大腸がん 開腹手術が圧倒的に減少 しています。カテーテルによる治療が増えています。
大腸ガンの基礎知識
- 大腸ガンのほとんどは結腸がんと直腸がん
- 発生のピークは60歳代で、男女とも近年発生率が急激に上昇している
- 大腸にできたポリープは1センチ以上の大きさになるとがん細胞が混ざっている可能性が高い
- 大腸がんは、比較的進行もゆっくりとしているが、いちばんこわいのは肝臓への転移
- 40歳を過ぎて、血便やしつこい下痢、便秘、おなかがふくれる、便の形が細くなったたり残便感が続けば、大腸がんが疑われる
- 早期発見できれば治癒率はとても高く、固有筋層までにがんが止まっているうちに切除できれば、5年生存率は、80~90パーセソトが期待できる
- 大きさとかたちによっては開腹手術をせずに肛門からの内視鏡的処置で完壁な治療ができる。
- 肛門を切除した場合は、人工肛門を使う
- 動物性脂肪のとり過ぎを避け、食物繊維をとることが、大腸がんの予防策である
大腸ガンが発生する部位
水分吸収をおこなう大腸は、食道→胃→十二指腸→小腸とつづいてきた消化管の最後の部分で、身長とほぼ同じ1.5~1.7メートルの長さがある。
最初の部分の盲腸、もっとも長い結腸、肛門までの最後の約10センチ長部分の直腸、そして肛門管までがふくまれる。このうち結腸は、走る方向によって4つの部分、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられる。
大腸がんは、これらの腸の内側をおおう粘膜におこる。直腸がん、次にS状結腸のがんが多く、両者で大腸がんの約70パーセントを占める。大腸は水分の吸収をおこなうところなので、大腸に送られた食物は少しずつ水分を失ってかたくなりながら進み、固形便となってS状結腸に入る。
直腸は、この便をためておく場所である。こういう場所だけに、がんの症状も便と関係したものが目立つ。
このがんは、「粘膜からキノコのように突き出した良性腫瘍( ポリープ)ががん化する」という説と、「最初からがんとして発生する」という2つの説がある。
実際は、ポリープ内にがんがおこることが多い。しかし、最近ポリープ以外の扁平な粘膜がんもふえている。ポリープとは、一般に腸の粘膜に突き出したキノコ状の良性腫瘍をさすが、しばしばがんがひそんでいる。1センチ未満だとがんを含む率は1パーセント以下だが、1センチをこえたものではがんがある可能性は高い。よって、大腸ポリープが発見されたら、切除してがんがないかを必ず確認しなくてはいけない。のどなどの良性ポリープと違うところになる。
大腸がんは大腸の粘膜に発生後、上→ 左右に広がっていくが、むやみに広がったり転移することが少ない。周囲に密着した臓器が少ないことも、転移しにくい理由である。
もっとも進行すると、がん細胞が静脈の血流にのっておもに肝臓に飛び、転移をおこしやすくなる。肝臓に転移しても、範囲が限られていれば手術で治せる率が高い。リンパ節転移は時にみられ、腹膜播種はまれにみられる。
どういう人に起こりやすいか
男女とも急増中のがんで、この30数年で結腸がんが2倍、直腸がは1.5倍近くなった。なかでも、結腸がんの増加率が高い。男性のほうがおこりやすいが、欧米の結腸がんにかぎっては女性に多く、日本でも同じ傾向がみられるようになっている。
大腸がんは60~65歳代に集中しており、30歳以下にはほとんどない。原因は十分には解明されていないが、発展途上国にはきわめて少ないこと、日本よりアメリカが発生率が高いこと、菜食主義者のモルモン教徒やセブンズデイ・アドベンティスト派の信者には非常に少ないことなどから、食事との関係が指摘されている。
高脂肪、低食物繊維食をつづけている人におこりやすいのである。食物繊維が不足すると便秘がちになり、便に含まれる発がん物質が腸の粘膜に接触する時間が長くなる。これでがんがおこりやすくなると考えられている。規則正しいスッキリした排便が、予防のきめてである。
また、特殊な例だが、「家族性ポリポーシス」という遺伝性の大腸がんになりやすい体質がある。
大腸ガンの自覚症状
