お酢の主な成分と代表的な効能

酢酸、クエン酸など有機酸

お酢の成分といえば、酢の文字が使われているように酢酸が中心です。酢酸もクエン酸も炭素をもった、有機酸と呼ばれる食用酸の仲間です。

お酢には、そのほかにも各種のアミノ酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸(しゅせきさん)などの60種類以上の有機酸が含まれています。

お酢と同じく、クエン酸などの有機酸が豊富なことで人気の健康食品に「梅干し」があります。昔から「梅(梅干し)」はその日の難のがれ」とか「医者を殺すには刃物はいらぬ、朝昼晩に梅を食え」などといわれるように、梅干しの効能は大半がクエン酸などの有機酸の働きです。

しかもお酢は梅干しのような塩の心配もないので、より優れた健康食品といえるでしょう。最近では、風邪で寝込んだ際に食欲がないときにおかゆと梅干しを食べる機会は減りましたが、未だにこのおかゆと梅干しで元気になる中年サラリーマンはたくさんいます。
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ミネラル、ビタミンを助ける成分

食品成分表でもおわかりのように、お酢は、ミネラルやビタミンなどの微量栄養素については、決して優秀な食品ではありません。最近重要視されはじめた繊維質も、もちろん含まれてはいません。

しかし、お酢はほかの微量栄養素が豊富な食品と一緒に食べられることが多く、この点での心配は無用と思われます。しかも、お酢にはほかの食品の微量栄養素の調理などによる破壊を防止したり、体内での消化吸収率をあげ、組織内で活性化する働きもあるのです。夏場に食欲が減退しているときに少し甘酸っぱいものを口に入れると元気になって食欲がでてきたりします。

ビタミンCやカルシウムが単独より、お酢と一緒になってその効果が増大することなどが、動物実験で明らかになってきています。

原料や製法で違う内容成分

お酢の分類、製法で述べたように、お酢にはいろいろな原料と製法による種類があります。特に天然醸造のお酢は、その内容成分が、その時の原料や微妙な製法の違いにより変化するものです。

標準的な米酢と穀物酢、果実酢の成分でも違いがはっきりしています。エネルギー価をはじめ多くの項目で米酢が一番よい値ですが、ナトリウムとカリウムのバランスとビタミンBについては果実酢がまさっています。

エネルギー(KJ)
  • 穀物酢(67)
  • 米酢(134)
  • 果実酢(96)
水分(g)
  • 穀物酢(93.8)
  • 米酢(89.6)
  • 果実酢(92.1)
たんぱく質(g)
  • 穀物酢(0.1)
  • 米酢(0.2)
  • 果実酢(.1)
脂質(g)
  • 穀物酢(0)
  • 米酢(0)
  • 果実酢(0)
糖質(g)
  • 穀物酢(1.3)
  • 米酢(5.6)
  • 果実酢(2.6)
線維(g)
  • 穀物酢(0)
  • 米酢(0)
  • 果実酢(0)
カルシウム(mg)
  • 穀物酢(2)
  • 米酢(2)
  • 果実酢(2)
リン(mg)
  • 穀物酢(2)
  • 米酢(4)
  • 果実酢(6)
鉄(mg)
  • 穀物酢(0.1)
  • 米酢(0.1)
  • 果実酢(0.1)
ナトリウム(mg)
  • 穀物酢(310)
  • 米酢(290)
  • 果実酢(50)
カリウム(mg)
  • 穀物酢(8」)
  • 米酢(6)
  • 果実酢(55)

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有効成分の働きで多くの効能

有機酸をはじめとするお酢の有効成分による代表的効能をまとめてみました。

1.体内の乳酸を分解して疲労を回復

頭を使ったり、運動をすると体内のエネルギーが消費されて、燃えかすとして乳酸が残ります。体内に乳酸が増えると脳を刺激し、精神の安定がくずれ、怒りっぽくイライラしてきます。

さらに、組織内のタンパク質と結合して乳酸タンパクとなり、筋肉の硬化をまねき、肩こりや腰痛の原因にもなります。この疲労の元である乳酸を、お酢の成分は「クエン酸回路」と呼ばれる化学反応で無害な水と炭酸ガスに分解する働きがあります。
昔は、新潟の伝統芸能・角兵衛獅子(かくべえじし)の子どもたちは、お酢をたくさん飲んでいるので骨が柔らかいといわれていましたが、本当は骨ではなく筋肉が柔軟で、激しい曲芸にも耐えられるようにお酢を愛用していたのです。

2.血圧を安定させ、動脈硬化を防止する

血液の状態が悪化したり、過剰な乳酸が血管の組織と結合して起きる動脈硬化は、高血圧が主な要因ともいわれています。お酢の成分には、血液を良好な状態に保ち、乳酸を分解して動脈硬化、高血圧を防止する働きがあります。

