魚の油に多く含まれる EPA や DHA が脂肪の代謝をよくして脂肪肝を予防してくれる 情報です。このところ、魚肉の脂肪分に多く含まれる EPA ( エイコサペンタエン酸 )や DHA ( ドコサヘキサエン酸 ) という成分が注目を浴びています。血栓の予防にEPA・DHA
EPA / DHA 脂肪肝を予防
動脈硬化を予防する働きがあるというのがその主な理由ですが、実は酒飲みにとって気がかりな脂肪肝をも予防してくれることがわかっています。
ところで、私たちが毎日の食事で栄養源としているのは、タンパク質、糖質、脂肪の3つの栄養素です。そして、これらの栄養素を1日あたり、エネルギー(=カロリー)換算でタンパク質12~13% 、糖質57~68% 、脂肪20~25% の割合でとるのが理想とされています。
日本人の栄養摂取は、最近までこの適正な割合を保っていて、それが長寿国になった大きな要因であると考えられていました。
脂肪の摂取量がふえている日本も、成人病の発症率が欧米のあとを追っていることはまずまちがいありません。したがって脂肪の摂取量をこれ以上ふやさないことがなにより望まれます。
と同時に、実は食品それぞれに含まれる脂肪の質についても注意する必要があるのです。牛肉や豚肉に含まれる脂肪には飽和脂肪酸というものがたくさん含まれていて、とりすぎると、体内にコレステロールや中性脂肪などがふえてしまいます。血液中にふえた脂質は血管壁にたまって動脈硬化を進め、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすもとになります。
それだけではありません、皮下脂肪としてたまれば、肥満を招き、糖尿病などあらゆる成人病の危険を増大させるのです。このように、飽和脂肪酸のとりすぎは、いろいろな成人病を起こす大きな危険因子となります。ところがこれを予防するのに、魚に含まれている脂肪酸、つまりEPAやDHA が大きな役割を果たしてくれることが、最近の研究で明らかにされたのです。
牛肉や豚肉など鶏肉の脂肪に多い飽和脂肪酸に対して、魚の脂肪に豊富なのは、多価不飽和脂肪酸という物質です。名前こそ似ていますが、働きは逆で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らすと同時に、動脈硬化を予防する働きをするいわゆる善玉コレステロール HDL をふやす作用を持っているのです。
そればかりか、多価不飽和脂肪酸には、体内の余分な脂肪を燃焼しやすくするとともに、中性脂肪が合成されすぎるのを抑える働きもあります。
つまり、多価不飽和脂肪酸をとっていると、肝臓にたまっている脂肪も減り、末梢にある脂肪組織も小さくなります。このことがまさに、脂肪肝を防いでくれることにつながるのです。
このようなすばらしい働きをしてくれる多価不飽和脂肪酸の代表格が、EPAとDHAなのです。これらは両方とも、いわしやあじ、さば、さんまなど背の青い魚に多く含まれています。
どの魚も私たちに身近なものばかり。成人病はもちろん、脂肪肝が気になりだしたら、肉よりこうした魚を多くとる食生活に切りかえたいものです。
なお、EPA や DHA をより多く摂取するという意味では、魚の調理は脂肪を落とさないような方法がおすすめです。
焼くよりは、煮て煮汁ごと食べるほうが損失は少ないわけですし、刺し身ならむだなくまるごととれることになります。また魚の缶詰めも、脂肪成分がそこなわれずに含まれていますので、上手に利用したいものです。
魚の油(EPA/DHA)が脂肪肝を予防・改善する理由 まとめ
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、放置すると肝炎や肝硬変へと進行するリスクがあるため、その予防・改善は非常に重要です。EPAとDHAが脂肪肝に良い影響を与える主なメカニズムは以下の通りです。
1. 肝臓での中性脂肪合成の抑制
EPAとDHAは、肝臓内で中性脂肪が作られるプロセスを抑制する働きがあります。
- 脂肪酸産生(脂肪の生成)の抑制: EPAとDHAは、肝臓で脂肪酸が合成される経路を阻害することで、過剰な脂肪が作られるのを防ぎます。
- 中性脂肪の分解促進: 肝臓だけでなく、血液中の中性脂肪の分解も促す作用があると言われています。これにより、肝臓への脂肪の供給が減り、蓄積を防ぎます。
2. 脂肪酸の燃焼促進
EPAとDHAは、肝臓で脂肪酸がエネルギーとして燃焼される(分解される)プロセスを活性化します。
- β酸化の促進: 脂肪酸を分解してエネルギーを生み出す「β酸化」と呼ばれる代謝経路を活性化することで、肝臓に蓄積された脂肪を効率よく消費する手助けをします。
- 褐色脂肪細胞の活性化: 魚油(EPAやDHAを含む)の摂取が、体脂肪を燃焼する作用がある「褐色脂肪細胞」を増加させ、エネルギー(体脂肪)の消費を促進するとの報告もあります。
3. 抗炎症作用
脂肪肝、特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、肝臓で炎症が起こっていることが多いです。EPAとDHAは強力な抗炎症作用を持つことが知られており、肝臓の炎症を抑えることで、病態の進行を抑制する可能性があります。
- 炎症性サイトカインの抑制: 炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の生成を抑え、肝臓へのダメージを軽減します。
4. インスリン感受性の改善
インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)は脂肪肝の主要な原因の一つです。EPAとDHAは、細胞のインスリン感受性を改善する可能性が示唆されており、これにより糖や脂質の代謝が正常化し、脂肪肝の予防・改善に繋がると考えられています。
臨床研究によるエビデンス
実際に、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の患者を対象とした臨床研究において、DHAとEPA製剤を投与したところ、脂肪肝の改善効果が認められたという報告があります。これは、魚油に含まれるこれらの成分が、脂肪肝の治療や予防に有効であることを示唆する重要なエビデンスとなります。
どのように摂取すれば良いか
脂肪肝の予防・改善のためにEPAとDHAを効果的に摂取するには、以下の点が挙げられます。
- 青魚を積極的に食べる: サバ、イワシ、アジ、サンマ、マグロ(トロなど)といった青魚に豊富に含まれています。週に2~3回は魚を食卓に取り入れることを心がけましょう。
- 魚油サプリメントの活用: 食事だけでは十分な量が摂れない場合や、魚が苦手な場合は、高純度のEPA/DHAサプリメントを活用するのも一つの方法です。ただし、過剰摂取は避けて、推奨量を守りましょう。
脂肪肝の予防・改善には、EPA/DHAの摂取だけでなく、バランスの取れた食事、適度な運動、そしてアルコールの適量化(または禁酒)など、総合的な生活習慣の改善が不可欠です。魚の油を賢く食生活に取り入れ、健康な肝臓を維持しましょう。