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胃・十二指腸ガン「食生活・食習慣が重要」

胃がんの基礎知識

  1. 胃壁は塩酸とペプシンからなる消化液( 胃液)にさらされているが、ストレスなどにあうと胃壁が胃液に侵され潰瘍をおこす。その連続が、がんにつながっているといわれる。
  2. 胃には食べたすべての食品が必ず滞留する。そのため、胃がんの発生が食生活と深い関係にあることは間違いない。
  3. 発がん性をもつ食品のみならず、胃のなかで化学反応をおこし発がん物質が作られてしまっているケースもある。
  4. 塩からいものや炭水化物の摂り過ぎは胃がんを増やし、契煙も胃がんの発生率を高める。
  5. 胃がんで死亡する人は減少傾向にあるものの年間約5万人以上でトップ。がん死者の4分の1は胃がんである。なかでも若い人の胃がんは治りにくい。
  6. 胃がん特有の症状はないが、定期検診によって直径5ミリ以下のがんも発見できるようになっており、そういう早期がんは、ほぼ100%治る。
  7. 胃がんの治療は、なによりも手術である。患部をできるだけ大きく摘出するが、それは周囲浸潤が取り残しや転移による再発を絶対にさせないためにおこなわれる
  8. 胃がんの治癒成績は、がんの深さ、広がり、転移の有無などによって大きく異なる。
  9. 一部の早期がんでは内視鏡で覗きながら高周波で切除する新しい手術法が始まっている。

胃がんの場所

胃は、消化管で.はもっとも膨らんだ臓器で、食道のあとに続いている。約1.4リットル、ビールびん2本以上の容量をもっている。
送り込まれた食物は、ここでペプシンという消化酵素と塩酸からなる胃液によってドロドロの粥状に溶かされ、腸から吸収されやすいかたちに変える。これを、消化という。消化中の胃は、ゆっくりとまるで独立した生き物のように蠕動運動をおこなっている。

もっとも、ごはんなどの炭水化物(デンプン質)の消化は唾液に含まれるアミラーゼにカよっておこなわれるので、よく噛まないと唾液が十分に分泌されず消化不良をおこす。

胃がもたれるのは、そのためでもある。消化を、「胃」だけにまかせればいいというものではない。まずよく噛んで食べることが大事である。胃は、アルコールやビタミンB12などわずかなものをのぞいては、栄養素の吸収はしない。
ひたすら溶かす(消化)のみである。胃液は、そのまま手のひらにのせると、皮膚がジクジクと溶けるはど強い消化作用をもっている。

だが不思議なことに、これほど強烈な消化液にみまわれている胃自身は、その胃液で溶かされることがない。胃の内側の粘膜は、常時ベタベタの粘液が分泌され覆われている。胃液に対するバリアが作られ、守られているのである。ただし胃はストレスに弱く、ストレスによってこのバリアが破られやすい。

1965年に胃・十二指腸潰瘍で治療を受けた人は、10万人あたり88だったが、オイルショックがおこった1973年には同149人と増加している。

現在でも、日本人が1一年間に飲む胃薬はおよそ2000億円分以上に達している。胃に悩まされている人は、とても多い。第一次大戦後のドイツはひどいインフレにみまわれたが、やはり胃潰瘍が急増した。その直後、救国の指導者として登場したヒトラーは、「ドイツの胃薬」とすらいわれたほどだった。胃は、社会や個人のストレスを正直に映す鏡なのである。

ストレスを受けると顔が青ざめるが、同じことが胃にもおこっている。ストレスがおこると、胃をとりまく毛細血管が収縮。すると胃壁のバリアである粘液の分泌が途絶え、胃壁の粘膜がむきだしになる。そこに強力な消化作用をもつ胃液が触れると、たちまち粘膜がえぐれてしまう。これが胃潰瘍である。こういう胃潰瘍は知らぬうちにできては治っていることが多いが、この繰り返しが、胃がんの原因のひとつではないかといわれている。

