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糖尿病の合併症

糖尿病で最も怖いのは、高血糖が続くことで起こる「合併症」です。自覚症状が乏しいことから「知らない間に病気が進み、気づいたときにはかなり進行している」ということも珍しくありません。まずは、糖尿病にはどのような合併症があるのかということと、その症状を知っておくことが大切です。

糖尿病の合併症は高血糖が続き血管が損傷すること

血糖値の高い状態(高血糖)が続くと、全身にさまざまな合併症が生じます。糖尿病で怖いのがこの合併症で、命にかかわる病につながるケースも希ではりません。糖尿病の合併症は、血糖の調整がうまくいかず、高血糖の期間が長いほど起こる可能性が高くなります。糖尿病の合併症には、急に自覚症状が現れる「急性合併症」と、ゆっくり進行する「慢性合併症」があります。慢性合併症は、早期のうちは自覚症状があまり現れず、気がつかないうちに進行していきます。
自覚症状は、糖尿病を発症して何年も経過してから現れ始めますが、そのときには合併症がかなり進行していることも少なくありません。
慢性合併症は、高血糖によって全身の血管が障害されるために起こります。「太い血管に起こる合併症」 と「細い血管に起こる合併症」の2つに大きく分けられます。

太い血管に生じる合併症 高血糖で心臓などの動脈の内腔が狭くなって起こる

高血糖が続くと、血管壁が傷つけられます。すると、血管壁にコレステロールなどないくうが入り込んで、血管の内腔が狭くなったり血管壁がもろくなる「動脈硬化」が進みます。その結果、心臓や脳、脚などの太い血管が障害され、「狭心症」「心筋梗塞」「脳卒中」「閉塞性動脈硬化症」などが起こってきます。
糖尿病のある人がこれらの合併症を発症するリスクは、糖尿病のない人に比べて2~4倍ほど高いと考えられています。動脈硬化は、「境界型」の段階から進行することがわかっています。特に、「メタポリックシンドローム」や「高血圧」「脂質異常症(高脂血症)」を伴う場合、動脈硬化が進みやすいため注意が必要です。

  • 狭心症・心筋梗塞
    心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を供給する「冠動脈」の動脈硬化によって起こります。冠動脈の血流が一時的に悪くなるのが狭心症で、冠動脈が詰まって血流がとだえるのが心筋梗塞です。一般に、狭心症は心筋梗塞の前ぶれと考えられていますが、最近は狭心症のない人が突然心筋梗塞を起こすケースも増えています。症状は、胸が圧迫されるような激しい痛みや「脈の乱れ」「息切れ」などが起こることがあります。これらの症状が起こった場合、急いで医療機関を受診してください。ただし、「糖尿病神経障害」があると、心筋梗塞が起こってもあまり痛みを感じない場合もあります(無痛性心筋梗塞)。
  • 脳卒中
    脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」があります。糖尿病の患者さんで特に多いのは脳梗塞です。
    症状は、主に、片方の手や足などが麻痺して動かしにくくなる「運動障害」、体の片側がしびれたりする「感覚障害」、ろれつが回らなくなる「構音障害」などがあります。こうした症状の多くは、突然起こります。脳梗塞は、治療の遅れや発症部位によっては、後遺症が残ることがあります。命を守り、生活の質の低下を防ぐためにも、脳梗塞が疑われるような症状が起こった場合には、直ちに救急車を呼んでください。
    脳梗塞と同じ症状は、「一過性脳虚血発作」でも起こります。一過性脳虚血発作は脳の血流が一時的に障害されて起こり、24時間以内に回復します。一過性脳虚血発作を起こすと、次に本格的な脳梗塞を起こすことが多いため、受診が必要です。
  • 閉塞性動脈硬化症
    閉塞性動脈硬化症は、下腹部から太もも、すねなどの脚(下肢)に分かれた血管の動脈硬化が進行して、それらの血管の内腔が狭くなったり、詰まったりする病気です。
    症状は、ある程度の距離を歩くと、主にふくらはぎが痛んで歩けなくなります。立ち止まってしばらく休んでいると、再び歩けるようになりますが、歩いているうちにまた痛くなるのが特徴です。
    このように、断続的ににしか歩けない症状を、「間歇性跛行」といいます。動脈硬化がさらに進んで足の先の血管が詰まり、血流がとだえると、足の一部が壊死する「壊痘」が起こってきます。糖尿病経障害がある場合は痛みを感じにくく、壊痘に気づくのが遅れて、脚の切断が必要になるケースもあります。そうした事態を防ぐためにも、間歇性跛行が起こったら、速やかに担当医を受診することが大切です。

