喉と甲状腺のガンを治すポイント 酒、たばこの害が大きい

喉のガン、甲状腺のガンの状況

  1. 喉頭ガン、咽頭ガンは男性に、甲状腺がんは女性におこりやすい。
  2. のどのガンは全般的に見れば治りやすいものが多い。
  3. 喉頭ガン、咽頭ガンはタバコが、咽頭ガンは酒の飲み過ぎが重大な危険因子。
  4. 喉頭ガンは声が変化し、咽頭ガンは食物を飲み込むときののどの感触に違和感がある。
  5. 甲状腺ガンは女性に多いが比較的良性で、男性は数は少ないが悪性のものが多い。
  6. 甲状腺がんは年齢が高いほど悪性になる傾向がある。
  7. 喉頭ガン、咽頭ガンは放射線がよく効くが、甲状腺がんほあまり効かず、手術中心。
  8. のどのガンは、声帯を取るケースが少なくないので、手術後のリハビリが重要になる。

のどと甲状腺のガン

のどのガンには、喉頭ガンと咽頭ガンがある。咽頭がんの一部ほ鼻の奥にできるものもあるがひとつながりの器官なのでいっしょに述べる。喉頭ガンも咽頭ガンも男性の死亡者が圧倒的に多く、男性の死亡者ほ女性の3.1倍~7.9倍にものぼる。のどに近い甲状腺におこる甲状腺がんは、女性が圧倒的に多く、死亡数は男性の2倍を超える。

咽頭ガン

場所

首の真ん中、男性ではのどぼとけの部分にあるのが咽頭である。喉頭は軟骨でできていて、声を出すための器官、声帯を包んでいる。
この咽頭や声帯におこるのが喉頭ガン。
咽頭がんにはガンができる部位によっていくつかの種類があり、もっとも多いのが声帯にできる「声門ガン」である。声帯の上をおおう喉頭蓋にできるのが「声門上部ガン」、気管に近い喉頭の下の部分におこる「声門下部ガン」などもある。

男女比

男性が女性の10倍も多い。同じ咽頭ガンでも国や地域で起こるガンの種類が異なる。先進国では、声門ガンが多く、開発途上国では声門上部がんが多い。日本では昭和40年代に入って先進国の声門ガンが増えはじめ、現在では6割がが声門がんで、残りが声門上部がん。

声門下部がんはほとんどない。最大の原因がタバコであることはまちがいない。このがんの患者の9割以上が1日に16本以上のタバコを吸うヘビースモーカー。

女性の喉頭がん患者では、ほぼ100パーセントが喫煙者で。

タバコ指数(1日の喫煙本数× 喫煙年数)が800を超える人、10代からタバコを吸い始めた人はこのがんになる可能性がある。大声の出しすぎ、大気汚染などもー困と考えられている。
喉頭ガンの発生と、患者の住所、職業、学歴などの関連を調査し、このガンが関西に多いことを明らかにした調査もある。関西人は大声でしゃべるためではないかという指摘は興味深い。

自覚症状

もっとも多い「声門がん」の初期症状は、声の変化になる。しわがれ声、声がれがおこる。風邪やのどを酷使しても同じ症状が出るが、がんの場合ほ2~3ヶ月以上も続き、だんだんひどくなる。

大きさが米つぶ大のがんでも、声がれほおこる。進行すると呼吸困難になったり、血痰がでる。「声門上部がん」は症状が出にくく、声がれがない人もある。
人によっては初期に食物を飲み込む時に痛みや異物感を覚える場合もあるが、だれもにそういう症状が出るわけでほない。

診断

「声がかれる」と、通常は耳鼻咽喉科を受診する。ここでは、間接咽頭鏡という器具で診断する。声帯の形状を詳しくみるが、喉頭がんの発見率ほ高い。
話し声をマイクで採りソナグラムという機械で声の質の分析もする。同じに聞こえるしわがれ声でも、機械で分析すると、がん、ポリープ、カゼなどの区別がハッキリする。ファイバーースコープで直撃みたり、Ⅹ線診断が併用されることもある。

