「子供のガン」早期発見、早期治療は母親次第

子供のガン基礎知識

  1. 子供のガンは、胎児の時代にすでにその「芽」ができていることが多い。
  2. 大人のガンが皮膚や粘膜から発生しやすいのに対し、子どものがんは肉腫が多い。
  3. 子どもは細胞の成長が早いので、ガンの進行も早い。気づいたら、ただちに診察、治療を受ける。
  4. 乳幼児のおなかに大きなしこりができていたら、ウィルムス腫瘍か神経芽細胞腫を疑う。
  5. ガン特有の症状は少なく、元気がない、食欲がない、発熱、体重減少などの全身症状で気づくことが多い。
  6. 子どもは異常を訴えないので、お母さんの注意が大切。とくに、首のリンパ節のは腫れ、皐丸の腫れ、腹部の腫れ、眼の異常(猫の限のように光る)に注意。
  7. 子どものガンには、放射線や抗がん剤がよく効き、治癒率も向上している。
  8. 子供のガンは、治療後2年を経て異常がなければ、再発の危険は非常に低くなる。
  9. 子どもガンには、遺伝的素因や奇形と関係が深いものも多い。

子供のガン

15歳以下の子どもでガンになるのは年間約2000人あり、肺炎や疫痢などの感染症、症死亡者が抗生物質で激減している今日では、ガンは不慮の事故に次ぐ死因になった。とくにがんが多いのは4歳までの乳幼児である。お母さんのショックは大きいが、子どものガンの専門医ほ「多くのガンは治せる」という自信を持つようになった。よく効く抗ガン剤の登場など、治療成績の向上が著しいからである。

治療も手術による器管や臓器の摘出をできるだけ避け、化学療法や放射線で治す方向に進んでおり、大人のガン以上に理想的な治療が確立されつつある。これは、子どものガンがおとなのガンとはかなり異なるためでもある。

大人のガンは、皮膚や粘膜などからだを包む、あるいは管の内面をおおう組織から発生するものが多いが、子どものガンはその内部から発生する「肉腫」が多いという特徴がある。また、おとなのガンは老化と関係が深いとされ るが 、子 ども ガンは からだ の発育と関係が深い。胎児期に消えるはずの細胞が残ってガン化することがある。発生異常がガン結びついている場合にほ、奇形との合併がしばしばみられる。
これらのがんは、胎児期から増殖を始めているようだ。遺伝に原因があるものも少なくないが、母体の中にいる間に「がん誘発因子」と出あった可能性も高い。

子どものがん細胞は、増殖スピードが早く、大人のガンの10倍ともいわれる。治療が1日遅れたために後遺症が残ったり、生命を左右するおそれもある。

一刻も早い発見と治療が必要である。「様子を見て 」という余裕はないと知らなければならない。だが、子どもは異常を訴えないし、ガン特有の症状も少ない。元気がない、食欲がない、発熱した、体重が減ったなどちょっとした変化に母親が気づき、見つかるのが子どものガンである。
お母さんが、日ごろから子どもの様子に注意し、入浴時などにからだのすみずみまで手で触れていることがたいせつである。くびのリンパ節、おなか、睾丸の腫れなどにほとくに注意する。

ガンになっても、子どもには旺盛な自然治癒力が備わっているし、子どものガンに対しては、放射線や抗ガン剤がよく効く。たとえ転移があってもおとなのがんより治る望みは高いので、あきらめずに子どもの生命力と治療の進歩を信じて見守っていくことである。

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)

腎臓にできる子ども特有のガンで2歳に多く、約80%が5歳までに発病する。子どものガンのほぼ10%を占める。奇形との合併率が高い。
眼の虹彩が欠損している「無虹彩症」、手足が異常に肥大する「半身肥大」などにはとくに高率に合併する。これらの奇形は、遺伝子の座である染色体の2番目の異常が原因とわかったが、ウィルムス腫瘍もその染色体異常と関係しているらしい。

初期症状はない。お腹にガンの大きなしこりができて、ようやくお母さんが気づくことが多い。そのためしこりが1kg以上になっていることが珍しくない。
発熱、食欲不振、腹痛などの全身症状で発見することもある。超音波診断で90%はわかるが、CT、血管造影によるレソトゲン撮影や腎孟尿管撮影などの画像診断がおこなわれる。

このガンはおとなのがんとは異なり、周囲の組織にくいこんでいくことが少ないため、かなり大きなものでもすっきりと取り切れることが多い。
そのおかげで、2年生存率は腎臓に限定したがんならば80%以上が期待できる。周囲に広がっていても、完全に切除できれば65%以上にのばる。

補助的に抗ガン剤と放射線療法が実施されるが、抗ガン剤が効きやすい子どものガンのなかでも、ウィルムス腫瘍ほとくに効果が高い。治療後2年間異常がなければまず安心してよく、おとなのがんを含めてもっとも治しやすいガンである。ただ、放射線の後遺症で骨の発育不良や別のガンになりやすい体質もまれにあるので、定期検査は受けてほしい。

神経芽腫

内臓や血管など臓器の働きをコントロールしている交感神経の細胞におこる。くびや、胸の縦隔洞、副腎、大動脈周辺、骨盤内のなかの神経におこりやすい。
0~2歳の幼児に多く、ウィルムス腫瘍と同じようにおなかのしこりや全身症状が発見のきっかけになる。骨に転移しやすいので、足の痛みや頭のコプ、眼の周辺の腫れなどの骨転移で気づくこともある。
低年齢で発見されるほど治癒率( 2年生存率) が高いため、最近は乳児の6ヶ月検診時に「VMA検査」が導入されている。このガンは早期のものでも、尿中に「VMA」という物質が出ることを利用している。

早期例では手術で取り切ることが可能だが、進行した例では手術による切除が難しいので、強力な化学療法が中心になる。しかし、そのため副作用として骨髄の造血機能の低下がおこりやすいので、骨髄移植によって骨髄の働きの回復がほかられる。

リンパ節や骨に転移してしまうと治癒率は低くなってしまうが、広がっていなければ2年生存率は90%近い。

肝臓、皮膚、骨髄など特定の場所に広範に転移しているケースもあるが、この場合の2年生存率ほ不思議と高く60%をこえる。そのため、これは転移ではなく「多発性のガン」ではないかという説がある。また、「VMA検査」で早期発見されたものでは生存率は96%という成績もでているが、神経芽腫にほ自然治癒するものがあり、本来はほっておいても治ったほずのものが発見され治療されたため高い治療成績が得られているのでほないかという説もある。

肝芽腫

肝臓におこるがんで、0~2歳が発病のピークである。おなかのしこりで気づくことが、ほとんどだが、黄痘が出ることはない。おとなの肝臓がんは肝硬変の併発が多く治しにくいが、子どもの肝臓ほ回復力が大きいので思い切ってガンを切除できる。ガンを完全に切除できれは、生存率はかなり高い。
抗がん剤がよく効くので、これでがんを小さくしてから切除することも試みられている。

横紋筋肉腫 (おうもんきんにくしゅ)

筋肉にできるガンで、からだ中どこにでも発生する。膀胱、膣など泌尿器や生殖器に多い。症状は、膀胱の場合は尿が出にくくなったり血尿がある。膣の場合ほ膣から肉腫がの最近は抗がん剤や放射線療法が発達したおかげで、手術前にガンを小さくしてからの切除が可能になった。
ガンが子どもの頭大になった膀胱を、放射線照射で握りこぶし大まで縮小することも可能である。この方法によって摘出範囲も小さくてすみ、生存率も10年前の2倍になっている。

悪性奇形腫

おもにお尻の仙骨周囲(尾てい骨)におこる不可思議ながんである。卵巣や睾丸に発生することもあり、2歳以下に多い。「体の発生」に関係したさまざまな組織がありえない場所に発生する。良性のものでは髪の毛や骨、歯、皮膚などが生えてくることもあるが、放置すると悪性化する危険があるので手術によって切除する。
抗がん剤が有効で、肺などに転移があっても助かる例が、年ごとに増えてきている。

「血液とリンパのガン」白血病は治る時代になった

血液とリンパのガンの基礎知識

  1. 白血病や悪性リンパ腫は不治のがんと思われてきたが、よく治っているケースもある。
  2. 子どもの白血病は、複数の抗がん剤を用いる計画治療で3三割以上が永久治癒している。
  3. 0~14歳の小児白血病は増えていないが、60歳以上の白血病が増える傾向にある。
  4. 白血病の原因としてウィルスが疑われてきたが、ATLについてほそれが証明された。
  5. 原因不明の高熱、口内の腫れ、出血、手足や腰の痛み、くびや顎の下などの腫れなどがあったら急性白血病を疑う。
  6. 悪性リンパ腫の死亡者は男性が女性の2倍で、50~60歳代に多い。
  7. 悪性リンパ腫の症状は、リンパ節が腫れて触れるが痛みはない。次に発熱、だるさ、食欲不振や体重の減少がおこる。
  8. 悪性リンパ腫の治療は10週間1単位の複数の抗がん剤の大量投与が中心。また悪性リンパ腫は放射線がよく効くため、完全寛解率が70%にものばる例が出ている。

血液とリンパのがん

血液のガン、リンパ組織のガンで亡くなった人は年間1万2258人で、ガン死亡者の約6%を占める。死亡者の約60%が男性である。これらのがんはお涙ちょうだいの小説などで劇的に描かれることが多いため、不治のガンと思っている人が少なくないが、かなり治りやすくなってきている。血液に含まれる細胞がガン化するのが白血病などの血液ガン。リンパ節などにおこるのがリンパ組織のガンである。

血液のガン

ガンが起きる場所

人のからだのなかにほ、体重の12分の1から22分の1の血液が循環している。体重60kgの人ではビール瓶で7本前後の4.6~5トルになる。この血液は、色濃く沈澱する部分と透明な上澄みの部分に分かれる。濃い部分を「血球成分」、上澄みを「血漿」と呼ぶ。血球成分には、赤血球と白血球と血小板などが含まれているが、このなかにガン化した細胞が増えていくのが血液ガンである。血液ガンは、ガン化した細胞の種類や病気の進みぐあいなどによって「急性非リンパ球性白血病」、「急性リンパ球性自血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」などに分けている。

赤血球や白血球、リンパ球などの血液細胞ほいずれも骨の中心にある骨髄で作られているが、そのおおもとは同じ細胞である。その共通の細胞が成長とともに、さまざまな役割をもった血液細胞に変身していく。血液ガンはその血液細胞の成長過程で、おかしな血液細胞ができ、増殖していく病気である。

どんな人に起きやすいか

白血病は少しずつ増えており、なかでも治りにくい急性白血病(急性リンパ性白血病)が目立っている。もっとも0~14歳の小児白血病は増えていないのに、60歳以上の白血病が増える傾向にある。