即、命にかかわる急性の合併症

糖尿病の急性合併症には、「糖尿病昏睡」や「感染症」があります。急性合併症を放置すると命にかかわるため、症状や対処法をよく理解し、注意することが重要です。
糖尿病昏睡インスリンが極端に不足して、血液中に「ケトン体」という物質が増えたり、重い脱水症状によって血液が極端に濃縮されたりすることで起こります。
症状は、「意識がもうろうとする」「意識を失う」といった「意識障害」が起こり、すぐに適切な治療を受けないと命にかかわることもあります。糖尿病昏睡は、特に1型糖尿病の患者さんや、高齢の2型糖尿病の患者さんに多く起こります。感染症や外傷などによる強いストレスが、糖尿病昏睡のきっかけになる場合もあります。
また、糖質を多く含む清涼飲料水を、一度に多量に飲んだために血糖値が急上昇し、インスリン不足を来して糖尿病昏睡が起こることもあります。
糖尿病昏睡は、意識障害を起こす前に「激しいのどの渇き」「多飲多尿」「強い倦怠感」「嘔吐、腹痛」などの症状が急速に現れたり、「けいれん」を伴うこともあります。このような、糖尿病昏睡が疑われる症状が現れたら、直ちに救急車を呼び、医療機関で適切な処置を受けてください。
感染症は、糖尿病があると、免疫の働きが低下して、ウィルスや細菌などの病原体に感染しやすくなります。感染は血糖を増加させる方向に働きます。そのため、感染症が起こると血糖値が上がりやすくなり、糖尿病昏睡の原因にもなります。特に起こりやすい感染症として、「かぜ」「肺炎」「尿路感染症」「皮膚の感染症」などがあります。感染症が起こった場合は、すぐに受診して治療を受け、十分な休養をとります。血糖値が上がるので、「インスリン製剤」を使った治療が必要になる場合もあります。

細い血管に生じる合併症 目や腎臓などの細い血管が高血糖で傷ついて起こる

高血糖が続くと、目や腎臓などにある細い血管が障害されて、糖尿病神経障害、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」が起こってきます。これらは糖尿病に特有の合併症で、特に発症頻度が高いことから、糖尿病の「三大合併症」と呼ばれます。三大合併症は、早期には自覚症状がほとんどありませんが、徐々に進行していき、突然重い症状を引き起こすことがあります。

深刻化しやすい三大合併症

  • 糖尿病神経障害
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病網膜症

は、糖尿病に特有の合併症です。この3つは、特に糖尿病の「三天合併症」と呼ばれています。早期段階では症状が現れにくく、症状が現れたときにはかなり進行していることもあります。症状や対策をよく理解し、予防します。

糖尿病神経障害「高血糖により神経細胞が損傷」

三大合併症のなかで最初に現れることが多いのが、糖尿病神経障害です。一般に、糖尿病を発症してから、5年程度経過すると現れやすくなるといわれています。糖尿病神経障害は、血糖値が高い状態(高血糖)により、末梢の神経線維が障害され、変性したり脱落するために起こると考えられています。神経は体中に張り巡らされているため、障害される部位に応じて全身にさまざまな症状が現れます。
糖尿病神経障害を改善するためには、適切な血糖コントロールが重要です。血圧が高い場合は、血圧の管理も行います。血流障害を防ぐために、「禁煙する」「節酒する」などの日常生活の注意も欠かせません。そのうえで、神経障害を改善する薬や、症状を和らげる薬などを使っていきます。糖尿病神経障害は、障害される神経によって、「多発性神経障害」と「自律神経障害」に分けられます。

  • 多発性神経障害
    痛みなどを感じる「感覚神経」や、手足などを動かす「運動神経」が障害されます。症状は、「しびれ」がきっかけになることが多く、続いて「痛み」「感覚低下」や「こむら返り」などが起こります。多くは、夜問に症状が強まるのが特徴です。ほとんどが、長い神経線維の走る足から始まり左右両方に起こるため、手から起こったり左右のどちらかだけという場合は別の病気が疑われます。
    まひ進行すると感覚が麻痺して、足に傷などができても気づきにくくなります。処置が遅れて、壊死した細胞が損傷する「潰瘍」や壊死した細胞が腐敗する「壊疽」が起こり、脚の切断が必要になる場合もあります。
  • 自律神経障害
    「自律神経」は、自分の意思とは関係なく働いている神経です。心臓や肺、胃、腸といった臓器の働きや、血圧の調節、排泄など、体のさまざまな機能を調節しています。自律神経が障害されると、「胃もたれ」「便秘」「下痢」「立ちくらみ」など、さまざまな症状が起こってきます。尿の出が悪くなる「排尿障害」や、「ED」が起こることもあります。「食べ物の消化吸収の働きが悪くなる」など、生活の質が大きく損なわれたり、血糖コントロールが難しくなることもあります。最も怖いのが、心臓への影響です。糖尿病神経障害によって「不整脈」が引き起こされ、突然死に至る場合もあります。

