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糖尿病の薬物療法

血糖コントロールを良好に保つために、薬を使って血糖値を下げる「薬物療法」が必要になる場合があります。糖尿病の薬物療法は、経口血糖降下薬を使った「経口薬療法」とインスリンを補充する「インスリン療法」のふたつです。薬物療法を受ける際は、食事のとり方にも注意が必要です。

可能な限り健康な人に血糖値を近づけるのが目標

糖尿病のある人は、糖尿病のない人にベて平均寿命が約10年短いと報告されています。また、糖尿病のない人に比べて、「心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)」が約15年早く起こりやすくなるという調査結果もあります。その主な原因が糖尿病の合併症です。より長く健康な生活を送るには、合併症の発症や進行を防ぐことが重要です。
合併症を防ぐために大切なのが、血糖の状態を健康な人にできるだけ近づけることです。糖尿病の治療の中心は「食事療法」と「運動療法」ですが、それだけでは血糖コントロールが難しい場合、薬を使って血糖値を下げる「薬物療法」を行います。薬を使うと、つい安心して食事療法と運動療法を怠りがちになる人もいますが、食事療法と運動療法は同時に続けることが重要です。
食事療法と運動療法で「インスリン抵抗性」を改善しないと、薬の効果は十分に得られません。

経口薬療法とインスリン療法

糖尿病の薬物療法は、「経口薬療法」と「インスリン療法」です。

  • 経口薬療法
    経口血糖降下薬(のみ薬)による治療です。経口血糖降下薬には、「インスリンの分泌を促進する薬」「インスリンの働きを改善する薬」「食後高血糖を改善する薬」があります。1種類だけを使うこともありますし、作用の異なる薬を組み合わせて用いる場合もあります。経口血糖降下薬の種類や使い方などは、患者さんの状態に合わせて決められます。
  • インスリン療法
    インスリン製剤を患者さん自身が注射して、インスリンを補充する治療法です。経口血糖降下薬よりも短時間で効果が現れるものもあります。そのため、「急性合併症」を起こして深刻なインスリン不足に陥ったときや、「かぜ」「インフルエンザ」などの感染症の影響で一時的に血糖値が上昇したときに、インスリン製剤が用いられることがあります。また、「ブドウ糖毒性」の解除のために、一時的に使うこともあります。

薬の選択はひとりひとりに合わせて

経口薬療法とインスリン療法のどちらを行うかは、患者さんの状態によって決められます。その大きな目安になるのが、糖尿病の分類です。

1型糖尿病
膵臓のβ 細胞が破壊されインスリンをまつたく分泌できないため、インスリン療法が基本です。特に、β細胞が急激に破壊される「劇症1型糖尿病」では、できる限り早くインスリン療法を始める必要があります。1型糖尿病では、不足しているインスリンを補うことが何よりも重要であり、経口血糖降下薬は基本的に使用されません。
2型糖尿病
膵臓のインスリン分泌機能が十分に保たれている場合には、経口薬療法による治療が基本です。ただし、その場合でも、膵臓のβ細胞を休ませるために一時的にインスリン療法が必要になることもあります。例えば、高血糖状態が続き、β細胞が疲弊して、インスリンの分泌が低下するのを防ぐために、一時的にインスリン療法を行うことがあります1また、β細胞の疲弊が強くなると、経口薬療法では血糖コントロールが十分でなくなることもあります。その場合にも、インスリン療法で血糖コントロールを行います。
ほかの病気が原因の糖尿病
膵臓や肝臓などの病気によって糖尿病が引き起こされた場合、その病気に合わせた治療を組み合わせて行います。血糖値が高くて血糖コントロールが必要な場合は、基本的にインスリン療法が行われます。
妊娠に関連した糖尿病
「妊娠糖尿病」や「糖尿病合併妊娠」では、特に厳格な血糖コントロールが必要です。食事療法などでコントロールを行い、それで不十分な場合、インスリン療法が併用されます。経口血糖降下薬は、胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中は使用しません。

糖尿病治療の指標として広く用いられているのが、「Hb1C」です。まずは、Hb1C。値が6.5% 未満の「良」を目標に治療が進められます。
目標値は、患者さんの状態や年齢などに応じて調節されます。最近、食事に伴う血糖値の変動が大きいほど、「心筋梗塞」や「脳卒中」のリスクが高いことがわかってきました。そのため、血糖の急激な変化の指標となる、血液中の「1.5AG」値を調べる場合もあります。「1.5AGGはブドウ糖に似た物質で、食事から血液中に取りこまれ、腎臓で濾過されて尿中に排泄されます。健康な人では、血液中の「1.5AG の濃度はほぼ一定程度に保たれています。しかし、糖尿病で尿糖が増えると、その影響で「1.5AGの排泄が促され、血液中の「1.5AGの濃度が低下します。この濃度低下は、比較的軽い高血糖にも敏感に反応して起こるため、過去数日問の血糖コントロールの状態をみるための目安となります。

薬が効きすぎて低血糖になる場合も

薬物療法を受けるときに注意したいのが、血糖値が低くなりすぎる「低血糖」です。薬が効きすぎた場合や、薬を使うタイミングが合わなかった場合などに起こりやすくなります。
低血糖の症状は、血糖値の程度に応じて現れます。最初は「強い空腹感」「冷や汗」などが現れますが、血糖値の低下が進むと、「昏睡」「けいれん」など、重篤な症状が起こってきます。
放置すると命にかかわるので、適切な処置が必要です。
一般的に、血糖値が60mg/dl下になると低血糖を起こすといわれます。しかし、糖尿病の患者さんでは、血糖値が高い状態に体が慣れてしまっているために、血糖値がそれほど低くならなくても低血糖を起こすことがあります。
例えば、ふだん空腹時血糖値が200mg/dlもある患者さんが、正常値である100mg/dlに急激に下がったような場合にも、症状が現れることがあるのです。

低血糖の症状

  • 60mg/dl
    強い空腹感、軽い脱力感、どうき冷や汗、不安感、動悸、頻脈、手のふるえ、顔面蒼白、頭痛など
  • 50mg/dl
    目のかすみ、眠気(生あくび)、集中力の低下、混乱、強い脱力感、めまい、疲労感、ろれつが回らないなど
  • 30mg/dl
    昏睡、痙攣

対処法

低血糖が起こった場合、すぐにブドウ糖や砂糖などで糖質を補充する。いつ低血糖が起きても対処できるよう、ブドウ糖や砂糖は、ポケットやかばんなどに入れて常に携帯しておくこと。

低血糖が起きたときは、体内で血糖を増やすホルモンなどが働いているため、糖質をとりすぎると逆に高血糖になる。あめやチョコレートは吸収に時間がかかるため、緊急時は避ける。

経口薬療法

経口薬療法は、飲み薬を使った治療法です。主に「2型糖尿病」の患者さんに対して行われます。さまざまな薬があり、モれぞれ作用のしかたが異なります。服用する薬によって注意点も異なります。処方された薬についてもしっかり頭に入れておくと治療に役立ちます。

経口血糖降下薬の効果

経口血糖降下薬は、主に2型糖尿病)の治療に使われます。インスリンの分泌が不十分である「インスリン分泌不全」と、インスリンの働きがよくない「インスリン抵抗性」という、2 型糖尿病の原因を改善する効果があります。経口血糖降下薬には、「インスリン分泌促進薬」「インスリン抵抗性改善薬」「食後は、血糖値を下げる作用が最も強力で、作用が長時間持続します。β細胞のインスリン分泌機能は失われていないものの、分泌量が不足している患者さんに使われます。
Hb1C作用が強力なので、特にHb1Cが高く、血糖コントロールの調整が難しい患者さんに最適です。1日1~2 回、食前、または食後に服用します。ただし、肌Al。が下がってくると空腹感が生じやすく、間食などで食事療法が乱れがちになり、肌Al。が上昇に転じる場合もあります。そのため、Hb1Cが高い問だけ使い、下がってきたらほかの薬と併用するか、別の薬に変更します。

服用の注意

血糖値を下げる作用が強いので、効きすぎると「低血糖」を起こすことがあります。また、インスリンの働きで脂肪が蓄積され、体重が増加することもあります。重い腎機能障害や肝機能障害のある患者さんには使われません。

速効型インスリン分泌促進薬

スルホニル尿素薬と同じくインスリンの分泌を促す薬です。効果が現れるのが服用後15分程度と、より早く作用し、持続時間は短いというのが特徴です。食後に血糖値が急激に上がるような患者さんに適しています。食事の時間帯に合わせて使うことで、食後高血糖を抑えることができます。

服用の注意

食事を始める直前の10分以内に服用します。服用から食事までに30分以上あくと、低血糖を起こす危険性があります。副作用の少ない薬ですが、まれに「おなかが張る感じ(腹部膨満感)」「腹痛」などの軽い「消化器症状」が起こることがあります。スルホニル尿素薬と同じように、重い腎機能障害や肝機能障害のある患者さんには使われません。

インスリン抵抗性改善薬

体内の臓器でのインスリンの感受性をよくし、インスリン抵抗性を改善して、血糖値を下げます。「ピグアナイド薬」と「チアゾリジン薬」があります。

ピグアナイド薬

主に肝臓に作用して、肝臓で糖がつくられるのを抑えます。小腸でのブドウ糖吸収を妨げたり、肝臓や筋肉などでインスリンの働きをよくする作用があるため、インスリン抵抗性の強い患者さんに適しています。また、体内の脂肪の分解を促進したり食欲を抑える効果があり、肥満を伴う患者さんの治療にも向いています。1日2〜3 回、主に食後に服用します。

服用の注意

インスリンの分泌を促す作用はないため、単独で使う場合は、低血糖を起こすことはほとんどありません。腹部膨満感、「下痢」「便秘」などの副作用が現れることがありますが、使っているうちに自然に治まる場合もあります。お年寄りや腎機能が低下している人では、まれに、「血圧低下」「意識障害」などを引き起こす「乳酸アシドーシス」が現れることがあります。そのため、お年寄りや重い腎機能障害のある患者さん、そして肝臓、心臓、ある山思者さんには使われません。

