体の痛みや疲れは、自覚症状が出てからなるべく時間が経たないうちにとるようにしたいものです。体に関することは、早期発見、早期治療です。
痛みがある場合は、たいていその部位が炎症を起こしていることが多いものです。炎症は、冷やしてケアするのが効果的です。しかし一方で炎症が起こる根本的な原因は、ほとんどが血流不足です。血流不足を解消するには、温めて血行を促すことが最善策です。
要するに、痛みを効果的にとるには、「冷やす」、「温める」の両方をうまく使いわけることが肝心です。
炎症があれば冷やしてから、じつくりと血行をよくするように温めることがポイントになります。「冷やすケア」は、冷湿布をするのが一般的です。一方「温めるケア」には、足湯法、下半身浴、鍼灸治療、気功、ヒーリング、リフレクソロジー、温熱岩盤浴など、いろいろな方法があります。では、みなさんのご自宅で手軽にできる「痛みと疲れのセルフケア」の方法を紹介していきましょう。
どんな痛みにも効果抜群「足湯法」
足を温める「足湯」は、あらゆる慢性の痛みに効果があります。肩こりでも腰痛でも、どこかに痛みがあったらまずは足湯をしてみましょう。
特に頭痛の緩和に有効です。ただやり方は、一般に知られている足首から下のみを温める方法では効果が薄いので、気をつけなければなりません。せめて膝から下全部を温めないと、痛みをとる効果はあまりありません。
- 足湯の手順
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- 浴槽に膝から下がすっぽり入るくらいたっぷりと、43~45度のお湯をはる。温浴効果を高めるために、重曹と塩を各大さじ2~4杯入れてよくかき混ぜておく。
- 上半身は冷えないように、たくさん衣服を着る。シャツ3枚、ポロシャツ1枚の上に、ウインドブレーカーなどを着て保温する。下半身は裸になる。足湯中に汗がたっぷり出るように、質のよい水をたくさん飲んでおく。
- 浴槽のふちに腰掛け、30~49分間、足を温める。途中でお湯がぬるくなったら、足
し湯をして温度をキープする。頭に氷のうなどをのせておくと、さらに頭寒足熱の状態になるので、体が温まる。 - よく温まったら水を足して、水温を37~39度に調節して、裸になって全身を温める。
寒いい冬にはこの方法がおすすめ「下半身浴」
膝から下を温める足湯法でもかなり効果がありますが、寒い冬や冷え性の人には、腰までつかる下半身浴がおすすめです。やり方は足湯とほとんど同じですが、つかる時間を少し長めにして( 40分以上)、しっかり全身を温めましょう。
- 下半身浴の手順】
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- 浴槽に腰から下がすっぽり入るくらいたっぷりと、43~45度のお湯をはる。温浴効果を高めるために、重曹と塩を各大さじ2~4杯入れてよくかき混ぜておく。
- 上半身は冷えないように、シャツ2枚、ポロシャツ1枚を着る。下半身は裸になる。下半身浴中に汗がたくさん出るように、たっぷりと質のよい水を飲んでおく。
- 浴槽に入り、40分以上温まる。衣服は濡れないように少したくし上げておくと、汗が出やすくなる。水温がぬるくならないように、適宜追い炊きをする。
足裏のツボを刺激して血行促進「リフレクソロジー」
今から15年くらい前に、私は初めて台湾でリフレクソロジー(中国式足裏マッサージでしたが) を専門家にやってもらいました。
そして、その効果に大変驚きました。なぜならずっと痛かった腰や肩がウソのように軽くなったからです。
足の裏には全身に対応した「反射区」があり、ここをもんだり強く押したりして刺激すると、足を刺激しただけなのに全身の疲れやコリがほぐれます。
内臓に悪いところがあると、その場所に応じて体の他の部位にコリや痛みが生じる「内臓体壁反射」についてと足裏の反射区はこれと同じ理論です。
つまり、胃が悪い人は胃の反射区(足裏の真ん中のやや親指よりの箇所) が、押すと痛むというわけです。