糖尿病網膜症「目の細い毛細血管が損傷」

人の目をカメラに例えると、眼球のいちばん奥にある「網膜」は「フィルム」にあたり、物を見るうえで重要な働きをしています。
高血糖によって網膜の血管が障害されて起こるのが、糖尿病網膜症です。一般に、糖尿病の発症後5年程度で、糖尿病網膜症が現れ始めるといわれています。
糖尿病網膜症は、「失明」などの視覚障害を引き起こす主な原因の1つです。視覚障害を防ぐためには、内科での糖尿病の治療に加えて、定期的に眼科を受診し、検査や治療を受けることが必要です。進行の程度によって、大きく3段階に分けられます。

  • 単純網膜症
    糖尿病網膜症の最初の段階が、「単純網膜症」です。網膜の血管がもろくなり、小さな瘤ができます。瘤が破れると、点状の出血が起こります(点状出血)。血液の成分が吸収されて網膜上にたまると、「硬性白斑」という、白くて境界の明瞭な「しみ」ができます。自覚症状はありません。
  • 増殖前網膜症
    単純網膜症の次の段階です。血流が悪くなり、網膜の血管の一部が詰まって、その先の部分に酸素と栄養が送られなくなります。血流のとだえた血管から血液の成分がにじみ出し、「軟性白斑」という、白くて境界のはっきりしない「しみ」ができます。また、血管からしみ出した水分が網膜に吸収されて、「むくみ」が生じます。この時点でも自覚症状がありません。
  • 増殖網膜症
    増殖前網膜症からさらに進行した状態です。血流がとだえた部分に酸素や栄養を送ろうとして、「新生血管」がつくられます。
    新生血管は、網膜や、網膜に接している「硝子体」に伸びていきます。新生血管は非常にもろく、ちょっとした衝撃でも破れて出血を起こします。硝子体に出血が及ぶと(硝子体出血)、光が網膜まで届きにくくなり、視力が低下します。内側には「増殖膜」とい、り薄い膜ができます。この増殖膜が網膜を引っ張ると、「網膜剥離」が起こります。

糖尿病腎症「高血糖で腎臓の血管が損傷する」

腎臓は、血液を濾過して老廃物や余分な水分を取り除き、尿をつくる働きがあります。血液を濾過するのが「糸球体」で、左右の腎臓に約10万個ずつあります。糖尿病腎症は、高血糖によって糸球体が障害されて、血液を濾過する腎臓の機能が低下する病気です。一般に、三大合併症のなかでは、最も遅く現れてきます。進行すると、治療には「透析療法が必要となります。尿中に出るたんばくの量や腎臓の機能の程度などで、第1期~第5期に分けられます。

  • 第1期(腎症前期)
    腎臓の機能は正常で、尿中のたんばくもなく、現時点で腎症を最も早期に診断できる検査である「微量アルブミン尿検査」でも、異常は認められません。しかし、高血糖によって腎臓に障害が起こっている可能性を否定しきれないため、注意が必要です
  • 第2期(早期腎症期)
    腎臓の機能は正常範囲ですが、微量アルブミン尿検査を行うと、尿からたんばくの一種「アルブミン」がごく微量検出されます。
    微量アルブミン尿は、糖尿病発症後5~10年ほどで現れるといわれています。この段階では、まだ自覚症状はありません。治療は血糖コントロールが基本。血圧が高い場合、食塩の摂取量を減らしたり降圧薬を使って治療を行います。この時期の生活習慣改善はとても重要です。
  • 第3期(顕性胃症期)
    尿にたんばくが出る「たんばく尿」が、継続してみられる段階です。腎臓の機能が低下して水分が十分に排泄されないため、顔や脚などに「むくみ」が現れてきます。第3期の後期になると、腎機能がより低下するため、血糖と血圧のコントロールの徹底のほか、たんばく質の摂取量の制限や、運動や仕事の制限が必要な場合もあります。
  • 第4期(腎不全期)
    腎臓の機能が健康な状態の30%以下に低下した状態を「腎不全」といいます。老廃物や水分をうまく排泄できず、むくみのほか「疲労感」「手足のしびれ」などの症状が現れてきます。腎不全が進行して尿をつくれなくなると「尿毒症」が起こり、「貧血」や「皮膚のかゆみ」などの症状が現れます。この時期は、血糖と血圧のコントロールと並行して腎不全の治療も必要です。
  • 第5期(透析療法期)
    腎臓の濾過機能が著しく低下しているため、「腹膜透析」「血液透析」の2つのどちからかの透析療法が行われます。