食後高血糖改善薬

「αグルコシダーゼ阻害薬」とも呼ばれ、小腸で食べ物の糖質をブドウ糖に分解する「αグルコシダーゼ阻害薬」という酵素の働きを抑えます。ブドウ糖の吸収が遅くなるので、食後の血糖値の急激な上昇が抑えられます。その結果、血糖の変動も小さくなります。
速効型インスリン分泌促進薬と同じように、食後に血糖値が急激に上がるような患者さんに適しています。薬の作用は食事の直後に限られているので、ほかの経口血糖降下薬に比べると、Hb1Cを改善する効果は低めです。単独で使うより、ほかの経口血糖降下薬と併用することのほうが多い薬です。

服用の際の注意点

食事をとる直前に服用します。食事中や食後に服用しても効果はありません。腹部膨満感や「おならの増加」、下痢などの副作用があります。のみ始めに現れやすいのですが、多くは、服用を続けているうちに自然に治まります。肝機能障害を起こすことがあるので、定期的な肝機能検査が必要です。

薬をのむ際の注意「食事の量や時間の変動がないようにする

経口血糖降下薬の作用や特徴は、種類によって異なりますから、医師の処方の指示をしっかり守って使うことが大切です。薬を使っているからといって、食事の量を増やしたり、食事の時間や服用時間を変えたりするのは問題です。経口血糖降下薬のなかには、服薬のタイミングがずれたりすると、効果が得られなかったり、低血糖を引き起こすものもあります。のみ忘れにも、十分注意しましょう。のみ忘れた場合の対処は、担当医にあらかじめ聞いておく必要があります。絶対に、2回分をまとめてのんだりしないでください。薬の使用に関して疑問や不安がある場合は、担当医に相談してください。もし、副作用が疑われるような症状が現れた場合は、必ず主治医に伝えましょう。

インスリン療法

「インスリン療法」は、インスリン製剤を使って、不足しているインスリンを補う治療法です。近年、薬と器具の改良が進んで、痛みが少なく操作も簡単になりました。インスリン療法は、「血糖自己測定」を行って、血糖の状態を確認しながら量を調整します。

インスリンを注射して不足分を補う

膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌は、食事に関係なく常に一定量分泌されている「基礎分泌」と、食後の血糖値の上昇に応じて大量に分泌される「追加分泌」の2つに大別されます。
健康な人では、基礎分泌と追加分泌が適切になされていますが、糖尿病、特に2型糖尿病の患者さんでは、まず追加分泌が不足し、進行すると両方が不足します。インスリン療法は、「インスリン製剤」を注射して、不足したインスリンを補う治療法です。インスリン製剤には、基礎分泌を補充するものと追加分泌を補充するものがあり、体内でのインスリンの状態を健康な人にできるかぎり近づけるために使い分けられます。

インスリン適用の対象

1型糖尿病では、原則としてインスリン療法は必須の治療法です。2型糖尿病では、「経口血糖降下薬で十分な効果が得られない場合に行うほか、「ブドウ糖毒性」の解除のために一時的に行うこともあります。これは、β細胞を休ませてその機能を維持するうえで、たいへん重要です。
そのほか、「妊娠中で経口血糖降下薬が使えない」「重症の肝機能障害や腎機能障害を合併している」「感染症やけがが起こった」などの場合にも、インスリン療法が行われます。

インスリン療法の進め方

インスリン療法の基本は、インスリン注射を1日3回以上行う「強化インスリン療法」で、なかでも毎食前と就寝前の4回行う方法が一般的です。
血液中のインスリン濃度の変動を健康な人に近づけて、血糖を厳格にコントロールすることを目的としています。この際に本人は「血糖自己測定」の結果をみながら、定められた範囲内でインスリン製剤の量を自分で調節します。なお、注射器の代わりに、「インスリンポンプ」という装置を用いてインスリン製剤を注入する場合もあります。強化インスリン療法を行うのが困難な場合などには、混合型などを1 日1~2回注射する「従来インスリン療法」が行われます。

注意

インスリン療法で特に注意が必要なのが、「低血糖」です。低血糖の予防には、血糖の変動を認識するために、血糖自己測定を習慣づけることが重要です。
体調を崩したときには、食事がとれなくても血糖値が大幅に上がることがありますが、血糖自己測定を行っていれば、このようなときにも適切に対処できます。

食事療法と運動療法も行う

糖尿病と診断されたら「食事療法」「運動療法」は必須です。
薬を使っている安心感からか、つい食べすぎてしまうという人もいますが、インスリンを補うことで、ブドウ糖が体内でうまく利用されるようになり、脂肪組織への脂肪の蓄積が促されるため、食事療法を怠ると太りやすくなります。また、インスリン製剤の効果を得るには、運動療法でインスリン抵抗性を改善させておくことも大切です。
肥満になると症状が悪化しますので特に注意が必要です。寝る前のストレッチなんかを取り入れるとさらに効果的です。

血糖値を下げるためのテンペ菌発酵茶の使用感なども参考になります。

糖尿病の運動療法

糖尿病には欠かせない運動療法

運動療法は、食事療法と同じで、糖尿病の中心となる治療法です。「インスリン抵抗性」の改善や、肥満の解消などの効果があります。
しかし、運動をすることでかえって糖尿病や合併症が悪化する場合もあるため、運動を始める前に、医療機関で現在の体の状態をチェックすることが大切です。

インスリン抵抗性を改善し動脈硬化を予防する

運動療法の目的は、「インスリン抵抗性」を改善することです。運動には、これ以外にもさまざまな効果があり、主に「すぐに現れる効果」と「運動を続けることで現れる効果」に分けられます。運動を始めてすぐに現れる効果が、一時的な血糖値の改善です。
筋肉を動かすには、ブドウ糖というエネルギー源が必要です。運動して筋肉を動かすことで血液中のブドウ糖(血糖)が筋肉に取り込まれて減り、血糖値が下がります。運動を続けることで現れる効果は、「肥満」が解消され、臓器でのインスリンの感受性が高まるため、インスリン抵抗性が改善されることです。
また、動脈硬化を促進させる「血清脂質」や「血圧」の状態も改善されます。

定期的に少しでも運動をすると血圧が安定する

「境界型」の人や「メタポリックシンドローム」に該当する人は、「2型糖尿病」の発症予防のためにも、運動を習慣にすることが大切です。

運動療法の効果

一時的な血糖降下 運動を行うことで筋肉への血糖の取り込みが増え、血糖値が一時的に下がる。この効果は運動後すぐに現れ、特に食事の1 時間ぐらいあとに運動を行うと、食後の血糖値の急激な上昇を抑えることができる。
肥満の解消 食事療法とともに長期的に運動療法を続けることで、ブドウ糖や脂質が消費され、肥満の改善に効果がある。特に、内臓脂肪が減りやすいため、インスリン抵抗性の改善につながる。
インスリンの働きの改善 運動を長期的に行うことで、筋肉などでインスリンの感受性が高まり、インスリン抵抗性が改善する。この改善効果は食事療法よりも高い。
血圧降下 運動によって、末梢の血管の血流がよくなると、心臓が高い圧力をかけなくても全身に血液が行き渡るようになり、徐々に血圧が下がってくる。
体力の増強 適度に運動を続けることで、体力や持久力が増強する。また、筋肉量が増えるため、転こつそしょうしょう倒や骨租髭症の予防にもなる。
中性脂肪やコレステロール値の改善 運動では血液中の脂質もエネルギー源として使われるため、「中性脂肪」が減る。また、血管壁にたまった「L D L コレステロール」を取り除く「H D L コレステロール」が増加する。

運動を行う前には医師のチェックが必須

運動療法には多くの効果があり是非行っていただきたい治療の一部ですが、場合によっては、かえって体の状態を悪化させてしまうこともあります。例えば「動脈硬化」が進んでいると、運動で「狭心症」が誘発されることもあります。運動療法を始める前に、必ず担当医の「メディカルチェック」を受けてください。

メディカルチェックとは

まず、「血糖検査」で、血糖コントロールが良好かどうかチェックします。「心電図検査」「眼底検査」「尿検査」「血圧測定」などを受けて、合併症の状態を確認しておくことも重要です。
運動によって関節や筋肉を傷めないよう、関節や骨、筋肉などの状態も調べます。運動の適切な強度を設定するため、身長や体重を測定して肥満の有無を調べ、ふだんの運動習慣を確認し、体力などもチェックします。これらの結果から、担当医が運動療法の可否、運動の適切な強度などを判断します。

糖尿病に効果的(血糖値を下げる)運動

「運動」といっても、さまざまな種類があります。なかでも、血糖値を下げるのに最適な運動は、「有酸素運動」です。日常生活の中にもこの有酸素運動を組み込んで、できる範囲で、少しずつ始めていくことが大切です。

血糖値を下げる

運動がいくら効果的だといってもやたらに無鉄砲に行っても、効果が現れにくいだけでなく、けがをしたり事故を起こしたりする危険性もあり逆効果のケースもあります。運動療法をより効果的に、安全に進めるために、次のような点に注意します。

  • 運動を行う時間帯
    食後がいいでしょう。運動することでブドウ糖を消費し、食後に高くなった血糖値を下げることができます。「薬物療法」、特に「インスリン療法」を受けている人は、運動は必ず食後にしてください。血糖値が低い食前の時間帯に運動すると、「低血糖」を起こしやすくなります。薬物療法を受けていない人は、食前でも食後に比べると、少し落ちますが、インスリン抵抗性を改善できます。
  • 運動の種類
    運動には、「ウォーキング」や「水中運動」などのように十分に呼吸をしながら行う「有酸素運動」と、「短距離走」などのように息を止めて行う「無酸素運動」がありますが、糖尿病の運動療法に適しているのは有酸素運動です。有酸素運動では血液中のブドウ糖(血糖)と脂肪(遊離脂肪酸)が使われますが、無酸素運動では脂肪があまり使われず、インスリン抵抗性が改善されにくいためです。
  • 運動を行うときの強さ
    運動は、あまりきつすぎない程度に行います。専門的には、心拍数などから最適な運動強度の目安を出す方法もあります。しかし、運動の最中は、体の感覚を目安にするとよいでしょう。例えば、ウォーキングなら、少し早足で、「いっしょに歩いている人と会話ができる」程度が適しています。
  • 運動量
    1日合計30分間、できれば30~60分間くらいの運動を、1週間に3~4回以上行うと効果的です。