治療の成果

喉頭がんの5年生存率は7割を超える。進行がんを含めてだから、かなり治りやすい。半分以上を占める声門がんは、放置しても2~3年は生きられるので遅れても絶望的になることほない。
転移も少ないが、声門上部がんのはうは手術後にくびのどこかに転移することが多く、治療成績もやや悪い。喉頭がんほ進行するにつれて声帯を圧迫するので、しわがれ声になる。したがってこのがんは、声帯や声門にどれくらいにがんが浸潤しているかで進行度がはかられる。Ⅰ~Ⅱ期ではがんが声帯から声門に浸潤し、次第に声帯の動きが悪くなる。Ⅲ期になると声帯がほとんど動かなくなり、声がれがひどくなる。Ⅳ期になるとがんほ喉頭を突き破って食道近くまで浸潤する。

頭がんは、放射線治療がよく効く。Ⅰ期なら放射線だけで約9割は治る。Ⅱ期でも、やほり放射線治療が中心である。レーザー光線でがんを焼いて小さくし、その後に放射線を照射することもおこなわれている。
Ⅲ期以上になると放射線はあまり有効ではなくなり、切除手術が必要になる。声帯を全部摘出するが、5年生存率は、6割以上である。
この場合、声帯が失われるので、声の回復訓練が必要となる。一般的なのほ、食道を使って声を出す方法(食道発声という)で、3ヶ月の訓練で日常生活に支障のない程度まで発声が可能になる。

わが国では喉頭がんで声を失った人たちが「銀鈴会」という組織を作り、お互いに声の回復訓練をしているが、なかには大勢の聴衆を前に演説ができるまでに声を取り戻した人もいる。
最近は、ほとんど訓練を必要とせず、小さな声を増幅する電気喉頭や、声帯を摘出した穴と食道を小さなプラスチックのチューブでつないで話す相手に声がよく聞こえるようにする「TEシャント」という装置も開発され、普及し始めている。

咽頭ガン

咽頭ガンができる場所

鼻と口は、舌のつけ根の奥、頸椎の前で合流し1本の管になる。この合流地点が咽頭( のどばとけ)。
咽頭の下は食物の通路(食道)と空気の通路( 喉頭と気管) に分かれる。

咽頭がんは、この鼻と口の奥の合流点を中心におこる。鼻の奥の上部におこるのが「上咽頭がん」、その下、舌のつけ根の奥、へんとう腺におこるのを「中咽頭がん」、食道に近い下のほうに発生するのを「下咽頭がん」と分けている。発生部位によってがんの性質が異なり、治療法もかなり異なってくる。

かかりやすい人

女性の2倍おこりやすい。下咽頭がんの死亡者では、男性346人に対して女性74人と、男性のほうが約5倍も多い。上咽頭がんは中国、台湾、香港、中国系住民の多いシンガポールなどにとても多いため、「ホンコソ・キャンサー(香港がん)」と呼ばれる。

この地域は「EBウィルス」というウィルスのキャリア( 保有者)が多いので、それと関係があるのではないかといわれている。

下咽頭がんは、酒好きの男性や肝臓障害を持つ人に多く、酒がかかわっているとされる。女性では、鉄欠乏性貧血が疑われている。この健康異常が続くと、のどや食道の上が狭なるため、食物を飲み込むときのどに刺激が加わり続け、がんの引き金になると考えられている。

自覚症状

鼻の奥にできるので、鼻づまりがひどいような感じがある。飛行機が高度を下げたとき、耳がつまる感じがあるが、それと似た症状も多い。耳のなかが痛い、聞こえにくいといった中耳炎と似たような症状もおこる。そのため軽い中耳炎と誤診されることが少なくない。ちゆユノじえん下咽頭がんでは、のどの通過障害がおこる。のどに軽度の痛みや食物を飲むときにつかえる感じがあり、長く続くようだったらこのがんを疑う。●こうして診断する上咽頭がんでは、「後鼻鏡」という小さな鏡を使った上咽頭部の視診がまずおこなわれこうぴきよユノる。細いファイバースコープを挿入しての視診も、広くおこなわれるようになった。がーてうにゆユノんが頭蓋底にまで広がると脳神経に影響が出るので、脳神経の機能検査もたいせつな診断すがいていせいけんである。がんの疑いがあれば、Ⅹ線撮影や組織の一部を切り取って調べる生検(バイオプシー)もおこない、診断を確定する。下咽頭がんも、まず鏡やファイバーースコープでの視診が第一だが、下咽頭は構造が複雑で、ちょっとした刺激にも反応しやすいので、先にⅩ線撮影をおこない、がんの疑いの部分をハッキリさせてからファイバースコープなどでみることが多い。