糖尿病腎症では血圧の管理も大切

腎臓と血圧は密接な関係にあります。糖尿病腎症を起こすと血圧が上がり、血圧が上がると腎症が進むという悪循環が生じます。特に、糖尿病腎症の第2期からは、高血圧を合併する頻度が高くなりますから、進行を抑えるために血圧管理も重要です。

合併症を早期発見するには

糖尿病の合併症の多くは、早い段階では症状が現れにくいため、早期発見のためには、糖尿病と診断されたら定期的に検査を受ける必要があります。
一般に、診断時や入院時には詳しい検査を行って全身の状態を調べます。気づかないうちに合併症が進行するのを防ぐには、治療を始めてからも定期的な検査が必須です。

乏しい自覚症状に対する対策はやっぱり定期検査

糖尿病は、全身にさまざまな「合併症」を引き起こします。なかでも「慢性合併症」は、長い期間をかけてゆっくり進行し、早期には自覚症状がほとんど現れません。したがって、早期発見のためには、糖尿病と診断されたら、医療機関で定期的に検査を受けることが必要です。慢性合併症のうち、「動脈硬化」などの太い血管に起こる合併症や「糖尿病神経障害」、「糖尿病腎症」などは、内科で調べることができます。
しかし、「糖尿病網膜症」などの目の病気を早期に見つけるためには、眼科の検査も必要です。また、歯科の検査も定期的に受けけることが大切です。
通常、糖尿病の診断時や入院時には、できるだけ多くの種類の検査を行い、すでに合併症を発症していないかどうかを詳しく調べます。それ以降の治療では、特に重要性の高い検査を定期的に行い、必要に応じて、より詳しい検査も行われます。

動脈硬化の程度は頸動脈や心電図検査

糖尿病は、動脈硬化の危険因子です。動脈硬化が進むと、「心筋梗塞」や「脳卒中」が起こりやすくなります。太い血管の合併症は、次のような検査で調べます。

  • 動脈硬化の検査
    「高血圧」や「脂質異常症」があると、動脈硬化が進みやすいので、「血圧」や血液中の「中性脂肪」「HDLコレステロール」「総コレステロール」などを調べます。「頸動脈エコー」では、脳に血液を送る「頚動脈」の動脈硬化の程度を調べます。
    首に超音波を当て、頚動脈の内部の様子をモニターに映す検査です。頚動脈の動脈硬化の程度以外に、脳卒中の発症リスクもわかります。また、脳卒中が疑われる場合は、「CTや「MRI」などの検査も行われます
  • 心臓の検査
    糖尿病神経障害があると、「狭心症」や心筋梗塞が起こっても、胸の痛みに気がつかないと、感じていられる時問が短くなります。神経障害が進むと、足の感覚が鈍って、傷などに気づかないことがあります。また、糖尿病があると傷が治りにくく、感染症を起こしやすくなります。
    そのため、受診時、医師に足をみてもらうことも大事です。自分でも、1日に1回は傷やたこ、靴ずれなどがないか、足を見る習慣をつけましょう。
  • 目の検査
    糖尿病網膜症の診断に有効なのが、「眼底検査」です。網膜の状態を直接観察する検査で、「点状出血」や「硬性白斑」、「軟性白斑」など、網膜の異常を調べることができます。眼底検査によって網膜に異常が見っかり、それがきっかけで糖尿病と診断される場合もあります。
    また、白内障を診断する「細隙灯顕微鏡検査」や、緑内障を診断する「眼圧検査」などが行われることもあります。
  • 尿検査
    一般的な「尿検査」で、尿中にたんばくが出るようになるのは、糖尿病腎症がかなり進んでからです。糖尿病腎症を早期に発見するためには、尿中に含まれている「アルブミン」というたんばくの一種を調べる、「微量アルブミン尿検査」が必要です。
    最近、腎機能の指標として使われているろかのが、腎臓の糸球体の推定濾過量を示す「eGFR」です。血液中の「クレアチニン」という物質の濃度である「血清クレアチニン値」や性別、年齢から算出されます。
  • 感染症の検査
    糖尿病になると、抵抗力が低下するのでウィルスや細菌などに感染しやすくなります。「胸部エックス線検査」で、「肺結核」などの有無を調べます。少なくとも1年に一度は受けることが勧められます。
    そのほか、尿検査などで「尿路感染症」を調べることがあります。また、糖尿病の患者さんは、口の中で細菌が増殖しやすくなるので、「虫歯」や「歯周病」も起こりやすくなります。歯周病は歯を失う大きな原因になりますから、歯科でも定期的に検査を受けることが重要です。