子どものガンの約半数ほ白血病だが、小児白血病の発生のピークは3~4歳なので、この年齢の子どもをもつお母さんは注意する。年間1200人の子どもが白血病になっていると推定されている。子どもの血液ガンの種類としては、骨髄性白血病とリンパ性白血病で70%を占める。白血病の原田ほまったく不明だが、南西日本に多い成人T細胞白血病(ATL)にかぎっては、ウィルス(HTLV-1 ) が原因であることが証明された。人の間ガンでウィルスが原因であることがわかったのはこの白血病が初めてで、世界に大きな衝撃を与えた。ほかの白血病がウィルスと関係しているかどうかは、まだわかっていない。遺伝が関係しているという説もある。

自覚症状

急性白血病では、ほとんどが原因不明の高い発熱がおこる。口のなかや歯ぐきの腫れや出血、皮下の出血、下血や鼻血なども多い。
脳内出血がおこる例もある。繰り返しおこる風邪のような症状(風邪の症状はこちら)や原因不明の貧血も要注意である。骨に異常がおこるため、手足や腰に痛みを覚えることがあるが、X線撮影では異常が発見されないことが少なくない。
子どもの白血病では、発熱や手足の痛みからリウマチ熱と間違えることがある。また、くびや顎あごの下などのリンパ節の腫れも出やすい。慢性骨髄性白血病では、これらに加えて上腹部(脾臓) 腫れに触れて気づくことが多い。この腫れの影響で胃に圧迫感がおこりやすい。

診断方法

血液ガンが疑われてまずおこなうのは当然ながら血液検査で、白血球の数や種類の割合いなどが調べられる。同時に赤血球や血小板の数も調べる。
また、リンパ球細胞の表面の特性を生化学的に調べる検査法もー般的になった。骨髄の組織を採取する骨髄穿刺もおこなわれる。血液ガンのおおもとがここにあるため、診断はかりでなく治療の効果をみるためにも骨髄穿刺による検査がしばしばおこなわれる。
採取した細胞を染色して、顕微鏡で調べるのである。こうした検査によって、きわめて緻密な血液細胞の鑑別が可能になり、もっとも効果的な治療方針が選べるようになっている。

治療の成果

治療は、抗ガン剤を用いる化学療法が中心になる。シクロホスファミド、ピンクリスチソ、6MP 、アドリアマイシソなど数多くの化学療法剤が開発されており、それらの複数を組み合せて投与されるのが一般的である。
白血病細胞の増殖の速度は、正常細胞よりも若干遅い。その増殖速度に合せて、それぞれの段階の弱点にもっとも効果的な抗ガン剤を与えていくのである。このため、いつどの薬をどれだけ与えるかの厳密な治療計画が立てられる。これによって、多くの白血病が治せるようになった。
これらの抗ガン剤には副作用があり発熱や食欲不振、脱毛などがおこりやすい。貧血もお‘】な多いが、これは輸血によって補う。また、抗ガン剤の作用で細菌感染に対する免疫能力が低下する。何らかの感染症をおこすと、防衛力が低下しているため症状が悪化しやすく、初期の治療中は無菌室に隔離することが多い。抗ガン剤による治療のはか、脾臓摘出による生存期間の延長が試みられることもある。また、急性骨髄性白血病などでは健康着から採取した骨髄を注射する骨髄移植も効果的な治療としておこなわれるようになった。

ガンは5年生存を治癒のメドとするため「5年生存率」という言葉を用いるが、血液ガンではこれに加え、症状が消え骨髄が正常の状態になったときを「完全寛解」と呼んで治療のひとつの目標にしている。
急性非リンパ球性白血病は治しにくく、平均生存期間ほ完全寛解後、1.5~2年である。
急性リソパ性白血病では成績は向上している。特に子どもの白血病でほ、完全寛解率は90%を超え、5年生存率も50~70%に達し、30%以上の子どもが永久治癒するようになった。

リンパのガン

発症する部位

血球成分と血漿からできている血液は血管網を流れているが、このうち血漿だけは血管網とは別の体液循環網へも連絡している。そのもう1つの循環網をリンパ系と呼ぶ。ここを流れている体液ほ血漿よりも少し水っぽく「リンパ液」と呼ばれる。リンパ系には赤血球は入り込めないので透明だが、白血球の一種であるリンパ球は流れている。このリンパ系は、からだの外から侵入してくる細菌や異物を叩きつぶす防衛機能を担っている。その戦いがおこなわれる砦が、リンパ節である。
リンパ組織のガンは、おもにこのリンパ節におこっている。これらリンパ組織におこる悪性腫瘍を総括して「悪性リンパ腫」と呼んでいる。これにはきわめて多くのタイプがあって、その分類などほまだ明確にはされていない。細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病などの種類がある。

どういう人に起こりやすいか

悪性リンパ腫による死亡者は男性が女性の2倍で男性にきわだっており、50~60歳代に多い。白血病のように子どもには、ほとんどみられない。
原因ほ不明だが、ハワイに移住した日本人のホジキン病の発生率ほ国内の日本人よりも高く、死亡率が白人と同水準にあることから、環境に原因があるのではないかといわれてきた。動物の悪性リンパ腫では病因ウィルスとの因果関係があきらかにされているが、人間でほまだ証明されていない。

自覚症状

リンパ節におこるガンであるため、そのリンパ節が腫れて触れる。はじめは、痛みもないが、やがて発熱、だるさ、食欲不振や体重の減少がおこる。進行するにしたがってあちこちに飛び火して、腹部にしこりが触れたり、発疹が出たりする。リンパ節のがんではあるが、約40%はリンパ節以外の部分におこる。特にのどの周囲に多い。胃や腸におこり、胃墳瘍や胃がんと似た症状をおこしたり、皮膚では皮膚病と間違えることもある。

診断

どういうタイプの悪性リンパ腫なのか、進行度がどこまでいっているかをみきわめることが重要である。それによって治療方針が大きく異なるから。
リンパ管に造影剤を入れて行うX線撮影、腫瘍にとり込まれやすい放射性同位元素を注射し集中している部位を発見するシンスキャンなどがおこなわれる。
また、腫れている部分の組織を採って調べる生検もおこなわれる。進行度は、ある1つの領域のリンパ節にとどまっているのがⅠ期、2つ以上に広がっているのがⅡ期、横隔膜の両側にまで広がっているのがⅢ期、さらに多くの臓器へ広がっているのがⅣ期である。

脳腫瘍「集学的治療によるめざましい成果」

脳腫瘍の基礎知識

  1. 脳腫瘍は、良性、悪性をとわず頭蓋骨で閉まれた内部におこる腫瘍である。
  2. 脳組織および脳に付属する組織からおこるものを「原発性脳腫瘍」とよぶ。一般に「脳腫瘍」とはこれをさす。肺や乳房のがんから脳に転移したものは、「転移性脳腫瘍」と呼んで区別している。
  3. 原発性脳腫瘍の半分が「グリオーマ」を中心とする悪性腫瘍(がん)で、残りの半分は良性腫瘍である。
  4. 原発性脳腫瘍は1万人に1人の割合で発生しており、けっして少ない病気ではない。
  5. 悪性の脳腫瘍は、女性より男性、若年者より高齢老に発生しやすい。
  6. 症状は、腫瘍ができた部分の機能低下(運動麻痺、言語障害、性格の変化、けいれん発と作など) と、腫瘍によって頭蓋骨の内部の圧力が高まるための異常(激しい頭痛、嘔吐、意識喪失、視力低下)がある。頓死することもある。幼児では頭囲の拡大がおこることもある。
  7. 診断は症状からおおよそのことはわかり、CTによってほぼはっきりする。脳血管造影や、最近では腫瘍を立体的にとらえるM RIによる診断も始まった。
  8. 治療の第1は腫瘍の摘出手術である。その手術は、手術用顕微鏡で患部を見ながら緻密に進められる(マイクロサージェリー)。
  9. 悪性腫瘍では、手術ですべてをとることは難しい。そのため放射線治療と抗がん剤の併用治療、あるいほ手術後の抗がん剤治療がおこなわれる。
  10. すべての脳腫瘍の半分以上、グリオーマでも3分の1は治るようになった。

どの部位に起こる腫瘍か

頭蓋骨の中におさめられている脳は、成人男子で1350グラム、成人女子で1250グラムあり、人体では最大の臓器である。この脳という臓器を大きくわけると、情報処理をになう「大脳」、協同運動をになう「小脳」、全身の環境維持や意識を支える「脳幹」の(間脳、中脳、橋、延髄) の3つになる。脳全体は、三重の膜で包まれていて、いちばん内側が「軟膜」、真ん中が「くも膜」、外側の強靭な膜が「硬膜」。

これらの三十の膜を「髄膜」とよんでいる。また、脳をつくっている細胞には2種類あり、全身の指令をだすのが「ニューロン」(神経細胞)で約140億個あるといわれている。ニューロンのすきまを埋めている「グリア」(神経膠細胞)である。グリアは、ニューロンの働きを助ける細胞である。

脳腫瘍ほ脳にできる腫瘍だが、「脳がん」とは呼ばない。これは、脳腫瘍という病気が悪性腫瘍(がん)ばかりではなく良性腫瘍も含んでいるためだ。
良性腫瘍はがんと比べて増殖のスピードが遅く転移もしないが、不完全摘出の場合は再発することが少なくない。そのつど手術を繰り返さなければならないので、良性であっても治しにくいことがある。
脳は閉鎖した頭蓋骨のなかにきっちりおさまっているので、小さな腫瘍でもまわりの脳を圧迫して異常を起こす。つまり、良性でも悪性でも脳に障害をもたらす経過は同じである。
脳腫瘍でもっとも多いのはグリオーマ( 神経膠腫)で、脳腫瘍の約3分の1を占めている。これは、脳組織の固有の細胞から発生するいわば真性の脳腫瘍で、しかも悪性(がん)である。グリオーマに続いて多いのが脳に付属する組織からの腫瘍で、脳を覆う膜(髄膜)に発生する「髄膜腫」、下垂体に発生する「下垂体腺腫」15%、12対ある脳神経におこる「神経鞘腫」8% と続いており、そのほか、数は少なくなるが、種類はきわめて多い。

原発性脳腫瘍のほかに、からだの他の部分にできたがんが脳に飛び火する転移性脳腫瘍も少なくない。だが、原発性脳腫瘍が脳以外の臓器に転移することはほとんどない。

どういう人に起きやすいか

原発性の脳腫瘍の発生率は、人口10万人に対して12.5人から15.5人といわれる。おおむね人口1万人に1人の割合で発生すると考えればよい。
人口1200万人の東京では年間1200人が脳腫瘍を、そのうち3分の1の4000人がグリオーマということになる。脳腫瘍の発生率は肺がんの10分の1だが、けっして少ない病気でほない。

