょっとレモンの絞り汁を加えると、甘味が押さえられ、飲みやすくなります。そしてさらに少量の食塩を加えると、それはただちに、「いつも飲んでいるスポーツドリンクの味」に変身します。

さらにそれを冷やせばとても飲みやすくなり、500mlくらいなら、一気に飲めるようになってしまうのです。

ようするに、砂糖の甘さは、少量の酸味と塩味と温度で目隠しされてしまうものなのです。

この、飲料水中の糖分を角砂糖に換算する手法は、他の食品の炭水化物の量にも使える。たとえば、6枚切りの食パン1枚には炭水化物30g、白米飯1膳・素うどん1玉には55gの炭水化物が含まれ、それぞれを角砂糖に換算すると、約8個、約14個となり、これもかなり強烈な量です。

もちろん、これらの炭水化物には食物繊維(人間には消化できない炭水化物であり、血糖は上昇させない)も含まれていて、食パンでは重量の14% 、素うどんでは10% が食物繊維ですが、これらを差し引いても、かなりの量の糖質であることには間違いないのです。

いずれにしても、「この食品の糖質は角砂糖何個分なのか?」という置換は、視覚に訴える力が強いので、人に糖質制限を紹介する際には強力な説得材料になるはずです。「今、あなたが食べている食パン1枚は、角砂糖8個分なんだよ」と言われたら、よほどの変人でないかぎり、食パンを食べる手を止めるはずです。

唐揚げ、天ぷら、フライは食べていいの?

糖質制限食をするなら、あまり生真面目、ストイックに考えないほうが長続きするし、「なんちゃって糖質制限食」程度でも、それなりに効果が目に見える形で現れることが多いのです。

優等生タイプの人ほど、「この食品には糖質が何%含まれているのか?」と食品交換表と首っ引きで電卓で計算したりするが、糖尿病患者でない一般人は、そこまで突き詰める必要はないでしょう。

それに、糖質制限食が軌道に乗ってしまうと、その食品に糖質が入っているかどうかは体が教えてくれます。いわゆる「糖質センサー」です。

たとえば、魚肉ソーセージやチーズかまぼこに、どのくらいデンプンが含まれているか疑問に思ったら、食品交換表を見るより、とりあえず食べてみるほうが手っ取り早いでしょう。食べた直後に「変な重ったるい感じ」があったら、まず間違いなく、相当量のデンプンが含まれているはずです。

糖質制限に体が慣れてくると、口に入れて噛んだだけで、「何となく糖質が多そうだ」という山勘というか、糖質センサーが働くようになってきます。

同様の理由で、唐揚げやフライの衣に含まれる糖質は、問題になるほどの量ではないことがわかるでしょう。さすがに衣が分厚い天ぶらやフライをたくさん食べると、「センサー」が作動して警告音が聞こえるのですが、フライドチキンや唐揚げ(これらはもともと衣が厚くない)では、警告音は小さく聞こえるだけなので、とりあえず安全な食品として認知していいでしょう。

糖質オフのアルコール

糖質ゼロのビールも数が増えてきて、味もかなりビールに近づいていて、生活も楽しめるようになっているのは感謝しなければいけません。。そして、糖質ゼロをうたい文句にした缶酎ハイも続々と増えてきました。これらはそれなりに甘いのですが、その甘みは血糖を上げない人工甘味料によるもので、砂糖の甘さとはまるで違う特徴があります、

実際に口にししても、「糖質特有の重ったるい甘さ」とは別物であり、糖質摂取時に見られる症状は出現しません。

ただ、1つ注文をつけるとすると、もう少し甘みを減らしてくれないかなと思います。現時点では、甘みがほとんどゼロの「糖質ゼロ缶酎ハイ」は数種類販売されていますが、それ以外は、人工甘味料とはいえ、甘すぎてしまうのです。
これはおそらく、これらの缶酎ハイの作り手側が、「酎ハイとは甘いものだ」という先入観を前提に、糖質ゼロ缶酎ハイの味を決定したからではないかと思います。砂糖で甘みをつけた缶酎ハイの味に似せようとするから、このような甘さになったのでしょう。
糖質オフの缶酎ハイはこちら。

糖質制限食とエンゲル係数の関連性

糖質制限を本格的に始めると、まず最初に直面するのが、「エンゲル係数」の増加です。つまり食費がかかるという問題に直面します。何しろ、米も小麦製品も、コスパがいいのです。安くてお腹一杯食べられ、金をかけずにお腹をふくらませることができ、満腹感を与えてくれるのが炭水化物でもあります。

まさに懐がさびしい人の強い味方である。これは、世の中の大盛りのお店のご飯やラーメンの量、カップ麺の値段と麺の量を見れば一目瞭然です。同様に、お代わり自由のお店は、判で押したように「ご飯のお代わりが自由」です。米や麺類が安いからこその「お代わり自由」なのです。

ところが糖質制限は、その「安くて腹一杯食える炭水化物」を食べない食事法です。となると必然的に、食事から炭水化物(糖質)を減らした分を、何かで補う必要があるのです。

その「何か」とは、タンパク質と脂質以外に候補がありません。ところが、タンパク質も脂質も、炭水化物より値段が高いのです。

これではエンゲル係数が上がるのは当然です。

実際、どんぶり飯の分のカロリーを、豚肉や牛肉で補おうとすると、ちょっとした値段になってしまいます。ちなみに、米の値段(米価) が安いのは、米の消費量以上に米が生産されているからです。

日本人1人あたりの米の消費量は、1962年がピークで118キロでしたが、2010年には58キロ以下となっていて、この50年で半分に減っていることがわかります。一方、米の総生産量は、19677年の1445万トンをピークに次第に減少し、2009年には847万トンとなっていて、50年前の約60%です。つまり、生産量も減ったのですが、それ以上に消費量が減少したため、米が市場で余っていて、低価格にしないと売れないという状況になっています。

その米を食べなくなるのですから、糖質制限をするとエンゲル係数が上がるのは避けられないと考えるのが当然です。ところが、実際に糖質制限をしてみるとわかるのですが、開始と同時に一時的にはエンゲル係数は上がるものの、糖質制限食に体が慣れてくると、エンゲル係数は次第に減少していきます。

その理由は次の3つです。
第一に、豆腐などの値段の安い大豆製品がご飯代わりになります。カレーライスのご飯代わりにしている人もいるし、某牛井チェーンでは、ご飯の代わりに豆腐を使った牛井が正式メニューになっています。

第二に、糖質制限をすると、それほど「量」を食べなくても満足するようになります。糖質制限食を実際にしている人の間では「1日2食」にしている人が多く、厳密に糖質摂取量をゼロにしている人には「1日1食」の人も珍しくないのです。

