コンピューターは安定を求めるが、脳は変化を求める

記憶に関して限定すると、脳とコンピューターはどちらのほうがすぐれているのでしょぅか。スピードや量の点ではコンピューターに分があるように思えます。

では、ある文章を繰り返し読んで覚えようとした場合はどうでしょうか。コンピューターには入力した通りに記憶されますし、ハードディスクに覚えさせておけば、決して消えることはありません。

一方、人間の脳では、100文字くらいの文章だと初めのうちはなかなか覚えられませんし、覚えたことを思い出すのにも時間がかかります。
しかし、脳の場合、繰り返すうちに、次第に思い出すスピードが上がってきますす。また、その記憶も正確になっていきます。つまり、使うほどにその性能をあげていくのです。

コンピューターにはこの能力がありません。いくらやっても速度は同じで、性能は決してよくならないのです。

ここが、脳とコンピューターの大きな違いです。コンピューターは「学習」しません。コンピューターにも「学習能力」という表現を使うことがありますが、これは言葉のあやであって、もともと組み込まれたプログラムが働いているにすぎません。

ですから、思考の過程はずっと同じままです。使えば使うほど情報処理のスピードが速くなるということは決してないのです。

このことは、単純な作業ではあまり大きな差になってきませんが、思考過程が複雑になればなるほど、その違いがはっきりと表れてきます。

情報が入ってくるたびに脳神経細胞どうしのネットワークを変化させ、もっとも効率よく働けるように環境を整えていきます。たとえば、テレビゲームは、最初のうちはルールがよくわからないこともあり、なかなかうまくいきません。ところが、何度もやっていくうちに無駄な動きや失敗が少なくなり、高得点をあげられるようになります。

こうした脳の性質をコンピューターにたとえれば、常に自分の中にあるプログラムを書き換えているようなものです。脳はこのように、もっとも効率のいい思考過程をつくり続ける努力を常に怠らないゆえに、複雑な判断能力や、総合的な見方を身につけられたといえます。