日本では欧米式のソフトな施術方法がポピュラーですが(イギリス式がいちばんよく知られている)、中国式はかなりの強さで刺激します。やっている間は跳び上がるほど痛いこともありますが、とにかくよく効きます。家庭でやる場合は、自分の好みで刺激する強さを変えてかまいませんが「痛気持ちいい」くらいの強さで押すと、効果がさらに上がります。
反射区には押してみるとグリグリとしたしこりのようなものがありますが、これは末梢神経の末端にたまっている老廃物です。疲れを引き起こす乳酸や尿酸などがその成分です。これをもみはぐして、尿といっしょに排泄することで、反射区に対応した臓器や体の部位の疲れや痛みも緩和されるのです。
手のひらや足の甲、耳などにも全身の反射区がありますが、なかでも足の裏にある反射区は、刺激するともっとも効果的です。異常がいち早く現れる場所であり、刺激を与えても副作用が現れにくいからです。例えば頭が痛いときは、足裏にある頭の反射区(親指の裏側の中央あたり) を徹底的にもみほぐすと、頭痛はやわらいでいきます。
刺激するときは、手の指(力が入りやすい親指がおすすめ) や、先が丸くなった棒状のもの(ボールペンの柄などでもかまわない)で押すのがやりやすくておすすめです。
また突起したものを踏んづけるようにして、反射区を刺激してもいいでしょう。電動式で、力を入れなくても刺激できるマッサージ器具なども市販されているので、こういったものを使ってもいいと思います。
足裏を刺激する前に、足湯法で十分温めると、さらに効果がアップします。指で刺激する場合は、すべりがよくなるようにクリームやローションなどをつけてやると、やりやすくなります。また反射区にあるしこりを刺激すると老廃物が出るので、リフレクソロジーの後にはたっぷり水を飲んで、排泄がスムーズにいくようにしましょう。
最後に主な足裏の反射区の場所を挙げておきましょう(左右共通)。
- 足裏の親指の中央→頭(脳)
- 足裏の親指のつけ根部分→首
- 足裏の人差し指、中指のつけ根部分→目
- 足裏の薬指、小指のつけ根部分→耳
- 足裏の親指以外の4本の指のつけ根の下→僧帽筋(首、肩)
- 土踏まずのやや下→小腸、横行結腸、下行結腸など(※ 腰が痛いときにこの周辺をもみ
ほぐすと効果的)
体の芯から温めてコリをほぐす「温泉療法」
- 温泉は、サウナや岩盤浴より体を温める効果が高い
- 日本は世界有数の温泉天国です。全国津々浦々に、名湯があります。疲れがたまったり、肩こりや腰痛があったりするときは、特に温泉のあの温かさが恋しくなるものです。
- 温泉につかることは、コリや痛みの治癒に大変効果的です。その理由は「極めて深く温まるよさ」があるからです。この特徴は、遠赤外線のよさに合い通じるものがあります。同じ体を温めるものでも、サウナ風呂は皮膚の表面から3 mmくらいしか温まりません。また普通の岩盤浴も3 cmくらい、よくても5 cmくらいしか温まりません。
- ところが温泉は、はっきりとしたデータではありませんが、おそらく皮膚の表面から4~15 cmくらいの探さまで温まります。温泉にはお湯の中に含まれる各種ミネラルやホルミシス(ラドン)、そして遠赤外線やマイナスイオンによる「深部温熱効果」があるため、体の芯まで温まるというわけです。
- ホルミシスは、痛みの治癒に高い効果がある
- 温泉の温熱効果の中でも、最も優れているのがホルミシス( ラドン) の力です。ホルミシスは温泉によって、出ているところとあまり出ていないところがあります。いわゆる「ラドン温泉」と謳っている温泉は、ホルミシスの出ている量が多いと思っていいでしょう。
- 例えばガンに効果があるということで大人気の秋田県の玉川温泉などは、6.7 マイクロシーベルトくらいの量のホルミシスが出ているそうです。普通の温泉では0.1~0.2マイクロシーベルトくらいなので、いかにこの温泉のホルミシスが多いかがわかることと思います。
