肝臓がん 肝硬変 から がん への変化 によるものが多いのが特徴です。肝臓がんの基礎知識~なりやすい体質までを紹介します。また、お酒の飲み過ぎにも注意しなければいけません。
肝臓がんの基礎知識
肝臓がんはどの部位に発症するのか
肝臓は消化に役立つ胆汁を作ったり、小腸から吸収した栄養分を蓄えて全身に供給したり、毒物を分解したりするなど、500以上の機能を持つ重要な臓器です。腹部にある臓器の中で最も大きく、大人で重さは1.1〜1.2キログラムにもなります。
ここに発生するがんが「肝臓がん」で、以下の2種類に分類されます:
原発性肝臓がん(肝臓そのものに発生)
転移性肝臓がん(他の臓器から転移)
肝臓がんでは、転移性のもののほうが原発性より3倍も多く見られます。肝臓は他の臓器からの血液が集中しやすく、がん細胞も流れ込みやすいためです。また、栄養豊富でがんが育ちやすい環境でもあります。
原発性肝がんのうち、90%が肝細胞がん(肝臓の細胞に発生)であり、残りの10%が肝内胆管がん(胆汁の通り道に発生)です。
どんな人に起こりやすいのか
肝臓がんによる死亡は男性が女性の約3倍に達しており、がんによる死亡原因の中でも3位に位置しています。
肝臓がんは、いきなり発生することはほとんどなく、多くが 肝炎や肝硬変などの肝障害の進行の末に発症します。
特にリスクが高いのは以下の人たちです:
B型肝炎ウイルスに感染している人(肝臓がん患者の30%)
肝炎や肝硬変をすでに発症している人(肝硬変患者の約1/3ががんを併発)
過剰な飲酒習慣がある人
1日の飲酒量の目安は、ウイスキーのダブル水割り2杯、日本酒2合、ビール大瓶2本程度までとされています。
肝臓がんの自覚症状
初期症状は肝炎や肝硬変と共通することが多く、以下のような症状が現れます:
食欲不振
倦怠感
体重減少
上腹部の重苦しさ
微熱や鈍痛(胆管がんでは発熱・痛みは少ない)
進行すると:
黄疸
腹水
上腹部のしこり
さらに、門脈へがんが浸潤した場合、食道静脈瘤破裂による吐血が発生することもあります。これは肝臓が原因ですが、出血は食道から起こる危険な状態で、命に関わることもあります。
肝臓がんの診断
血液検査では主に以下の項目を測定します:
GOT(AST)
GPT(ALT)
これらは肝臓由来の酵素ですが、異常があっても肝炎・肝硬変・がんの区別はつきません。特に初期の小さながんでは異常が出ないこともあります。
肝臓がんでは「AFP(アルファフェトプロテイン)」という胎児性タンパクが血中に現れるため、腫瘍マーカーとして用いられます。
確定診断には以下の画像検査が用いられます:
超音波検査(エコー)
CTスキャン
血管造影(造影剤を用いたX線)
特に直径10mm以下のがんには血管造影が有効であり、治療の方針決定にも役立ちます。
肝臓がんはここまで治る
以前は「半年の命」と言われていましたが、現在は治療技術の進歩により延命期間が改善されています。
ただし、予後は依然として厳しく:
肝硬変を伴う人の5年生存率:約2%
肝硬変のない人でも5年生存率:約17%
肝細胞がんには主に3タイプがあります:
大きな塊を1個作るタイプ
小さな結節を多数作るタイプ
肝全体に広がるタイプ(最も治療が難しい)
肝臓は血管が豊富なため、血管を通じて肺などに転移することもあります。
ただし、肝臓は再生能力に優れており、1割でも機能すれば生きていけると言われる臓器です。このため、切除手術も有効です。
現在は手術だけでなく、カテーテルを用いた抗がん剤注入や、ラジオ波焼灼術(RFA)なども活用されており、治療の選択肢は広がっています。