ところで、他の臓器におこったがんが胃に転移することはきわめてまれである。そのため胃のがんの原因は、ほとんどが胃そのものにあると考えてよい。

胃は、食べたあらゆる食物がまず送り込まれる場所である。よって、胃がんは食物との関係がとても深い。胃は、食物に含まれるあらゆる発がん物質が必ず滞留し、触れ続ける場所だからである。
また、単独では発がん性がないはずの食物の成分どうしが胃の中で化学反応をおこし、発がん物質を作ってしまうこともある。
食べた漬物や野菜に含まれる硝酸塩がバクテリアなどの働きで、亜硝酸塩となり、それに魚や肉、ハム、ソーセージなどに含まれる二級アミンと結びつくと「ジメチルニトロアミン」という物質を作る。胃の中でおこる化学反応である。

ジメチルニトロアミンは、強力な発がん物質なのである。胃にがんをおこすおそれがある食物として専門書は必ず、ソテツ、フキ、ワラビなどをあげているが、通常の食べ方でこれらががんの原因になっているとは思えない。ソテツやフキ、ワラビなどを大量に毎日食べている人などいないからだ。胃がんは、こういう特定の食物によって起こるのではなくさまざまな発がん原因が重なって長い時間の後におこるのである。

胃は大きな釣り針型をしているが、食道と接する上部の入口を「噴門」、十二指腸と接する下部の出口を「幽門」という。中央の広がった部分は「胃体」、左にせりあがった部分は「胃底」、胃小弯の下 のほうを「胃角」とも呼ぶ。
これらの中でがんがおこりやすい部位は、「胃角」や「幽門前庭部」に集中している。もっとも若い人の胃がんは、「胃体」や大雪にもおこりやすい。また、がんがおこった部位によってがん細胞のリンパ節への転ひんど移の頻度などに差があり、どこにできたかによって治り方がある程度、予測できる。

どういう人に起こりやすいか

今から30年ほど前に胃がんで死亡した日本人は5万人弱でガン死亡者全体の23.3%だった。胃がんは減っているといわれるが、がん死者の約4分の1が胃がんで、日本人にとってもっとも危険ながんであることに変りはない。

男女別死亡者数では、男性が約63パーセントを占める。胃がんになる人の数は当然ながら死亡者数よりはるかに大きく、年間7万人と推計されている。この発病数の男女比も、死亡数とほとんど同じで、胃がんは男性に多いがんである。年齢別では、20歳代以下は約2%だが、40歳代になると約15%、、60歳代は30~40%を占めるようになる。

胃がんが中高年のがんである理由は、それだけ長く発がん因子にさらされてきたということに理由があると考えられる。60歳代がもっとも多く、胃がんは老年病であるともいわれるが、欧米と比べて日本は若い世代の胃がんがかなり多いのだということも忘れてはならない。

若年層の胃がんは進行が早く、発見されたときには手遅れになっていることが多いので気をつけなければならない。若年層の胃がんは家系的な関連があるという考え方があり、そういう人は胃のぐあいがおかしいというときには早めに検査を受けることである。
自宅で検査できるものも最近はあるので忙しい人などはやっておくといい。
自分でできる胃がん検査はこちら。
胃がんの原因のかなりの部分が生活環境にあることは、間違いない。これは、ハワイに移住した日本人が、日本在住の日本人と比べるとはるかに胃がんの発生率が低いことからも明らかである。また日本国内では日本海側の東北、北陸地方に多い傾向がある。こういう事実から、胃がんは環境、とくに食生活に深いかかわりをもっているとされる。

ハワイの日本人では、アメリカ人同様、胃がんよりも大腸がんが多い。日本でも大腸がんが多くなり始めており、食生活の欧米化が胃がんを減らしていることは間違いない。

胃がんは、塩分の多い食事との関係が強い。塩分の多い漬物や塩漬けの魚の多食などが、危険因子になる。ごほんなどの炭水化物を多く摂る人も、胃がんが多い傾向がある。

ごはんを多く食べる人は醤油や塩味の強いものを多く摂る傾向にあるため。米国でもかつては胃がんが多かったが、冷蔵庫の普及とともに減少したという事実がある。冷蔵庫が普及する前は食品の保存に塩が多用されたため塩分の摂豊が多かったが、冷蔵庫の普及は塩分の摂取量を減少させ、また発がん性をもつかびの摂取もなくなったためである。
塩分の過剰摂取はガンのリスクを高める