空腹感がないため、それ以上食べる必要がないというほうが表現的には正しいのでしょう。しかも、1食分の食事の量は、ご飯を食べていたころより明らかに減少します。

米やラーメンを食べていたころは、「1人前の食事を食べ切らないといけない」と無意識に考えてしまい、必要以上に食べてしまっていたのですが、糖質制限すると、「満腹ではないが満足」という感じになり、満腹まで食べる習慣がなくなり、結果的に食事量は減少します。

第三に、「減らした糖質のカロリーを肉で補わないといけない」という考え自体の間違いなのです。「食べ物のカロリー数」という概念そのものが間違っていて、摂取した食べ物に含まれる栄養素やカロリー数と、食べ物から得られる栄養素とカロリー数は、じっはまったく無関係だからです。

生活習慣を変えることで血管のアンチエイジングを高める

血管年齢を若く保つことは、血管からくる重大な病気を予防するだけでなく、肩こりや腰痛、冷え性といった未病から、生活習慣病をはじめ、重大な病気をも遠ざけてくれます。できるだけ血管のしなやかさを保つ努力をして、快適な日常生活を送りましょう「食生活」「運動」「睡眠法」「心の持ち方」に分けてご紹介していきます。

血管をきれいに保ち、血管年齢を若く持つ方法

血管を流れる「血液の質」は、食生活、運動習慣、睡眠、ストレスなどに大きく影響を受けます。健康であれば血液の成分はバランスよく保たれていますが、食生活の乱れや運動不足、睡眠不足、過度なストレスなどによって、血液中に「脂質」や「ブドウ糖」が増えすぎたり、血圧が上昇したりすることがあります。

このようないわゆる「汚れた血液」は、「血管内皮細胞」を傷つけ、「NO力」の低下や、動脈硬化を進行させる原因となります。「血管力」を高める努力をしながら血管内を流れる血液をきれいに保つのが健康への一番の近道です。

大事な生活習慣

  • 肉よりも魚が好き
  • 朝はサラダや野菜ジュースをとっている
  • 野菜を好んで食べる(意識して食べるようにしている)
  • 最初に野菜を食べ、ごはんは最後に食べる
  • 食事はゆっくりとよく噛んで食べる
  • 夕食は夜8 時までにすませる
  • アルコールは適度に飲んでいる( 1 日にビール中瓶1 本程度)
  • レストランやカフェではいつも禁煙席
  • 1~2 階の移動であれば階段を使う
  • 昼食後にウォーキングなど体を動かしている
  • 夕食後の軽い運動を習慣にしている
  • 睡眠時間は6~7 時間とっている
  • 翌日に眠気を生じないように睡眠できている
  • 仕事はがんばるけれど、適度にリフレッシュして
  • 人間関係に悩まされていない(職場も家庭も和やかな雰囲気である)
  • 目標は高すぎず、低すぎないものにしている
  • 人の意見を聞くようにしている(意固地・頑固といわれることがない)

血管を若く保つ生活「効果は実証済み!「EPA」を多く含む魚を食べる

血栓の予防にEPA・DHA
青魚に多く含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」には血管内皮細胞の働きを助ける作用があります。これはさまざまな調査や研究で明らかにされており、青魚を積極的に食事にとり入れるようアドバイスしています。

野菜をほとんど食べないイヌイットに、心臓病が少ない理由

血管と魚の摂取量との関係は、1970年代にデンマークで行なわれた疫学調査の結果から注目されるようになりました。

まぐろ、かつお、さば、さんま、鮭の水煮缶詰にはEPAが多く含まれているのでおすすめです。ただし、油漬けや抽入り水煮の缶詰には植物油が使われているので「血管力」を高めるためにはおすすめできません。逆効果になってしまいます。

「どうしても魚は苦手…」 という方にはサプリメントがおすすめです。実際、EPAのサプリメントを飲んで運動を習慣にしただけで、血管年齢がかなり改善されたという方も多数いらっしゃいます。それだけ、目に見える効果があるということです。

EPAを多く含む魚

100g中に含まれるEPAの量

  • マグロ・トロ(1400mg)
  • はまち・養殖(980mg)
  • 真いわし(1200mg)
  • さんま(890mg)
  • 真さば(500mg)
  • 秋捕り・戻りがつお(400mg)

血管を若く保つ生活「肉は食べていいの?いけないの?」

現代人は、肉や脂をとりすぎる食習慣が当たり前になっており、「肉を食べると長生きできない」などという健康法が注目されています。「肉=悪」という表現もよく目にします。

「肉は食べないほうがいいって聞いたのですが…」などと心配そうに聞く方も多いです。魚を食べることはもちろん大切なのですが、だからといって「肉を食べないほうがよい」というわけではありません。健康で長生きしている方の食生活をうかがうと、90歳を超えても肉をしっかり食べているようです。肉ばかり食べているわけではありませんが、「好物はステーキ」とおっしゃる長寿の方は本当に多いのです。

やはり、若々しく、元気に長生きするためには、肉も適度に食べたほうがいいでしょう。血管の材料となるアミノ酸はタンパク質からつくられます。丈夫な血管を維持するためには、質のよいタンパク質をとることが大事です。肉にはそれが豊富に含まれています。

「EPA」と「アラキドン酸」のベストバランス

また、肉と魚をバランスよく食べるようにすると、「脂肪酸」のバランスもとれます。脂肪酸とは、脂質を構成する成分で、いくつか種類があります。大きく分けて、常温で固まる「飽和脂肪酸」と、常温でも固まらない「不飽和脂肪酸」があります。

冷えたラーメンのスープに浮かぶ白いかたまりや、脂身の多い肉を煮込んだときにできる煮こごりなどが常温で固まるのを目にしたことがあるはずです。あれが、「飽和脂肪酸」です。牛肉や豚肉、鶏肉など肉の脂身のほか、ヤシ油やパーム袖に多く含まれています。

一方で、常温でも固まらず、液体の状態を保つ植物油や水中に棲む動物の脂は「不飽和脂肪酸」です。不飽和脂肪酸は、さらに一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。このなかでもとくに注目されているのが、「多価不飽和脂肪酸」の「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」です。

油を味方にする、現代人はオメガ9 系を積極的に摂ることで効率よく健康的に痩せる オメガ3、6、9についてによればダイエットの世界でもこのオメガ3、6、9の摂取を無視できない状況になっていることがわかります。いい油と悪い油があることをしっかり理解する必要があるのです。血管の若返りにもダイエットにもいい油は必要で現代人は不足気味であるということです。