運動を、5分ずつ、1日のうち何回かに分けて行い、合計で30分程度にする方法でも効果はあります。あいた時間をうまく使って、こまめに体を動かすことが大切です。

運度を控える場合

  • 血糖コントロールが極端に悪い
  • 進行した合併症がある
  • 骨や関節に病気がある
  • 体調が悪い(発熱、頭痛、めまい、だるい、欠食、睡眠不足、息切れ、気分不良、むくみ、腹痛、下痢、筋肉痛、関節痛、二日酔い)

運動をすぐに中止する場合

  • 胸の痛み、圧迫感、動悸、脈の乱れ
  • 呼吸困難
  • 腹痛、吐き気、嘔吐
  • 膝や脚、腰の痛み
  • 目の前が暗くなる(顔面蒼白)
  • チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる)
  • 意識消失

血糖値が高い場合は運動はお休みする

血糖コントロールがうまくいかず、空腹時の血糖値が250mg/dl以上あるような人が運動を行うと、血糖値がさらに上がってしまいます。「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」などの合併症が進行している人や血圧が高い人は、運動を控えます。特に、「排尿障害」や「起立性低血圧」があるような「自律神経障害」が進んでいる人は、本来自然に行われる体の状態の調節がうまくいかない可能性があるため、運動は勧められひぎません。膝や脚、腰などに病気のある人や「発熱」「腹痛」「筋肉痛」などがある場合も、運動は控えましょう。
また運動中に、「胸痛」「呼吸困難」「腹痛」「吐き気」などが現れた場合、すぐに運動を中止し、医療機関を受診してください。

基本の運動メニュー

開始する前に準備運動・整理運動を忘れずに!

急に激しい運動を行うと、関節や筋肉などを傷める可能性もあります。運動前には、必ず「準備運動」を行います。体操やストレッチングをしっかりと行ったあとに、有酸素運動を行います。ウォーキングなどのほか、自転車こぎや水中運動などもよいでしょう。膝関節に痛みがある人は、膝への負担が少ない水中ウォーキングなどがいいでしょう。

お年寄りは筋力トレーニングもくわえる

年をとると、筋肉量がどうしても減少します。ブドウ糖は筋肉で消費されるので、筋肉が少ないと消費もあまり進みません。そこで、簡単な筋力トレーニングを加えて筋肉量を増やしましょう。筋肉量が増えれば、運動療法の効果がより高まります。また、筋肉痛などを残さないよう、最後には必ず、体操やストレッチングなどの「整理運動」を行ってください。

【準備対応・整理運動】軽い体操1つの体操に10~30秒かけ、大きな動きで筋肉や関節をほぐす

  1. 膝の屈伸
  2. 両手で両膝を支えながら、膝の曲げ伸ばしを行う。膝が痛くてできない場合は、無理に行わない。
  3. 浅い伸脚
    足を肩幅より広めに開き、右脚を少し曲げて腰を落とし、左脚の後ろ側を伸ばす。脚を替えて同様に行う。
  4. 上体の前後屈
    足を肩幅くらいに開き、腕を下に伸ばしながら、上体をゆつくり前に倒す。次に上体をゆっくり起こし、腰に手を当てて、ゆっくりと上体を後ろへ反らす。腰に無理の及ばない範囲で行う。下腹部に力を入れて行うと、腰への負担が軽減される。
  5. 体測を伸ばす
    足を肩幅より少し広めに開く。左手を腰に当て右手を上に上げ、上体をゆっくり左へ倒して右の体側を伸ばす。左側も同様に伸ばす。
  6. 上体をまわす
    腕を伸ばし、上体をゆっくり大きく回す。腰が痛む人やできない人は無理に行わなくてもよい。
  7. 背伸び
    足を肩幅くらいに開き、両腕を上に上げて全身を伸ばす。
  8. 手首・足首をまわす
    両手を組んで、両手首を回す。足は右のつま先を地面につけ、右足首を回す。左足首も同様に行う。
  9. 軽い跳躍
    体の力を抜き、その場で軽く跳ねる。「膝に痛みがある」などの理由でできない人は行わなくてもよい。
  10. 深呼吸
    両腕を大きく左右に開きながら、深呼吸する。

運動療法を行う際の注意

自分の足のサイズに合った靴をはく

合併症の1つである糖尿病神経障害が起こると、靴ずれなどができても痛みを感じにくくなります。ちょっとした傷でも治りにくく傷が悪化して「壊疽」や「潰瘍」に至るおそれもあります。
足のけがを防ぐためには、自分の足に合った靴を選ぶことが特に大切です。足に負担がかからない靴を選びます。また、服装は、動きやすく、季節に合ったものを身につけます。汗をかきやすい季節は吸水性のよいものを、寒い季節は保温性のあるものを選ぶとよいでしょう。

水分補給は必須

運動をすると汗をかくため、脱水症状に注意が必要です。体内の水分が少なくなると、血液の粘りけが増し、「心筋梗塞」や「狭心症」を起こすことがあります。特に、のどの渇きに気づきにくいお年寄りは、こまめに水分を補給することが大切です。ただし、糖分が多く入っているものは血糖値を急に上げるため、よくありません。清涼飲料水や大部分のスポーツドリンク類にも、糖分が多く含まれています。市販の飲料で水分をとるときは、原材料やエネルギー量の表示を確認して選んでください。

継続するコツ

運動療法は、継続してこそ効果が発揮される治療です。しかし、「面倒くさい」「時間がない」 などの理由で、継続できない人も少なくありません。運動療法を長続きさせるためには、次のようなことを実行するとよいでしょう。

  • 血糖値や体重を記録する
  • 達成しやすい目標を立てる
  • 仲間や家族と一緒に行う
  • 日常生活の中に組み込む

運動する時間がないことを嘆くよりも、ふだんの生活のなかで活動量を増やしていくように努力しましょう。

糖尿病の手術療法(1型の根治治療)

糖尿病は基本的には一生つきあう病気で治療はこちらで紹介したとおりですが、根治が期待できる治療法として、非常に数は少ないのですが、「手術療法」が行われることもあります。
1型糖尿病で、「腎不全」を合併した人や「インスリン療法」を行っても血糖コントロールが困難な人が対象です。手術の中心は膵臓の移植ですが、近年、開腹せずに膵島だけを移植する方法も行われています。

1型糖尿病で腎不全を発症した人が対象

1型糖尿病で、合併症進行した人や、インスリン療法で血糖コントロールがきわめて困難な人に、手術療法が行われる場合もあります。手術後は、インスリン製剤が減量できたり、中止できる可能性があります。手術を希望する場合、「移植が必要か」「手術に耐えられる体力があるか」「ほかの病気がないか」などを詳細に検査した上で審査を受けて登録をして、ドナー(臓器提供者)が現れるのを待ちます。
ドナーが現れて、「血液型が一致する」などの条件に適合する場合、移植を受けることができます。手術療法には、大きく分けて「膵移植」と「膵島移植」があり、脳死・心停止したドナーからの移植が中心です。

  • 膵移植
    1型糖尿病の患者さんで、腎不全のある人や血糖コントロールが困難な人が対象です。60歳以下が望ましいとされていますが子どもにはほとんど行われません。膵移植には、腎不全のある人に対する膵臓と腎臓の「同時移植」と、すでに腎臓の移植を受けている人や腎機能が保たれている人に対する膵臓の「単独移植」があります。手術は全身麻酔のうえ、開腹して行われます(
  • 膵島移植
    原則として75歳以下で、腎機能が保たれていて、インスリン療法では血糖コントロールが困難な1型糖尿病の患者さんが対象です。局所麻酔を行い、膵臓の膵島を含んだ液体を点滴で移植します。開腹しないので、膵移植に比べると体への負担が少なくて済みます。ただ、新しい治療法のため、長期的な治療効果はまだよくわかっていません。また、インスリン療法が不要になるためには、複数のドナーからの2~3回の移植が必要です。日本では2007年3月までの約3年間に17人に行われ、全員がインスリン製剤を減量、または中止できています。

移植の問題点

どちらの治療法も、脳死・心停止ドナーの不足で移植件数が非常に少ないのが現状です。そこで最近は、生体ドナーからの移植が少しずつ試みられています。
ドナーの膵臓を30%程度切除し、膵移植や膵島移植を行います。ただし、ドナーに、開腹手術に伴うリスクや将来糖尿病を発症する可能性があるといった問題があり、移植が可能かどうかの検討は慎重に行われます。
また、移植後、臓器の拒絶反応を抑えるために、「免疫抑制薬」を長期にわたってのみ続ける必要があります。このように解決すべき問題はあります。しかし、1型糖尿病の根治的な治療法として期待されているのも事実です。

糖尿病の治療

糖尿病の治療法には、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」があります。血糖の状態体の状態をみながら治療を進め、少しでも体に負担のかからない血糖コントロールを目指して治療法を選択していきます。
医療機関で検査を受けるだけでなく、自分でも血糖コントロールの状態を把握して、治療の効果を確かめながら行うことが大切です。食事・運動・薬が治療の三本柱でHba1C値を6.5%未満にすることが目標となります。

食事や運動、薬で血糖を調整する

糖尿病の初期状態では、ほとんど自覚症状がありません。しかし、血糖値の高い状態(高血糖) を放置すると、さまざまな合併症が起こります。
糖尿病の治療では、血糖コントロールを行うことで合併症の発症や進行を防ぎ、糖尿病があっても、生活の質を落とすことなく、健康な人と同じような生活ができることを目指します。