緑黄色野菜や乳製品の摂取が多いと、胃がんは減る。日本の胃がんが減少傾向にあるのは、漬物でごほんをかきこむような日本型食生活がすたれているためだろう。
熱い食事も胃がんの原因になる。そのたびにひきあいに出されるのが奈良地方の「茶がゆ」だが、こういうものを毎日摂る時代も終りつつある。

紙巻きタバコの喫煙も胃がんの危険因子である。吸い込んだタバコの煙は肺に入るのみならず唾液にとけて胃にも送り込まれているためだ。たばこはすぐに禁煙です。

自覚症状

特徴的な胃がんの症状ほなく、他の胃の異常と似ているために見過ごしやすい。多くみられるのは、みぞおちのあたりの痛みや重苦しさである。腹部が張るようなも感じもる。

これといって原因が思い当たらないのに、やせてくることもある。吐き気や食欲減退もおこりやすい。もっともこれらの症状ほ、胃炎などでもおこる。吐血や下血をみることもあるが、それは胃潰瘍や十二指腸潰瘍でもおこるので、それだけで胃がんと判断はできない。

がんがおこった部位によって異なった症状がおこることもある。胃が食道と接するあたりの噴門部がんでは食物を飲み込むときにひっかかる感じが出たり、みぞおちが詰まる感じがする。
この噴門がんでは、みぞおちの重苦しさや吐きもどすことがおこりやすくなる。

んが進行しやや大きな塊をつくるようになると腹部の上から触れるようになる。また、腹水がたまって腹が膨れることもある。こういう症状が出たときほもう手遅れであることが多い。

胃がんは早期に発見さえすれば100%近く治るまでになっている。そのためには、症状が出ないうちに検診によって見つけることである。

診断方法

胃がんのかたちは、「早期胃がん」と「進行胃がん」、それぞれ次のように分類されている。
「早期胃がん」は隆起が目立つⅠ型、粘膜表面に平坦にガンがⅡ型(Ⅱa、Ⅱb、Ⅱcの3種類に分類)、陥凹している3型に分けられる。日本人にはⅡ型が多い。

「進行胃がん」は、ボールマンの四分類が一般的。Ⅰ型はポリープのようにもり上がっている。
Ⅱ型は胃潰瘍のようにえぐれている。
Ⅲ型は一部潰瘍化しているが粘膜下にがんがかなり広がっている。
Ⅳ型は潰瘍化していないが粘膜内に相当広範囲にがんが広がっている状態である。Ⅰ、Ⅱ型は比較的高齢者に多くタチのよいがんで(分化型)治りやすいが、Ⅲ、Ⅳ型は若い人に多く治りにくい。これは、がんがどんどん周囲の胃壁に広がっていくタイプ(未分化型)で、がんが小さくても腹膜の広範囲への飛び火(腹膜播種) をおこしやすいことなどによる。

なお、早期胃がんをボールマン分類の0型とし、早期胃がんに似た進行がんをⅤ型とすることもある。また、ボールマン分類のⅣ型と似たがんにスキルス(硬性がん)があるが、Ⅳ型が胃の粘膜内に広範囲にがんがちらばっているのと同時に、スキルスは粘膜内で硬い塊をつくっていることが多い。これも治りにくいがんとなる。

胃がんの診断は、まずⅩ線撮影によってどの種類のがんがどこにあるかが突きとめられる。Ⅹ線診断では、空腹時にⅩ線が透過しない造影剤(硫酸バリウムなど)を飲んでⅩ線撮影をし、胃の変形を見る(充盈像)。
専門医ほ、わずかな胃のかたちの変化からもがんを見つけ、種類や広がりをみきわめる。もっとも胃の内側にはひだが多く、ひだに隠れている小さながんはⅩ線写真に写らないことがある。

その問題を解決したのが「Ⅹ線二重造影法」という日本人が開発した消化器のⅩ線撮影法である。これほまず造影剤とともに胃に空気を送り込み、風船のように膨らませ、胃のひだをのばして小さな病変を見つける。
造影剤と空気の2つの像の境界を見るため「二重造影」の名がついている。この方法によって、米粒ほどの早期胃がんも発見できるようになった。胃のⅩ 線診断は、日本が世界でもっとも高い水準にある。