しかも、この2つは体内で合成できないので、食事での摂取が必要となっています。

現代人は積極的に摂取!注目の脂肪酸

オメガ3系脂肪酸
魚油、アマニ油、エコマ油などに多く含まれていて、体内でEPA変換される。魚にはもともとEPAとして含まれている
オメガ6系脂肪酸
大豆油、コーン油、紅花油、ひまわり油などに多く含まれ、体内でアラキドン酸(AA )に変換される。アラキドン酸は肉にも含まれている。
  • 「オメガ3系脂肪酸」は動脈硬化を予防
  • 「オメガ6系脂肪酸」を過剰に摂取すると動脈硬化を促進する

ことがわかっています。

そう聞くと、「オメガ6系脂肪酸は悪者! 」と思われてしまうかもしれませんが、そう簡単な話ではないのです。血液中のEPA とAA(アラキドン酸)の比(EPA/AA 比)を調べると、理想的な数値は「1」で、この数値が低い人ほど動脈硬化による「血管事故」を発症しやすいことがわかっています。
また、最近の研究で、「オメガ6系脂肪酸」の摂取量が増えると「オメガ3系脂肪酸」の作用が弱まり、「オメガ3系脂肪酸」が増えると「オメガ6系脂肪酸」の作用が弱まるという、シーソーのような関係にあることがわかってきました。

そのため、最近では「オメガ3 系脂肪酸(EPA)」ばかりとればいいというわけではなく、「オメガ6系脂肪酸(アラキドン酸/AA)」とのバランスが重要視されるようになってきました。とはいうものの、アラキドン酸はベジタリアンでなければ十分とれているので、意識してたくさんとる必要はありません。現実的に、いまの日本の食生活でアラキドン酸が不足することはほとんどありません。ただしEPAが足りないのは間違いないので、積極的に魚を食べるようにしましょう。

日本人は欧米人に比べると理想的な数値に近いのですが、それでもEPAが不足しています。しかも、日本人全体の平均数値なので、35歳未満では欧米人に近い数値となっています。逆に、65歳以上の高齢者は魚をよく食べているのでもう少し1に近い数値になつていることでしょう。

調理用に使う油

調理油としておすすめしたいのが、オリーブ油です。オリーブ油は一価不飽和脂肪酸」を多く含み、悪玉のLDLコレステロールを減らし、善玉のHDLコレステロールは減らさないことが確認されています。また、「オメガ6系不飽和脂肪酸」のリノール酸と違って、「オメガ3系不飽和脂肪酸」のEPAと競合しない点も長所といえます。
腸ストレスから自分の腸を守るために効果的なエキストラバージンオリーブオイルのように質の高いオリーブ油は、腸にも効果的です。

さらに、熱に強いオリーブ油は、加熱すると変性しやすい「オメガ3系不飽和脂肪酸」の強力な助っ人といえます。動脈硬化予防に役立つので、オリーブ油を積極的に活用しましょう。ただし、とりすぎは厳禁です。カロリーの過剰摂取となり、メタボを招き「血管力」を下げてしまうことになります。

血管を若く保つ生活 動脈硬化に効く野菜

健康長寿、病気予防には野菜をたくさんとったほうがよいということは、世界中のさまざまな調査・研究で検証・確認されています。心筋梗塞や脳卒中など血管の病気予防についても、野菜の摂取がよいという研究報告がたくさんあります。

こうなると、やはりみなさん「どの野菜を食べればいいの? 」ということが気になりますよね。世の中には、動脈硬化に効く、中性脂肪を下げる、血液をサラサラにするなど、さまざまな謳い文句があふれています。しかし、ズバリ申し上げますが、特定の野菜が、特定の病気や症状を劇的に改善することはありません。

怪しげな情報に躍らされて、特定の野菜だけをたくさん食べるなんてあまり意味のあることではありません。

なぜ野菜は血管にいいのか?

血管の病気に関していえば、野菜に含まれる「カリウム」が、血圧を上昇させる「ナトリウム」の排泄を促して血圧を安定させ、「血管内皮細胞」を守ります。

また、野菜に含まれる「食物繊維」も血管のサポートに一役買っています。食物繊維の中でも、水に溶ける「水溶性食物繊維」には、血液中のコレステロールの排泄を促し、脂肪を分解する酵素の働きを助ける作用があり、血管内皮細胞を守ります。
「野菜・きのこ」身近な健康食材・美容食材 | 効果アップの食材食べ合わせ

ほかにも、野菜にはエネルギー代謝に欠かせない「ビタミン」「ミネラル」が含まれています。炭水化物や脂質、タンパク質が車を動かすガソリンだとしたら、ビタミンやミネラルはエンジンオイルのようなもの。
どちらが不足しても代謝がスムーズにできませんから、野菜をしっかりとるよう心がけることは大切です。

また、野菜には「フラボノイド」や「カロテノイド」など、人体で重要な役割を担う「微量栄養素」を含んでいます。これらは、さまざまな種類があり、たくさんの野菜にごく微量ずつ含まれています。どれかひとつだけとるのではなく、複数の野菜をたくさんとるようにしましょう。

厚生労働省がすすめる「健康日本21」では、1日に緑黄色野菜を120 g、淡色野菜を230 gとるようすすめています。血管のためにはこれにプラス50 g、1日400 gを目標にしてみてください。参考までに野菜の目安量を挙げておきます。

緑黄色野菜
淡色野菜

血管を若く保つ生活「塩分は1日8グラム」

塩分の過剰摂取は高血圧を招き、血管に負担をかけます。

「血管力」のためには、塩分を控えた食事を心がけましょう。食卓には塩しょうゆ差しが常備されていて、なんにでもかけてしまう人や濃い味が大好きという人は、間違いなく塩分を過剰にとっています。血管もかなりのダメージを受けていることでしょう。
割り醤油をうまく活用することで減塩に
塩分が血圧を上昇させるメカニズムは、塩分をとると血液中の「ナトリウム」濃度が上昇します。血液の成分は常に一定になるようコントロールされているので、血液中のナトリウムの濃度を薄めるために、体は血液中の水分を増やそうとします。塩辛いものを食べたときにのどが渇くのは、体が水分を欲しているためです。

そうすると、血管を流れる血液の量が増え、血管内の圧量が上昇して血圧が高くなります。全身に送られる血液量が増えるので、心臓はより多くの血液を送りだそうとして強く収縮し、それによってさらに血圧が上昇します。また、血液中のナトリウムが血管の内膜や中腹に侵入すると、血管内皮細胞がむくんでしまい、その機能が低下してしまいます。血管の筋肉中にナトリウムが入り込むと、交感神経が刺激されて血管が収縮してしまい、高血圧を招くことになります。塩分の過剰摂取は、こうしてさまざまな側面から血圧を上昇させ、血管に負担をかけて動脈硬化の進行につながってしまいます。