このグリオーマのうち悪性度の高いものほ35歳以上の人に多く、しかも男性にやや多い傾向がある。まれに子どもにもみられる。もっとも、治りやすさに男女差はない。
グリオーマにはさまざまな種類があるが、「アストロサトーマ」(星細胞腫)、「悪性アストロサトーマ」(悪性星細胞腫)「グリオブラトーマ」(膠芽腫)の3種類でほとんどをしめる。この3種のグリオーマは、それぞれおこりやすい年齢に差がある。アストロサイトーマは二25~40歳、悪性アストロサイトーマは、35~50歳、グリオブラトーマは、45歳以上に多い。

脳をおおっている膜、髄膜におこる髄膜腫は30~50歳の成人に多く、その6割が女性である。神経鞘腫も30~55歳の成人に多く、やはり約6割が女性である。
下垂体腺腫では20~50歳の成人に多くやはり女性に多い。これら、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫は良性である。

転移性の脳腫瘍では、肺がんからの転移が多い。肺がんの少なくとも3割が脳に転移することほあまり知られていない。肺と脳は近いために、肺から離れたがん細胞が血液にのって脳に入り、細い血管に詰って居座り、そこで増殖をする。やや男性に多いようである。
脳に転移すると治療をあきらめてしまうケースが多いが、治療のチャンスは残されていることを申し上げたい。

子ども( 15歳未満)の脳腫瘍では、小脳にできるものが約3割をしめ、もっとも多い。

症状

症状は2つにわけられる。第1は、腫瘍ができた部分の脳の機能の低下である(神経機能脱落症状)。運動麻痺、言語障害、性格の変化、けいれん発作などが、腫瘍のできた場所に応じておこる。

第2に、腫瘍によって閉鎖された頭蓋骨の内部の圧力が高まり、それによる症状がおこる(頭蓋内圧先進症状)。激しい頭痛と嘔吐が代表的なもので、頭痛は起床時におこりやすい。最初は軽度で持続時間も短いが、進行するにしたがって激痛が長く続くようになる。からだの位置を変えたときなどに発作的に頭痛がおこったり、意識を失うこともある。

このほか、ものが二重に見えたり、視神経が圧迫されて視力が低下したり、視野が狭くなることもある。頓死するケースもある。幼児では、頭囲が大きくなることがある。

診断

頭蓋内の圧力の高まりは、眼の検査で簡単にわかる。眼底の乳頭という部分がうっ血するからだ。視野が欠ける度合やからだの麻痔が少しずつ進行しているのなら、脳腫瘍が疑われる。
25五歳以上になって初めててんかん発作がおこった場合も、脳腫瘍の可能性が高い。こういった症状からの診断(神経学的検査) に加えて、CTによる脳の断層撮影が有力な診断法である。
直径1cm以上の腫瘍なら99%発見できる。脳は、各部位でのX線の吸収の度合が異なっていて、そのデータが詳細にわかっている。ⅩX線の吸収の度合から、脳腫瘍の存在ばかりか種頬もあるていどわかる。

血管内に造影剤を送り込んで脳の血管の様子をみる脳血管撮影もおこなわれる。血管の豊富な腫瘍では、かたちをくっきりと描き出し、また腫瘍によって周囲の血管の走行が曲がっているようすもわかる。

最近では、MRIの画像診断方法も成果をあげている。腫瘍の位置やかたちを立体像としてとらえることができるので、欠かせないものになりつつある。

脳から脊髄へと循環している「髄液」を採取して、含まれている腫瘍細胞を顕微鏡で観察して種類を確認することもある。また、腫瘍組織がつくりだしている特有のタンパク質やホルモンの量を血液や髄液で調べて腫瘍の判別をする診断(腫瘍マーカー)もおこなわれている。

なお、脳腫瘍は他の臓器への転移がほとんどないので、他のがんのような進行度を示す分類はない。

ここまで治る

脳腫瘍の治療の第一は、手術である。頭蓋骨の一部を蓋をあけるように切り、手術用顕微鏡で手術部位を拡大して見ながら腫瘍の摘出をおこなう。

こういうミクロの外科をマイクロサージェリーと呼ぶ。脳は細い血管や神経が集中しているので、わずか数ミリの損傷を与えるだけでも障害がでてしまうことがある。
そのため、脳の健康な部分の損傷を最小限にしながら腫瘍を摘出する必要がある。マイクロサージェリーなら、直径1ミの血管やきわめて細い神経でも傷つけずに操作をすすめることが可能で、手術の安全性は飛躍的に向上した。手術中は、脳の内部を探るレーダーともいえる超音波発信棒(プローブ)を当てながら、切れる部分を確認して進める。

良性腫瘍は周辺の組織を押しのけるようにして一方向に増殖しているので摘出は、比較的容易だが、グリオーマのような悪性腫瘍は周囲の組織を壊しながらしみこむように広がっていくので(浸潤)、悪性細胞の完壁な除去は難しい。

脳は、胃がんや子宮がんのように臓器まるまる摘出することができないので、どうしても腫瘍細胞のとり残しがでてしまう。そのため、手術後に放射線照射が必ずおこなわれる。米国のデータによって、放射線照射があきらかな延命効果をもたらすことが証明されている。もっとも放射線治療後も、多くの患者さんでは腫瘍がまだ残っている。そこでさらにACNUなどの制がん剤による治療が欠かせない。

脳腫瘍の治療後の経過は、一般に考えられているよりかなりよくなっている。原発性脳腫瘍の5年生存率は、58.7パーセントと、半分以上が完治している。悪性腫瘍であるグリオーマでも、5年生存率は29.9パーセントと約3分の1は助かるようになった。転移性脳腫瘍の5年生存率は10.4パーセントで、治る可能性は残されていることを知ってほしい。

ちなみに、グリオーマは種類によって経過が異なる。アストロサイトーマでは2年生存率はほぼ100パーセント、5年生存率は50パーセントだが、もっとも悪性度の高いグリオブラストーマの2年生存率は20~0パーセント、5年生存率は10パーセント以下である。もっとも、若年者ほど治りやすい傾向にある。

こういう数字をあげると、悪性度の高い脳腫瘍になったらあきらめるしかないと思いがちだが、手術、放射線、抗がん剤など脳腫瘍の治療技術は年ごとに驚くほど進歩しているので、あきらめないでほしい。脳腫瘍の治癒率の数字は、毎年書き変えなければならないほどめざましい向上を続けている。

「眼のガン」どこに注意すべきか

眼のガンの基礎知識

  • 眼のがんは、乳幼児の眼球の内側におこる網膜芽細胞腫がもっとも多い。
  • 乳幼児の眼が猫の限のように光ったら、網膜芽細胞腫を疑う。
  • ほとんどの子どもほ自覚症状を訴えないので、お母さんの注意がたいせつ。
  • 片眼だけでなく、両眼に同時におこることがある。
  • 遺伝するがんではあるが、それほ5~6%にすぎない。
  • 親が網膜芽細胞腫を経験していると子どもが発病する率はかなり高く、また兄弟姉妹も発病することがある。
  • 早期に発見すれば、治療後の5年生存率は90%をこしているので心配しすぎない。
  • 万一「眼球を摘出する場合でも、片眼であれば子どもはおとなが思うほど不自由するものでほない。
  • 治療後も再発防止のため、定期的に検診を受ける。

網膜芽細胞腫

どこの部位におこるか

眼でいちばん重要なのは「レンズ=水晶体」だと思いがちだが、水晶体はほ摘出してもメガネで代用できることが多い。だが、限の奥にひろがるカメラのフィルムにあたる「網膜」が破壊されると、回復する手だてはない。
網膜芽細胞腫は、このたいせつな部分の細胞ががん化して失明させる。片眼だけにおこる場合と両眼にほぼ同時におこる場合がある。ししんけい進行するにしたがって、がんは視神経を侵しながら脳へと進んだり、眼球の外側をおおさようまくっている強膜から外にまでつき出ることもある。ふくれあがった眼球がゲソコツのようにとびだす悲惨な姿もかつてはみられた。

どういう人におこるか

1年に100人以上の子どもがこのがんに冒されており、増加傾向にある。増加の理由は、この病気が「遺伝にかかわっている」ことと、「医療の進歩により、このがんで死亡することが少なくなった」という2点にある。このがんをおこす遺伝子をもった人が発病しても、治療によって死亡をまぬがれるようになった。そのため、子孫にその遺伝子が伝2えられることが増え、このがんを増加させているのである。

発病は、1~3歳が中心だが0歳から5~6歳に多く、遺伝性の場合には兄弟姉妹にも発病する可能性が大きい。このがんのうち遺伝に原因があるのはわずか5.6パーセントだが、親がこのがんの遺伝素因をもっている場合にほ、かなりの高率で子どもにこのがんがおこる。その確率などが正確にわかってきたため、「発症の予知」や「早期対策」がとれるようになった。とはいえ、遺伝性は少数である。「遺伝、遺伝」と思いこまないことだ。

自覚症状

このがんの最大の症状は、「子どもの眼が猫の眼のように光る」こだ。網膜にできた白色のがんが拡がるにつれて、眼に入った光がそれに反射して白く光ってみえる。

この症状を、「白色瞳孔」とか「猫眼症状」とよんでいる。眼の位置がおかしくなったり(斜視)、充血や眼病などもある。がんによって眼の内部に炎症がおこったり、眼圧が上昇するための症状である。もっとも眼圧がゆっくりと上昇していくと痛みを覚えないケースもあるし、視覚障害がおこっても、乳児は「世の中はこんなもの」と思っているので、自覚症状を訴えないことのほうが多い。

よってこの病気ほ、ほとんどがお母さんの発見による。子どもの健康状態を注意深く見守っているお母さんほど早く発見している。

診断

検眼鏡で眼の内部を直接みる「眼底検査」をおこなう。簡単に診断がつくこともあるが、網膜が剥れ(網膜剥離)その下にがんが隠れていると、すぐには診断がつきにくいし、がに向かって増殖し、その表面がくずれて白くなっている場合も診う断が難しい。「白色瞳孔」は先天性白内障や、未熟児網膜症の末期でもみられる。そこで、超音波診断や、CTによるⅩ線断層撮影、MRIなどで確かめる。遺伝性の場合は、採血し染色体検査がおこなわれる。いずれの検査も難しいものでほないが、乳幼児におとなしく検査を受けてもらうことは、とても難しい。そのため、検査にあたって睡眠剤を投与したり全身麻酔をほどこすことが多い。

ここまで治る

1960年代までほ眼球摘出がふつうだったが、現在は、眼球を残す治療が多く試みられるようになった。もっとも、がんが大きく眼球全体に拡がっていたり、硝子体中にちらばっている時は、ためらいなく眼球の摘出がおこなわれる。白色瞳孔の症状が出ている場合もかなり進行しているので、やほり摘出の対象になる。