糖尿病の治療

治療の基本は、何度も言っていますが、血糖を良好な状態にコントロールすることです。そのために、食事療法や運動療法などで生活習慣の改善を行い、必要に応じて薬物療法も追加します。特に食事療法と運動療法は、糖尿病の治療に欠かすことのできない治療法です。

  • 食事療法
    「食事をとると血液中のブドウ糖(血糖)が増える」というように、食事と血糖には密接な関係があります。食事療法では、患者さんの身長や体重、1日の身体活動量などを基に食生活を見直して、食事のエネルギー量や栄養のバランスなどを改善しま
  • 運動療法
    運動には、短期的にはブドウ糖を筋肉に取り込ませて消費し、血糖値を下げる効果があります。運動を長期的に継続すれば、インスリンの働きがよくなります。ただし、高度な肥満や進行した合併症などがある患者さんの場合、いきなり運動を始めるのは非常に危険です。運動を開始する前に、担当医に相談し、指導を受けることが大切です。
  • 薬物療法
    食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが難しい場合に行われます。糖尿病の薬には、内服で用いる「経口血糖降下薬」と、皮下注射で用いる「インスリン製剤」があります。

体の状態に合わせて治療を進める

多くは、生活習慣と密接にかかわっています。合併症の発症や進行を抑えるためにも、食事療法や運動療法をふだんの生活のなかに積極的に組み込みましょう。また、糖尿病の場合、病気の状態や進み方が異なるので、治療は1人ひとりの患者さんに合わせて進めていきます。

1型の治療はインスリン治療が基本

「1型糖尿病」は、「免疫」の働きなどによて膵臓のβ細胞が壊されて発症する糖尿病で、インスリンがほとんど分泌されないのが特徴です。
1型糖尿病ではインスリンが絶対的に不足しているので、原則として、インスリン製剤を使って不足分を補う「インスリン療法」が行われます。インスリン製剤は、健康な人のインスリン分泌のパターンに近づけるように、使用する量と時間を計算して、1日に数回注射します。インスリン療法と並行して、食事療法や運動療法も行います。食事療法で食事の量や時間をほぼ一定にすることで、インスリン療法を安定して行うことができ、血糖をより良好にコントロールすることができます。また、運動療法を続けるうちにインスリンの働きがよくなり、注射するインスリン製剤の量を減らせる可能性もあります。

2型の治療は運動療法と食事療法が基本

2型糖尿病は、インスリンの分泌が十分でない「インスリン分泌不全」や、インスリンが十分に働かない「インスリン抵抗性」によって起こります。
2型糖尿病は、「食べすぎ」や「運動不足」などの生活習慣や、「肥満」と非常に関係が深いため、食事療法と運動療法が治療の基本です。
食事療法や運動療法を行っても十分な効果が得られない場合は、経口血糖降下薬が用いられます。例えば、インスリン分泌不全が主な原因であればインスリンの分泌を促進する薬が使われ、インスリン抵抗性が主な原因の場合はインスリン抵抗性を改善する薬を中心に使います。経口血糖降下薬でも血糖コントロールが改善しない場合は、インスリン療法を行います(41ページ参照)。また、薬物療法を受けているときも、食事療法と運動療法は継続します。

ほかの病気が原因の場合は原因となっている病気の治療が優先

遺伝子の異常

遺伝子の異常によって発症する糖尿病もあります。ただ、現在はまだ、そのような遺伝子を治療する方法はありません。そのため、ほかのタイプの糖尿病と同じように、食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせた治療が行われます。

ほかの病気や薬が原因で起こる糖尿病

膵臓の病気や肝臓の病気、薬の副作用などが原因の「二次性糖尿病」は、発症の原因をなくすことで改善が期待できます。そのため、原因となっている病気の治療などと並行して、食事療法を行ったり、必要に応じてインスリン療法などが行われます。経口血糖降下薬が使われることは、あまりありません。
なお、原因となった病気が治癒しても、糖尿病が残ることがあります。その場合は、ほかのタイプの糖尿病と同じように、食事療法や運動療法、薬物療法が継続して行われます。

妊娠中は厳格な食事と運動とコントロールする

妊娠中の高血糖は、母親にも胎児にも悪影響を及ぼします。そのため、妊娠中は、特に厳格な血糖コントロールが必要です。もともと糖尿病のある女性が出産を希望する場合は、妊娠する前からきちんと血糖をコントロールしておくことが大切です。
治療は食事療法を中心に行い、運動療法は体の状態をみながら散歩程度の運動を行います。しかし、「空腹時血糖値が10mg/dL未満、かつ食後2時間血糖値が120 mg/dL未満」に維持することができない場合は、インスリン療法が併用されます。
経口血糖降下薬は、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるので、原則として使われません。妊娠中に糖尿病を発症しても、多くは出産後に血糖値は正常に戻ります。しかし、こうした人たちは糖尿病を発症しやすい遺伝的素因があると考えられ、出産後時間が経過してから糖尿病を発症する人も多いため、出産後も定期的に血糖検査を受けて糖尿病に注意することが大切です。

子供、お年寄り

子供の場合は、以前は1型糖尿病が中心でしたが、最近は子どもの2型糖尿病が増加しています。子どもの1型糖尿病の治療は、インスリン療法が中心です。2型糖尿病では肥満がある場合が多いため、食事療法と運動療法を中心に治療が行われます。
食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが難しい場合は、インスリン療法が併用されます。子どもは成長期にありますから、大人の場合のような厳格な食事療法は行わず、成長に必要なエネルギーと栄養をしっかり摂取します。学校の給食も、原則として糖尿病のない子どもと同じものを食べます。精神的な不安を招かないためにも、できる限り糖尿病のない子どもに近い生活をさせ、特別扱いしないことが大切です。

お年寄りの場合は、インスリンの働きは加齢とともに低下するといわれ、高齢になるほど糖尿病の発症率は高くなります。しかし、お年寄りの糖尿病は典型的な症状が現れにくく、異常があっても年のせいにして放置しがちです。しかし、高齢で糖尿病を発症したり、急に血糖コントロールが悪くなったような場合は、ほかの病気による二次性糖尿病の可能性も考えられるため、注意が必要です。お年寄りの場合、薬物療法が中心となることが多いのですが、本人の年齢や血糖値以外に、生活習慣や価値観、健康状態、治療への意欲などを考慮しながら、治療の目標や治療法が決められます。
例えば、何事にも意欲的な患者さんであれば、合併症の程度を考慮しながら、食事療法や運動療法を積極的に行うことがあります。

治療効果のチェック

Hba1C

赤血球中のヘモグロビン全体に占めるHba1C。の割合を測定することで、過去1~2か月間の平均的な血糖の状態を知ることができます。たとえ空腹時血糖値が低くても、Hba1Cが高ければ、血糖コントロールがうまくいっていないことがわかります。
「6.5%未満」を目標に血糖をコントロールします。Hba1Cを6.5% 未満に維持できれば、三大合併症などの、細い血管に起こる合併症の発症や進行を防ぐことができるといわれています。6.5%未満の維持が達成できたら、次は「5.8%未満」を目標にします。「動脈硬化のように太い血管に起こる合併症を防ぐには、5.8% 未満を維持する必要があると考えられています。

血糖値のコントロール

Hba1Cだけでは、1日のなかでの血糖値の変動の様子がわかりませんから、空腹時や食後の血糖値も大事な指標になります。空腹時血糖値は130mg/dl未満、食後2時間血糖値は180mg/dlを目標にします。

自宅でのセルフチェックも

  • 体重測定
    体重が増加すると、血糖値やHba1C。が上昇することがあります。また、治療の進め方に問題があって血糖コントロールが良好でないために、体重が増加している場合もあります。
  • 血圧測定
    血圧は、医療機関で測る値と、家庭で測る値が異なる場合があります。医療機関で測定して高い値出てしまう場合は「白衣性高血圧」といいます。血圧の状態を詳しく知るためには、医療機関で測るだけではなく、家庭でも毎日測ることが勧められます。
  • 血糖自己測定
    血糖自己測定器という簡単な器具を用いるとさ自分で血糖値を測定できます。血糖自己測定は、インスリン療法を行っている場合には欠かせません。

糖尿病の食事療法

食事療法は、すべての糖尿病の患者さんの重要な治療の一部分です。食事療法によって、血糖値の急上昇を抑えたり、「インスリン抵抗性」を改善したりすることで、膵臓の負担を軽減します。現状の食生活を客観的に見直し、問題点をしっかり認識することです。

食事療法の効果と目的は、インスリン抵抗性を改善すること

毎日の生活のなかで、最も大きく血糖値の変動に影響するのが食事です。糖尿病では、インスリンの分泌量や作用が不足するため、食事のとり方が血糖の状態に大きく左右します。
それだけに食事療法は、不適切な食生活が要因となることが多い「2型糖尿病」だけでなく、すべての糖尿病の方にとって、血糖コントロールに必要不可欠な治療です。

  • 膵臓の負担軽減
    『食事→血糖が増加→血糖値を下げるための「インスリン』が必要になる消費するエネルギー量以上の食事をとり続けていると、肥満を招き、インスリン抵抗性を強めます。これらを改善することで、インスリンを分泌する膵臓の負担を減らします。
  • HbA1cが1~2ポイント低下する
    食事療法の効果には個人差があります。例えば、治療の食生活が乱れている人はど、食事療法で血糖コントロールが改善します。きちんと食事療法を行えば、平均でHbA1cが1~2ポイント、血糖値は30~40mg/dl此程度改善することがわかっています。
    薬物療法を行っている人にも、食事療法は必要です。食事療法と並行して行うことで、薬の効果が高まります。2型糖尿病の患者さんは、食事療法を続けていけば、薬の減量や中止の可能性もあります。

食事療法を開始する前に現在の食習慣を見直す

ただ何となく食事量を減らしたりするだけでは、なかなか長続きしません。まずは、これまでの自分の食生活を見直してみましょう。
「食事量」「食事内容」「規則的に食べているか」「食事にかける時間」「間食の有無」などを具体的に記録して見直します。例えば、2型糖尿病で多いのは、「食べすぎ」や栄養の偏った「偏食」です。このような問題点を見つけ、実際に改善していくようにします。こうした問題点を正すだけでも、血糖値が改善します。