X線撮影とともに内視鏡検査もおこなわれるが、これも日本ほ世界のトップレベルの技術力をもっている。がんの部位を直接見ることができ、より正確な診断がつけられる。
細いチューブをのどから胃にまでさし入れていく内視鏡検査は、のどなどに局部麻酔をはどこすのでそんなに苦しくほない。もっとも胃がんの種類によっては、Ⅹ線撮影や内視鏡検査でほがんなのか潰瘍なのか、どのタイプのがんなのかの区別がつけにくいことがある。
その場合にほ、ファイバースコープを用いて疑いのある部位の組織を2~3か所、ごくわずかつまみとって、その組織を顕微鏡で調べる生検がおこなわれる。

胃がんと診断されて、それがどの程度進行しているかの判別基準にはさまざまな尺度がある。この進行度は、おもにがんの転移の度合によってⅠ~Ⅳ期までに分けられる。腹膜や肝臓、リンパ節などへの転移がなく、がんが胃袋の外側( 凍膜)にまでおよんでいなければⅠ期。リンパ節転移があり、わずかでも凍膜にまでがんが広がっているとⅡ期。リンパ節転移がもう少し広く、がんが凍膜に明らかに出ているとⅢ期。これに腹膜や肝臓への転移が加わっているとⅣ期になる。

治療でここまで治る

袋状の胃は6つの層でできている。一番内側から「粘膜」、「粘膜筋板」、「粘膜下層」、「筋層」。外側は「漿膜下層」と「凍膜」である。

胃がんの治りやすさは、がんがこの胃壁のどこまで広がっているか、胃以外の部位への転移の度合いによって決まる。粘膜までのがんであれはほぼ100セント治り、粘膜下層まででも90パーセントは治る(5年生存率)。

これらは、先の進行度ではⅠ期にあたる。Ⅰ期なら胃がんほ完全に治せるのだから、早期発見、早期治療がきわめて重要なのである。Ⅱ期になるとⅤ年生存率ほ約85パーセント、Ⅲ期では65パーセント、Ⅳ期では28ーセントになる。

治療は、早期がんであれ進行がんであれ、早期切除が原則である。

切除手術は、がんのある部分を中心に胃を大きく摘出する。同時に、がんがおこった部位に連絡しているリンパ節の切除も必ずおこなわれる。
リンパ節への転移は肉眼でほ確認できないので、この効果的な手術のためいがんの統計資料がどうしても必要になる。そうして世界に例のない「がん手術マニュアル取扱い規約」が完成した。リンパ節転移ほ見えないが、見て確認しているのと同じように手術が進められるのである。

放射線療法はあまりおこなわれないが、手術前後にマイトマイシンCや5FUあるいはアドリアマイシソやシスプラチンなどの抗がん剤は用いられる。
さらにBRM(生物学的効果増強剤) が用いられることもある。

胃がんは、早期発見技術の向上ともあいまって手術によって80~90パーセントは治るようになった。この治る早期がんは1950年代は全手術の4パーセントにすぎなかったが、1960年代に17パーセント、70年代に32パーセント、80年代には42パーセントにものばるようになった。これほど早期がんが多くなると、手術をしないでも治るケースも増えている。

症状

胆汁やすい液が流れこんでくる部位、「乳頭部」に発生するものが約90%を占めている。がんができるとその流出口がふさがれて胆汁が胆のうなどにたまり、発熱する。
最初は、原因不明の発熱とされる。さらに進むと黄痘がおこる。すい液の流れがとどこおるとすい臓が炎症をおこし、みぞおちから背中にかけて激痛が走ることがある。
吐き気やお腹の張りといった症状がみられることもある。十二指腸潰瘍ほ珍しくない病気だが、それががんに進むケースはない。したがって、がんがあっても十二指腸潰瘍の主症状である空腹時の腹痛がおこることはない。

診察

バリウムを飲み、Ⅹ線撮影で通過障害がないかどうかを調べる。また、乳頭部にがんの疑いがあるときほ、「十二指腸ファイバースコープ」を使って精密に調べる。このファイバースコープが登場したのは20年以上も前だが、そのおかげで乳頭部のがんの発見が容易になった。
また、がんが発生するとすい液と胆汁の流れが滞りすい管や胆管が拡張するので、超音波で拡張のぐあいを調べる方法もおこなわれる。