進行度は、1~5群にわけた「レーゼ(Reesseの分類」によることが多い。2群までほ摘出せずに完治できるが、3群では治せても視力障害が残ることが多くなる。4群以上では、眼球の摘出が必要になる。両眼性の場合は、片限の進行が遅れていることが多く、片眼は摘出しても片限は保存治療することが試みられている。

眼球を摘出しない治療では、比較的大きい腫瘍の場合は放射線治療が試みられるが副作用がある。小さい腫瘍でほ、光のエネルギー(アルゴン・レーザー光線)でがんをたたく治療法(光凝固)や冷凍凝固で治療することが多い。レーザーのスポット光線を、入墨をするようにがんの周囲から中心部に向かってうちこんでいく。直径5ミリのがん全体にうちおわるには、30分ほどかかる。小さながんであれば光凝固だけで治る。

治療法が進み、網膜芽細胞腫は死なないがんになったが、発見が遅れると、眼球摘出し、失明することになる。生存率は90パーセントをこえているが、失明を防ぐ意味で、早期発見、早期治療という鉄則は、このがんではことさら重要である。このがんの男女差はほとんどない。

やむなく眼球摘出した場合ほ、義眼を入れる。子どもは成長するので、成人までには2~3回の交換が必要。「失明」と聞くと、大人は、子どもが大変な不幸におちいったと衝撃を受けるが、幼いうちに片眼を失った場合は、その片眼の世界がごくあたりまえのことと受けとめている。
病院で「おめめ、とろうね」と医師が語りかけると、子どもは、ごく自然に義眼をとり出してくれる。周囲が、深刻な顔をしないことがたいせつ。
このがんは、再発や、片眼の場合にはもういっぽうの限に発症するおそれがあるため、追跡検診を欠かさないようにする。遺伝性の場合もあるので、発病していない兄弟や姉妹も一緒に検診を受けなければならない。

「皮膚がん」日本人のがん、白人のがんでは大きく異なる

皮膚がんの基礎知識

  1. 皮膚がんは大きく2つの種頼に分けられる。
  2. 発生率は人種や地域に大きく関係し、赤道近辺の住民や白人に多く日本人には少ない
  3. 顔、とくに唇、まぶた、鼻など皮膚と粘膜の移行部にできやすい。
  4. 太陽光線に長い時間さらされると、皮膚がんの危険が高まる。
  5. 広い範囲のやけどや、広い範囲のひきつれなどががんに移行することがある。
  6. ひどい湿疹が続き、分泌物が出るようなら要注意。
  7. 進行の遅いものが多いが、ほくろが急に大きくなり始めたら悪性黒色腫を疑う。
  8. 痛みやかゆみが必ずあるわけではなく、皮膚の色や形の変化もだいじな症状である。
  9. 出血したり、分泌物の出る変なほくろ、いば、うおのめなどができたら安易に切除せず、専門医の診断を受ける。

皮膚がん

皮膚がんは「一般的な皮膚がん」と「悪性黒色腫」に大別される。「一般的な皮膚がんはさらに「有棘細胞ガン」と「基底細胞ガン」に分けられる。男女差はほとんどない。

有棘細胞ガン・基底細胞ガン
どこに起こるがんか

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下という三層構造になっているが、表皮をつくる「有棘細胞」におこる皮膚がんが「有棘細胞がん」である。
この「有棘細胞」の層の下にある「基底細胞」にできるのが、「基底細胞がん」である。
できるのは顔がほとんどで、鼻、目の周囲、ほおなど中央部に多い。がんは隆起したり、進行性の潰瘍をつくったりする。とくに頭、顔、手足など太陽光線にさらされる部分に多くできやすい。

どういう人に起こりやすいか

太陽光線がひとつの引き金になる。太陽光線の影響を弱めるメラニソ色素が少ない白人に多いのはそのためである。米国人の皮膚がんの7~8割がこのタイプである。日本人では皮膚がんの3割がこのタイプとされる。北海道、東北地方より四国、九州地方のほうが患者数が多いというのは、やはり太陽光線の強さの違いだろう。

また、外傷ややけどのあとのひきつりや潰瘍、放射線による皮膚炎などの異常からもおこることがある。20年も前の傷あとががんになることもあるので、気をつけておいたほうがいい。ただし、狭い範囲の皮膚異常から発生することは、ほとんどない。有棘細胞ガは皮膚がんの4分の1を占めるていどで、わが国では患者の数も少なく米国の100分の1程度で少ない。

自覚症状

いばやうおのめ、ほくろができ、次第に隆起し、それがザラザラしていたり、つぶれて出血したり浸出液が出たりしたら、皮膚がんの疑いは大きい。
ひどい皮膚湿疹もがんの可能性がある。いぼやうおのめの表面がツルツルしているのならば、がんを疑わないでいい。皮膚の一部が黒ずんだり赤くなり、その範囲がだんだん広がるのもがんを疑う。基底細胞がんでは、「結節潰瘍型」と呼ばれる特殊な隆起をもつものが多い。
いぼかほくろのようなものが次第に大きくなり、中央が潰瘍になって周りに堤防のような盛り上がりができる。日本人の結節潰瘍は黒ずんでいることが多い。

診断

体表にできるので、診断はつけやすい。組織の一部を切り取って調べればわかる。

ここまで治る

ここまで治るいずれのがんも、よく治る。有棘細胞ガンで転移のない直径5センチ以下のものなら治癒率は89パーセントに達している。直径5センチ以上、あるいは皮膚の深部にまで達していても転移がなければ約60パーセントは治る。
たとえ転移があっても、約40パーセントは助かる。

基底細胞がんは、転移もほとんどなく進行も遅いので、治療成績はさらによい。まず死亡することはない。ただし顔に多いので治療後の整形美容的な処置が必要になる。レーガン元大統領の鼻の頭にできたのがこのがんで、簡単な手術で復帰できたのは周知のとおり。米国では皮膚がんは簡単に治せるので、皮膚がんをがんの統計に含めていないほどだ。治療は切除が中心である。

有棘細胞ガンはがんといっしょに周囲の皮膚を3
センチほど切り取る。基底細胞がんでは、切り取る部分は有辣細胞がんより小さいことが多い。切除したのでは機能を失うような部位( まぶた、唇、耳など) では、放射線治療をおこなう。小さく転移がないのなら放射線治療だけで完全に治せる。リニアックという装置の電子線を25回照射するだけで終る。化学療法も効く。しかし、完全治癒はむずかしいので、初回の治療にこれを用いるのはよくない。治療の際には抗がん剤を週2回、注射する。その軟膏をがんに直接塗ることも試みられている。

悪性黒色腫

どこに起こるがんか

「メラノーマ」「ほくろのがん」とも呼ばれる悪性黒色瞳ほ、皮膚がんのなかではきわめて悪性で、進行が早く、全身に転移しやすい。日本人でほとくに足の裏にできやすい。

どういう人に起こるがんか

30~40年前まではきわめて少なく年間の死亡者数も50人に満たなかったが、年々増え続け、1988年には302人にまでなっている。不気味な増加率である。
40歳以降に多く、60~80歳がピークである。また、男性の発生率が女性の1.3倍と高い。なんでもない「ほくろ」が、この悪性がんに変わることが多い。日本人ほ人口の約4パーセントの人が足の裏にほくろやしみのような黒い斑点をもっているが、それが悪性黒色腫になる率は55万分の1といわれている。それでも、広い範囲のもの0は要注意。皮膚表面に露出し、分泌物を出すようになったら極めて危険である。

自覚症状

どんな自覚症状があるか今まで何もなかったところ( とくに足の裏)にほくろができる、ほくろが1ヶ月で二2~3ミリも大きくなる、ほくろの周囲がピンク色に染まるといった変化が現れたらがんを疑わねはならない。
顔や手足のしみのなかにできた色むらが、このがんである場合もある。ほくろを自分で削りとったり、美容整形で取ってもらったりする人がいるが、もしそれが悪性黒色腫だと全身への転移の原因になるので、必ず専門医にまかせなければならない。顔や爪のつけ根が変に黒ずみ、それが広がってきた場合も悪性黒色腫の疑いがある。

診断

疑いのある部分の色を調べる。「黒色」腫というものの紫色、赤褐色、青など色はさまざまだからだ。周囲の健康な皮膚との境目がピンク色になっていたり、病変部の色がにじみ出していないか、表面の凹凸はどうかといったこともチェックされる。皮膚がんでは、皮膚のひび割れや角化、びらんが見られるが、悪性黒色腫も同じである。最終的に組織をとり顕微鏡で検査するが、一部だけをとると転移の可能性大になる。悪性とわかったらできるだけ大きな病院を受診したほうがいい。

がんが表皮にとどまっていれば約80パーセントは治る。皮膚の深い部分へ浸透していくほど治癒率は低くなる。真皮の深い部分まで広がっていると、転移がなくても治癒率は20~30パーセントになる。転移が早いがんなので早期発見、早期治療が欠かせない。治療は、患部を切り取る手術が中心になる。早期なら、がんと周囲の健康な皮膚を5センチの範囲で切り取る。しかし広がるのが早いので、足の裏にできた場合は足首から先を切断するケースも少なくない。

手術に放射線治療が組み込まれることも多くなった。普通の電子線より粒子の大きい連中性子線(サイクロトロン) はがん細胞に与える衝撃が大きいので、これでがんを小さくしてから切除手術をするといった方法がおこなわれ、効果をあげている。
かつて悪性黒色腫は手術後に再発したり転移するとほとんどなすすべがなかった。全身への転移で、内臓がまるで墨で塗りつぶしたようになりお手あげという悲惨なことも多かった。しかし、放射線治療の進歩などにより、手術後の再発や転移もかなり防げるようになった。
また、このがんは人間の免疫力と深いかかわりのあることがわかってきたので、免疫力を高める薬を与え手術後の再発防止に役立てようという試みもおこなわれている。皮膚がんは色素の多い黄色人種や黒人よりも色素の少ない白人に圧倒的に多い。

「骨・筋肉のがん」温熱療法

骨・筋肉のがん」の基礎知識

  1. 骨・筋肉の腫瘍には良性のものと悪性のもの( がん)がある。
  2. 骨の悪性腫瘍は膝、肩にとくに発生しやすい。
  3. 骨の悪性睦瘍のうち骨肉腫、ユーイング肉腫は子どもに多く、軟骨肉腫は中高年に多い。
  4. 骨の悪性腫瘍の治癒率は飛躍的に向上していて、不治の病でほなくなっている。
  5. ちょっとしたことで骨折するときはほ骨の悪性腫瘍を疑う。
  6. 化学療法や手術療法が発達し、骨の悪性腫瘍では施設間に差はあるが50~80%は手足を切断しないですむようになった。
  7. 手術後は定期的に抗がん剤の点滴を2~3年は続ける必要がある。
  8. 軟部腫瘍は、特殊なものをのぞけば、中高年に多く発生する。
  9. 軟部腫瘍は、切除手術が治療の中心になる。