- ホルミシスとは微量放射線のことです。「放射線とは体に悪いものなのでは? 」と思う人も多いでしょうが、そんなことはありません。短時間に大量の放射線を浴びることは、確かに体に悪いです。しかし微量の放射線は、逆に健康に役立つことが最近わかってきて、注目を集めています。
- そもそも、この地球上で放射線の出ていないところはないことが最近わかってきました。また、自然の放射線が多く出ている地区に住んでいる人々にたいへん健康な人が多いことが知られるようになってきました。これは、驚きの報告です。ある程度の放射線はむしろ必要だということなのです。人に有用なほんの少しの放射線を、放射線の権威トーマス・ラッキー博士は1981年に「ホルミシス」と命名したのです。
- 実験データによれば、ほんの少しの放射線(0.2~30シーベルト) をマウスに3週間照射したところ、免疫細胞の数が大幅に増加し、免疫系で最も大切な細胞表面の分子が著しく増加したそうです。
- そしてその一方で、体を攻撃する異常な活性化細胞の数は減少し、免疫系は理想状態になったということです。つまりホルミシスには、ガンなどの異常細胞を減らし、免疫力を高める効果があるのです。
- 玉川温泉で湯治をしたガン患者の中には、ガンが治ったり、症扱が軽くなったりしたという人がたくさんいます。これはホルミシス効果でありました。
- またオーストリア・ザルツブルク市の高地にあるハイルシュトレン坑道は、かつて大勢の坑内労働者が働いていましたが、他の鉱山に比べてとても健康な人が多かったそうです。このことに注目が集まり、調査をしたところ、ホルミシスの効果が認めらました。
- 今では坑道セラピーのメッカとして、年間10万人を超えるガン療養者が訪れています。インスブルック大学のデーチエン教授によると「リウマチ性関節炎その他の痛みを伴う中高年のリウマチ患者他の患者さんの75%は痛みを忘れ(痛みがなくなって) 帰っていき、翌年にまたやってくる。その後何年も続けて来られる患者さんのフォローをしたら「次第に難病が治っていく例が多い」とのことです。
- この話など、まさにホルミシスが痛みに効果的なことをよく物語っています。体にしびれやコリがある場合も、微量放射線であるホルミシスは効果を発揮します。「体の疲れを癒しに温泉へ行きたい」と思っている人は、ぜひホルミシスの皇宮なところ(=ラドン温泉)を選んでください。
硫黄泉は、特に活性酸素のスカベンジャー効果が高い
温泉にはミネラルが豊富であると最初に述べましたが、場所によってミネラルの含有組成は違っています。その土地ならではのミネラルが含まれているので、温泉へ行くときは事前にどんな泉質なのかを確認しておきましょう。温泉水を飲むのも効果的です。
日本国内では、硫黄泉( いおうせん) が多くなっています。硫黄泉には遊離硫化水素が含まれる「硫化水素型」のものと、硫化水素イオンが含まれる「硫黄型」があります。この2つは同じ硫黄泉ながら、色やにおいがかなり違います。
硫化水素型は白濁した湯で、強い硫化水素臭( =硫黄のにおい) がします。このにおいの中に酸化を還元する強い力があり、痛みをやわらげます。一方硫黄型は緑がかった色、もしくは黄色などきれいな色の湯が多くなっています。含有ミネラルとしては鉄、銅、錫などが多く、これらのミネラルは万病の元となる活性酸素をとる「スカベンジャー」(抗酸化物質) となります。
強い温熱効果、活性酸素のスカベンジャーとしての役割、そしてその結果、「気」を流し、末梢まで血行をよくしてくれる 。温泉の効能には、素晴らしいものがあります。特に硫黄泉は、コリや痛みに悩む人におすすめの泉質なのです。
- まずかけ湯をする
- 湯船につかる前にかけ湯をして、体をお湯の温度に慣らしておきましょう。足首から膝・腰、手首から腕・肩と、胸から遠い順にお湯をかけていきます。こうすることで、入浴直 後の血圧上昇が防げます。また体や髪の毛の汚れは最初に落としておきましょう。
- 浴槽では半身浴で