ここまで治る

珍しいがんなので、発見は遅れがちになる。十二指腸だけの検診はおこなわれていない。そのためもあって十二指腸がんの治癒率ほ、残念ながら40%程度である。

もっとも大半を占める乳頭部のがんだけでいえば治しやすく、5年生存率は約40%をこえている。

治療は切除手術をおこなう。十二指腸からすい頭部にかけてを切除する手術がもっとも多い。この手術はすい臓がんのときにもおこなわれる。十二指腸とすい頭部を切り取ったくあと、残ったすい臓と小腸の一部である空腸をつなぐ。このとき、すい液がもれないよぅにすい臓を腸で包み込むように重ねてつなぐ。黄痘が出ているときの手術は危険が大きいが、最近ほ黄痘を改善してから手術するので、治療成績は向上した。化学療法や放射線療法がおこなわれることほほとんどない。
すい臓の一部を切り取るので、すい臓の機能が低下し「糖尿病」をおこすおそれがあり、手術後に注意しなくてはならない。再発や転移がおこりやすく、半年から1年以内に肝臓への転移がおこることが多い。

食道ガン「リンパ節転移の触診が治癒を大きく左右する」

食道ガンとは?

  • 男性に圧倒的に多く、女性の4倍にもなる。
  • 大酒飲み、ヘビースモーカーは危険。
  • 熱いものを長年にわたって食べ続けている人もおこる可能性がある。
  • 自覚症状が少ないので発見がむずかしい。
  • 食物がつかえる、しみるといった自覚症状があったら、すぐ検査を受ける。
  • 痛みが出ているようなら、かなり進行している。
  • 進行が早く、転移が多いので治療は簡単ではない。
  • 40歳代を過ぎたら1年に1回、内視鏡の検査を受けるほうがよい。
  • 早期がんなら8割は治る時代になった。
  • 術はリンパ節の郭清も同時におこなうことが多い。

どこの部位にできるか

食物の通り道である食道は、のどから胃にいたる長さ25センチの筒状の器官である。構造は複雑でほないが、消化されていない食物の刺激につねにさらされているので、がんがおこりやすくなっている。

とくに、酒やタバコと食道がんは深い関係がある。発見がむずかしく進行も早いため、治癒率ほまだ低い。自覚症状が出にくいことも、発見を遅らせている。転移しやすいので、発見時にはすでにほかの臓器に転移していることも少なくない。

食道ガンになりやすい人

圧倒的に男性に多い。年間1万人近くがこのがんで亡くなっているが、女性ほそのうち2割以下にすぎず、患者数でも同じ傾向がみられる。

この男女差は、酒とタバコにあると思われる。飲酒率、喫煙率ともに男性が高いからである。アルコール度の高い酒、ニコチンやタールの多いタバコを吸う人ほど、危険は増す。

熱い食物のとりすぎも、このがんの危険因子となる。毎朝茶がゆを食べる習慣をもつ地方この人は食道がんになりやすいことがつきとめられている。
また、喉頭や咽頭、舌など食道と隣接する器官ががんになった人は、食道がんにもなりやすい傾向がある。50~60歳代が発生のピークで、高齢者に多いがんである。

自覚症状

自覚症状が出るのは遅く、発見も遅れがちになる。自覚症状が出たときほ、あるていど進行しているのである。

おもな自覚症状は食物の通過障害で、水分をとるとのどがしみる、のどに違和感がある、今まで抵抗なく飲み込めた食物がなんとなくつかえる、そのつかえがだんだん大きくなる、といった症状があれば食道がんを疑う。さらに進行すると痛みを感じ、なお進めば食物が飲み込めなくなる。飲み込んだものが逆流することさえおこる。

診断

食道がんは胃がんの定期検診で発見されることがよくある。胃のⅩ線検査では、食道も同時に検査するからである。しかし、胃の定期検診で偶然発見される食道がんほ、かなり進行していることが多い。よって、胃がん検診を受けているから食道がんもだいじょうぶだと安心するわけにほいかない。