おなかの張った感じ、下痢や便秘、血便が代表的な症状である。おなかが張るのは、がんのしこりが腸の内容物の通過をさまたげるため。
腹痛やおなかがゴロゴロいうこともちよくある。腸ががんで完全にふさがれてしまうと、便が出なくなる腸閉塞になる。下行結腸や直腸のがんでは、ウサギのフンのように便がコロコロしたり、がんこな便秘がつづく。便器が汚れやすくなるのも特徴のひとつ。
しかし、便潜血がでたからといってすぐに大腸ガンと確定したわけではないので血便が見られたらすぐに病院に行くかまたは、自分でできる!病院に行かずに行う大腸ガン検査キットを使い便検査を行うべきである。
便に晴赤色の血のかたまりが混じっているのが血便である。血の色は出血場所が肛門に近いほど鮮やかで、直腸やS状結腸の下部からの出血では、粘液混じりの血液だけが出ることもある。いずれもがんによって腸の粘膜がくずれて出血するのである。もっとも血便は、痔とまちがえやすい。血便があったからと、単純にがんの不安にとらわれるべきではない。
直腸がんでは「しぶり腹」といわれる下痢を起こすことがある。直腸に停滞した便が発酵した結果である。直腸に停滞した便がまた、肛門近くにがんができると、便のかたちが細く、あるいは平たくいずれにせよ、40歳を過ぎて、便秘や下痢を繰り返したり、血便があったら一刻も早く診察を受けなくてはいけない。
大腸ガンの診断
がんは、大腸の「粘膜」から「粘膜下層」、さらにその下の「筋層」、もっとも外側の「凍膜」と広がっていくが、「粘膜下層」までにとどまっているものを早期がんとよぶ。
この段階までにがんを摘出すれば、結腸がんでは5年生存率は100パーセント近い。筋層まで進んでも80~90パーセントは治る。リンパ節への飛び火がなければ、かなりよく治るがんである。ただ残念なことに、ガンでも、筋層までの段階で受診する人はまだ20%そこそこにすぎない。
直腸は肛門から近いので、医師が指を肛門に入れて診察する(肛門指診)。また、肛門から肛門鏡を入れてみる検査もおこなわれる。
がんが疑われれば、肛門から造影剤のバリウムを注入し、直腸と結腸のレソトゲソ写真を撮る(注腸Ⅹ線検査)。
バリウムと空気を同時に注入して腸をふくらませ、粘膜のひだをのばし、バリウムをすみずみにいきわたるようにしてから明瞭なⅩ線写真を撮る方法もー般的である(二重造影法)。
また、肛門から細いファイバースコープを入れて肉眼で疑わしい部分をみる内視鏡検査もおこなわれる。ポリープ型の腫瘍では、付属のワイヤーをキノコ状の患部にひっかけて熱で切除し、悪性か良性かの検査もおこなう。
ここまで治る
結腸の腫瘍は、良性、悪性とも切除する。ポリープなら、肛門から入れたファイバースコープでのぞきながら、キノコ状のポリープの茎の部分に細い針金をひっかけ、焼き切るだけですむ。
ポリープ型の早期がんなら、開腹手術をせずにこの方法だけで治すことができる。それができない「台形で茎の短かい」あるいは「茎がない」ポリープは、がんの可能性も高いので、開腹して腸のその部分を切除のうえ、残った健康な腸の部分を縫いあわせる。
直腸がんの手術は難しい。近くに前立腺や子宮があり、でいるためだ。肛門の切除までほ避けたいという課題もある。また重要な神経が入りがんの場所が肛門から6cm以上離れていれば残せるが、それ以内では肛門も切除しなくてはならなくなる。大きな直腸がんは肛門ごと直腸を切除する。
肛門を失った場合には人工肛門をつくるが、自動吻合器の発達のおかげもあり、最近は肛門をできるだけ残す技術が進歩して、直腸がん手術の半分以上で肛門を残している。もっとも直腸手術では周辺の神経を傷つけやすく、後遺症として性欲減退やインポテンツ、排尿障害などがおこることがあり、これは私たちの今後の課題として残っている。がんを取り残すことなく、大事な機能保持の神経を温存する手術も普及しはじめている。
手術で完全にがんをとりきれれば、5年生存率は結腸がんで70%、直腸がんでも60%をこえた。胃がんと比べても、高い治療成練である。人工肛門は個人にあったものが選べるように改良されてきたが、慣れるためには訓練がいる。
大腸ガンも早期発見、早期治療がすべてといってもいい。
自分でできる!病院に行かずに行う大腸ガン検査キット