食生活を見直す際のポイント

  • どのくらい食べているか
    「1 回の食事でご飯を3杯お代わりする」「1人前では足りないから2 人前は食べてしまう」など、ふだん食べている量をチェックする。多すぎる場合は食べる量の見直しが必要。
  • 何を食べているか
  • 「揚げ物や甘いものが好き」「肉ばかり食べて野菜はほとんど食べない」など、ふだんの食事の内容をチェックする。食事の内容が偏っている人は見直しが必要。
  • いつ食べているか
    「夕食の時間が遅い」「朝食を抜いて昼食や夕食は多めに食べる」など、食事の時間帯と、3食の量のバランスをチェックする。遅い時間帯に食事をとったり、3食とっていない場合は見直しが必要。
  • どのくらい時間をかけているか
    1回の食事にかけている時間をチェックする。「1食に10分かけない」など、急いで食べる習慣は、食べすぎや血糖値の急激な上昇につながりやすい。時間が短すぎる場合は見直しが必要。
  • 間食をしていないか
    「テレビを見ながらお菓子をつまむ」「常に何か食べている」など、間食の習慣をチェックする。意識せずに食べていることもあるため、間食も記録することで客観的に見直す。

「自分ではそんなに食べていないはず」と思っていても、食生活を記録すると客観的に自分の食生活を見直すことができ、問題点に気づきやすい。意外と食べていることに気づくはずです。食事療法を行っているときも記録をとると効果がでやすくおすすめです。

血糖値を下げる食生活

食事療法の原則は、

  • 摂取エネルギー量を適正にすること
  • 栄養バーフンスをよくすること
  • 食事をとるタイミングを適切にすること
  • 継続すること

の4つです。外食の多い人も、ちょっとした工夫を加えることで、これらの原則に沿った食事をとることは十分に可能です。

適正な量であれば何を食べてもいい

糖尿病の食事療法は、「これを食べれば治る」という類いのものではありません。また、合併症のない人は、適正な量と質であれば、何を食べてもかまいません。「食事療法は難しい・面倒」と感じる人もいるかもしれませんが、食生活をちょっと工夫するだけでも血糖値を下げることはでき、合併症を防ぐ大切な習慣となります。

食事療法の原則

次の4つの原則のもとに、食生活を改善していきます。

  1. 摂取エネルギー量
    自分の体重や身体活動量に合った、適正な摂取エネルギー量を算出します。ただ、あまり厳密に考えすぎず、目安としてとらえるとよいでしょう。食事は「腹八分目にとどめることを心がけ、体重の変化などをみながら、食事量を調節していきます。もう少し食べたいと思うところで止めておくと食事療法の効果がでやすいといいます。
  2. 栄養バランス
  3. 1つの食品に偏らず、さまざまなものをとります。特に野菜は、エネルギー量が少なく、ビタミンや食物繊維が豊富なため、食事療法には欠かせません。脂肪をなるべく控え、野菜をたくさんとることを心がけましょう。
  4. 食事の摂り方
    食事を抜かず、1日の摂取エネルギー量を、朝昼夕の3回に均等に割りふります。また、食事をとる時問も間食は基本的に避けますが、仕事なLどの都合で食事と食事の問が大きくあく場合はとってかまいません。ただし、1日の摂取エネルギー量の上限は守りましょう。

外食時の注意点

月に2回以上外食する人は、血糖コントロールが不安定になりやすく注意が必要です。外食は、摂取エネルギー量が多くなりやすく、栄養バランスが崩れやすいのです。そのため、外食では工夫が必要です。
気をつけるポイントは3つです。

  • 和食中心にする
  • 食材の種類が多いものを選ぶ
  • 食べすぎに気をつける

の3点です。いつも意識するようにします。



糖尿病の合併症

糖尿病で最も怖いのは、高血糖が続くことで起こる「合併症」です。自覚症状が乏しいことから「知らない間に病気が進み、気づいたときにはかなり進行している」ということも珍しくありません。まずは、糖尿病にはどのような合併症があるのかということと、その症状を知っておくことが大切です。

糖尿病の合併症は高血糖が続き血管が損傷すること

血糖値の高い状態(高血糖)が続くと、全身にさまざまな合併症が生じます。糖尿病で怖いのがこの合併症で、命にかかわる病につながるケースも希ではりません。糖尿病の合併症は、血糖の調整がうまくいかず、高血糖の期間が長いほど起こる可能性が高くなります。糖尿病の合併症には、急に自覚症状が現れる「急性合併症」と、ゆっくり進行する「慢性合併症」があります。慢性合併症は、早期のうちは自覚症状があまり現れず、気がつかないうちに進行していきます。
自覚症状は、糖尿病を発症して何年も経過してから現れ始めますが、そのときには合併症がかなり進行していることも少なくありません。
慢性合併症は、高血糖によって全身の血管が障害されるために起こります。「太い血管に起こる合併症」 と「細い血管に起こる合併症」の2つに大きく分けられます。

太い血管に生じる合併症 高血糖で心臓などの動脈の内腔が狭くなって起こる

高血糖が続くと、血管壁が傷つけられます。すると、血管壁にコレステロールなどないくうが入り込んで、血管の内腔が狭くなったり血管壁がもろくなる「動脈硬化」が進みます。その結果、心臓や脳、脚などの太い血管が障害され、「狭心症」「心筋梗塞」「脳卒中」「閉塞性動脈硬化症」などが起こってきます。
糖尿病のある人がこれらの合併症を発症するリスクは、糖尿病のない人に比べて2~4倍ほど高いと考えられています。動脈硬化は、「境界型」の段階から進行することがわかっています。特に、「メタポリックシンドローム」や「高血圧」「脂質異常症(高脂血症)」を伴う場合、動脈硬化が進みやすいため注意が必要です。

  • 狭心症・心筋梗塞
    心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を供給する「冠動脈」の動脈硬化によって起こります。冠動脈の血流が一時的に悪くなるのが狭心症で、冠動脈が詰まって血流がとだえるのが心筋梗塞です。一般に、狭心症は心筋梗塞の前ぶれと考えられていますが、最近は狭心症のない人が突然心筋梗塞を起こすケースも増えています。症状は、胸が圧迫されるような激しい痛みや「脈の乱れ」「息切れ」などが起こることがあります。これらの症状が起こった場合、急いで医療機関を受診してください。ただし、「糖尿病神経障害」があると、心筋梗塞が起こってもあまり痛みを感じない場合もあります(無痛性心筋梗塞)。
  • 脳卒中
    脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」があります。糖尿病の患者さんで特に多いのは脳梗塞です。
    症状は、主に、片方の手や足などが麻痺して動かしにくくなる「運動障害」、体の片側がしびれたりする「感覚障害」、ろれつが回らなくなる「構音障害」などがあります。こうした症状の多くは、突然起こります。脳梗塞は、治療の遅れや発症部位によっては、後遺症が残ることがあります。命を守り、生活の質の低下を防ぐためにも、脳梗塞が疑われるような症状が起こった場合には、直ちに救急車を呼んでください。
    脳梗塞と同じ症状は、「一過性脳虚血発作」でも起こります。一過性脳虚血発作は脳の血流が一時的に障害されて起こり、24時間以内に回復します。一過性脳虚血発作を起こすと、次に本格的な脳梗塞を起こすことが多いため、受診が必要です。
  • 閉塞性動脈硬化症
    閉塞性動脈硬化症は、下腹部から太もも、すねなどの脚(下肢)に分かれた血管の動脈硬化が進行して、それらの血管の内腔が狭くなったり、詰まったりする病気です。
    症状は、ある程度の距離を歩くと、主にふくらはぎが痛んで歩けなくなります。立ち止まってしばらく休んでいると、再び歩けるようになりますが、歩いているうちにまた痛くなるのが特徴です。
    このように、断続的ににしか歩けない症状を、「間歇性跛行」といいます。動脈硬化がさらに進んで足の先の血管が詰まり、血流がとだえると、足の一部が壊死する「壊痘」が起こってきます。糖尿病経障害がある場合は痛みを感じにくく、壊痘に気づくのが遅れて、脚の切断が必要になるケースもあります。そうした事態を防ぐためにも、間歇性跛行が起こったら、速やかに担当医を受診することが大切です。

即、命にかかわる急性の合併症

糖尿病の急性合併症には、「糖尿病昏睡」や「感染症」があります。急性合併症を放置すると命にかかわるため、症状や対処法をよく理解し、注意することが重要です。
糖尿病昏睡インスリンが極端に不足して、血液中に「ケトン体」という物質が増えたり、重い脱水症状によって血液が極端に濃縮されたりすることで起こります。
症状は、「意識がもうろうとする」「意識を失う」といった「意識障害」が起こり、すぐに適切な治療を受けないと命にかかわることもあります。糖尿病昏睡は、特に1型糖尿病の患者さんや、高齢の2型糖尿病の患者さんに多く起こります。感染症や外傷などによる強いストレスが、糖尿病昏睡のきっかけになる場合もあります。
また、糖質を多く含む清涼飲料水を、一度に多量に飲んだために血糖値が急上昇し、インスリン不足を来して糖尿病昏睡が起こることもあります。
糖尿病昏睡は、意識障害を起こす前に「激しいのどの渇き」「多飲多尿」「強い倦怠感」「嘔吐、腹痛」などの症状が急速に現れたり、「けいれん」を伴うこともあります。このような、糖尿病昏睡が疑われる症状が現れたら、直ちに救急車を呼び、医療機関で適切な処置を受けてください。
感染症は、糖尿病があると、免疫の働きが低下して、ウィルスや細菌などの病原体に感染しやすくなります。感染は血糖を増加させる方向に働きます。そのため、感染症が起こると血糖値が上がりやすくなり、糖尿病昏睡の原因にもなります。特に起こりやすい感染症として、「かぜ」「肺炎」「尿路感染症」「皮膚の感染症」などがあります。感染症が起こった場合は、すぐに受診して治療を受け、十分な休養をとります。血糖値が上がるので、「インスリン製剤」を使った治療が必要になる場合もあります。