治療の成果

上咽頭がんの5年生存率は5割だが、下咽頭がんは3割にとどまみぶんかっている。この治りぐあいの差は、上咽頭がんが「未分化がん」という種類であるため放射線治療で治しやすいのに対し、下咽頭がんは「分化がん」という放射線が効きにくいタイプのがんだからである。

上咽頭がんのなかには、がんが上部に広がり、限の運動をコントロールしている神経(外転神経を侵し、視力低下や眼球圧迫をひきおこすものもある。
脳にまで進むと、脳神経に異常をもたらす。肝臓などへの転移も珍しくない。下咽頭がんはくびのリンパ節への転移がとても多く、6~7割にみられる。上咽頭がんには放射線治療がたいへんよく効く。
進行がんでも、かなり効く。台湾では、医者は放射線治療用のコバルト照射機械を一台持っていると、一生メシが食えるといわれるほど。

鼻の奥で摘出がほとんど不可能なため、手術はまずおこなわれない。咽頭から離れた部分に転移がある場合は抗がん剤が併用されるが、5年生存率は5割を割ってしまう。

下咽頭がんは放射線治療が効きにくいので、切除手術が中心になる。下咽頭から喉頭、食道の上の部分までを大きく切除することが多く、がんが広がっているときは食道を全部切除する場合もある。
こういう大きな切除手術では、同時に再建手術もおこなわれる。切除部分に腸の表を移植して、のどの機能を代用させるのである(空腹移植)。
発声に重要な喉頭を摘出するので、残った組織や、移植した組織による発声訓練が欠かせない。

甲状腺がん

甲状腺ガンの場所

甲状腺は、喉頭を囲む臓器である。正常では人差し指の第2関節の先ほどの大きさで、形は蝶や西洋の楯に似ている。英語では「サイロイド」(楯)と呼ばれ、小さな臓器だが、役割は、大きい。
脳から指令を受けて、甲状腺ホルモンを分泌しているからである。このホルモンは、人間の発育や成長、エネルギー代謝を司っている。

甲状腺の活動がにぶり、ホルモン分泌が減少すると、からだがだるくなったり、成長が阻害される。反対に機能が異常に克進すると、発育異常をおこす。甲状腺はまた、「カルシトニン」というホルモンを分泌している。

これは、からだのなかのカルシウムのバランスを保つ働きをしている。よって、甲状腺の機能が低下し、カルシトニンの分泌が減るとカルシウムのバランスが悪くなり、骨がもろくなる。ここにがんがおこり手術を受けると、甲状腺ホルモンの分泌の異常がおこり、さまざまな障害をひきおこすことがある。

甲状腺ガンにかかりやすい人

きわめて多いがんで、日本人の10人にひとりはこのがんをおこすともいわれている。もっとも大半は、自然に消失してしまう。ごく小さな甲状腺がんが、はっきりがんといえるまでに成長するのは、そのうちの100分の1、つまり1000人に1人程度で、しかも実際に症状が現れるようながんはさらに少なくなる。

男女比では、女性に多く、男性の7倍にもなり「甲状腺がんは女のがん」とさえいわれる。だが男性の甲状腺がんは悪性のものが多いため、男性の発生率は、小さいのに死亡者数では、女性の2倍弱と多い。

どの年齢層にもおこるが、高齢者ほど悪性で治りにくい。このがんは、スイス、オーストリア、ドイツ南部などアルプスの山岳地帯に多かった。これは甲状腺の機能を正常に保つヨードが不足しがちだったからで、最近、食塩にヨードを加えるなどした結果、患者数は減ってる。日本人はヨードを多く含む海藻をよく食べる。そのため甲状腺がんが少ないとされるが、

