うつ病 怠けていると勘違いされている うつ病は心だけでなく、 体全体の病気であるうつ病は心だけでなく、 体全体の病気である なまけているように見える場合もあり正しい知識を もつことが大切です。
うつ病というと、心の変調ばかりに目がいきがちですが、その症状のあらわれ方は実にさまざまです。まず、うつ病の症状の全体像もとても重要です。
うつ病 怠けている と勘違いされている
最近、どうも調子が出ない。何をやろうとしてもおっくうで、「よし、やろう」という気力が出ない。気分が落ち込んで、いやなことばか暑えてしまう。もしかすると、うつ病かもしれない、うつ病は、テレビや雑誌、新聞、書籍、さらにはインターネットなど、さまざまなメディアでとり上げられるようになって、かなりよく知られた病気になっています。
それだけに、ちょっと心の調子が悪いと、もしかすると自分はうつ病かもしれないと考える人がふえてもおかしくはありません。最近、うつ病について語られるとき、たびたび使われるのが「うつ病は心のカゼ」とい、言葉です。
その意味は、うつ病はカゼのように、だれもがかかる可能性のある、ごくありふれた病気だということです。つまり、うつ病は特別な病気というわけではなく、カゼのようにごく身近な病気であるとともに、多くの人がかかる病気であるということを言おうとしているわけです。
ところが、「カゼ」という言葉から、まるで別の意味に解釈してしまう人がいます。「カゼぐらいだったら、たいした病気ではないのだ」と軽く考えてしまうのですが、それはまちがいです。たしかにカゼであれば、市販の薬を飲めば治ることもありますが、だからといつて、カゼをばかにしてはいけません。
「カゼは万病のもと」といわれるように、軽くみてはいけないのです。まして、うつ病はけっして放置しておいてよい病気ではありません。うつ病を軽くみて、治療をおろそかにしていると、さらに重症化したり、ときには自殺に至る、非常にこわい病気であることをまず知っておく必要があります。
うつ病は心だけでなく、 体全体の病気である なまけているように見える場合も…正しい知識を 心と体に症状があらわれる
うつ病の症状は精神面ばかりでなく、体の面でもさまざまなあらわれ方をします。つまり、うつ病は心と体、つまり体全体の病気なのです。やっかいなことに、精神面の症状は、目には見えないこともあり、なかなかわかりにくいところがあります。
まわりの人はもちろんのこと、軽い場合などでは自分自身でもうつ病と気づかないこともあります。まず、うつ病の症状の特徴をざっとみてみます。
典型的な症状としてよくいわれるのが、気分の落ち込み、疲労、食欲不振などです。
気分としては、
- 憂うつ
- 気分が晴れない
- 気分がふさぐ
- 悲しい
- ツライ
- 苦しい
などという感じが、長く続きます。こうした気分に、不安が重なったり、眠れなかったり、また性欲がなくなったりもします。体調としては、
- だるい
- 下痢
- 食欲がない
- 頭痛
- 肩こり
などがみられます。これだけみても、うつ病の症状は実にさまざまであることがわかると思います。しかも、これらの症状は日常の中でだれもが経験することばかりです。それだけに本人はもとより、家族などまわりの人たちもうつ病と疑わずについ見過ごしてしまう場合もあります。
生活のリズムに変調をきたす
日常生活のリズムの中で基本となるのは、睡眠と食事です。うつ病になると、これら基本的な生活にも大きな影響を与えます。うつ病の症状として、最も大きな特徴にといわれるのが、いわゆる「日内変動」です。
うつ病の人の気分は、1日中同じ状態というわけではありません。一般的には、朝方に気分がとても悪く、夕方から夜にかけて調子がよくなっていくという傾向がみられます。これを日内変動といいます。
このことから、うつ病の診断でも、この日内変動があるかどうかがひとつの目安となります。朝の落ち込み方が激しいため、寝床からなかなか出られず、洗面や歯磨きはもとより、新聞を読んだり、テレビを見ることすらおっくうになります。気力や意欲もあまりありませんので、学校や会社に行くことができないこともあります。それが夕方から夜になるにつれて、少しずつ改善されていきます。
症状のもうひとつの大きな特徴として、「不眠」があります。不眠にはさまざまなタイプがありますが、うつ病では「早朝覚醒」といって、かなり早い時間に目が覚めてしまいます。早朝といっても、深夜に近い午前3時とか4時に日が覚めます。
熟睡したために、そんな時間に目が覚めてしまうことはよくありますが、うつ病の人はよく眠れていないにもかかわらず、早く目が覚めてしまうのです。しかも、再度、眠ろうとしてもできません。目が覚めたとたんに、頭の中に次から次へといやなことや悪いことばかりが浮かんできてしまうためです。いやな考えがどんどんふくらんでいって、さらに落ち込んでいきます。そのため、ふとんの中で悶々とすることになります。
こうしたことから、うつ病の人の朝の気分は最悪となってしまうのです。食欲がなくなり、その結果、体重も減っていきます。それとともに、うつ病では消化器系、循環器系、呼吸器系、泌尿器系など、体のいたるところに不調が出てきます。
周囲からはなまけているように見えてしまう
うつ病の人は、このように心と体にさまざまな症状が出ます。しかも、その多くはうつ病ではない人でも日常生活の中でよく経験することです。このため、まわりの人たちは自分の経験をもとにして、うつ病の人をみてしまいがちです。うつ病の人の症状は、一見さぼっていたり、なまけているようにみえます。
家族でさえ、「ぐずぐずしないで」と文句のひとつも言いたくなるほどです。たとえば、「よくため息をつく」「ごろごろ寝てばかりいる」「やらなければいけないことを、少しもやらない」「仕事や勉強をなまけている」というようにみえてしまうのです。しかし、家族やまわりの人がまずいちばんに注意しなければいけないのは、うつ病の人の様子をみて、なまけていると誤解してはいけないということです。このような誤解は、うつ病の症状をよく知らないために起こってしまうものです。