骨・筋肉にできるガン

一般に知られている「がん」とほ、正確には「悪性腫瘍」の一部を意味している。「ガン」の呼び名は、悪性腫瘍の中でも、皮膚や皮膚とつながりを持つ消化器の粘膜(「上皮性組織」という)におこったものだけをさしている。

しかし「悪性腫瘍」は上皮性組織だけに発生するわけではない。骨、筋肉、脂肪組織などの上皮性組織以外の場所(「非上皮性組織」という) にも同じようにおこる。

これら、骨、筋肉、脂肪、関節、神経などに発生する「悪性腫瘍」は、正確には「がん」ではなく「肉腫」と呼ばれている。肉腫は、消化器などのがんと同じように、ほうっておけば命取りになるし、転移してさらに症状を悪化させることも多く「がん」と同じと考えていい。

だが、骨や筋肉などの非上皮性組織には、がんと似た性質をもつ「悪性腫瘍」だけではなく、良性の腫瘍も数多くできるので、腫瘍が発見されたとき、早めに悪性か良性かをみきわめなくではならない。骨や筋肉の悪性腫瘍(肉腫)にほ、じつにたくさんの種類がある。それをすべて詳しく述べることほできないので、ここでは「骨の悪性腫瘍」と「筋肉や脂肪の悪性腫瘍(軟部腫瘍)」に大別する。

骨の悪性腫瘍

どこに起こるがんか

もっともよく知られている「骨肉腫」は、ひざ周辺の大腿骨やけい骨に多く発生する。骨肉腫全体の約70%が、ここにおこっている。
ついで、肩の骨(上腕骨)での堅が30%にも弱。他の骨にも生じうる。学齢前の幼児に多くみられる「「ユーイング肉腫」も骨肉警とだいたい同じ場所におこる。
もっともこれは病巣が広い範囲におよぶ傾向がある。中年以降に生じやすい「軟骨肉腫」もやはりひざ周辺に多い。したがって骨の悪性腫瘍はとくにひざが要注意部分ということになる。

どういう人に多いか

骨の悪性腫瘍でもっとも多いのが骨肉腫で軟骨肉腫は骨肉腫の3分の1、ユーイング肉腫になると7分の1にすぎない。発生率の男女差はないが、年齢によっておこりやすい腫瘍の種類が異なるという現象がある。骨肉腫は10歳代が大半を占め、ユーイング肉腫はそれより若い学齢期前の幼児~児童が中心。軟骨肉腫は30~50歳代の中高年がピークである。骨髄腫やほかの臓器からの転移がんは、50歳代をこえる高齢者に圧倒的に多い。

骨の悪性腫瘍の原因は、はとんどわかっていない。骨をさかんに作る部分に発生しやすこつがいので、骨を構成する「骨芽細胞」、「軟骨芽細胞」などが何らかの原因で性質を変え、増殖した結果とされている。

自覚症状

  1. 手足がなんとなく腫れてくる。
  2. 手足に痛みがありしだいに強くなる。
  3. たいした衝撃もないのに簡単に骨折してしまう。
  4. 関節の曲りが悪くなる。

の4つが4大症状となる。

骨肉腫では、腫れや痛みのほかに、ひざや肩の周辺が熱をもつことがある。腫れた個所を押すと痛みを感じることもあるが、最初は痛みは少ない。ユーイング肉腫では、発熱がしばしばみられる。この腫瘍は幼児~児童に多いので、原因不明の発熱には、気をつける。軟骨肉腫は、痛みはあまりないが、関節の近くの骨がはれたり変形がみられる。

診断

骨の悪性腫瘍は種類によって発生しやすい部位が違うので、発生した部位からどんな悪性腫瘍かを診断することが比較的簡単にできる。また、骨の腫瘍は、悪性のものより良性の腫瘍のほうがはるかに多いことも知っておいてほしい。
「骨の腫瘍」と聞かされても悪性の「がん」と思いこまないこと。なかには「骨巨細胞腫」のように、良性か悪性か、鑑別がむずかしいものもまじっている。よって、骨の腫瘍の疑いがあるときほ良性、悪性のみきわめが診断の第一目標になる。

診断は、X線撮影からおこなわれる。骨肉腫などは進行が早いので1ヶ月ほど間を置いて2回撮影をおこない、腫瘍の増殖速度が速けれは「悪性」、遅ければ「良性」と判断することもある。
ふつうのⅩ線撮影ではっきりしないときは静脈にきわめて弱い放射性物質を注入する検査も、よくおこなわれる。
腫瘍部分へのアイソトープの集まりぐあいで、腫瘍の性質をみきわめる。Ⅹ線撮影などであるていど診断がついたら、腫瘍組織のごく一部を切り取って顕微鏡で細胞を調べることがおこなわれる(生検)。
以上で腫瘍の性質はまずほっきりする。手術が必要となれば、CTやMRIで切除範囲をこまかくきめる。

ここまで治せる

骨の悪性腫瘍は治りにくい腫瘍の代表とされ、骨肉腫の5年生存率は10年前までは20%にすぎなかった。しかし現在では、約60%と飛躍的に向上している。

ユーイング肉腫でも60%近くが治せるし、線維肉腫、軟骨肉腫も同じようちゆに治癒率が高くなった。これは、よい抗がん剤が次々に開発されたおかげである。
テレビドラマなどで骨肉腫を絶望的な病気と描くことが多いが、そんなことほなくなりつつある。治療は手術と化学療法、放射線療法の組み合わせが多い。
とくに骨肉腫やユーイング肉腫は、この連係が重視される。骨肉腫ではまず、抗がん剤で腫瘍をたたいておいてから手術にとりかかる。早期なら患部とその周囲の膜や筋肉の切除だけで、足や腕の切断は避けられる。最近では、施設により差ほあるが50~80%が切断しないですむ。
手術後は再発防止のため、2~3年は定期的に抗がん剤め点滴治療が必要である。放射線療法は、手術前に腫瘍を小さくしておくためや、手術で切除しきれなかったときに使うことが多い。ユーイング肉種ではさらに、抗がん剤の効果が期待できる。放射線療法も奏効するが、小児例でほあとの発育障害や二次性肉腫などが問題になる。

新しい治療法としては、温熱療法と動注療法が注目されている。温熱療法は、おもに末期の患者さんが対象である。電子レンジと同じ高周波で患部を温めながら放射線を照射する方法や、血液をカテーテル(細い管)でからだの外へ流し、42~43度 に温めてからだにもどす(体外還流)方法などがある。がんが、熱に弱い性質を利用した治療法である。動脈にチューブを入れ、通常の2~3倍の濃度の抗がん剤を患部に直接入れる動注療法ほ、手術を縮小する目的でおこなうが、通常、全身的な化学療法と併行しておこなわれることが多い。

軟骨肉腫など、中高年に多い悪性腫瘍ほ、進行が比較的遅く転移も少ないので、手術だけで治療を終えるのが一般的である。

骨肉腫やユーイング肉腫の再発は、だいたい2年以内におこっているので、治療後5年間再発がなけれはまず完治したと思っていい。もっとも化学療法の発達で、再発する場合も遅れておこる傾向がある。また、骨肉腫の転移は肺に多く、転移を許すと治癒率がぐんと悪くなる。

手術で関節を切除した場合の機能回復は、自分の他の部分の骨をつないで関節を固定する方法と人工関節をつける方法がある。なかでも人工関節の進歩がめざましく、手術の進歩とあいまって日常機能の回復はかなりよくなっている。

軟部腫瘍

どこに起こるがんか?

筋肉、血管、脂肪組織、神経などの骨以外の「非上皮性組織」にできる腫瘍を「軟部腫撃と呼んでいる。軟都腫瘍には骨の腫瘍と同じく悪性のものと良性のものがあり、「ガン」とされるのは悪性のもの。

悪性の軟部腫瘍だけでも種類は12種以上あり、小児の手足の筋肉に発生しやすい「横紋筋肉腫」、中年以降の脂肪組織に発生する「脂肪肉腫」ひざや手の関節近くに発生する「滑膜肉腫」、中年以降の手足に発生する「悪性線維性組織球腫」、同じく筋肉のなかにおこる「胞巣状軟部肉腫」などがおもなものだ。これらのうちち悪性線維性組織球腫の頻度が高い。

それぞれの発生率はそう高くほないのだが、種類が多いので全体の発生率は骨の悪性腫瘍より高い。これらの悪性腫瘍はあまり知られていないので、発見が遅れがちである。

どういう人に起きやすいか/h4>
男女による発生率の違いほほとんどないが、年齢によって発生しやすい腫瘍の種類が異なる。20歳以下の若い年齢層でほ横紋筋肉腫が多く、とくに10歳以下の小児に多い。悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、滑膜肉腫、神経肉腫などは30歳代から増え始め、40~50歳代が発生のピークである。

自覚症状

いずれにも共通しているのは筋肉のしこりである。原因不明で、いつまでもしこりが解消しないときは要注意である。しこりは、親指大から鶏卵大、ほっておくと巨大となり皮膚が破れてくる。しこりというはどでほないが、皮膚をつまんだときの感じが周囲に比べて硬いときも軟部腫瘍の疑いがある。初期での痛みははとんどない。

診断

しこりの大きさがピンポン球以上のものは、専門家が超音波、Ⅹ線、CT 、MRI 、細胞診、針生検などの検査をおこなえば簡単に診断がつく。それより小さいものは組織を切り取って、腫瘍かどうかを顕微鏡で調べる。この組織検査でほぼ診断がつく。

ここまで治る

転移がなく十分な治療を受けていれば五年生存率は70~80%に上るが、治療が不十分なケースもあり、生存率は全国平均で65%ほど。
治療の基本は切除手術が中心で、腫瘍の部分を周囲の健康な組織といっしょに切り取る。切除方法の詳しいマニュアルも確立されていて、成功率は高い。進行したものでは手足の切断も必要になるので、早めの受診を心がける

「泌尿器のガン」増加する前立腺がんに有効な治療

泌尿器のガンの基礎知識

  1. 日本人の前立腺がんはホルモン療法がよく効くので、手術をしないですむことも多い。
  2. 前立腺がんは、尿が出にくい、排尿の勢いが悪いなど前立腺肥大の症状と似ている。
  3. 前立腺がんの五年生存率は、早期ならば90%以上にのばっている。
  4. 前立腺がんは、進行がきわめてゆっくりとしているので、気づかないまま天寿を全うする人も少なくない。
  5. 腎臓のがんは、3cm以下で発見できれば治る率がとても高い。
  6. 40歳以上の人で血尿があったら、腎臓か膀胱のがんをいちおう疑ったほうがいい。
  7. 膀胱がん、腎臓がんは、男性が女性の3~4倍も多い。
  8. 膀胱がんは、おなかを切らないで、尿道から器具を入れて切除することもできる。
  9. 膀胱がんには、切除を繰り返しながら、がんと共存できるものもある。
  10. 睾丸のがんは、睾丸の発育異常や萎縮が原因の1つとされる。