3.血行と新陳代謝をよくする

お酢の成分には、よい働きをする善玉コレステロールを増やす作用が判明しています。新陳代謝を活発にして、組織細胞を活性化する働きも指摘されています。

4.余剰の栄養素を分解し、肥満に有効

体内に過剰となった糖分やグリコーゲンは、脂肪に変化し蓄積されます。お酢の成分には栄養素の体内消費を促進する働きがあり、過剰な糖やグリコーゲンを燃焼させます。

5.消化を促進し、便秘を改善する

におい、味覚、成分が消化器の神経を刺激して、食品の消化吸収を高め、腸の働きをよくし、殺菌力により腸内環境が改善され、便秘や痔などにも効果を発揮します。

6.胆汁や副腎皮質ホルモンの生成を助ける

たいへん重要な働きがあり、糖尿病とも関係の深い副腎皮質ホルモンを生みだします。

7.優れた利尿作用で過剰な塩分を排出する
8.強力な殺菌力で、防腐・抗菌作用がある
9.飲酒による体内酸化物の処理を促進する
10.ほかの食品の栄養成分を効率化する


お酢には強力な成人病予防効果がある

成人病予防の第一条件として、酸素と必要成分の体内流通を左右する血液と血管の正常化を問題にしなければなりません。

日本人に動脈硬化が多い原因の1つに、珪酸の多い土壌と食生活が指摘されています。日本の標準的土壌には、欧米の数倍から数十倍の珪酸が含まれています。

ですから、河川の水も飲料水となる地下水も、この土壌で育つ農産物も珪酸を多く含むことになります。この珪酸が体内で血管組織の成分と結合することで、動脈硬化が進むといわれています。

お酢の成分には、この珪酸を体外に排出する働きをするものがあり、血管での乳酸タンパクの合成を防止することとあいまって、動脈硬化を予防、改善するのに有効なのです。

血管が若々しく丈夫でも、中を流れる血液の状態がよくなくては健康は望めません。また、血液の悪化が血管の硬化やもろさの原因ともなるのです。

成人では、血液が微アルカリ性であるpH7.4に保たれ、体温が36.5度くらいが理想です。これは、生命活動に不可欠な数千種類の体内酵素が、一番活躍しやすい体内環境だからです。そして、酵素はpHや体温の変化に非常に敏感で、発熱や体液の酸性化に最初にダメージを受けるのは酵素の働きです。

血液をはじめとする体液の酸性度を高めるものとしては、エネルギー物質のかすである乳酸、悪酔いの原因となるアルコールが変化したアセトアルデヒド、糖尿病症状の時に脂肪が分解されるとできるアセトンなどが考えられます。

これらの酸性化物質の分解、無害化にお酢の成分が有効に働くのです。次に成人病に関係の深い要素に副腎皮質ホルモンの働きがあります。副腎皮質で生成され、分泌されるホルモンには、コーチゾンに代表される糖質ホルモン、女性・男性の2種類の性ホルモン、アルドロステロンなどの鉱質ホルモンがあります。
これらのホルモンがすべて成人病に大きくかかわっているのです。コーチゾンは狭い意味での副腎皮質ホルモンとかステロイド・ホルモンと呼ばれています。
ステロイド剤で知られているように、アレルギー反応にも深くかかわるホルモンです。この大切な副腎皮質ホルモンが、酢酸とクエン酸を出発物質として作られるのです。これを証明した功績で、プロッホとリネンの両博士はノーベル賞を受賞しています。

また、このホルモンが精神活動にも重要な影響をもつことはストレス学説の生みの親であるセリエ博士の研究でも明らかにされています。

ストレスとホルモンは密接な関係にあり、成人病の重大な要因ともいわれています。そのほかにも、酢酸とクエン酸はすい臓で作られる糖尿病と関係の深いインシュリン、ホルモンとは別の意味で体内を動かす原動力であるATP(アデノシン三リン酸)などの生成にも深くかかわっています。

有機酸などのお酢の成分が、いかに成人病の予防に強い味方であるかがはっきりわかります。

お酢の強力な殺菌・抗菌力

お酢の殺菌力は、非常に強力です。以下にもあるように、重症の食中毒の原因となるブドウ球菌やサルモネラ菌、大腸菌なども、お酢につけるだけで、たちまち死滅してしまいます。

ですから、日本料理にはこのお酢の殺菌力をうまく利用した酢漬け、酢じめ、酢洗いなどの調理法が古くから行われてきました。

冷蔵庫などなく、不衛生な環境の昔の食生活において、食品の鮮度を保ち、防腐・殺菌の効果のあるお酢のこの力はたいへん貴重でした。また、チフス菌、赤痢菌、疫痢菌などの恐ろしい病原菌にもお酢の殺菌力は有効なのです。お酢と同じく食品保存によく利用される味噌や醤油よりも、その殺菌力は優れています。

身近なところでは、水虫などの皮ふ疾患はの原因となる、白癖菌に対してもお酢の殺菌力が有効だといわれています。お酢は、もちろん食用にされるのがほとんどですから、食品の防腐・殺菌にとどまらず、摂取することで口腔内や消化器官内の有害菌にも働きます。

口腔内の雑菌では、歯ぐきに付着した食べもののかすを有害な酸に変える腐敗菌に働き、歯槽膿漏の防止につながります。腸内では大腸菌をはじめとする有害細菌を減らし、食品の消化吸収を効率よくし、便秘などの予防にも貢献します。食品への添加以外のお酢の殺菌力の利用法としては、お酢風呂、お酢の足湯、お酢の温湿布などが行われています。

食酢中の病原菌、食中毒菌の死滅時間
化膿性ブドウ球菌
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)
食中毒菌、サルモネラ
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)
大腸菌
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)
大腸菌
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)
赤痢菌
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)
腐敗肉中毒菌
  • 1分(生)
  • 5分(死)
  • 30分(死)
  • 60分(死)

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