普段、人の血圧は、必要に応じて絶えず変動しています。。人類発祥の昔から人は常に「戦うか、逃げるか?」の2者択一の厳しい環境の中で生き延びてきました。このような必死の場面では、最大の力を発揮しなければなりません。脳や運動筋にエネルギーを十分供給するために、血圧は著しく高くなります。現代人でも仕事などのストレスにより一時的な血圧の上昇は起こります。集中力が高まっている時には、必然的に血圧はあがるのです。
実は、血圧は基準範囲内でも、血管壁に相当に強い庄を加えています。たとえば、基準血圧の130mmHgという数値は、1平方cmぁたりの水銀を130 mm(1cm)押し上げる力(庄)を意味します。
これは比重が血液に近い水に換算すると、約1700mm(170cm)もの高い値になります。時代劇で、斬られた侍の血が噴水のようにほとばしるのは医学的にも正しいのです。そして、その「惨劇」を演出する影の主役は、緊張に伴う高い血圧だったというわけです。
ということは、血液が流れることで、通常でも血管内には相当に強い庄がかかっていることになります。
この庄が高ければ高いほど、血管壁に大きな負担をかけます。これが長期にわたれば、血管内膜に損傷を与え、動脈硬化が進んでしまうのです。動脈硬化が進むと、血管の弾力が失われます。同じ血流でも血圧は上がり、動脈硬化はいっそう進むという悪循環に陥ってしまいます。
問題点は、動脈硬化がすすんでもほとんど自覚症状がないことにあります。
高血圧症にはふたつの種類があります。ひとつは「一次性高血圧症」と呼ばれるもので、血圧を上昇させる単独の病因がなく、遺伝や環境、生活習慣などで起こるものです。
もうひとつは、「二次性高血圧症」と呼ばれるもので、続発性高血圧症ともいわれています。何らかの単一の病気が原因になって起こるものです。割合をみると、圧倒的に一次性高血圧症が多く、高血圧症とされる人の97~98%を占めます。一般に高血圧といわれている病状は、一次性高血圧症を指すものと考えてよいでしょう。