楽しみながら減塩生活を定着させる

食事で摂取する塩分の量を減らせば、塩分の過剰摂取による高血圧は予防・改善することができます。ただし、塩分をとったときにどのくらい血圧が上昇するかという、「食塩感受性」は人によって異なります。塩分を控えても血圧が下がりにくい、逆に塩分をたくさんとっても血圧が上がりにくいというケースもあります。

とはいえ、継続的に塩分を多くとっていると、徐々に「食塩感受性」が高くなつていくので、いずれにせよ血管のためには減塩を心がけましょう。高血圧学会は、高血圧予防のためには「塩分の摂取量を1日6 g未満」としていますが、日本の食生活を考えると現実的には難しいと私は感じています。

多くの方が「1 日6 g はつらいです」「ごはんがおいしくありません」といった言葉を聞くことが少なからずあります。食事は毎日の楽しみのひとつです。せっかく食べるのであれば、おいしいごはんを食べたいに決まっています。
減塩にこだわるあまり、食のおいしさが失われてしまっては本末転倒です。ただ、塩分のとりすぎはよくないことは間違いありません。6 gは難しいにしても1日8 gを目指してみませんか。減塩でも工夫しだいでおいしい食事になります。具体的な実践方法をいくつか紹介するので参考にしてください。
血圧が高い人は、発酵黒豆エキスがおすすめです。

糖尿病にも有効!食べる順番

ふだん食事をするときに、「食べる順番」を意識されていますか?食べる順番を変える、ただそれだけで「血管力」を高めることができます。

やり方は簡単です。野菜から先に食べて、ごはんを最後に食べるだけです。「そんな単純なことで」と驚かれるかもしれませんが、これは糖尿病の治療にも有効な食事療法として認められていて、近年、注目されています。野菜から食べることでどうして「血管力」がアップするのか、わかりやすくご説明しましょう。

メリット1「野菜を食べるようになる」
野菜から食べることを意識すると、それだけで野菜を食べる量が増える
メリット2「よく噛んで食べるようになる」
野菜には「食物繊維」が多く含まれているので噛みごたえがあり、自然によく噛んで食べるようになる。よく噛んで食べると、満腹感を覚えやすく、食べ過ぎ予防にもなる。早食いの人は、お腹いっぱいと満腹中枢が指令を出す前に食べきってしまうので、食べ過ぎてしまう。
メリット3「塩分が控えられる」
ごはんと別におかずだけ食べると、ふだんの味つけを濃く感じるようになる。自然と薄味になって、減塩につながる
メリット4「食後の血糖値を抑えられる」
ごはん、パン、めん類、いも類など炭水化物を多く含むものを先に食べると、食後に血糖値が急上昇するため血管に負担がかかる。野菜から先に食べると、糖質の腸管での吸収がゆるやかになり、急激な血糖値の上昇を避けることができる。炭水化物を最後に食べるので、食べ過ぎ予防にもなる
メリット5「中性脂肪やコレステロールが改善する」
血糖値が急上昇すると、使い切れずに余ったブドウ糖は中性脂肪として蓄積される。野菜から食べると中性脂肪の数値も下がるケースが多く、その後、コレステロールの数値も改善することがある。
https://108-blog.com/blood-s/

食べる順番を変えるだけで、こんなにいい効果につながるのですから、食事のときは「野菜から食べる」を意識して実践してみてください。それだけで「血管力」がずいぶん高まるはずです。

血管を若く保つ食生活「脂肪をため込みやすい時間」に注意」

肥満(メタポリックシンドローム) は「血管力」を低下させる大きな要因です。肥満の予防・改善は「血管力」アップには欠かせません。1回の食事の中の食べる順番だけでなく、食事をする時間帯を意識するだけで肥満予防になります。

「BMAL1(ピーマルワン)」という物質をご存じですか?私たちの体内には、ある一定のリズムが存在しています。夜になると眠くなり、朝になると目覚めるのは、体がこのリズムに沿って生命活動を営んでいるためです。
このリズムは「体内時計」と呼ばれます。BMAL1は体内時計に関係する遺伝子であると同時に、脂肪の分解を抑制して体内にため込みやすくする働きがあります。

最近の研究で、BMAL1は1日のうちの時間帯によってその強さが変化することが明らかになりました。夕方6時ごろから徐々に作用が強くなり、深夜2時ごろにもっとも強くなったあとで、徐々に弱まっていきます。BMALlの作用が強い時間帯に食事をすると太りやすく、BMALlの作用が弱くなる時間帯に食事をとると肥満予防になります。

つまり、

  • BMAL1の作用がもっとも弱い午後2時前後に昼食を食べる
  • BMAL1の作用が強くなる前の夕方6時ごろに夕食をすませる

これが太りにくい食事のベストタイミングです。

ただ、仕事によっては、難しいこともあるでしょう。夕食を6時に食べるのは難しいので、昼食を2時前後にとっています。夕食は8時ごろに自宅で手料理を食べ、朝食は野菜ジュースだけにしています。朝食を野菜ジュースだけにしているのも、BMAL1の影響を考えてのことです。

実は、朝6時は夜の10時ごろと同じくらいBMAL1の作用が強くなるタイミングです。そのため、朝食をしっかり食べると太りやすくなるのです。一般的には朝食をしっかりとったほうがいいとされていますが、夕食を遅い時間にしっかり食べる人は、朝食は軽くすませたほうがよいのです。もしくは夕食を軽くすませて朝食をしっかりとるかです。

血管を若く保つ食生活「適量のアルコールなら百薬の長」

風呂上がりのビールはやめられない、そんな人は多いのではないでしょうか。ストレス解消のためにお酒を飲む人もいらっしやるでしょう。アルコールは適度にとれば「血管力」を高めてくれます。飲み方に注意すれば、「酒は百薬の長」となるでしょう。

九州大学が福岡県久山町で行なった大規模な疫学調査によると、少量のアルコールの摂取は脳梗塞の予防に役立つという報告があります。まったく飲まない人よりも、適量のアルコールを飲んでいる人のほうが、脳梗塞の発症率が低かったそうです。そのほか、適量のアルコールが心疾患の発症予防に役立つことや、死亡のリスクを減らすなど、少量の飲酒を支持する研究データが発表されています。

適度なアルコールは血液循環をよくするので、「NO」の分泌を促してくれ、「血管力」アップに効いているのでしょう。ただし、飲み過ぎは厳禁です。1日の適量を守り、1週間に1日は休肝日を設けてお酒と上手につきあうようにしてください。参考までに、男性の1日の適量をご紹介します。女性はこれらの分量のおよそ半量と考えましょう。
日本人が肝臓の心配をせずに飲める量 | 健康マニア

お酒の種類ごとの1日の適量
  • ビール(中瓶1本程度)
  • 日本酒(1号程度)
  • ワイン(グラス2杯程度)
  • 焼酎(半合弱)
  • ブランデー(ダブル1杯程度)
  • ィスキー(1杯程度)