細い血管に生じる合併症 目や腎臓などの細い血管が高血糖で傷ついて起こる

高血糖が続くと、目や腎臓などにある細い血管が障害されて、糖尿病神経障害、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」が起こってきます。これらは糖尿病に特有の合併症で、特に発症頻度が高いことから、糖尿病の「三大合併症」と呼ばれます。三大合併症は、早期には自覚症状がほとんどありませんが、徐々に進行していき、突然重い症状を引き起こすことがあります。

深刻化しやすい三大合併症

  • 糖尿病神経障害
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病網膜症

は、糖尿病に特有の合併症です。この3つは、特に糖尿病の「三天合併症」と呼ばれています。早期段階では症状が現れにくく、症状が現れたときにはかなり進行していることもあります。症状や対策をよく理解し、予防します。

糖尿病神経障害「高血糖により神経細胞が損傷」

三大合併症のなかで最初に現れることが多いのが、糖尿病神経障害です。一般に、糖尿病を発症してから、5年程度経過すると現れやすくなるといわれています。糖尿病神経障害は、血糖値が高い状態(高血糖)により、末梢の神経線維が障害され、変性したり脱落するために起こると考えられています。神経は体中に張り巡らされているため、障害される部位に応じて全身にさまざまな症状が現れます。
糖尿病神経障害を改善するためには、適切な血糖コントロールが重要です。血圧が高い場合は、血圧の管理も行います。血流障害を防ぐために、「禁煙する」「節酒する」などの日常生活の注意も欠かせません。そのうえで、神経障害を改善する薬や、症状を和らげる薬などを使っていきます。糖尿病神経障害は、障害される神経によって、「多発性神経障害」と「自律神経障害」に分けられます。

  • 多発性神経障害
    痛みなどを感じる「感覚神経」や、手足などを動かす「運動神経」が障害されます。症状は、「しびれ」がきっかけになることが多く、続いて「痛み」「感覚低下」や「こむら返り」などが起こります。多くは、夜問に症状が強まるのが特徴です。ほとんどが、長い神経線維の走る足から始まり左右両方に起こるため、手から起こったり左右のどちらかだけという場合は別の病気が疑われます。
    まひ進行すると感覚が麻痺して、足に傷などができても気づきにくくなります。処置が遅れて、壊死した細胞が損傷する「潰瘍」や壊死した細胞が腐敗する「壊疽」が起こり、脚の切断が必要になる場合もあります。
  • 自律神経障害
    「自律神経」は、自分の意思とは関係なく働いている神経です。心臓や肺、胃、腸といった臓器の働きや、血圧の調節、排泄など、体のさまざまな機能を調節しています。自律神経が障害されると、「胃もたれ」「便秘」「下痢」「立ちくらみ」など、さまざまな症状が起こってきます。尿の出が悪くなる「排尿障害」や、「ED」が起こることもあります。「食べ物の消化吸収の働きが悪くなる」など、生活の質が大きく損なわれたり、血糖コントロールが難しくなることもあります。最も怖いのが、心臓への影響です。糖尿病神経障害によって「不整脈」が引き起こされ、突然死に至る場合もあります。

糖尿病網膜症「目の細い毛細血管が損傷」

人の目をカメラに例えると、眼球のいちばん奥にある「網膜」は「フィルム」にあたり、物を見るうえで重要な働きをしています。
高血糖によって網膜の血管が障害されて起こるのが、糖尿病網膜症です。一般に、糖尿病の発症後5年程度で、糖尿病網膜症が現れ始めるといわれています。
糖尿病網膜症は、「失明」などの視覚障害を引き起こす主な原因の1つです。視覚障害を防ぐためには、内科での糖尿病の治療に加えて、定期的に眼科を受診し、検査や治療を受けることが必要です。進行の程度によって、大きく3段階に分けられます。

  • 単純網膜症
    糖尿病網膜症の最初の段階が、「単純網膜症」です。網膜の血管がもろくなり、小さな瘤ができます。瘤が破れると、点状の出血が起こります(点状出血)。血液の成分が吸収されて網膜上にたまると、「硬性白斑」という、白くて境界の明瞭な「しみ」ができます。自覚症状はありません。
  • 増殖前網膜症
    単純網膜症の次の段階です。血流が悪くなり、網膜の血管の一部が詰まって、その先の部分に酸素と栄養が送られなくなります。血流のとだえた血管から血液の成分がにじみ出し、「軟性白斑」という、白くて境界のはっきりしない「しみ」ができます。また、血管からしみ出した水分が網膜に吸収されて、「むくみ」が生じます。この時点でも自覚症状がありません。
  • 増殖網膜症
    増殖前網膜症からさらに進行した状態です。血流がとだえた部分に酸素や栄養を送ろうとして、「新生血管」がつくられます。
    新生血管は、網膜や、網膜に接している「硝子体」に伸びていきます。新生血管は非常にもろく、ちょっとした衝撃でも破れて出血を起こします。硝子体に出血が及ぶと(硝子体出血)、光が網膜まで届きにくくなり、視力が低下します。内側には「増殖膜」とい、り薄い膜ができます。この増殖膜が網膜を引っ張ると、「網膜剥離」が起こります。

糖尿病腎症「高血糖で腎臓の血管が損傷する」

腎臓は、血液を濾過して老廃物や余分な水分を取り除き、尿をつくる働きがあります。血液を濾過するのが「糸球体」で、左右の腎臓に約10万個ずつあります。糖尿病腎症は、高血糖によって糸球体が障害されて、血液を濾過する腎臓の機能が低下する病気です。一般に、三大合併症のなかでは、最も遅く現れてきます。進行すると、治療には「透析療法が必要となります。尿中に出るたんばくの量や腎臓の機能の程度などで、第1期~第5期に分けられます。

  • 第1期(腎症前期)
    腎臓の機能は正常で、尿中のたんばくもなく、現時点で腎症を最も早期に診断できる検査である「微量アルブミン尿検査」でも、異常は認められません。しかし、高血糖によって腎臓に障害が起こっている可能性を否定しきれないため、注意が必要です
  • 第2期(早期腎症期)
    腎臓の機能は正常範囲ですが、微量アルブミン尿検査を行うと、尿からたんばくの一種「アルブミン」がごく微量検出されます。
    微量アルブミン尿は、糖尿病発症後5~10年ほどで現れるといわれています。この段階では、まだ自覚症状はありません。治療は血糖コントロールが基本。血圧が高い場合、食塩の摂取量を減らしたり降圧薬を使って治療を行います。この時期の生活習慣改善はとても重要です。
  • 第3期(顕性胃症期)
    尿にたんばくが出る「たんばく尿」が、継続してみられる段階です。腎臓の機能が低下して水分が十分に排泄されないため、顔や脚などに「むくみ」が現れてきます。第3期の後期になると、腎機能がより低下するため、血糖と血圧のコントロールの徹底のほか、たんばく質の摂取量の制限や、運動や仕事の制限が必要な場合もあります。
  • 第4期(腎不全期)
    腎臓の機能が健康な状態の30%以下に低下した状態を「腎不全」といいます。老廃物や水分をうまく排泄できず、むくみのほか「疲労感」「手足のしびれ」などの症状が現れてきます。腎不全が進行して尿をつくれなくなると「尿毒症」が起こり、「貧血」や「皮膚のかゆみ」などの症状が現れます。この時期は、血糖と血圧のコントロールと並行して腎不全の治療も必要です。
  • 第5期(透析療法期)
    腎臓の濾過機能が著しく低下しているため、「腹膜透析」「血液透析」の2つのどちからかの透析療法が行われます。

糖尿病腎症では血圧の管理も大切

腎臓と血圧は密接な関係にあります。糖尿病腎症を起こすと血圧が上がり、血圧が上がると腎症が進むという悪循環が生じます。特に、糖尿病腎症の第2期からは、高血圧を合併する頻度が高くなりますから、進行を抑えるために血圧管理も重要です。

合併症を早期発見するには

糖尿病の合併症の多くは、早い段階では症状が現れにくいため、早期発見のためには、糖尿病と診断されたら定期的に検査を受ける必要があります。
一般に、診断時や入院時には詳しい検査を行って全身の状態を調べます。気づかないうちに合併症が進行するのを防ぐには、治療を始めてからも定期的な検査が必須です。

乏しい自覚症状に対する対策はやっぱり定期検査

糖尿病は、全身にさまざまな「合併症」を引き起こします。なかでも「慢性合併症」は、長い期間をかけてゆっくり進行し、早期には自覚症状がほとんど現れません。したがって、早期発見のためには、糖尿病と診断されたら、医療機関で定期的に検査を受けることが必要です。慢性合併症のうち、「動脈硬化」などの太い血管に起こる合併症や「糖尿病神経障害」、「糖尿病腎症」などは、内科で調べることができます。
しかし、「糖尿病網膜症」などの目の病気を早期に見つけるためには、眼科の検査も必要です。また、歯科の検査も定期的に受けけることが大切です。
通常、糖尿病の診断時や入院時には、できるだけ多くの種類の検査を行い、すでに合併症を発症していないかどうかを詳しく調べます。それ以降の治療では、特に重要性の高い検査を定期的に行い、必要に応じて、より詳しい検査も行われます。

