最近、わかってきた太る理由と太りやすい体質

遺伝子と深く関連する肥満

同じように食べたり動いたりしていても、太りやすい人もいれば、太りにくい人もいます。実際、生まれつき太りやすい人は、残念ですが存在します。
このことに関して、近ごろわかってきたのが肥満の原因となっている遺伝子の存在です。もちろん、肥満の要因として、遺伝のほか、食事や運動などの「環境因子」が重要であることは間違いありませんが、今まで、「体質」というひとことで片づけられていた問題に、生まれついての遺伝子が関与していることが、研究が進んだ結果わかってきたのです。

β3アドレナリン受容体というセンサー

肥満に関連する遺伝子は、実はその数70以上も推測されています。その中でもっとも知られているのが、1994年に報告された肥満関連遺伝子によってつくられる(レプチン)です。
そして、この他に肥満の重要な要因としては、細胞の表面にある(β3アドレナリン受容体)というセンサーの異常が研究者から指摘されています。このβ3アドレナリン受容体は、「カテコールアミン」「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」などもともと体内で生産されるホルモンです。ならば、これを薬としてダイエットにこれを投与すればよさそうなものですが、困ったことに飲んだ人の脈拍を増加させ、血圧や血糖値を上昇させるなど、多くの全身的作用があるため、ダイエットのための薬剤として用いるには、副作用のほうが強くて利用には問題があります。
ホルモンやその(前駆物質)(ホルモンになる前の物質)により刺激を受けて、脂肪細胞の組織中に保存されている中性脂肪を分解、エネルギーの発生である「熟産生」を引き起こすものとして注目されています。
ここでいう熟産生= エネルギー消費なので、この部分に異常があると、基礎代謝が低下し、太りやすい体質となります。この受容体の多くは、使用する脂肪の貯蔵庫である脂肪細胞の表面上にあります。異常があると、エネルギー消費の調節が上手くいかず、肥満が引き起こされるわけです。おまけに日本人では、この受容体の遺伝子に異常があるという人が3人に1人いるといわれています。もし異常があった場合、遺伝子異常がない人と比べると、基礎代謝による消費エネルギーが1日あたり2000kcalほど少ないそうなのです。
2000kcalが多いか少ないかというと、確かにご飯に換算するとお茶碗1杯程度です。缶ビール1本にも満たない量です。毎日食べて消費するエネルギーの収支バランスを考えると、この差は意外と大きいものと言えます。
当然のことですが、食べる食べないに関わらず、このβ3遺伝子に異常のある人は、365日、毎日ご飯1杯ずつ摂取カロリーが多いことと同じです。それを考えると、ちょっと恐ろしい結果をまねきます。7300kcalがカラダに余分に入るのですから、体脂肪換算で約10キロです。
自分がそうであるのかないのか、知りたい気もしますし、知るのもコワイ気がします。

倹約遺伝子

肥満に関係する遺伝子には、「その遺伝子が異常だと太りやすいもの」、また「その遺伝子があるだけで太りやすいもの」があります。先ほどの肥満ホルモン、レプチンの生成やβ3アドレナリン受容体のコントロールは、それに関連する遺伝子が異常の場合、肥満を引き起こすという方でした。

一方、脂肪は生きるためには、不必要な栄養素というわけではありません。それどころかエネルギーの収支バランスのところでも述べたように、食事でとるエネルギーのうちその効率の面では最高です。同じ重量ならもっとも効率良くエネルギーを生み出すのです。
だからこそ、人間はこの高効率の栄養素を最率先して吸収し、蓄積しようとするのです。この脂質を積極的に蓄えようとするためのシステムが、たとえばグリセミックスインデックス(Gi)値に密接に関係するインスリンであり、摂食を促すホルモン(ニューロペプタイドY)で、これらが正常に働かないと、極端な脂質不足になって、昔の食生活なら生命を落とすことになるかもしれません。
ところが、現代日本では食生活も向上し、よほどのことがないと餓死するような状況は皆無です。無用とは言いませんが、この体脂肪をため込むシステムの重要性は、今のところ極端に低くなっています。環境はこのように変わったのに、脂質を食事でたくさんとるとそのシステムは正常に作動します。
するとどうしても肥満しやすくなるわけです。つまり、このシステムをコントロールする遺伝子が昔は飢餓を防ぐ防波堤になっていたのですが、今では肥満を引き起こしやすい遺伝子になってしまったわけです。これが最初に述べた、もう一方の「その遺伝子があるだけで太りやすいもの」ということです。後者のように、なるべくエネルギーを使わないで、エネルギーの素をため込もうとする遺伝子を「エネルギー倹約遺伝子」ではないか、と仮説を立てました。実際にそういう遺伝子が今現在「コレに違いない」と決定されているわけではありませんが、脂質をためるカラダの代謝システムを円滑に動かすホルモンをつくってコントロールしている遺伝子がおそらくそれなのだろうといわれています。
また、単一のものではなく、レプチンやレプチンの受容体、β3アドレナリン受容体などの異常が、結果的に倹約遺伝子の役割を発揮するとも考えられています。