脳卒中のリスクを高める食事はこちら。

血管を若く保つための運動

運動は「食後30~60分」が効果的

運動で「血管内皮細胞」を直接刺激すると、「NO」の分泌が促されて「血管力」アップにとても効果的です。ここでは運動するタイミングや、より効果を高めるポイントをご紹介しましょう。

運動をするタイミングについて質問されることが多いのですが、この判断は専門家によって異なります。私は、食後、高血糖を早めに安定させるということを考えて、食後の運動をおすすめしています。

血糖値は食後1~2時間後にもっとも高くなります。このとき消費しきれなかったブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられたり、脂肪細胞に貯め込まれたりしてしまいます。食後に運動をして血液中のブドウ糖を使うと、高血糖状態が早めに改善されて中性脂肪へ合成される量が減り、「血管力」のサポートになります。

「食事をしてから30分から1時間以内に10分程度歩きましょう」とおすすめしています。
食後30分ほどは消化のために体を休ませて、食後1時間までの間に10分程度の有酸素運動を行なうようにしましょう。少し食べ過ぎたときや体重を落としたいときには、これにさらに10分追加するなどするとよいでしょう。

1回の運動時間は10分でも、1日3回行なえば合計30分。1日の運動量としては十分です。

かつては、運動は連続して20分以上行なわないと効果が出ないといわれていましたが、そんなことはありません。確かに、連続した運動で調べると内臓脂肪や皮下脂肪は20分を過ぎるころから使われ始めますが、血液中のブドウ糖は10分程度の運動でも燃焼されます。

食後血糖値を下げて「血管内皮細胞」への負担を減らすには、10分の運動でも十分に効果があります。

朝のウォーキングがよくない理由

朝は運動に適していない時間帯なので、連動は昼食後や夕食後、おやつのあとなどがおすすめです。朝の運動は、もともと血圧が高い人や高齢者には危険なので控えたほうが安心です。心筋梗塞や脳卒中の発作は、起床後1時間以内、もしくは午前中に多く起こるといわれています。

午前中は副交感神経が優位な状態から交感神経が優位な状態へと切り替わる時間帯なので、血管が収縮して血圧が上がりやすくなっています。そんなときに運動をすると、血管に負担がかかってしまいます。運動をするなら午後からにしましょう。
どうしても朝に運動したいのであれば、少し早寝早起きをして、水分補給だけか軽めの朝食をとり、起床後1時間ほどたつてからウォーキングすることをおすすめします。

食べ過ぎてしまった日には「なかったこと運動」でリセット

とくに夕食後の運動をおすすめしています。夕食後は昼休みに比べると時間が多くとれるので、15分もしくは10分を2セットなど、まとまった運動をすることができるのではないでしょうか。
食べ過ぎたときには糖質カット酵母で食後の血糖値の急上昇もなし「パクパク酵母くん」なども活用すると尚、効果的です。

夕食後の運動を「なかったこと運動」と言うことにしています。その日、食べ過ぎた食事を運動によって「なかったことに(消費)」するからです。ブドウ糖が脂肪になつて蓄積する前に、こまめな運動で血液中のブドウ糖や脂質を使いきれば、肥満の予防・改善だけでなく、「血管内皮細胞」への負担を減らすことにもなります。

1食で食べ過ぎたとしても、1回であればそれほどたくさんではありません。その日のうちに運動で解消できるのであれば、毎日こまめに運動したほうがいいに決まっています。また、夜はBMAL1 の作用が強いので、夕食を食べ過ぎると、そのまま脂肪に蓄積されてしまいます。

その予防や改善にも食後の運動が効果的です。家の中で手軽にできる運動として、「踏み台昇降運動」をおすすめしています。踏み台昇降運動は、階段を一段上ったり下りたりするだけの簡単な動作です。階段がない場合は、15〜20 センチの高さの踏み台を用意しましょう。

「本を重ねて台にした」という方がいらっしやいましたが、これは安定せず危険なので絶対やめてください。手ごろな高さの台が見つからなければ、ウォーキングをおすすめします。ウォーキングなど有酸素運動をしたあと、水分補給をしてから入浴し、入浴から1〜2時間経ってから就寝するのが理想的です。雨の日や冬の寒い日には、家の中でも有酸素運動が可能です。テレビの前で大きく腕を振り、足を高く上げてその場でウオーキングしましょ、つ。もう少し運動量を増やしたい場合は、その場で軽くジョギングしてみてもいいでしょう。

部屋の中で運動をしたい人はこちらです。NHKでスローステップ運動として紹介されました。スローステップ運動は台の上をのぼったりおりたりする運動です。階段などを使えばお金は一切かかりません。階段などがない場合は、スローステップ台を購入するといいでしょう。

若くつ睡眠、血管は睡眠中に修復される

血管のためにも、ぐっすり眠るようにしましょう。とはいえ、現代人は「眠れない」という悩みを抱えている人が少なくありません。働き盛りの30~50代は、忙しさから睡眠時間があまりとれず、平均睡眠時間は2~3時間という人が多いのも現代人の特徴です。

体に不調があらわれたり、病気をすると、はじめてまずいと感じ、意識して睡眠時間をとるように生活習慣を変えたり、仕事そのものを変えるケースが多いです。

私たちは睡眠をとることで脳や体を休息させています。睡眠の直後から3時間ほど分泌されるという「成長ホルモン」は、体内の新陳代謝を促して、体が受けたダメージを修復します。

入眠3時間後に成長ホルモンの分泌がピークになる
実は、血管も睡眠中に修復されているのです。

また、睡眠中は「副交感神経」が優位になって、心身ともにリラックスした状態です。心拍数が下がり、血圧も下がるため、血管への負担が減ります。ぐっすり眠ることが「血管力」を高めているのです。

短すぎる睡眠時間は「交感神経」の緊張を招くので、血管にはよくありません。寝不足が続くときには、ほぼ例外無く血圧が上昇しています。また、睡眠不足は食生活にも悪影響を与えます。満腹感を得られにくくなったり、食欲を出させるホルモンが出たりするので、睡眠不足だとふだんより食べてしまうのです。

深夜になるとお腹がすいてくるのはそのせいです。BMAL1の作用が強い、太りやすい時間帯にバクバクと食べていれば、メタポへまっしぐらとなるでしょう。

眠れないでいると、体の疲れがとれず、翌日の行動にも支障が出てしまいます。体を動かすモチベーションが下がるので、運動不足から肥満につながることも指摘されています。毎日をすこやかに過ごすためにも、ぐっすり眠るようにしましょう。
眠りが浅い、寝付きが悪い、途中で目が覚めてしまうなどで睡眠トラブルを抱えている場合は、快眠ぐっすり酵素「セロトアルファ」で睡眠薬が不要に をごらんください。
副作用や常習性がなくて安心です。

医学的な面から最適な睡眠時間は?