- いきなり全身で入らず、まずは半身浴で体を慣らしましょう。こうすることで、お湯の温度や水圧による急激な負担が体にかかりません。入浴時間は額や鼻の頭が汗ばむ程度が目安。汗がしたたり落ちて、動惇がするほどの長湯はやめましょう。半身浴の効能はこちら。
- 上がり湯はしないほうが効果は持続する
- 泉質にもよりますが、シャワーなどで上がり湯をすると、せっかくの薬効が皮膚から流れてしまいます。体を拭くときは、水滴をぬぐう程度にするといいでしょう。温泉の有効成分が皮膚から体内に染み込むのには、3時間くらいかかるからです。ただし肌がかぶれやすい人はよく洗い流しましょう。
- 上がった後はゆっくり休む
- 温泉からあがったら、体調が安定するまで30分くらいは休憩しましょう。汗が出て、体内の水分が減っているので、ぬるま湯や質の高い水などで十分に水分補給をします。またせっかく温まった体が湯冷めしないように、気をつけましょう。
- なお温泉は、持病によっては入らないほうがいい場合があります。関節リウマチの病状の進行期、風邪などのあらゆる急性疾患(熱のあるとき)、ガン、白血病、肉腫、急性伝染病、高血圧、動脈硬化の重症なもの、糖尿病の重症なもの、心臓病、腎臓病の重症なもの、発病後間もない脳卒中、胃・十二指腸潰瘍、大血管の動脈痛などにかかっている人は要注意です。ただし医師の指導によるガン患者の湯治などの場合は、これに限りません。
- また1日に入る回数は3三回を目安にして、何度も繰り返し入ることは避けましょう。また当然のことではありますが、食事や飲酒後すぐの入浴も、胃腸や心臓に負担をかけるのでやめましょう。
昔から伝わるコリと痛みの特効薬ショウガ湿布
医薬品が今ほど手軽に手に入らなかった時代は、野菜や野草などを薬の代用として使うことがよくありました。中でも生姜は、漢方では欠かせない素材として、古くから重宝されてきました。そんな民間療法のひとつで、肩こりをはじめあらゆる痛みに効く「生姜湿布」のやり方を紹介しましょう。
- 用意するもの
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- 生姜(300~500グラム)
- 水(4~7リットル)
- 大鍋
- おろし金
- ボウル
- 木綿袋
- 温度計
- バスタオルか毛布
- 手順
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- 生姜を洗って、皮ごとすりおろす。量が多いので、フードプロセッサーなどを使うと便利
- 数回に分けて手早く、すりおろした生姜を木綿袋に入れて口を閉じる。
- 大鍋に水を入れて80度くらいに沸かす。
- お湯の中に生姜の汁を絞り出す。お湯は沸騰しないように火加減に気をつける。
- 厚手のタオルか手ぬぐいを2本、両端をぬらさないように湯につけ、まず1本を絞り、やけどしない程度の熟さになっているかを確認しながら、首、肩、背中、腰部などの痛みのある箇所に湿布する。
- 最初に貼ったタオルの上に、もう1枚の熱いタオルを重ね、その上をバスタオル、毛布などで覆い、冷めないようにする。
- 最初に貼ったタオルが冷めたら、抜き取って、上に重ねたタオルを肌に当て、新たに熱して絞ったタオルをその上に重ねておくようにして、何度かこれを繰り返す。
- 15分くらい、患部が赤くなるくらいまで続ける。
この「生姜湿布」を行うと、終わった後も長い時間、患部が温まっているのがわかります。生姜の独特の辛味成分は、ジンゲロールという物質で、これには新陳代謝を活発にし、発汗作用を促す効能があります。また血管を拡張する作用もあるため、血行がどんどんよくなります。そのため体のあらゆる痛み(肩こり、腰痛など) の改善にすぐれた効果を発揮してくれます。
ほかにも腫瘍を小さくしたり、皮膚を殺菌する効果(特に水虫にいい)、気管支ぜん息の発作にもよいといわれています。頑固な肩こりなどに悩んでいる人は、ぜひ一度ショウガ湿布を試してみてください。このように、薬品を使わなくてもつらい症状を緩和できる方法は、いろいろあるのです。