早期発見には、ファイバースコープ( 内視鏡)検査が重要である。食道を洗浄し「ルゴール液」を塗り、ヨードででんぷん反応を調べる。がんがあるところはでんぷん反応が出ず、黒くならない。この変化を内視鏡で調べる。50歳代をすぎた輿煙老、飲酒者は、この内視鏡検査を1年に1回は受け、早期発見につとめたほうがいいだろう。CT検査も診断に用いられるようになってきた。これは、リンパ節への転移やほかの部位への広がりぐあいを調べるために用いられる。
最近はCTやMRI、超音波内視などの性能が高まったので、かなり精密に転移や浸潤のていどが調べられるようになった。

ここまで治る

食道がんで手術を受けた人の5年生存率は、約10パーセント台です。これは、喉頭、咽頭、胃など隣接器官のがんの生存率に比べても低い。
しかし最近は早期発見の技術が進み、生存率も向上している。浅くて転移のない早期がんなら5年生存率は80パーセント以上になる。
また、理由ほはっきりしないが女性のはうが治療成績がややよい。進行は早く、1ヶ月で急激に大きくなるものもある。
粘膜の表面にできる「表在型のがん」でも、半年で手術不能になるはど成長してしまうものすらある。食道は筋肉層の上を粘膜層がおおっている。その粘膜と筋肉の間にはリンパ管が通っている。
そのため、がんが進行して粘膜の下の層にまで達すると、リンパ節への転移がとても多くなる。したがって、粘膜の下の層に進むまでにがんを切除できれば治療成績はよくなる。切除が最善の治療法である。

以前は手術前に放射線を大量に照射することもあったが、期待したほどの効果がないことがわかり、現在ではおこなわれていない。食道がんの手術ほ、むずかしい。がんそのものの切除ほさほどむずかしくないが、リソかくせいパ節への転移が多いためリンパ節郭清も同時におこなわなけれはならないからである。転移しやすいのは、右側の鎖骨後部(右上縦隔最上リンパ節)、胃の入口(胃噴門リンパ節)、胃の動脈(左胃動脈リンパ節) などのリンパ節で、全体の50パーセント近くがこの3つのどこかに転移する。手術では、これらのリンパ節の郭清がおこなわれる。手術ほ大がかりになってしまう。

食道切除後には、代用の食道を作る。多くの場合切除手術時に、胃で管を作り上に引っ張り上げ、残った食道とつなぐ手術を同時におこなう。
腸の一部を切り取り、食道の代用にすることもある。再発は6ヶ月から1年以内におこることが多い。とくに、くびや縦隔での再発が目立つ。再発がおこったら、放射線や化学療法がおこなわれることが多い。最近ほ再発予防のための集学的治療の効果があがっている。

「子宮ガン」2つのタイプがある

子宮ガンの現状

  1. 子宮がんには、膣に近い部分にできる「子宮頸がん」と、子宮本体にできる「子宮体がん」がある
  2. 子宮頸がんは性交渉の多い人に多く、子宮体がんは性交渉の少ない人に多い。
  3. 子宮頸がんは若い人にも多いが、子宮体がんは60歳代が中心で閉経後発病が多い
  4. 半年に1度、定期検診さえ受けていれば、子宮がんで命を落とすことはほとんどない
  5. 子宮頸がんの治癒率は、0期ではほぼ100%、かなり進んだ場合も含めた全体でも80%を超え、もっとも治りやすいがんのひとつである
  6. 子宮頸がんは、かなり進行した場合でも、放射線による治療がとてもよく効く
  7. 初期症状はすべて出血と関係している。ピンク色のおりものや閉経後の不正出血、性交後の出血があったら要注意
  8. 子宮頸がんは子宮の扁平上皮という腺上皮の部分から、子宮体がんは子宮の内膜という腺上皮の部分に発生する
  9. 子宮体がんは、子宮がん全体の10パーセントを超え、微増
  10. 子宮体がんは、がんが子宮部分に止まっている間に発見できれは、80パーセント以上が治る。