ヨードの摂り過ぎもがんの危険因子となることがある。コンプやワカメも、そこそこに食べるのがいい。このがんは甲状腺の機能が低下していると発生しやすいため、慢性甲状腺炎の人の約2割が甲状腺がんになる。

放射線の被ばくも原因としてあげられる。放射線照射を経験した人は、未経験者に比べて高い。広島や長崎の原爆被ばく者の二〇パーセント以上に甲状腺がんがみられるといわれている。_、つこよノぎい高血圧などの治療に使われる「カルシウム括抗剤」を長期服用している人も、甲状腺がんの危険があるといわれる。この薬によってカルシウム代謝と関係深い甲状腺が機能変調をきたし、がんがおこりやすくなることがあると考えられている。また

甲状腺がんは、なやすい家系がある。とくに「髄様がん」(がん組識はがん細胞とそのすきまを埋める問質からできているが、髄様がんはとくにがん細胞がきわめて多い悪性のものを指す) になった者が家系にいるときは、注意しておいたほうがいい。

甲状腺がんは、がんの細胞の種類によって「分化がん」甲状腺の細胞とよく似た比較的良性のがんが「分化がん」と「未分化がん」に大別される。で、7割以上を占める。この分化がんは治りやすい。だが、細胞がギッシリ詰まり、巨大化してさまざまな悪さを働く「未分化がん」では、生存率は低くなる。

癌研病院での甲状腺がんの治療成績はきわめて高いが、未分化がんでは2年生存率がやっと7パーセントにすぎない。一般病院での未分化がんの治癒成績は、統計にもならないほど低いようである。このやっかいな「未分化がん」は「分化がん」が年齢を重ねるにつれて移行していくこともあるので、若い人の甲状腺がんは早期発見が高い治癒率のきめてになる。

男性の甲状腺がんが治りにくいのは、この未分化がんが多いからである。高齢者の場合もこれが多い。転移の危険性はがんが大きくなるにつれて増すが、はかのがんほど心配する必要はない。肺への転移後10年以上生存している人も珍しくないからである。一般に甲状腺がんは、おとなしいがんなのである。

自覚症状

自覚症状は少ないが、中年女性では、のどがいがらっぽい、声がかれるといった慢性甲状腺炎に似た症状がよく現れることがある。
だが、男性では自覚症状はほとんどでない。せいぜいのどぼとけのあたりに軽いしこりが出るていどである。男性は、女性に比べて甲状腺が低い場所にあってさがしにくいこともあり、発見は遅れがちになる。

診断方法

患部を触れる触診のみで、熟練医師は悪性のがんか良性の腫瘍かが判断できる。しかし早期のがんはしこりがはっきりしないので、診断はやはりむずかしい。
そこで、Ⅹ線撮影や細胞診、超音波診断などがおこなわれる。最近は細胞診と超音波撮影の組み合せで、直径5mm以下の微小ながんまで発見できるようになった。

甲状腺ガンの治療成績

ここまで治る手術で治す。放射線療法や抗がん剤による化学療法は、あまり効果がない。甲状腺がんにかぎらず、「おとなしいがん」は、放射線や抗がん剤が効きにくい傾向がある。

切除手術は、がんの部分を中心に甲状腺の大半を切り取る亜全摘が多い。甲状腺と副甲状腺は、ホルモンを分泌したり、体内のカルシウムの代謝に欠かせない臓器なので、摘出後は機能を補う必要がある。甲状腺ホルモソ剤やカルシウム剤、カルシウムを作るビタミソD剤などの薬の服用を左続けなけれはならない。

副甲状腺とともに気管や声帯を摘出した場合は、組織の再建術や、手術後に発声のリハビリテーショソをおこなう。甲状腺がんは治りやすい。したがって医師としては、患者さんにがんであることを伝え、自信を持って治療を受けてもらいたいと思う。癌研病院でも、甲状腺がんの約6割の人にはがんであることを伝えている。

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