高血圧は血管壁に庄をかけ、動脈硬化を引き起こしますが、しかし、高血圧症には自覚症状らしいものはほとんどありません。何度も言いますが、にサイレントキラー(沈黙の殺し屋)です。「殺し屋」とは穏やかではありませんが、医師たちが大げさに言っているのではなく、高血圧腎臓症は現実に、脳、心臓、腎臓という人間の体の中でも中心的な働きをしている臓器に、重大な合併症を引き起こすのです。
ほかにもいろいろある高血圧症の合併症のうちでも、この3つの臓器に関係するものは最も深刻で、とりわけ注意が必要です。
何もこれは、大げさに言ってるのでなく、命に関わる病気ですから真剣に考えなくてはなりません。
いずれの合併症も、動脈硬化が共通の直接原因にとなります。脳にとって最も深刻な疾患といえる脳卒中や、脳内出血・くも膜下出血・脳梗塞の3つがあります。いずれも脳の動脈硬化が主な原因です。脳出血は、高血圧が脳の動脈壁に強い庄をかけることで、脳動脈がついに耐えられなくなって破裂し、脳内に出血することで生じます。に脳動脈瘤によるくも膜下出血もあります。脳梗塞は脳の動脈が詰まってしまうことで発症します。
心臓病と高血圧の関連は周知のとおりです。もちろん、心臓病はその他の要因、とくに喫煙習慣、脂質異常症(高LDLコレステロール血症:悪玉コレステロールが高い)、糖尿病なども関与します。
これらの要因が複数あれば、それだけ心臓病のリスクも高くなります。心臓病にはさまざまな種類があります。代表的な病気をあげてみましょう。突然、発症するものには、動脈硬化部分に傷がつき、血の塊が冠動脈を閉塞する「急性冠症候群(不安狭心症、急性心筋梗塞)」があります。急性心不全などへと悪化するケースもあります。
また、心筋の酸欠によって不整脈が誘発され、突然死を招くこともあります。慢性的な病気には、走る、重いものを持ち上げる、坂を上るなど心臓に負担がかかり、心筋の酸欠によって起こる、息切れ、脱力感、足のむくみなどの「慢性心不全」などがあります。心筋虚血に伴う僧帽弁逆流などが慢性心不全の原因になることもあります。心臓の弁がが逆流することで心不全へと進行するタイプです。
最近の循環器領域の話題のひとつは、慢性腎疾患です。検尿をして尿たんばくが陽性、血液検査をして腎機能の指標としてのクレアチニン値が正常域から逸脱している人は、単に腎臓の働きが落ちているだけではないのです。このような障害は、循環器系全体に悪影響を及ぼし、血圧を上昇させるなど循環器系の病気を悪化させることが明らかにされています。もちろん、高血圧症は腎硬化症と密接な関連を排出する糸球体と呼ばれる腎臓のフィルター機能が障害されるのです。
機能の低下した腎臓は縮小して硬くなっていることから、腎硬化症と呼ばれます。その末期の病状が、慢性腎不全です。慢性腎不全になると、人工的なろ過装置を使う透析治療が必要になります。
このような命にかかわる合併症を引き起こさないためには、高血圧症を早期に見つけ、上手にコントロールしていくことが大切です。血圧は年齢とともに高くなります。血管も年齢とともに古くなってきます。
生物はエネルギー代謝をしています。細胞や組織の酸化燃焼は不可欠で、どんなに健康な人でも、20歳のころから少しずつ動脈硬化がみられるようになります。加齢による老化現象のひとつでもあるのです。
もし高血圧症になつてしまうと、「高血圧と動脈硬化の悪循環」に陥り、動脈硬化は急速に進みます。比較的若い年代であっても、血流の障害、血管の閉塞、場合によっては血管の破裂を起こします。そのような重大な病気を防止するためにも、高血圧と動脈硬化の悪循環を断つことが必要なのです。