糖尿病の合併症を防ぐために

糖尿病の検査・診断

糖尿病の診断は、「血糖検査」の結果をもとに行われます。基本は、「空腹時血糖値」と「ブドウ糖負荷後2時間値」で糖尿病が疑われるかどうかを判定します。「糖尿病型」と判定された場合は、医療機関で再検査を受け、その結果によって確定診断されます。

血液検査で血糖値を調べる

「糖尿病」という病名のイメージから「尿に糖が混じる病気」だ思っている人も多いのかもしれません。確かに、尿検査で尿中に漏れ出た糖である「尿糖」が認められれば、糖尿病が疑われます。しかし、尿糖は、ある程度まで糖尿病が進行しないと現れません。糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が過剰な状態が続く病気です。そのため、糖尿病かどうかを調べるには、「血液検査」で血糖値を調べる「血糖検査」が行われます。

血液検査

血液を採取して、血糖値を調べます。検査値には、次のようなものがあります。

  • 空腹時の血糖値
    10時間以上絶食し、空腹の状態で採血して血糖値を調べます。これを「空腹時血糖値」といいます。多くは、夜9時ごろから食べ物をとらず、翌日の午前中に検査を行います。健康診断などでは、空腹時血糖値の検査がよく行われています。
  • ブドウ糖負荷後2時間値
    一般に、1時問以上絶食したあと、75gのブドウ糖を溶かした液体を飲み、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を調べます(75g経口ブドウ糖負荷試験)。ブドウ糖を食事と見立て、食後の血糖値の変動をみる検査です。

そのほか、空腹かどうかに関係なく血糖値を調べる「随時血糖値」もあります。

判定基準

糖尿病が疑われるかどうかは、空腹時血糖値とブドウ糖負荷後2時間値で判定されます。検査値によって、次の3つに分類されます。

  • 正常値
    空腹時血糖値が110mg/dl未満、かつブドウ糖負荷後2時間値が140 mg/dL未満の場合、血糖値に問題がない「正常型」と判定されます。
  • 糖尿病型
    空腹時血糖値が126mg/dl以上、またはブドウ糖負荷後2時間値が200mg/dl以上の場合、糖尿病が強く疑われる「糖尿病型」と判定されます。確定診断のために、医療機関で再検査を受ける必要があります。
  • 境界型
    正常型と糖尿病型の間は、「境界型」と呼ばれ、これがいわゆる「糖尿病予備軍」に当たります。まだ糖尿病型とはいえませんが、正常型の人と比べると将来糖尿病を発症する可能性が高いので、今後も定期的に検査を受けたほうがよいでしょう。

糖尿病型と判定されたら医療機関で再検査

健康診断などの血糖検査で糖尿病型と判定されたら、必ず医療機関で再検査を受けてください。再検査では、問診や2回目の血糖検査が行われます。

問診

血糖値は、糖尿病以外の病気でも高い値がでることがあります。したがって、原因を見極めるためにも、問診が非常に大切です。問診では、主に次のようなことが聞かれます。

  • 家庭型
    「血縁者に糖尿病にかかっている人がいるかどうか」、いる場合は「その人の発症年齢、治療内容」などが詳しく尋ねられます。糖尿痛を発症しやすい遺伝的素因があるかどうかを確かめます。
  • 肥満型
    20歳のころの体重や、今までいちばん太っていたときの体重などが尋ねられます。糖尿病は肥満とのかかわりが深いため、今までの体重歴を振り返ります。
  • 妊娠や出産の経験
    妊娠や出産の経験がある場合、「妊娠時の血糖値」「妊娠糖尿病を発症したかどうか」「巨大児の出産の有無」などです。

症状

「多飲多尿」「疲労感」「体重減少」などの糖尿病の自覚症状の有無のほか、「歩行時の脚の痛み」「足のしびれ」「視力低下」の有無などが聞かれ、糖尿病やその合併症があるかを確かめます。これらのほか、糖尿病以外の病気があるかどうかについても聞かれます。
問診で聞かれることは、診断のために重要なことばかりですから、できるだけ正確に答えることが大切です。あらかじめ、このような質問に対する答えを、わかる範囲でメモしてから受診したほうがいいでしょう。