動脈硬化の程度は頸動脈や心電図検査

糖尿病は、動脈硬化の危険因子です。動脈硬化が進むと、「心筋梗塞」や「脳卒中」が起こりやすくなります。太い血管の合併症は、次のような検査で調べます。

  • 動脈硬化の検査
    「高血圧」や「脂質異常症」があると、動脈硬化が進みやすいので、「血圧」や血液中の「中性脂肪」「HDLコレステロール」「総コレステロール」などを調べます。「頸動脈エコー」では、脳に血液を送る「頚動脈」の動脈硬化の程度を調べます。
    首に超音波を当て、頚動脈の内部の様子をモニターに映す検査です。頚動脈の動脈硬化の程度以外に、脳卒中の発症リスクもわかります。また、脳卒中が疑われる場合は、「CTや「MRI」などの検査も行われます
  • 心臓の検査
    糖尿病神経障害があると、「狭心症」や心筋梗塞が起こっても、胸の痛みに気がつかないと、感じていられる時問が短くなります。神経障害が進むと、足の感覚が鈍って、傷などに気づかないことがあります。また、糖尿病があると傷が治りにくく、感染症を起こしやすくなります。
    そのため、受診時、医師に足をみてもらうことも大事です。自分でも、1日に1回は傷やたこ、靴ずれなどがないか、足を見る習慣をつけましょう。
  • 目の検査
    糖尿病網膜症の診断に有効なのが、「眼底検査」です。網膜の状態を直接観察する検査で、「点状出血」や「硬性白斑」、「軟性白斑」など、網膜の異常を調べることができます。眼底検査によって網膜に異常が見っかり、それがきっかけで糖尿病と診断される場合もあります。
    また、白内障を診断する「細隙灯顕微鏡検査」や、緑内障を診断する「眼圧検査」などが行われることもあります。
  • 尿検査
    一般的な「尿検査」で、尿中にたんばくが出るようになるのは、糖尿病腎症がかなり進んでからです。糖尿病腎症を早期に発見するためには、尿中に含まれている「アルブミン」というたんばくの一種を調べる、「微量アルブミン尿検査」が必要です。
    最近、腎機能の指標として使われているろかのが、腎臓の糸球体の推定濾過量を示す「eGFR」です。血液中の「クレアチニン」という物質の濃度である「血清クレアチニン値」や性別、年齢から算出されます。
  • 感染症の検査
    糖尿病になると、抵抗力が低下するのでウィルスや細菌などに感染しやすくなります。「胸部エックス線検査」で、「肺結核」などの有無を調べます。少なくとも1年に一度は受けることが勧められます。
    そのほか、尿検査などで「尿路感染症」を調べることがあります。また、糖尿病の患者さんは、口の中で細菌が増殖しやすくなるので、「虫歯」や「歯周病」も起こりやすくなります。歯周病は歯を失う大きな原因になりますから、歯科でも定期的に検査を受けることが重要です。

糖尿病の合併症を防ぐために

糖尿病の検査・診断

糖尿病の診断は、「血糖検査」の結果をもとに行われます。基本は、「空腹時血糖値」と「ブドウ糖負荷後2時間値」で糖尿病が疑われるかどうかを判定します。「糖尿病型」と判定された場合は、医療機関で再検査を受け、その結果によって確定診断されます。

血液検査で血糖値を調べる

「糖尿病」という病名のイメージから「尿に糖が混じる病気」だ思っている人も多いのかもしれません。確かに、尿検査で尿中に漏れ出た糖である「尿糖」が認められれば、糖尿病が疑われます。しかし、尿糖は、ある程度まで糖尿病が進行しないと現れません。糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が過剰な状態が続く病気です。そのため、糖尿病かどうかを調べるには、「血液検査」で血糖値を調べる「血糖検査」が行われます。

血液検査

血液を採取して、血糖値を調べます。検査値には、次のようなものがあります。

  • 空腹時の血糖値
    10時間以上絶食し、空腹の状態で採血して血糖値を調べます。これを「空腹時血糖値」といいます。多くは、夜9時ごろから食べ物をとらず、翌日の午前中に検査を行います。健康診断などでは、空腹時血糖値の検査がよく行われています。
  • ブドウ糖負荷後2時間値
    一般に、1時問以上絶食したあと、75gのブドウ糖を溶かした液体を飲み、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を調べます(75g経口ブドウ糖負荷試験)。ブドウ糖を食事と見立て、食後の血糖値の変動をみる検査です。

そのほか、空腹かどうかに関係なく血糖値を調べる「随時血糖値」もあります。

判定基準

糖尿病が疑われるかどうかは、空腹時血糖値とブドウ糖負荷後2時間値で判定されます。検査値によって、次の3つに分類されます。

  • 正常値
    空腹時血糖値が110mg/dl未満、かつブドウ糖負荷後2時間値が140 mg/dL未満の場合、血糖値に問題がない「正常型」と判定されます。
  • 糖尿病型
    空腹時血糖値が126mg/dl以上、またはブドウ糖負荷後2時間値が200mg/dl以上の場合、糖尿病が強く疑われる「糖尿病型」と判定されます。確定診断のために、医療機関で再検査を受ける必要があります。
  • 境界型
    正常型と糖尿病型の間は、「境界型」と呼ばれ、これがいわゆる「糖尿病予備軍」に当たります。まだ糖尿病型とはいえませんが、正常型の人と比べると将来糖尿病を発症する可能性が高いので、今後も定期的に検査を受けたほうがよいでしょう。

糖尿病型と判定されたら医療機関で再検査

健康診断などの血糖検査で糖尿病型と判定されたら、必ず医療機関で再検査を受けてください。再検査では、問診や2回目の血糖検査が行われます。

問診

血糖値は、糖尿病以外の病気でも高い値がでることがあります。したがって、原因を見極めるためにも、問診が非常に大切です。問診では、主に次のようなことが聞かれます。

  • 家庭型
    「血縁者に糖尿病にかかっている人がいるかどうか」、いる場合は「その人の発症年齢、治療内容」などが詳しく尋ねられます。糖尿痛を発症しやすい遺伝的素因があるかどうかを確かめます。
  • 肥満型
    20歳のころの体重や、今までいちばん太っていたときの体重などが尋ねられます。糖尿病は肥満とのかかわりが深いため、今までの体重歴を振り返ります。
  • 妊娠や出産の経験
    妊娠や出産の経験がある場合、「妊娠時の血糖値」「妊娠糖尿病を発症したかどうか」「巨大児の出産の有無」などです。

症状

「多飲多尿」「疲労感」「体重減少」などの糖尿病の自覚症状の有無のほか、「歩行時の脚の痛み」「足のしびれ」「視力低下」の有無などが聞かれ、糖尿病やその合併症があるかを確かめます。これらのほか、糖尿病以外の病気があるかどうかについても聞かれます。
問診で聞かれることは、診断のために重要なことばかりですから、できるだけ正確に答えることが大切です。あらかじめ、このような質問に対する答えを、わかる範囲でメモしてから受診したほうがいいでしょう。

診断までの流れ

血糖検査と問診の結果から「典型的な糖尿病の症状がある」などの4つの条件に1つでも当てはまれば、「糖尿病」と診断されます。条件に当てはまらなくても、2回目の血糖検査の結果も糖尿病型であれば、やはり糖尿病と診断されます。「糖尿病型」という判定では、〝糖尿病が強く疑われる″ という段階でしたが、ここで初めて糖尿病と確定診断されます。

新しい特定検診と特定保健指導

2008年4月から、「特定健診」と「特定保健指導」が義務化されます。特定健診と特定保健指導は、生活習慣病やメタポリックシンドロームの患者さんの増加に対処するために、これらの発症を未然に防ぐ「1次予防」を重視したものです。特定健診は、40歳以上の人を対象に、これまで以上に厳しい基準で健診を行い、生活改善の指導などが必要な人を見つけることが目的です。
糖尿病関連では、「空腹時血糖値100mg/dl以上」「HbA1C5.2%以上」が基準となる予定です。指導の対象となった人は、検査値に応じた保健指導を受けることになります。定期的に受診をすることで、生活習慣病などの発症予防を目指します。

合併症の有無を調べる検査

糖尿病は合併症が怖い病気です。糖尿病と診断されたら、常に合併症に注意する必要があります。「アキレス腱反射検査」などで神経の状態を、「眼底検査」で網膜の状態を、「尿検査」などで腎臓の状態を調べます。「心電図検査」を行って、心筋梗塞などの兆候の有無も確かめます。

糖尿病の基礎知識

「糖尿病」は、血糖値が高い状態が続く病気です。ある程度進行しないと自覚症状が現れないため、早期のうちは糖尿病に気づかない人もたくさんもいます。しかし、血糖値が高い状態を放置すると、やがて全身にさまざまな合併症が現れ、生活の質を低下させたり、命にかかわったりすることもあります。

厚生労働省の「2013年国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる者)の割合は、男性16.2%、女性9.2%であり、50歳以降に割合が増えることわかっています。また、年々患者数は増加しています。平成23年時点で糖尿病の総患者数は約270万人 高齢者の生活習慣病が増加しているのが特徴です。国民病といっても過言ではない糖尿病についてです。

血液中のブドウ糖が多すぎる状態が続く

「ブドウ糖」は、全身の細胞でエネルギー源として利用される、重要な物質です。ブドウ糖は、血流によって全身に運ばれます。血液中のブドウ糖を「血糖」といい、その濃度は「血糖値」で表されます。血糖値は本来、ほぼ一定の範囲内に収まるよう調節されています。しかし、何らかの原因で血糖値が高い状態(高血糖)が続くことがあります。これが、「糖尿病」です。

自覚症状

高血糖があると、「のどが渇いて水をよく飲む、尿がよく出る(多飲多尿)」「疲れやすい」「体重が減る」などの症状が現れます。
しかし、早期のうちはこのような自覚症状はほとんどありません。糖尿病の怖さは、高血糖が続くことで引き起こされる「合併症」が、気づかない問に進行することにあります。

糖尿病が引き起こす病気

高血糖が続くと、全身の血管が傷つけら小ささな組織が無数に点在しています。この膵島にある「β細胞」が、インスリンをつくっています。β細胞は、血糖の増減に応じてインスリンの分泌を調節しています。