どのくらい眠ればいいのですか? 」という質問をよく受けるのですが、必要な睡眠時間は人によって異なります。6時間眠れば充分という人もいれば10時間以上眠らないとつらいという人もいます。

睡眠時間は、短過ぎても長過ぎてもよくありません。実際、睡眠時間が5時間未満、8時間以上というケースで病気が起こることが多いといわれています。
6~7時間くらいが死亡率の低い睡眠時間とされています。2014年春、厚生労働省から『健康づくりのための睡眠指針2014』が発表されました。
この中で、日本人の成人の睡眠時間は6時間以上8時間未満の人が約6割を占めており、これが標準的な睡眠時間と考えられるとしています。

さらに、睡眠時問は加齢とともに減っていき、10代前半までは8時間以上、25歳で約7時間、45歳には6.5時間、さらに65歳になると約6時間というように、20年ごとに30分くらいの割合で減少していくものだとしています。

ただ、仕事や家事に追われている年代が睡眠時間をしっかりとるのは難しいでしょう。そんなときには、少ない睡眠でも心身が回復できるよう、ぐっすり眠る「熟睡」を目指しましょう。熟睡できるかどうかは眠る前の過ごし方にかかっています。よい睡眠をいざなうポイントを紹介したいと思います。

質のいい睡眠がいい血管をつくる

  • 夕方の居眠りは夜眠れなくなるので避ける
  • 自分に合った寝具(枕や布団)を選ぶ
  • ニコチン、アルコール、カフェインは寝つきを悪くするうえ、利尿作用があるので夜中にトイレで目が覚める。寝る前の日本茶やお茶、コーヒー、多量の飲酒、喫煙は避ける
  • 寝る前には38~40度のぬるめの湯に入る(熱い風呂に入ると交感神経が優位になって眠れなくなる)
  • 寝る前は激しい運動は避け、軽いストレッチで副交感神経を優位にさせる
  • 静かな音楽を聴く、照明を落として過ごすなど心身をリラックスさせる
  • 眠れないときにはいったん布団から出て気分転換するとよい
  • 夜、眠る前のテレビやインターネット、読書などは避ける

血管を若く保つ心の持ち方 その1

ストレスは、血管を収縮させて血圧を上昇させ、「血管力」を低下させてしまいます。ストレスと上手に付き合い、血管に負担をかけないようにしましょう。ただ、現代社会ではストレスを避けて通ることは難しいでしょう。
とくに、人への怒りやイライラ、嫉妬などは、交感神経を盛大に刺激して、血圧を上昇させます。怒りは、相手が思い通りにならない、自分と違う意見を持っているときに湧きやすいものです。こうしたストレスをためないためには、「相手を変えようとしない」ことが大切です。
現代人のストレス

医師は患者さんに「生活習慣」を変えていただくようお願いすることがあるのですが、患者さんの「考え方」や「価値観」を変えようとは思っていません。患者さん自身が病識を持っていただけるように、生活習慣の乱れや生活習慣痛が、実際に自身の血管力にどれだけ悪影響しているかを、感覚的にわかりやすいデータを見せながらお話しするようにしています。

その結果、どうしたいのかを自分で選択していただくのです。喫煙者に禁煙をすすめた結果、険悪な雰囲気になるとお互いにストレスがたまりますよね。でも、現実問題として血管年齢が20歳も老化して、あげくに首の血管の壁には動脈硬化のコブができてしまっているとなれば、自ら禁煙したいといい出すことになるでしょう。
それでも禁煙しないというのならそれでよいことにするわけです。

相手を変えようとしてイライラするのではなく、自分が変わればいいと思えば「まあ、いいか」と思えるようになります。そうすれば、「どうしてこうなんだ」と怒りが湧いてくることもありません。むしろ、「そういう考え方もあるんだ」と相手を認められるようになります。

もちろん、治療のためにやっていただきたいことは、わかっていただけるまで根気よくご説明します。「どうしてできないの」と思うのではなく、「どう説明すればわかってもらえるか」と考えるようにしています。相手を変えるよりも自分が変わる、それがストレス対策の第一歩ではないでしょうか。

血管を若く保つ心の持ち方 その2

頭に上った血をスッと下げる「呼吸法」

昔に比べれば、随分カーッとなることは減りましたが、ときには「ムカッ」とすることもあります。また、「怒りをしずめるにはどうすればいいんですか」と悩んでいる方もいらっしやいます。そんなときにおすすめしているのが「腹式呼吸」です。腹式呼吸を行なうと、ストレスで緊張した筋肉がほぐれます。体がほぐれると気持ちもほぐれてすっきりします。「リラックス腹式呼吸」はオフィスでもできますので、イライラしたときにはやってみてください。

血管を若く保つ心の持ち方 その3

怒り=たばこ3本分のストレス

考え方を変えても、腹式呼吸をしても、どうしても怒りがおさまらない。そんなときはメモをとっておきましょう。なぜ怒ったのか、相手が何をしたのか、そのとき自分はどう感じたのかを書いておくのです。えんま帳のようなものですが、書くことで冷静になったり、客観的になったりするので、気持ちを落ち着けるのにはいいのです。
あとで読み返したときに、「これくらいのことだったのか、まあいいや」と思えればしめたものですし、「こうならないためにはこうしよう」と対策をたてることもできます。

血管の老化を加速させてしまうリスクファクター5つについて

「動脈硬化」の恐ろしさをあらためて知るとやっぱり恐怖を感じます。動脈は、365日、24時間休まずに働いています。しかも、心臓からは1日約8トンもの血液が全身に送り出され、それが動脈を通過していくのです。ですから、動脈の血管が時間とともに少しずつ傷んでくるのは当然といえるのです。血管は、目に見えないだけにかりにくさも当然あります。

さらに、これから挙げるような病気や「リスクファクター( 危険因子)」がある場合は、動脈硬化がより速く進行していきます。

  1. 喫煙
  2. 高血圧
  3. 脂質代謝異常
  4. 高血糖
  5. 肥満(メタボリックシンドローム)

この危険因子は、そのまま心筋梗塞や脳卒中など、「血管事故」のリスクを表わすとさどういうことかというと、
『健康な人が血管事故を起こす危険度を1』とすると、『「喫煙」「高血圧」「高血糖」「脂質代謝異常」という危険因子が、ひとつ加わるごとに危険度が3倍以上になる』
というのです。

これは、名医の提唱する「3倍の法則」です。リスクがひとつだと3倍ですが、ふたつで9倍、3つになるとなんと27倍です。加速度的に増えていく危険度はおそろしいものがあります。血管へのダメージを少しでも減らし、動脈硬化のリスクを下げるためには、まずこれらの危険因子の改善から始めましょう。

