皮膚がんに関する情報です。「 皮膚がん 」 日本人のがん、白人のがんでは大きく異なる のはどういったことからでしょうか?
皮膚がんの基礎知識
- 皮膚がんは大きく2つの種類に分けられます。
- 発生率は人種や地域に大きく関係し、赤道近辺の住民や白人に多く、日本人には少ないです。
- 顔、とくに唇、まぶた、鼻など皮膚と粘膜の移行部にできやすいです。
- 太陽光線に長い時間さらされると、皮膚がんの危険が高まります。
- 広い範囲のやけどや、広い範囲のひきつれなどががんに移行することがあります。
- ひどい湿疹が続き、分泌物が出るようなら要注意です。
- 進行の遅いものが多いですが、ほくろが急に大きくなり始めたら悪性黒色腫を疑う必要があります。
- 痛みやかゆみが必ずあるわけではなく、皮膚の色や形の変化も大切な症状です。
- 出血したり、分泌物の出る変なほくろ、いぼ、うおのめなどができたら安易に切除せず、専門医の診断を受けてください。
皮膚がん
皮膚がんは「一般的な皮膚がん」と「悪性黒色腫」に大別されます。一般的な皮膚がんはさらに「有棘細胞がん」と「基底細胞がん」に分けられます。男女差はほとんどありません。
有棘細胞がん・基底細胞がん
どこに起こるがんか
皮膚は表面から表皮、真皮、皮下という三層構造になっていますが、表皮をつくる「有棘細胞」に起こる皮膚がんが「有棘細胞がん」です。
この「有棘細胞」の層の下にある「基底細胞」にできるのが、「基底細胞がん」です。 できるのは顔がほとんどで、鼻、目の周囲、ほおなど中央部に多いです。がんは隆起したり、進行性の潰瘍をつくったりします。とくに頭、顔、手足など太陽光線にさらされる部分に多くできやすいです。
どういう人に起こりやすいか
太陽光線がひとつの引き金になります。太陽光線の影響を弱めるメラニン色素が少ない白人に多いのはそのためです。米国人の皮膚がんの7~8割がこのタイプです。日本人では皮膚がんの3割がこのタイプとされています。北海道、東北地方より四国、九州地方のほうが患者数が多いというのは、やはり太陽光線の強さの違いだと考えられます。
また、外傷ややけどのあとのひきつりや潰瘍、放射線による皮膚炎などの異常からも起こることがあります。20年も前の傷あとががんになることもあるので、気をつけておいたほうがいいです。
ただし、狭い範囲の皮膚異常から発生することは、ほとんどありません。有棘細胞がんは皮膚がんの4分の1を占める程度で、わが国では患者の数も少なく米国の100分の1程度で少ないです。
自覚症状
いぼやうおのめ、ほくろができ、次第に隆起し、それがザラザラしていたり、つぶれて出血したり浸出液が出たりしたら、皮膚がんの疑いが大きいです。
ひどい皮膚湿疹もがんの可能性があります。いぼやうおのめの表面がツルツルしているのなら、がんを疑わなくていいです。皮膚の一部が黒ずんだり赤くなり、その範囲がだんだん広がるのもがんを疑う必要があります。
基底細胞がんでは、「結節潰瘍型」と呼ばれる特殊な隆起をもつものが多いです。 いぼかほくろのようなものが次第に大きくなり、中央が潰瘍になって周りに堤防のような盛り上がりができることがあります。日本人の結節潰瘍は黒ずんでいることが多いです。
診断
体表にできるので、診断はつけやすいです。組織の一部を切り取って調べればわかります。
ここまで治る
ここまで治るいずれのがんも、よく治ります。有棘細胞がんで転移のない直径5センチ以下のものなら治癒率は89パーセントに達しています。直径5センチ以上、あるいは皮膚の深部にまで達していても転移がなければ約60パーセントは治ります。 たとえ転移があっても、約40パーセントは助かります。
基底細胞がんは、転移もほとんどなく進行も遅いので、治療成績はさらに良いです。まず死亡することはありません。ただし顔に多いため、治療後の整形美容的な処置が必要になります。レーガン元大統領の鼻の頭にできたのがこのがんで、簡単な手術で復帰できたのは周知のとおりです。米国では皮膚がんは簡単に治せるため、皮膚がんをがんの統計に含めていないほどです。治療は切除が中心です。
有棘細胞がんはがんといっしょに周囲の皮膚を3センチほど切り取ります。基底細胞がんでは、切り取る部分は有棘細胞がんより小さいことが多いです。
切除したのでは機能を失うような部位(まぶた、唇、耳など)では、放射線治療を行います。小さく転移がないのなら放射線治療だけで完全に治せます。リニアックという装置の電子線を25回照射するだけで終わります。化学療法も効きます。しかし、完全治癒は難しいため、初回の治療にこれを用いるのはよくありません。治療の際には抗がん剤を週2回、注射します。その軟膏をがんに直接塗ることも試みられています。
悪性黒色腫
どこに起こるがんか
「メラノーマ」「ほくろのがん」とも呼ばれる悪性黒色腫は、皮膚がんのなかではきわめて悪性で、進行が早く、全身に転移しやすいです。日本人では特に足の裏にできやすいです。 足の裏のホクロはガンへの早道か?
どういう人に起こるがんか
30~40年前まではきわめて少なく、年間の死亡者数も50人に満たなかったのですが、年々増え続け、1988年には302人にまでなっています。不気味な増加率です。
40歳以降に多く、60~80歳がピークです。また、男性の発生率が女性の1.3倍と高いです。なんでもない「ほくろ」が、この悪性がんに変わることが多いです。日本人の約50パーセントは足の裏の「ほくろ」から発生します。
自覚症状
ほくろが突然大きくなったり、色が変わったり、不規則な形になったらすぐに専門医の診察を受けてください。 痛みやかゆみがあることもあります。進行が早いので見逃すと非常に危険です。
診断
ほくろが不整形、不均一色、出血、潰瘍を伴ったりすることがあれば、直ちに皮膚科医または専門医の診察を受けることが重要です。
治療と予後
悪性黒色腫は、早期発見と切除が最も効果的な治療法です。転移が早いため、早期治療が生存率向上に大きく寄与します。
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