泌尿器にできるがん

腎臓、膀胱のがん、男性生殖器にできる前立腺がん、華丸腫瘍、陰茎がんなどがある。腎臓のがんも膀胱がんも、男性の方が3対1から4対1の割合で多い。陰茎がんをのぞきいずれも少しずつ増えており、とくに前立腺がんの増加が目立つ。膀胱がんは放射線も効き、前立腺がんはホルモン療法が効くなど、それぞれ特徴的な攻撃法があるおかげもあっちゆて、最近は、どのがんも治癒率が確実に向上しているのは嬉しいことである。

前立腺がん

前立腺は、男性だけがもつ器管で、精液の「液体」成分をつくり貯蔵しておくクルミ大の臓器である。膀胱と尿道境目で尿道をぐるりと取りかこむように位置している。精子をつくるのは睾丸だが、その精子は前立腺へ送られて液体成分とまじりあってはじめて運動できるようになる。前立腺がんは、ここにおこるがんである。

どういう人に起こりやすいか

60歳代以降の高齢者に多い。驚いたことに、80歳以上の男性の3分の1が前立腺がんをもつといわれる。がんと気づかぬままに、生涯を終えている人が多い。発病率は人口10万人に対しわずか2.32人。とても少ないがんだったが、最近、急増傾向にある。

自覚症状

初期には排尿回数が多くなり、夜、何度もトイレにおきる。尿が出にくく勢いが悪いことも多い。こうした症状は、主に高齢者に多い前立腺肥大と同じで、がんの可能性は小さい。進行すると血尿が出たり、骨転移によって座骨神経痛のような痛みを覚えることもある。初期症状での自己発見は難しいが、50歳すぎてからの年1度の人間ドックで発見できる。

診断方法

専門医が肛門に指を入れ前立腺を指で触れ(触診)、しこりなどを確かめれば、前立腺肥大症かがんかの判別はおおよそつく。がんが疑われたら、血液中に含まれる前立腺がんが分泌する特殊なタンパク(特異抗原) を調べる「腫瘍マーカー法」や造影剤を注入してレソトゲソをとる「尿道造影法」、前立腺の組織を少し切除し顕微鏡でがん細胞を調べる「生検」をおこなう。

ここまで治る

前立腺がんは、3つに分類される。「高分化がん」と「低分化がん」、その中間の「中分化がん」の3種である。ホルモン療法がよく効き進行も遅いのが高分化がん。

いっばう低分化がんは、進行や転移が早い。日本人の前立腺がんは、タチのよくない低分化型が増加傾向。治しやすい高分化がんも、進行すると低分化型のがん細胞が増えて、骨やリンパ節に転移をおこしやすくなる。治療は、女性ホルモン剤の長期服用が主である。前立腺がんは男性ホルモンによって悪化し、女性ホルモンによってよくなる性質があるためだ。女性ホルモン剤の服用によって、乳房が少しふくらんだりヒゲが薄くなることがあるが、それ以上の副作用の心配はない。

ホルモン療法は、がんの活動を抑えるだけで「治す」わけではないが、これで患者さんはがんによる死をまぬがれる。もっとも数年で効果がなくなることもあり、定期的なチェックはいる。初期例では放射線照射や前立腺の摘出手術がおこなわれる。

腎がん

起きる部位

腎臓はソラマメ型の臓器で左右に1つずつある。らだの外に捨てる働きをもつ。血液中の老廃物を濾過し外に排出する。構造は、「実質部分」と尿をためておく「空隙」とに分けられるが、その「実質部分」にできるのが腎がんである。「空隙」の壁をつくる腎孟にできるがんがあり、これを腎孟がんと呼ぶ。おとなの腎臓がんの9割は腎がんで、腎孟がんは1割程度。40歳以上に多く、4対1の割合で男性に多い。

自覚症状

ある程度進行してから、突然の血尿をみる。血尿は2~3日で自然におさまるが、また出血ということを繰り返す。やがて腎臓が腫れ、おなかの上から触れるとしこりが触れたり、痛みを感じるような場合もある。

診断方法

超音波でがんの有無を確かめる。尿にまじっている血液や尿の中にがん細胞があるかないかを調べることも大切である。詳しい検査のためには、造影剤を使ったレソトゲソ撮影やCTが用いられる。

ここまで治療ができる

初期(第Ⅰ期)には腎臓をおおう腎被膜の内側に止まっているが、第Ⅱ期になると周囲の脂肪組織にまで広がる。第Ⅲ期になると腎臓周囲のリンパ節にまで拡大。第Ⅳ期になると、隣接する臓器や遠くの臓器に転移をおこす。第Ⅰ期のうちに発見し、がんの大きさが3センチ以下なら、5年生存率はかなり高い。

腎がんの治療は、腎臓と膀胱に続く尿管を途中まで摘出する手術がおこなわれるが、腎孟がんでほ尿管をさらに膀胱まで摘出する。また、両側の腎臓に同時にがんがおこることが2~3パーセントあり、このときは進行している側を摘出し、残した側ほ部分切除にとどめる。腎臓は片方を摘出しても残った側が十分に機能をはたしてくれるので、通常の生活を送ることができる。

膀胱がん

どこにおこるガンか

尿の貯蔵所、膀胱は筋肉質の袋で、牛乳びん1.5本分(約300ミリリットル の尿をためることができる。底の部分には腎臓からくる2つの尿管が接続していて、その前方に尿道への出口がある。尿が約200~300ミリリットルたまると尿意を感じ、膀胱の壁の筋肉が収縮して排尿がおこなわれる。膀胱がんはこの膀胱の内側をおおっている「上皮」に発生するがんで、泌尿器のがんの中ではもっとも多い。

膵臓がん「すい管造影で世界最小のがんを発見

膵臓がんの基礎知識

  1. 日本人には少ないがんだったが、食生活の変化などによって著しく増加している。
  2. ほかのの消化管(十二指腸など)に近いすい臓の頭部におこりやすい。
  3. 男女比は2二対1で男に発生しやすい。
  4. 60歳代がもっとも多く、高齢者はど注意がいる。
  5. すい炎、糖尿病などはかの病気とは直接的な因果関係はない。
  6. 多くの場合、がんによる二次的すい炎を併発している。
  7. きわだった自覚症状が痛みで、とくに背中から腰にかけての痛みが出る。
  8. 急激な体重の減少や黄疸が出ることも多い。
  9. 直径2cm以下の被膜内のものなら5年生存率は約50%に達している。
  10. 手術中の放射線照射(術中照射)で、痛みをやわらげることができるようになった

どこにおこるガンか

すい臓は、胃の裏側にあるバナナ状の細長い臓器である。からだの中央に近く、十二指腸と接している右側が太く、左にいくほど細くなる。太い部分を「頭部」、中央部を「体部」、細くなって脾臓と接している部分を「尾部」と呼ぶ。

このすい臓にはふたつの働きひぞうがある。与消化液のひとつ、「すい液」を作る働きである。これは十二指腸に分泌され、食物の消化に利用される。もうひとつは、血液中にある全身の言ルギー源である糖( 血糖)の量を調節しているホルモン(インスリソとグルカゴソの二種) を作る働きである。

すい臓がんは十二指腸に近い頭部におこりやすい。約七割が頭部から体部にかけてでき、残り3割が体部から尾部にかけておきている。
からだの奥深いところに雪臓器なので、がんができても発見や治療がむずかしい。欧米諸国では、すい騰がんが発見されても根本的な治療をおこなわないケースが少なくないほどである。
しかし、診断技術や治療法の進歩でかなりのものまで治せるようになってきた。とくに日本は、早期発見や手術方法で世界をリードする成績をあげている。早期に発見できれば、不治の病ではなくなりつつある。

どういう人に起こりやすいか

消化器のがんのなかでは胃、肝臓、大腸に続いて4番目に多く、年々増加している。年間死亡者数は1万人を突破している。昭和35年から56年の比較でも、約2.5倍増である。
男性が2倍多い。60歳代が発生のピークなので、高齢者のがんと考えてよい。原因として、慢性すい炎や糖尿病などほかの病気が引き金という説が唱えられてきたが、最近になって否定されている。欧米に多く日本に比較的少なかったことから、肉類など動物性脂肪の摂り過ぎに原因があるとされ、酒やタバコとの因果関係も否定できない。

自覚症状

すい臓がんの患者の4分の3は、なんらかの痛みを経験する。急激な痛みと鈍痛があり、進行するほど痛みも強まる。場所は背中から腰にかけて、上腹部、左の肋骨の下といったあたりが多い。
背中や腰の筋肉に異常がないのに強い痛みを感じるときは、赤信号である。すい臓の休部や尾部にがんが発生したときほ、急激な体重の減少がみられる。消化機能に異常がおこるほか、痛みで食事が十分とれないためである。ほかの消化器に異常がないのに急激に体重が減り始めたら、すい騰がんを疑う。
すい臓頭部のがんでは、黄痘も出る。痛み、体重減少、黄痘以外に、全身倦怠感、発熱、下痢、吐き気などが出ることもある。

診断方法

すい臓がんは、「すい液」の通り道である「すい管」に近いところに発生したものほど症状が出やすい。ここにがんがおこれば、すい液の流れが悪くなる。そこで、すい液の滞り状態から異常をつかむ診断方法が開発された。アミラーゼやエラスターゼといったすい臓が作っている酵素の血液中の量を測定するのである。

これで異常が発見されたら、すい管に造影剤を入れX線撮影をおこなう。この「すい管造影」は技術が向上し、かなり小さながんまで発見できるようになった。すい管造影によって直径8ミリのがんを発見し、切除することに成功している。世界でも最小のすい臓がんの発見、治療記録である。

すい騰がんは「すい炎」を併発していることが多いので、「すい炎」と診断されたら念のためにすい管造影を受けるのがよい。すい管造影は10分もあれば終る。すい炎だとすい管が拡張してすい臓全体が硬くなり、胃が圧迫されることがある。これは胃のX線撮影でも容易にわかるため、胃のX線検査で偶然にすい臓がんが早期発見されることもある。

ここまで治る

すい臓がんの治療成績ほめざましく向上 している。直径2センチ以下のものの5年生存率は約50パーセントになった。胃がんなどに比べ悪い数字に思えるが、これはすばらしい数字である。すい臓はほかの消化器に取り囲まれており、血管やリンパ管も入りくんでいて手術がとてもむずかしい。それに、がんは小さくても臓器の内部に深く進み、リンパ節や神経などへの浸潤も多い。そういう悪条件下での、50%なのである。

