子供のガン基礎知識 子供のガン 早期発見 早期治療 母親次第
-
子供のガンは、胎児の時代にすでにその「芽」ができていることが多いです。
-
大人のガンが皮膚や粘膜から発生しやすいのに対し、子どものガンは肉腫が多いです。
-
子どもは細胞の成長が早いため、ガンの進行も早いです。気づいたら、ただちに診察・治療を受ける必要があります。
-
乳幼児のおなかに大きなしこりができていたら、ウィルムス腫瘍か神経芽細胞腫を疑います。
-
ガン特有の症状は少なく、元気がない、食欲がない、発熱、体重減少などの全身症状で気づくことが多いです。
-
子どもは異常を訴えないので、お母さんの注意が大切です。特に、首のリンパ節の腫れ、睾丸の腫れ、腹部の腫れ、眼の異常(猫の目のように光る)に注意してください。
-
子どものガンには、放射線や抗がん剤がよく効き、治癒率も向上しています。
-
子どもガンは、治療後2年を経て異常がなければ、再発の危険は非常に低くなります。
-
子どものガンには、遺伝的素因や奇形と関係が深いものも多いです。
子供のガンについて
15歳以下の子どもでガンになるのは年間約2000人あり、肺炎や疫痢などの感染症や症死亡者が抗生物質で激減している今日では、ガンは不慮の事故に次ぐ死因となっています。特にがんが多いのは4歳までの乳幼児です。お母さんのショックは大きいですが、子どものガンの専門医は「多くのガンは治せる」と自信を持つようになりました。よく効く抗ガン剤の登場など、治療成績の向上が著しいからです。
治療も手術による器官や臓器の摘出をできるだけ避け、化学療法や放射線で治す方向に進んでおり、大人のガン以上に理想的な治療が確立されつつあります。これは、子どものガンがおとなのガンとはかなり異なるためでもあります。
大人のガンは、皮膚や粘膜などからだを包む、あるいは管の内面をおおう組織から発生するものが多いですが、子どものガンはその内部から発生する「肉腫」が多いという特徴があります。また、おとなのガンは老化と関係が深いとされますが、子どものガンは体の発育と関係が深いです。胎児期に消えるはずの細胞が残ってガン化することがあります。発生異常がガンに結びついている場合には、奇形との合併がしばしば見られます。
これらのガンは、胎児期から増殖を始めているようです。遺伝に原因があるものも少なくありませんが、母体の中にいる間に「がん誘発因子」と出あった可能性も高いです。
子どものがん細胞は増殖スピードが早く、大人のガンの10倍とも言われています。治療が1日遅れただけで後遺症が残ったり、生命を左右するおそれもあります。
一刻も早い発見と治療が必要です。「様子を見て」という余裕はありません。しかし、子どもは異常を訴えず、ガン特有の症状も少ないため、元気がない、食欲がない、発熱した、体重が減ったなどのちょっとした変化に母親が気づくことが重要です。
お母さんは、日頃から子どもの様子に注意し、入浴時などに体のすみずみまで手で触れていることが大切です。特に、首のリンパ節、おなか、睾丸の腫れなどに注意してください。
ガンになっても子どもには旺盛な自然治癒力が備わっていますし、子どものガンに対しては放射線や抗ガン剤がよく効きます。たとえ転移があってもおとなのガンより治る望みは高いので、あきらめずに子どもの生命力と治療の進歩を信じて見守っていくことが大切です。
ウィルムス腫瘍(腎芽腫)
腎臓にできる子ども特有のガンで、2歳に多く、約80%が5歳までに発病します。子どものガンのほぼ10%を占め、奇形との合併率が高いです。
眼の虹彩が欠損している「無虹彩症」、手足が異常に肥大する「半身肥大」などには特に高率に合併します。これらの奇形は、遺伝子の座である染色体の2番目の異常が原因とわかっており、ウィルムス腫瘍もその染色体異常と関係しているようです。
初期症状はなく、お腹にガンの大きなしこりができて、ようやくお母さんが気づくことが多いです。そのためしこりが1kg以上になっていることも珍しくありません。
発熱、食欲不振、腹痛などの全身症状で発見されることもあります。超音波診断で90%はわかりますが、CT、血管造影によるレントゲン撮影や腎孟尿管撮影などの画像診断も行われます。
このガンはおとなのガンとは異なり、周囲の組織に食い込んでいくことが少ないため、かなり大きなものでもすっきりと取り切れることが多いです。
そのおかげで、2年生存率は腎臓に限定したがんならば80%以上が期待できます。周囲に広がっていても、完全に切除できれば65%以上に伸びます。
補助的に抗ガン剤と放射線療法が実施されますが、抗ガン剤が効きやすい子どものガンの中でも、ウィルムス腫瘍は特に効果が高いです。治療後2年間異常がなければまず安心でき、おとなのガンを含めてもっとも治しやすいガンの一つです。ただし、放射線の後遺症で骨の発育不良や別のガンになりやすい体質もまれにあるため、定期検査は受けてください。
神経芽腫
内臓や血管など臓器の働きをコントロールしている交感神経の細胞に起こります。首や胸の縦隔洞、副腎、大動脈周辺、骨盤内の神経に起こりやすいです。
0~2歳の幼児に多く、ウィルムス腫瘍と同じようにお腹のしこりや全身症状が発見のきっかけになります。骨に転移しやすいため、足の痛みや頭のこぶ、眼の周辺の腫れなどの骨転移で気づくこともあります。
低年齢で発見されるほど治癒率(2年生存率)が高いため、最近は乳児の6ヶ月検診時に「VMA検査」が導入されています。このガンは早期のものでも、尿中に「VMA」という物質が出ることを利用しています。
早期例では手術で取り切ることが可能ですが、進行した例では手術による切除が難しいため、強力な化学療法が中心になります。