4つの危険(喫煙、高血圧、高血糖、脂質異常症)がそろうと

  1. 1つの危険をもっていると!3倍の危険率
  2. 2つの危険をもっていると!9倍の危険率
  3. つの危険をもつていると!27倍の危険率
  4. 4 つの危険をもっていると!81倍の危険率

悪の絶対的工1ス「喫煙」

いうまでもないことですが、「喫煙」は血管を老化させてしまう大きな要因です。その弊害は大きく、危険リスクの第1位を陣取る「悪のセンター」と呼んでもいいくらいです。「喫煙は百害あって一利なし」は間違いありません。
タバコの煙には、ニコチン、タールなど有害物質が含まれていて、「血管事故」だけでなく発ガンリスクを高めることもよく知られています。こうした有害な物質が血管によい影響を与えるはずがありません。何より、ニコチンは「交感神経」を刺激して、心拍数の増加や末梢血管を収縮させて血圧を上昇させる作用があります。血圧が上がると血管の内膜が傷つきやrlりすくなり、動脈硬化の進行を加速させます。
禁煙補助剤を上手に活用して今年こそ禁煙!

狭心症や心筋梗塞を発症するリスクは、タバコを吸う人と吸わない人では大きく異なります。タバコを吸っているだけで、男性は2.9倍、女性は33.1倍とリスクが跳ね上がるのですから、どれだけ悪影響を及ぼしているかがわかっていただけるのではないでしょうか。

ちなみに、1日に20本以上タバコを吸う人は、非喫煙者より心筋梗塞の死亡率が1.7倍になるというデータもあります。

血管だけではありません。喫煙は体内の「活性酸素」を増やし、全身の細胞を酸化させます。しかも、タバコの害は吸っているあなただけでなく、その煙を吸う家族にも影響します。家族とあなた自身の健康のために、今日から禁煙しましょう。

禁煙したくても禁煙できない

禁煙がどうしても出来ない人は「タバコを吸わないとイライラして、落ち着かない」と口を揃えます。。実は、これは無理もないことなのです。タバコに含まれるニコチンは、吸い続けているとやめられなくなる依存性の高い物質なのです。
タバコを吸わないでいるとイライラするのは、禁断症状のようなもの。タバコを吸わないと落ち着かない、イライラするというあなたは「ニコチン依存症」に陥っています。こうなると意志の力での禁煙は難しくなります。

そんなこともあり、現在は、一定の条件を満たせば健康保険を使って禁煙治療が受けられるようになっています。禁煙に何度も失敗しているという方は、お近くの禁煙外来を受診して、今度こそ禁煙を成功させましょう。
禁煙治療が受けられる医療機関は増えています。インターネットで「禁煙治療」と検索すれば、住んでいる地域で禁煙治療が受けられる医療機関を検索できたり、自分がニコチン依存ではないかをチェックしたりすることができるサイトが出てくるでしょう。「血管力」を高めるために不可欠な禁煙、ぜひチャレンジしてください。

うれしい興奮も危ない「「高血圧」

喫煙に続く危険因子は「高血圧」です。血圧が高いということは、血管の内壁に常に高い圧力がかかっていることになります。ちょうど水道水をより大量に送るために、ポンプの圧力を上げているのと同じような状態です。

高い圧力が常にかかっていると、血管の機能も低下し、その結果、動脈硬化の進行を招きます。また、ポンプの役割を担う心臓にも、負担が大きいのです。また、ずっと血圧が高い状態が続くのはもちろん、急激に上がったり下がったりするのも血管にダメージを与えてしまいます。これは血糖値も同じです。子どもをしかるときに、同じ調子でいつもしかっていると、慣れてしまってあまり効果がないのですが、ふだんやさしくしていて急に怒ったときの効果はてきめんです。血圧や血糖も同じで、乱高下することなく、ある程度の範囲内で変動していればおだやかな刺激となり、血管にはそれほど負担はかかりません。

これが興奮して血圧が一気に上がるなど、上下の変動が大きいときには血管に大きな負担がかかります。ストレスが血管によくないといわれるのは、過度なストレスが血圧を急上昇させるからです。ストレスはつらいことばかりではありません。過去に、宝くじが当たって、うれしすぎて心筋梗塞になったという方がいらっしやいました。

つらいことでも、うれしいことでも、刺激の強すぎる興奮はあまりよくないということですね。血圧を安定させるには、塩分を控えることが大切です。なかには、塩分を控えてもなかなか血圧が下がらないケースもありますので、血圧が高い方は一度、医療機関を受診されたほうが安心です。ちなみに、血圧は年をとるとだんだん上がってきます。これには、加齢によって「NO」の分泌や働きが落ちることも関係しています。

気になるコレステロール「脂質代謝異常」

忘れてならないのが、血液中の「脂質」です。血液中の脂質には「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「中性脂肪」があります。一般的な健康診断ではこれらの脂質を調べます。一般的には、LDLコレステロールは血管の内膜に入り込んで酸化コレステロールとなり、動脈硬化の進行を促進するため「悪玉コレステロール」と呼ばれます。

これに対し、HDLL コレステロールは体内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻すため、「善玉コレステロール」と呼ばれています。ですから、悪玉コレステロールであるLDLが高く、善玉コレステロールであるHDLが低い人は動脈硬化が進行しやすいとされています。

悪玉(LDL)と善玉(HDL)

このイメージが先行したことで、LDLコレステロールは体に有害なだけのものと決めつけられていますが、じつはそうではありません。肝臓から全身の細胞にコレステロールを運ぶという役割を担っています。細胞に運ばれたコレステロールは細胞膜やホルモンの原料になるという、大切な役割があります。

悪玉コレステロールは本当に悪者か?