診断までの流れ

血糖検査と問診の結果から「典型的な糖尿病の症状がある」などの4つの条件に1つでも当てはまれば、「糖尿病」と診断されます。条件に当てはまらなくても、2回目の血糖検査の結果も糖尿病型であれば、やはり糖尿病と診断されます。「糖尿病型」という判定では、〝糖尿病が強く疑われる″ という段階でしたが、ここで初めて糖尿病と確定診断されます。

新しい特定検診と特定保健指導

2008年4月から、「特定健診」と「特定保健指導」が義務化されます。特定健診と特定保健指導は、生活習慣病やメタポリックシンドロームの患者さんの増加に対処するために、これらの発症を未然に防ぐ「1次予防」を重視したものです。特定健診は、40歳以上の人を対象に、これまで以上に厳しい基準で健診を行い、生活改善の指導などが必要な人を見つけることが目的です。
糖尿病関連では、「空腹時血糖値100mg/dl以上」「HbA1C5.2%以上」が基準となる予定です。指導の対象となった人は、検査値に応じた保健指導を受けることになります。定期的に受診をすることで、生活習慣病などの発症予防を目指します。

合併症の有無を調べる検査

糖尿病は合併症が怖い病気です。糖尿病と診断されたら、常に合併症に注意する必要があります。「アキレス腱反射検査」などで神経の状態を、「眼底検査」で網膜の状態を、「尿検査」などで腎臓の状態を調べます。「心電図検査」を行って、心筋梗塞などの兆候の有無も確かめます。

糖尿病の基礎知識

「糖尿病」は、血糖値が高い状態が続く病気です。ある程度進行しないと自覚症状が現れないため、早期のうちは糖尿病に気づかない人もたくさんもいます。しかし、血糖値が高い状態を放置すると、やがて全身にさまざまな合併症が現れ、生活の質を低下させたり、命にかかわったりすることもあります。

厚生労働省の「2013年国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる者)の割合は、男性16.2%、女性9.2%であり、50歳以降に割合が増えることわかっています。また、年々患者数は増加しています。平成23年時点で糖尿病の総患者数は約270万人 高齢者の生活習慣病が増加しているのが特徴です。国民病といっても過言ではない糖尿病についてです。

血液中のブドウ糖が多すぎる状態が続く

「ブドウ糖」は、全身の細胞でエネルギー源として利用される、重要な物質です。ブドウ糖は、血流によって全身に運ばれます。血液中のブドウ糖を「血糖」といい、その濃度は「血糖値」で表されます。血糖値は本来、ほぼ一定の範囲内に収まるよう調節されています。しかし、何らかの原因で血糖値が高い状態(高血糖)が続くことがあります。これが、「糖尿病」です。

自覚症状

高血糖があると、「のどが渇いて水をよく飲む、尿がよく出る(多飲多尿)」「疲れやすい」「体重が減る」などの症状が現れます。
しかし、早期のうちはこのような自覚症状はほとんどありません。糖尿病の怖さは、高血糖が続くことで引き起こされる「合併症」が、気づかない問に進行することにあります。

糖尿病が引き起こす病気

高血糖が続くと、全身の血管が傷つけら小ささな組織が無数に点在しています。この膵島にある「β細胞」が、インスリンをつくっています。β細胞は、血糖の増減に応じてインスリンの分泌を調節しています。

インスリンの分泌や働きに障害が起こって発症する

健康な人の場合

健康な人でも血糖値は常に変動しています。食事をとると、小腸からブドウ糖が吸収されて、血糖が増加します。すると、膵臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉などに取り込ませたり、使わない分を脂肪組織などに蓄積させたりします。インスリンは、血糖値の変化に応じてタイミングよく分泌されるため、食後はある程度血糖値が高くなりますが、すぐに下がります1また、食事を抜いても、肝臓や筋肉などに蓄えられていたグリコーゲンが、ブドウ糖に分解されて血液中に放出されることで、血糖が増加して、血糖値が下がりすぎないようになっています。このような仕組みにより、健康な人の血糖値の変動は、ほぼ一定の範囲内に収まっています。

糖尿病の人の場合

糖尿病では、何らかの原因により、インスリンの分泌や働きが障害されているため、高血糖の状態が続きます。

  • インスリンの分泌が遅い、分泌が少ない、量が少ない
    インスリンの分泌が遅かったり、分泌量が少ないと、′血糖をブドウ糖として肝臓や筋肉などに十分に取り込むことができません。インスリンをテレビの「〝電波」、血糖の利用をテレビの「画像」に例えると、「電波の送信不良でテレビがきれいに映らない」状態といえます。
  • インスリンの働きが悪い
    インスリンを受け取る「インスリン受容体」の働きがよくないため、インスリンが分泌されても十分に働くことができません。「電波を受け取るアンテナの受信・伝達不良でテレビがきれいに映らない」ような状態です。インスリンの分泌と働きのどちらか、または両方に問題があると、高血糖が続きます。原因によって、糖尿病は次の4つに分けられます。