インスリンの分泌や働きに障害が起こって発症する

健康な人の場合

健康な人でも血糖値は常に変動しています。食事をとると、小腸からブドウ糖が吸収されて、血糖が増加します。すると、膵臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉などに取り込ませたり、使わない分を脂肪組織などに蓄積させたりします。インスリンは、血糖値の変化に応じてタイミングよく分泌されるため、食後はある程度血糖値が高くなりますが、すぐに下がります1また、食事を抜いても、肝臓や筋肉などに蓄えられていたグリコーゲンが、ブドウ糖に分解されて血液中に放出されることで、血糖が増加して、血糖値が下がりすぎないようになっています。このような仕組みにより、健康な人の血糖値の変動は、ほぼ一定の範囲内に収まっています。

糖尿病の人の場合

糖尿病では、何らかの原因により、インスリンの分泌や働きが障害されているため、高血糖の状態が続きます。

  • インスリンの分泌が遅い、分泌が少ない、量が少ない
    インスリンの分泌が遅かったり、分泌量が少ないと、′血糖をブドウ糖として肝臓や筋肉などに十分に取り込むことができません。インスリンをテレビの「〝電波」、血糖の利用をテレビの「画像」に例えると、「電波の送信不良でテレビがきれいに映らない」状態といえます。
  • インスリンの働きが悪い
    インスリンを受け取る「インスリン受容体」の働きがよくないため、インスリンが分泌されても十分に働くことができません。「電波を受け取るアンテナの受信・伝達不良でテレビがきれいに映らない」ような状態です。インスリンの分泌と働きのどちらか、または両方に問題があると、高血糖が続きます。原因によって、糖尿病は次の4つに分けられます。

分類

膵臓のβ細胞が壊れる「Ⅰ型糖尿病」

Ⅰ型糖尿病はインスリンをつくる脾臓のβ 細胞が破壊されて、インスリンが分泌されなくなるタイプの糖尿病です。以前は「インスリン依存型糖尿病」と呼ばれていたもので、日本で少なく、糖尿病全体の1~3%とされています。小児~青年期の発症が多いといわれますが、どの年代でも発症する可能性があります。Ⅰ型糖尿病は、発症のしかたによって、大きく次の2つに分けられます。

  • 自己免疫性
    本来は細菌やウイルスなどの異物を攻撃して排除しようとする働きである「免疫」の仕組みが、自分の体の一部であるβ 細胞を攻撃してしまいます。
  • 突発性
    原因がわからないタイプです。このなかには、突然重症の糖尿病を発症する、「劇症Ⅰ型糖尿病」が含まれます。

Ⅰ型糖尿病は、比較的ゆっくりと進行するものや、突然発症して急激に進行するものなど、経過はさまざまですが、どのタイプでもインスリンが絶対的に不足し、ほとんどの場合、インスリンを補充する治療が必要になります。

インスリンの効きが弱くなるⅡ型糖尿病

Ⅱ型糖尿病は、これまでは「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれていたタイプの糖尿病です。日本では、糖尿病の90%以上が、この2型糖尿病です。40歳以上に多く、「体質」などの遺伝的素因のほか、「食べすぎ」「運動不足」などの生活習慣や、「肥満」「ストレス」などが、発症に深くかかわっているといわれています。
Ⅱ型糖尿病では、長い時間をかけて、血糖値が徐々に上がっていきます。インスリンの分泌のタイミングが遅れることで、食後の血糖値が特に高くなります。また、不適切な生活習慣が積み重なると、だんだんインスリンの働きが悪くなって、血糖値が下がりにくくなります。

膵臓が原因となりやすい糖尿病

遺伝子の異常が原因

Ⅱ型糖尿病は、遺伝とのかかわりがありますが、遺伝だけが原因で起こるわけではありません。これに対して、最近の研究で解明されてきたのが、遺伝子の異常を原因とする糖尿病です。
特定の遺伝子に異常があり、それを直接の原因として、糖尿病を発症します。日本では、糖尿病の患者さん全体の2%程度を占めると考えられています。このような遺伝子は、これまでに9つほど知られています。発症のしかたによって、次のⅡつに大きく分けられます。

  • インスリンをつくって分泌する機能に異常がある
    膵臓のβ細胞の働きにかかわる遺伝子に異常があるタイプです。通常と構造が異なるインスリンがつくられてインスリンが十分に働かないケースや、インスリンの分泌が低下するケースなどがあります。
  • インスリン受容体などインスリンの伝達経路に異常がある
    肝臓や筋肉などにある、インスリン受容体の遺伝子に異常があるタイプです。インスリンが分泌されても正常に働かず、血糖値が下がりません。

ほかの原因

糖尿病以外の病気があり、それが原因となって、二次的に糖尿病が起こることがあります。「二次性糖尿病」とも呼ばれます。例えば、原因の1 つに膵臓の病気があります。「慢性膵炎」や膵臓に結石ができる「膵石症」などによって膵臓の機能が障害されたり、「膵臓がん」で膵臓の一部を摘出したりすることで、糖尿痛が引き起こされるこ・つ場合があります。ほかにも、「甲状腺機能亢進症(バセドゥ病など)」「クッシング症候群」などのホルモンが関係する病気や、「慢性肝炎」「肝硬変」などの肝臓の病気など、さまざまな病気が糖尿病の原因になることがあります。
「副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)」などの薬が原因となって、糖尿病を発症することもあります。また、「ダウン症候群」や「筋ジストロフィー」など、遺伝子の異常が原因で起こる病気で、糖尿痛を伴うことが多いものもあります。

妊娠がきっかけとなるもの

妊娠をきっかけとして糖尿病を発症した場合、あるいは以前からあった糖尿病が妊娠をきっかけに発見された場合を「妊娠糖尿病」といい、糖尿病の患者さんが妊娠した場合を「糖尿病合併妊娠」といいます。
妊娠中は胎盤で、胎児の成長に必要な「イスリン括抗ホルモン」がつくられます。このホルモンにはインスリンの働きを抑える作用があるため、インスリンの働きが悪くなります。
通常は、働きが悪くなった分、インスリンの分泌量が増えて調節されますが、十分に分泌されないと高血糖になります。一般的な糖尿病の判定基準は「空腹時血糖値126mg/dl以上、またはブドウ糖負荷後2時間値20mg/dL以上」ですが、妊娠中の高血糖は胎児にも影響を与えるため、基準がより厳しくなっています。
「空腹時血糖値100 mg/dL以上」「ブドウ糖負荷後1時間値180mg/dL以上」「ブドウ糖負荷後2時間値150mg/dL以上」のうち2つ以上に該当すると、妊娠糖尿病と診断されます。

Ⅱ型糖尿病

遺伝的要因や生活習慣

糖尿病の患者さんは年々増加、血糖値が少し高めの「糖尿病予備軍」も含めると約2000万人に届きそうな人数がいるといわれています。その多くを占めるのが、Ⅱ型糖尿病です。Ⅱ型糖尿病の原因は、インスリンの作用不足です。その背景には、「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」があります。

ンスリン分泌不全

インスリンの分泌が遅れたり、分泌される量が不十分であることを、インスリン分泌不全といいます。Ⅱ型糖尿病では、インスリンがタイミングよく分泌されない人が多くみられます。また、膵臓のβ細胞の働きがしだいに悪くなり、十分な量のインスリンを分泌できなくなることもあります。インスリン分泌不全は、遺伝的素因が大きな原因です。日本人には、インスリン分泌不全のある人が多いともいわれます。

インスリン抵抗性

インスリンの分泌量は十分でもインスリン受容体の働きが悪く、ブドウ糖の消費や蓄積が進まないことを、インスリン抵抗性といいます。Ⅱ型糖尿病の特徴の1つが、このインスリン抵抗性です。インスリン抵抗性は、食べすぎや運動不足などの生活習慣が長く続くことや肥満、ストレスなどの影響で、だんだん強くなります。特に、腸を包む「腸間膜」に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」があると、インスリン抵抗性が強くなります。

Ⅱ型糖尿病の進行

インスリン分泌不全とインスリン抵抗性のどちらかが特に強いこともありますが、多くの場合、両者が重なっています。インスリン抵抗性があっても、インスリンが大量に分泌されれば、働きの悪さを何とか補えます。しかし、インスリン分泌不全を伴うと、補えるだけの量のインスリンを分泌できず、血糖値が下がらなくなります。また、高血糖が続くと、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が強まり、さらに高血糖が進行するという悪循環が起きます。これを「ブドウ糖毒性」といいます。
一般的には、まず食後の血糖値から上がり始め(食後高血糖)、しだいに空腹時の血糖値も上がってきて(空腹時高血糖)、本格的な糖尿病になります。また、作用不足を補うためにインスリンを大量に分泌し続けていると、やがてβ細胞が疲弊し、インスリンを分泌できなくなることもあります。

メタボはⅡ型糖尿病が原因

最近広く耳にするようになった「メタポリックシンドローム」は、糖尿病の原因の約4割を占めるともいわれています。メタポリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満を基盤として、血中脂質や血圧、血糖値が〝少し高め″ の状態が複数重なった病態です。内臓脂肪型肥満があると、その脂肪細胞から分泌されるホルモンの影響で、インスリン抵抗性が強くなります。そのため、血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病を発症する危険性が高まるのです。
また、脂肪細胞から分泌されるホルモンの影響で血圧も上がります。そして、内臓脂肪が分解されてできる「遊離脂肪酸」が増えることで、血液中の脂質も増えます。このような関係から、内臓脂肪型肥満があって血糖値が高い場合、血圧や血清脂質にも問題が出てくる可能性が高くなります。
メタポリックシンドロームがあると、動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳卒中などの病気を発症しやすくなります。血糖値が「少し高い」程度の段階から、肥満や血清脂質、血圧にも注意することが大切です。

メタボの診断基準

内臓脂肪型肥満は、おへその高さの腹囲が「男性で貼85cm以上、女性で90cm以上」が基準です。この基準に加えて、次の1~3の2 つ以上に当てはまる場合に、メタポリックシンドロームと診断されます。

  1. 血清脂質
    中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール値40mg/dl未満の一方、または両方。
  2. 血圧
    上が135mmHG、下が85mmHG以上のどちらか一方、または両方
    高血圧の国際基準はこちら
  3. 血糖値
    空腹時血糖値110mg/dl以上