すい臓がんの大半はほかの臓器に浸潤したり、リンパ管を通りリンパ節に転移しやすいというやっかいな性質をもっている。また、進行も早い。がんが直径3センチ以上になると、長期生存は期待できない。
ただ、全体の1割を占める「粘液産生がん」は、比較的浸潤が少なく、進行もゆっくりしている。このがんは、その大部分が昔は「慢性すい炎」と診断されていたほどである。
もちろんこのタイプでも、早期発見、早期治療を怠ってはいけない。治療は切除が中心だが、がんの手術でもっともむずかしいといわれる。「頭部」は十二指腸につながっているので、ここにおこったがんは十二指腸といっしょに切除する。
この手術は、消化器手術のなかでも約5時間を要する大がかりなものである。「体部」から「尾部」のがんでは、尾部側をすべて切除する。
ただ、すい臓全部を摘出するとホルモンが作られなくなり糖尿病が悪化するので、少し残す。すい臓がんは強い痛みがあるが、手術中に放射線を当てると 痛みが軽くなるので、試みられる機会が増えた。

肝臓がん「肝硬変からがんへの変化」

肝臓がんの基礎知識

  1. 肝臓のがんはほかの臓器から転移してくるものが多い。
  2. 原発性のがんは肝臓そのものをつくっている細胞にできるがんが大半を占める。わずかだが肝臓の中の胆管におこるものもある。
  3. 死亡者は男のほうが女の3倍近くにのぼる。
  4. B型肝炎の抗原が陽性の人は注意。
  5. 肝炎から肝硬変、肝臓がんと進むケースが多い。
  6. 腫瘍マーカー、超音波、CTなどで、直径5ミリくらいの肝臓がんでも早期発見できるようになった。
  7. 進行するとほかの臓器へ転移したり、静脈癌破裂による大量出血がおこることがある。
  8. かつてはほとんど手術が不可能だったが、最近は手術による治療も可能になってきた。
  9. 肝臓に分布する動脈に栓をしてがんを兵糧攻めにする「動脈塞栓術」は切除手術なみに延命効果がある
  10. 女性のはうが手術後の経過はよい。

肝臓がんはどの部位に発症するか

肝臓は消化に役立つ胆汁を作ったり、小腸から吸収した栄養分の備蓄と全身への供給、毒物の分解など、その機能は500をこえるといわれる重要な臓器である。
腹部の臓器としてはいちばん大きく、重量もおとなで1.1~1.2キログラムである。ここに発生するがんが肝臓がんで、大きく2種に分けられる。

最初から肝臓に発生するがん(原発性肝臓がん)とほかの臓器から転移してくるがんがある。肝臓がんで特徴的なのは、原発性のがんより転移してくるがんのほうが多い。
転移してできた肝臓がんは、原発性の肝臓がんより3倍も多い。これは肝臓がほかの臓器からの血液が多く集まってくるためがん細胞が流入しやすいことや、栄養分の貯蔵庫であるためがんも育ちやすいことなどが、理由として考えられている。
原発性のがんのなかでは、肝臓の細胞そのものに発生するがん( 肝細胞がん)が90%を占め、残りの1割が肝臓でできた胆汁を十二指腸へ送る通路、肝内胆管におこっている(胆管がん)。

どんな人に起こりやすいか

肝臓がんの死亡者をみると男性のほうが女性よりはるかに多い。このがんによる男性死亡者数は、女性の約3倍近くにもなる
。肝臓がんはがん全体のなかでも死亡者数が3番目に多い。男女とも警戒しなければならないが、とくに男性は要注意である。原発性の肝がんはいきなり発生するのではなく、はとんどが何らかの肝障害のあとにおこる。

なかでもB型肝炎ウィルスに感染した人は危険グループに入る。原発性肝臓がんの人のうち、B型肝炎ウイルスの抗原が陽性の人が30%を占めているからである。すでに肝炎や肝硬変を発病している人も、同じように危険度は高い。肝硬変で亡くなった人の約3分の1が、がんを併発していることもわかっている。肝炎、肝硬変と進み、最後に肝臓がんをおこすことが多く、このがんは「肝臓病の終着点」ということもできる。

したがって、肝障害はできるだけ早いうちに治しておくことががんの予防にもなる。アルコールの過飲が肝臓をいためることは知られているが、アルコールは肝臓がんの危険田子でもある。健康に害をおよばさない1日の飲酒量は、ウィスキーでダブルの水割り2二杯までである。ちなみにこれは、日本酒なら2合、ビール大瓶では2本分とほぼ同じアルコール量になる。

肝臓がんの自覚症状

肝炎や肝硬変と共通する症状が多い。比較的初期のものなら食欲不振、全身の倦怠感、体重の減少、上腹部の重苦しい感じなどの症状が出る。
鈍い痛みや微熱がみられることも少なくないが、胆管のがんでは発熱や痛みは少ない。進行すると、黄痘が出たり、腹水がたまったり、上腹部にしこりがあらわれたりする。とくに、肝硬変の人で黄痘が急激に悪化したり、腹水を出す利尿剤の効果が下がってきたときはがんの疑いが濃くなる。

また、がんが肝臓と腸を結ぶ静脈(門脈)にまで浸潤すると、血液のいき場がなくなり食道の静脈に押しよせ、食道の内側の細い静脈に風船ガムがふくらむようなコプをつくることがある。このコブが、ピーナッツなど固いものを食べるなどして傷つけられ破れると、突然の大出血をおこす。洗面器に1杯分もの吐血をみることも珍しくない(食道静脈癌破裂)。
食道からの出血だが原因は肝臓にある。緊急手術を受けないと命を失うこともある。

肝臓がんの診断

肝臓の機能検査でほ必ず血液中のさまざまな酵素の量の測定がおこなわれる。なかでもGOT 、GPTなどほよく知られている。肝臓が生産している酵素である。
肝臓の機能が悪化するとこれらの酵素も増える。しかしその異常だけでほ肝炎なのか、肝硬変なのか、がんなのかの判定はできない。それに小さながんではその異常が出ないことのほうが多い。

しかし原発性の肝臓がんは、特有のタンパクを血液中に放出することがわかっている。「胎児性タンパク(AFP = アルファフェトプロテイン)」である。このAFP を目安( マーカー) にして肝臓がんの有無を診断する。こういう血液検査によるがん検査法を、腫瘍マーカーによる診断という。

AFPでがんの疑いが濃くなったら、画像診断でさらにくわしく調べる。画像診断にはぞよノえい超音波検査、CTスキャナーによる断層撮影、Ⅹ線を使った血管造影などがある。超音波やCTは、直径10ミリ以上のがんはみつけられるが、それ以下のがんの発見は血管造影がすぐれている。
ふともものつけねにある動脈から長いカテーテル( 細い管)を挿入し肝臓の動脈まで通して、造影剤を注入する。造影剤は肝臓の血管のすみずみに広がるが、がんは血管が密集しているのでⅩ線撮影をすると造影剤の影が濃く写るのである。ふとももの動脈からカテーテルを挿入する方法は、抗がん剤を注入したり、手術の場所をはっきりつかむなど治療に際しても大いに役立っている。以前はカテーテルが太く患者さんに負担をかけたが、最近は細いものに改善されている。

肝臓がんはここまで治る

昔は、肝臓がんはほぼ半年の命と考えられていた。現在でも残念ながら、治療成績はよいとほいえない。肝臓がんと肝硬変を併発している人の5年生存率はわずか約2パーセントであり、肝硬変がない人でも約17パーセント前後。

しかし、治療技術の進歩はめざましく、延命期間は少しずつ長くなってきている。よほどの末期がんでないかぎり、半年の命などというケースは少なくなってきた。
原発性肝臓がんの大半を占める肝細胞がんは、1個の大きな塊を作るもの、あちこちに小さな塊(結節)を作るもの、肝臓全体に広がるもの、の3つの型がある。大きな塊を作る肝臓がんより全体に広がるもののほうが治療がやっかいで、予後も悪い。
肝臓には多くの血管が通じているが、がんが進行するにしたがって血管が遊離したがん細胞で詰ってしまったり、血液の流れにのってほかの臓器に転移することも少なくない。転移先でもっとも多いのは、肺である。

健康な肝臓はあるていど切除しても、トカゲのシッポのように再生能力がある。肝臓は全体の1割しか機能していなくても、健康な肝臓なみの働きをするといわれるほど余裕のある臓器である。このことが肝臓病の発見を遅らせる理由にもなっているが、余裕があるために思いきった切除も可能なのである。
治療も、がんの部分を中心とした切除手術が原則である。とはいえ肝臓は多くの血管が入りくんでいるため出血しやすく、また肝臓全体が機能を失っている肝硬変の併発が多いので、手術は簡単ではない。

また、手術中の麻酔や輸血で肝機能が急激に低下し、がんの切除に成功しても肝臓本体がだめになってしまうこともある。したがって切除は、がんを切り取った後どれくらい肝臓の機能が残るかを慎重にみきわめなければならない。

手術につぐ治療法で注目されているのが、肝動脈塞栓術である。がん細胞に栄養を供給している動脈に栓をして血流を遮断し栄養を絶つ方法である。兵糧攻めでがんを殺すのだが、正常な肝細胞は塞栓術の影響を受けにくいところからおこなわれるようになった。
この方法で、切除と変らないほどの生存率が得られるようになったのは望ましい進歩である。とくに、結節型の肝細胞がんには効果がある。手術不能の肝臓がんにほ抗がん剤による化学療法もおこなわれるが、単独ではあまり成果が上がっていない。

また、超音波でがんの位置を観察しながら無水アルコールを直接注入する治療法がいくっかの大学で試みられ、好成績が期待できるとして今後のなりゆきが注目されている。

肝臓がんでは、手術後の経過も女性のほうが成績がよい。理由はほっきりしないが、女性にほ肝硬変を併発している人が少ないことが一因ともされる。肝臓がんほ手術に成功しても、急速に悪化することがしばしばある。よって手術後に退院できても、2~3週間に1度は通院して注意深く経過をみなくてはならない。

胆道がん

どの部位に起こるがんか?