分類

膵臓のβ細胞が壊れる「Ⅰ型糖尿病」

Ⅰ型糖尿病はインスリンをつくる脾臓のβ 細胞が破壊されて、インスリンが分泌されなくなるタイプの糖尿病です。以前は「インスリン依存型糖尿病」と呼ばれていたもので、日本で少なく、糖尿病全体の1~3%とされています。小児~青年期の発症が多いといわれますが、どの年代でも発症する可能性があります。Ⅰ型糖尿病は、発症のしかたによって、大きく次の2つに分けられます。

  • 自己免疫性
    本来は細菌やウイルスなどの異物を攻撃して排除しようとする働きである「免疫」の仕組みが、自分の体の一部であるβ 細胞を攻撃してしまいます。
  • 突発性
    原因がわからないタイプです。このなかには、突然重症の糖尿病を発症する、「劇症Ⅰ型糖尿病」が含まれます。

Ⅰ型糖尿病は、比較的ゆっくりと進行するものや、突然発症して急激に進行するものなど、経過はさまざまですが、どのタイプでもインスリンが絶対的に不足し、ほとんどの場合、インスリンを補充する治療が必要になります。

インスリンの効きが弱くなるⅡ型糖尿病

Ⅱ型糖尿病は、これまでは「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれていたタイプの糖尿病です。日本では、糖尿病の90%以上が、この2型糖尿病です。40歳以上に多く、「体質」などの遺伝的素因のほか、「食べすぎ」「運動不足」などの生活習慣や、「肥満」「ストレス」などが、発症に深くかかわっているといわれています。
Ⅱ型糖尿病では、長い時間をかけて、血糖値が徐々に上がっていきます。インスリンの分泌のタイミングが遅れることで、食後の血糖値が特に高くなります。また、不適切な生活習慣が積み重なると、だんだんインスリンの働きが悪くなって、血糖値が下がりにくくなります。

膵臓が原因となりやすい糖尿病

遺伝子の異常が原因

Ⅱ型糖尿病は、遺伝とのかかわりがありますが、遺伝だけが原因で起こるわけではありません。これに対して、最近の研究で解明されてきたのが、遺伝子の異常を原因とする糖尿病です。
特定の遺伝子に異常があり、それを直接の原因として、糖尿病を発症します。日本では、糖尿病の患者さん全体の2%程度を占めると考えられています。このような遺伝子は、これまでに9つほど知られています。発症のしかたによって、次のⅡつに大きく分けられます。

  • インスリンをつくって分泌する機能に異常がある
    膵臓のβ細胞の働きにかかわる遺伝子に異常があるタイプです。通常と構造が異なるインスリンがつくられてインスリンが十分に働かないケースや、インスリンの分泌が低下するケースなどがあります。
  • インスリン受容体などインスリンの伝達経路に異常がある
    肝臓や筋肉などにある、インスリン受容体の遺伝子に異常があるタイプです。インスリンが分泌されても正常に働かず、血糖値が下がりません。

ほかの原因

糖尿病以外の病気があり、それが原因となって、二次的に糖尿病が起こることがあります。「二次性糖尿病」とも呼ばれます。例えば、原因の1 つに膵臓の病気があります。「慢性膵炎」や膵臓に結石ができる「膵石症」などによって膵臓の機能が障害されたり、「膵臓がん」で膵臓の一部を摘出したりすることで、糖尿痛が引き起こされるこ・つ場合があります。ほかにも、「甲状腺機能亢進症(バセドゥ病など)」「クッシング症候群」などのホルモンが関係する病気や、「慢性肝炎」「肝硬変」などの肝臓の病気など、さまざまな病気が糖尿病の原因になることがあります。
「副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)」などの薬が原因となって、糖尿病を発症することもあります。また、「ダウン症候群」や「筋ジストロフィー」など、遺伝子の異常が原因で起こる病気で、糖尿痛を伴うことが多いものもあります。