誤解されている方が多いのですが、コレステロールそのものが悪者なわけではないのです。体内で代謝されたときに、どんな形になるかで悪玉か善玉かに分かれ、なかでも、LDLコレステロールは、悪玉に変化しやすいだけだということを、もっとみなさんに知っていただきたいのです。

安定したコレステロール値のために積極的に摂りたい5つの栄養素

たとえば、海外ではタクシーが危険な乗り物といわれることがありますが、すべてのタクシーが危険なわけではありませんね。ドライバーが悪人であれば危険なタクシーになりますが、善人のドライバーであればなんの心配もありません。

コレステロールは、運転するドライバーによって危険にも安全にもなるタクシーに似ています。代謝の過程でどんなタンパク一質と結びつくかで、悪玉、善玉、どちらになるかが左右されているのです。悪い人が運転するコレステロールをつくり出す環境を避けることが、コレステロールとうまくつきあっていくことがポイントとなります。

それには、悪い脂(飽和脂肪酸、リノール酸などのオメガ6系多価不飽和脂肪酸)の過剰摂取を避け、喫煙、塩分の過剰摂取、運動不足など、生活習慣の改善が不可欠です。コレステロールが高いと指摘されると、とにかくコレステロールが含まれている食べ物を避ける、という方がいらっしやいますが、コレステロールは食事で摂取する量よりも体内でつくられるほうが多くなっています。

全体的なカロリーの摂取量が多かったり、肉ばかり食べていたりするとLDLコレステロールがたくさんつくられてしまうので、食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎを避けて、肉よりも魚を食べるなど心がけましょう。
LDLコレステロールが血管をダメにする

「超悪玉」コレステロール″にかかわる「中性脂肪」

コレステロールだけではありません。「中性脂肪」にも注意です。

これまでは中性脂肪が高くても動脈椎化にはそれほど関係ないと考えられてきましたが、最近、血液中の中性脂肪が多いと、「超悪玉」と呼ばれる酸化しやすい、小型のLDLコレステロールがつくられやすいことがわかっています。
超悪玉コレステロールは動脈硬化を早く進行させるので、中性脂肪の数値にも気をつけたほうがよいといわれるようになっています。中性脂肪は食べ方に気をつけて適度に運動をすれば、比較的下がりやすくなっています。

ストレスがたまると中性脂肪とコレステロールが増えるなども現代人は注意しなければいけません。
特に働き盛りの40代男性はこういったことも気にかけるようにしないといけません。

脂質代謝異常の判断の目安

  • LDLコレステロール 140mg/dl以上→高LDLコレステロール血症
  • HDLコレステロール 40mg/dl未満→低LDLコレステロール血症
  • 中性脂肪 150mg/dl以上→高トリグリセライド血症
  • いずれかに該当→脂質異常症

老化の原因は「糖化」にある?「高血糖」

「血糖値」とは、血液中に含まれるブドウ糖の量です。食事で摂取した炭水化物が消化・分解されるとブドウ糖になります。ブドウ糖は脳や体温の維持、体を動かすなど私たちが生命活動を維持するためのエネルギー源となります。

血液中のブドウ糖が不足すると、エネルギー不足となってしまいます。そんなことにならないよう、私たちの体は血液中のブドウ糖を空腹時でも70~100mg/dlくらいに保つようコントロールしています。

食事をしたあとの血糖値は一時的に高くなりますが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きで、食後1~2時間で元の数値に戻るようになっています。しかし、暴飲暴食を続けていると、インスリンの効きが悪くなったり、分泌量が低下したりして、血糖値が下がりにくくなってきます。

これが進行すると、常に「高血糖」状態が続くようになって、糖尿病を発症します。この「高血糖」状態も血管にダメージを与えます。「糖化反応(メイラード反応)」という言葉を聞いたことはありませんか?

糖がタンパク質と反応したときにできる「AGE(終末糖化産物)」という物質が老化を招くと、テレビなどでとりざたされたこともあるので、耳にされた人もいらっしやるのではないでしょうか。
食品中のAGEも糖尿病の合併症を進行させる

テレビなどでは、食品を加熱したときにタンパク質が焦げて発生するAGEばかり取り上げていますが、血管をサビさせるのはそうしたAGEを多く含む食べ物ではありません。

むしろ、血液の高血糖状態こそが血管を老化させる原因です。血管を構成しているのはタンパク質(アミノ酸)です。血管壁のタンパク質に血液中のブドウ糖が結びついて糖化することで、血管の内皮細胞が障害されます。また、LDLコレステロールも酸化して変性しやすく、動脈硬化を進めてしまいます。

LDLコレステロールが血管をダメにする

食事に含まれる糖質やタンパク質からつくられるAG Eよりも、高血糖状態が続き、自分自身の細胞を糖化させてしまうほうが大問題なのです。糖尿病の人に動脈硬化が進行しやすいという研究結果はいくつもありますから、高血糖状態がいかに血管に負担をかけるかということがわかります。

血糖値を急上昇させない「食べ方のコツ」

血糖値の急上昇を防ぐには、野菜から食べて、最後にごはんを食べるという食べる順番を変える食事方法が有効です。同じものを食べても血糖値の上昇がゆるやかなので、血管への負担を避けることができます。
もちろん、野菜でお腹が満たされたなら、最後のごはんを少なめにすることが大切です。食事のときは、野菜から食べて血糖値を上げすぎない食べ方を心がけましょう。

糖尿病の判断の目安

  • 血糖値(早朝空腹時)126mg/dl以上は「糖尿病型」
  • ヘモグロビンA1Cが6.5以上は「糖尿病型」

2つが当てはまると「糖尿病」
糖尿病についてはこちら。

お腹ぽっこりのメタボ

  • 高血圧
  • 喫煙
  • 高血糖
  • 脂質代謝異常

に付け加えたいのが「メタボリックシンドローム」です。肥満といっても判断基準は体重ではありません。要注意なのは内臓周辺に脂肪がついた、「内臓脂肪型肥満」です。

内臓脂肪がつくと、糖質、脂質などを体内で利用するための代謝機能に異常が生じ、高血糖、高血圧、脂質代謝異常などを引き起こして動脈硬化を進行させてしまいます。高血圧、糖尿病、脂質異常症と診断されるほど数値が高くない人でも、これらを複数あわせ持つと「血管事故」のリスクが非常に高くなります。

内臓脂肪を減らすエノキ生姜茶「 えのき美人茶」の効果と使用感

これは先ほど紹介した「3倍の法則」と同じです。この複数の危険因子をあわせ持った状態が、いわゆる「メタポリックシンドローム」と呼ばれます。メタポリックシンドロームを指摘されているあなたの血管はとても危険な状態です。

いますぐ生活習慣を見直すことをおすすめします。なお、メタポリックシンドロームの診断は腹囲(お腹まわり)だけと勘違いされている方がいらっしやいますが、腹囲がクリアしていても、血圧、血糖値、中性脂肪が高いのはいい状態ではありません。腹囲だけを見て安心しないようにしましょう。

血管壁にダメージを与える悪しき生活習慣を取り除いて、「血管へのリスクを軽減または予防することができれば、ダメージを受けていた血管内皮細胞が回復して、本来持っている機能を取り戻すことができます。

メタボリックシンドローム判定の目安

内蔵脂肪蓄積の指標として、へその高さで測った腹囲が

  • 男性(85cm以上)
  • 女性(90cm以上)

これに加えて以下の項目1~3のうち2つ以上があてはまればメタボリックシンドロームと判断されます。

  1. 血圧(上が130mmhg以上または下が85mmhg以上)
  2. 空腹時血糖値(150mg/dl以上)
  3. 中性脂肪(150mg/dl以上またはHDLコレステロールが40mg/dl以上)