消化に役立つ胆汁をつくっているのは肝臓だが、その胆汁の量を調節する袋状の器官が胆のうである。また、その胆汁を十二指腸に運ぶのが胆管である。これら胆のう、胆管にたんどうできるがんが「胆道がん」である。
もっとも胆管は、肝臓の外(肝外胆管) にできるものだけを指し、肝臓のなかを通る胆管(肝内胆管) にできるものは肝臓がん(肝内胆管がん) に分類している。

どういう人に起こりやすいか

「胆道がん」で亡くなる人は年間約1万人以上もいて、決して少ないがんではない。なぜか、女性のほうがやや多い。もっとも女性に多いのは「胆のうがん」で、「肝外胆管がん」ほむしろ男性に多い。
このがんは胆石とかかわりが深い。とくに胆のうがんでは70%に胆石がみられる。胆石ができると、胆のうや胆管は炎症をおこしやすく、その炎症の刺激でがんもおこりやすくなると考えられている。

コレステロールの摂り過ぎは胆石を誘発するといわれているので、血中コレステロール値の高い人も気をつけなくてはいけない。30歳代、40歳代で胆石持ちの人は、たとえ自覚症状がなくても早いうちに胆石や胆のうを摘出しておけば、がんへの進行を予防できる。

胆道がんの自覚症状

胆石の症状は、大部分が痛みである。右上腹部に差し込むような痛みがおこる。とくに、油濃いものを食べると痛みの発作がおこりやすい。

胆汁は脂肪の消化を助ける液であるため、油濃いものを食べると胆のうが収縮して胆汁をしぼり出そうとし、痛むのである。同時に発熱もおこる。この発作ほ30分ほど続く。専門医なら右上腹部を触診して、しこりなどから胆のうがんを発見できることもあるが、患者さん自身では無理。がんが進行すると、黄痘や腹部の持続的な痛み、体重の減少、食欲不振などがみられる。

診断

以前は、発見が困難だったが、診断技術の進歩で小さなものまでみつけられるようになった。十二指腸ファイバースコープを使いながら胆管に造影剤を注入したり、CTスキャナーで検査したりするが、もっとも大きく貢献しているのほ超音波診断である。超音波による画像診断は、患者さんへの負担が小さく、造影剤で写らないような部位までみられるので、このがんの診断にさかんに使われる。隆起型のがんなら、超音波で早期発見も可能である。たんなる胆石症も超音波による追跡検査を続けていれは、早期発見につながる。

ここまで治療できる

胆のうがん、肝外胆管がんとも治療成績ほよくない。がんが小さくて、発見しにくいからである。発見時には手術不能のことが多く、手術可能なのは今のところ患者さんの3分の1ていどである。胆のうがん、肝外胆管がんともに手術による切除が原則である。ただし、切除は簡単ではない。

胆道がんで全身状態などから切除不能の人に対しては、レーザーを使って焼き切る方法がとられるようになった。これは小さながんに限られるが、今後の研究の進歩が期待されている。肝外胆管がんでほ、胆管内に細い管を通してアイソトープの針を入れ、放射線の一種であるイリジウムを照射する治療法も一部ではおこなわれている。

肝臓がん関連情報

大腸がん「開腹手術が圧倒的に減少」

大腸ガンの基礎知識

  1. 大腸ガンのほとんどは結腸がんと直腸がん
  2. 発生のピークは60歳代で、男女とも近年発生率が急激に上昇している
  3. 大腸にできたポリープは1センチ以上の大きさになるとがん細胞が混ざっている可能性が高い
  4. 大腸がんは、比較的進行もゆっくりとしているが、いちばんこわいのは肝臓への転移
  5. 40歳を過ぎて、血便やしつこい下痢、便秘、おなかがふくれる、便の形が細くなったたり残便感が続けば、大腸がんが疑われる
  6. 急増する大腸がんは40代からが要注意

  7. 早期発見できれば治癒率はとても高く、固有筋層までにがんが止まっているうちに切除できれば、5年生存率は、80~90パーセソトが期待できる
  8. 大きさとかたちによっては開腹手術をせずに肛門からの内視鏡的処置で完壁な治療ができる。
  9. 肛門を切除した場合は、人工肛門を使う
  10. 動物性脂肪のとり過ぎを避け、食物繊維をとることが、大腸がんの予防策である

大腸ガンが発生する部位

水分吸収をおこなう大腸は、食道→胃→十二指腸→小腸とつづいてきた消化管の最後の部分で、身長とほぼ同じ1.5~1.7メートルの長さがある。

最初の部分の盲腸、もっとも長い結腸、肛門までの最後の約10センチ長部分の直腸、そして肛門管までがふくまれる。このうち結腸は、走る方向によって4つの部分、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられる。

大腸がんは、これらの腸の内側をおおう粘膜におこる。直腸がん、次にS状結腸のがんが多く、両者で大腸がんの約70パーセントを占める。大腸は水分の吸収をおこなうところなので、大腸に送られた食物は少しずつ水分を失ってかたくなりながら進み、固形便となってS状結腸に入る。
直腸は、この便をためておく場所である。こういう場所だけに、がんの症状も便と関係したものが目立つ。

このがんは、「粘膜からキノコのように突き出した良性腫瘍( ポリープ)ががん化する」という説と、「最初からがんとして発生する」という2つの説がある。

実際は、ポリープ内にがんがおこることが多い。しかし、最近ポリープ以外の扁平な粘膜がんもふえている。ポリープとは、一般に腸の粘膜に突き出したキノコ状の良性腫瘍をさすが、しばしばがんがひそんでいる。1センチ未満だとがんを含む率は1パーセント以下だが、1センチをこえたものではがんがある可能性は高い。よって、大腸ポリープが発見されたら、切除してがんがないかを必ず確認しなくてはいけない。のどなどの良性ポリープと違うところになる。

大腸がんは大腸の粘膜に発生後、上→ 左右に広がっていくが、むやみに広がったり転移することが少ない。周囲に密着した臓器が少ないことも、転移しにくい理由である。
もっとも進行すると、がん細胞が静脈の血流にのっておもに肝臓に飛び、転移をおこしやすくなる。肝臓に転移しても、範囲が限られていれば手術で治せる率が高い。リンパ節転移は時にみられ、腹膜播種はまれにみられる。

どういう人に起こりやすいか

男女とも急増中のがんで、この30数年で結腸がんが2倍、直腸がは1.5倍近くなった。なかでも、結腸がんの増加率が高い。男性のほうがおこりやすいが、欧米の結腸がんにかぎっては女性に多く、日本でも同じ傾向がみられるようになっている。

大腸がんは60~65歳代に集中しており、30歳以下にはほとんどない。原因は十分には解明されていないが、発展途上国にはきわめて少ないこと、日本よりアメリカが発生率が高いこと、菜食主義者のモルモン教徒やセブンズデイ・アドベンティスト派の信者には非常に少ないことなどから、食事との関係が指摘されている。

高脂肪、低食物繊維食をつづけている人におこりやすいのである。食物繊維が不足すると便秘がちになり、便に含まれる発がん物質が腸の粘膜に接触する時間が長くなる。これでがんがおこりやすくなると考えられている。規則正しいスッキリした排便が、予防のきめてである。

また、特殊な例だが、「家族性ポリポーシス」という遺伝性の大腸がんになりやすい体質がある。

大腸ガンの自覚症状

おなかの張った感じ、下痢や便秘、血便が代表的な症状である。おなかが張るのは、がんのしこりが腸の内容物の通過をさまたげるため。
腹痛やおなかがゴロゴロいうこともちよくある。腸ががんで完全にふさがれてしまうと、便が出なくなる腸閉塞になる。下行結腸や直腸のがんでは、ウサギのフンのように便がコロコロしたり、がんこな便秘がつづく。便器が汚れやすくなるのも特徴のひとつ。
しかし、便潜血がでたからといってすぐに大腸ガンと確定したわけではないので血便が見られたらすぐに病院に行くかまたは、自分でできる!病院に行かずに行う大腸ガン検査キットを使い便検査を行うべきである。

便に晴赤色の血のかたまりが混じっているのが血便である。血の色は出血場所が肛門に近いほど鮮やかで、直腸やS状結腸の下部からの出血では、粘液混じりの血液だけが出ることもある。いずれもがんによって腸の粘膜がくずれて出血するのである。もっとも血便は、痔とまちがえやすい。血便があったからと、単純にがんの不安にとらわれるべきではない。

直腸がんでは「しぶり腹」といわれる下痢を起こすことがある。直腸に停滞した便が発酵した結果である。直腸に停滞した便がまた、肛門近くにがんができると、便のかたちが細く、あるいは平たくいずれにせよ、40歳を過ぎて、便秘や下痢を繰り返したり、血便があったら一刻も早く診察を受けなくてはいけない。

大腸ガンの診断

がんは、大腸の「粘膜」から「粘膜下層」、さらにその下の「筋層」、もっとも外側の「凍膜」と広がっていくが、「粘膜下層」までにとどまっているものを早期がんとよぶ。
この段階までにがんを摘出すれば、結腸がんでは5年生存率は100パーセント近い。筋層まで進んでも80~90パーセントは治る。リンパ節への飛び火がなければ、かなりよく治るがんである。ただ残念なことに、ガンでも、筋層までの段階で受診する人はまだ20%そこそこにすぎない。

直腸は肛門から近いので、医師が指を肛門に入れて診察する(肛門指診)。また、肛門から肛門鏡を入れてみる検査もおこなわれる。
がんが疑われれば、肛門から造影剤のバリウムを注入し、直腸と結腸のレソトゲソ写真を撮る(注腸Ⅹ線検査)。

バリウムと空気を同時に注入して腸をふくらませ、粘膜のひだをのばし、バリウムをすみずみにいきわたるようにしてから明瞭なⅩ線写真を撮る方法もー般的である(二重造影法)。
また、肛門から細いファイバースコープを入れて肉眼で疑わしい部分をみる内視鏡検査もおこなわれる。ポリープ型の腫瘍では、付属のワイヤーをキノコ状の患部にひっかけて熱で切除し、悪性か良性かの検査もおこなう。

ここまで治る

結腸の腫瘍は、良性、悪性とも切除する。ポリープなら、肛門から入れたファイバースコープでのぞきながら、キノコ状のポリープの茎の部分に細い針金をひっかけ、焼き切るだけですむ。
ポリープ型の早期がんなら、開腹手術をせずにこの方法だけで治すことができる。それができない「台形で茎の短かい」あるいは「茎がない」ポリープは、がんの可能性も高いので、開腹して腸のその部分を切除のうえ、残った健康な腸の部分を縫いあわせる。

直腸がんの手術は難しい。近くに前立腺や子宮があり、でいるためだ。肛門の切除までほ避けたいという課題もある。また重要な神経が入りがんの場所が肛門から6cm以上離れていれば残せるが、それ以内では肛門も切除しなくてはならなくなる。大きな直腸がんは肛門ごと直腸を切除する。

肛門を失った場合には人工肛門をつくるが、自動吻合器の発達のおかげもあり、最近は肛門をできるだけ残す技術が進歩して、直腸がん手術の半分以上で肛門を残している。もっとも直腸手術では周辺の神経を傷つけやすく、後遺症として性欲減退やインポテンツ、排尿障害などがおこることがあり、これは私たちの今後の課題として残っている。がんを取り残すことなく、大事な機能保持の神経を温存する手術も普及しはじめている。

手術で完全にがんをとりきれれば、5年生存率は結腸がんで70%、直腸がんでも60%をこえた。胃がんと比べても、高い治療成練である。人工肛門は個人にあったものが選べるように改良されてきたが、慣れるためには訓練がいる。

大腸ガンも早期発見、早期治療がすべてといってもいい。
自分でできる!病院に行かずに行う大腸ガン検査キット