妊娠がきっかけとなるもの

妊娠をきっかけとして糖尿病を発症した場合、あるいは以前からあった糖尿病が妊娠をきっかけに発見された場合を「妊娠糖尿病」といい、糖尿病の患者さんが妊娠した場合を「糖尿病合併妊娠」といいます。
妊娠中は胎盤で、胎児の成長に必要な「イスリン括抗ホルモン」がつくられます。このホルモンにはインスリンの働きを抑える作用があるため、インスリンの働きが悪くなります。
通常は、働きが悪くなった分、インスリンの分泌量が増えて調節されますが、十分に分泌されないと高血糖になります。一般的な糖尿病の判定基準は「空腹時血糖値126mg/dl以上、またはブドウ糖負荷後2時間値20mg/dL以上」ですが、妊娠中の高血糖は胎児にも影響を与えるため、基準がより厳しくなっています。
「空腹時血糖値100 mg/dL以上」「ブドウ糖負荷後1時間値180mg/dL以上」「ブドウ糖負荷後2時間値150mg/dL以上」のうち2つ以上に該当すると、妊娠糖尿病と診断されます。

Ⅱ型糖尿病

遺伝的要因や生活習慣

糖尿病の患者さんは年々増加、血糖値が少し高めの「糖尿病予備軍」も含めると約2000万人に届きそうな人数がいるといわれています。その多くを占めるのが、Ⅱ型糖尿病です。Ⅱ型糖尿病の原因は、インスリンの作用不足です。その背景には、「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」があります。

ンスリン分泌不全

インスリンの分泌が遅れたり、分泌される量が不十分であることを、インスリン分泌不全といいます。Ⅱ型糖尿病では、インスリンがタイミングよく分泌されない人が多くみられます。また、膵臓のβ細胞の働きがしだいに悪くなり、十分な量のインスリンを分泌できなくなることもあります。インスリン分泌不全は、遺伝的素因が大きな原因です。日本人には、インスリン分泌不全のある人が多いともいわれます。

インスリン抵抗性

インスリンの分泌量は十分でもインスリン受容体の働きが悪く、ブドウ糖の消費や蓄積が進まないことを、インスリン抵抗性といいます。Ⅱ型糖尿病の特徴の1つが、このインスリン抵抗性です。インスリン抵抗性は、食べすぎや運動不足などの生活習慣が長く続くことや肥満、ストレスなどの影響で、だんだん強くなります。特に、腸を包む「腸間膜」に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」があると、インスリン抵抗性が強くなります。

Ⅱ型糖尿病の進行

インスリン分泌不全とインスリン抵抗性のどちらかが特に強いこともありますが、多くの場合、両者が重なっています。インスリン抵抗性があっても、インスリンが大量に分泌されれば、働きの悪さを何とか補えます。しかし、インスリン分泌不全を伴うと、補えるだけの量のインスリンを分泌できず、血糖値が下がらなくなります。また、高血糖が続くと、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が強まり、さらに高血糖が進行するという悪循環が起きます。これを「ブドウ糖毒性」といいます。
一般的には、まず食後の血糖値から上がり始め(食後高血糖)、しだいに空腹時の血糖値も上がってきて(空腹時高血糖)、本格的な糖尿病になります。また、作用不足を補うためにインスリンを大量に分泌し続けていると、やがてβ細胞が疲弊し、インスリンを分泌できなくなることもあります。

メタボはⅡ型糖尿病が原因

最近広く耳にするようになった「メタポリックシンドローム」は、糖尿病の原因の約4割を占めるともいわれています。メタポリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満を基盤として、血中脂質や血圧、血糖値が〝少し高め″ の状態が複数重なった病態です。内臓脂肪型肥満があると、その脂肪細胞から分泌されるホルモンの影響で、インスリン抵抗性が強くなります。そのため、血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病を発症する危険性が高まるのです。
また、脂肪細胞から分泌されるホルモンの影響で血圧も上がります。そして、内臓脂肪が分解されてできる「遊離脂肪酸」が増えることで、血液中の脂質も増えます。このような関係から、内臓脂肪型肥満があって血糖値が高い場合、血圧や血清脂質にも問題が出てくる可能性が高くなります。
メタポリックシンドロームがあると、動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳卒中などの病気を発症しやすくなります。血糖値が「少し高い」程度の段階から、肥満や血清脂質、血圧にも注意することが大切です。

メタボの診断基準

内臓脂肪型肥満は、おへその高さの腹囲が「男性で貼85cm以上、女性で90cm以上」が基準です。この基準に加えて、次の1~3の2 つ以上に当てはまる場合に、メタポリックシンドロームと診断されます。

  1. 血清脂質
    中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール値40mg/dl未満の一方、または両方。
  2. 血圧
    上が135mmHG、下が85mmHG以上のどちらか一方、または両方
    高血圧の国際基準はこちら
  3. 血糖値
    空腹時血糖値110mg/dl以上