子宮にできるガン

子宮は、妊娠時には大きくふくらむが、ふだんは握りこぶしの2分の1から3分の1程度と、思いのはか小さな器官である。西洋ナシを逆さまにした形に似ていて、上が丸くふくらみ(子宮底部)、下は細くくびれて膣とつながっている。

上部のふくらみの両端には、2つの卵管がつながっており、その下方に卵巣がある。精子は膣から子宮に入り、さらにそこを通過して卵管に上り、卵巣から出て待機している卵子と出あい、受精する。
この受精卵は、精子がたどってきた道を戻るようにして子宮におりて、子宮の内側の壁(子宮壁)に落ち着く(着床)。

この子宮の上部の3分の2をしめるふくらんだ部分を「子宮休部」と呼び、下3分の1の細い部分を「子宮頸部」と呼んでいる。子宮がんには、子宮休部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頸がん」があり、それぞれかなり性質が違う。また、卵巣にできる「卵巣がん」もある。

子宮頸がん

ガンが起こる部位

子宮頸部のがんは、子宮につながる「頸管」と、膣の側に突き出した「子宮膣部」の境い目(移行帯)におこりやすい。

どういう人に多く発症するか

日本での患者数は年間2万人弱ほどと推測されているが、世界的にみて日本での死亡者は少ない。定期検診による早期発見が多く治癒率が高いことが、その理由である。

40~50歳代に多いが、若い人にもみられる。子宮頸がんの発病年齢は今後、さらに低くなるとされる。ただし、若い人では 0期の早期がんが多く、治療成績もきわめてよい。子宮がんはセックスと関係が深い。子宮頸がんでは多くの人とのセックスの経験があったり、早い時期からセックスを始め、しかも頻度が高い人に多く発生している。

既婚者では、妊娠回数の多い人に発生率が高いと言われている。セックスの経験がない、あるいは少ない人、l人の男性としか交渉のない人には少ない。若い世代の子宮頸がんの増加の背景に、性体験の若年化があるともいわれる。ウィルス原因説もあるので、性交渉の経験をもつようになったら定期検診を受けることである。

自覚症症状

出血が発見のきっかけになる。生理以外の出血は、まず怪しいと考える。出血は、鮮血のこともあるし黒ずんでいることもある。おりものに血が混じってピンク色になったり、赤茶色になることも多い。

閉経前後は、生理が不順になるので不正出血を生理と間違えたり、閉経後の出血を生理の再来と勘違いすることがとても多いので、とくに注意する。
年をとった未亡人のがんに進行したものが多く、妊娠中の女性には早期のものが多いのも、出血に対する関心度の違いを示している。

セックス時の出血もある。性交によってがん組織が崩れて出血をおこすのである。おりものの量の増加もある。がんの周囲から浸出液がしみだして、その分、おりものの量が増える。最初は薄い色でも次第に色が漉くなり、悪臭を放つこともある。しかし、ごく早期には全く無症状のままに経過することがほとんどである。0期で発見し治療するためにも、30歳を過ぎたら半年に1回の定期検診を受け続けることが早期発見につながる。

診断

検査はとても簡単に終る。痛みもほとんどない。綿棒を膣内に入れて、子宮膣部あるいは等の細胞をこすりとるだけである。こすりとった細胞を染色したのち顕微鏡で診断する。

この検査と同時に、あるいは疑わしい場合には、コルポスコープ検査をおこなう。これは子宮膣部に薬剤を塗ったのち拡大して、肉眼ではわからない異常をみる立体顕微鏡である。そして、怪しいと思われる部分の組織を米粒の半分ほど採り、組織診をおこなう。

らに精密にがんの進行度を知るためには、麻酔をかけて円錐切除術をおこなう。子宮膣部を円錐形にくりぬくように切除し、組織を端から端まで徹底的に調べ、がんの深さもつかむ。子どもを生みたい女性でごく早期のがんの場合は、この組織の切除をもって診断兼治療にすることもある。

治癒について

正常な細胞ががん細胞に変化し始めた段階の「0期」に発見することができるようになったため、発見さえ早ければ100パーセント治せるようになった。

癌研病院では、この0期で発見される子宮頸がんがすでに50パーセントを超えた。定期検診さえ受けていれは、子宮頸がんは0期で発見できることを忘れないでほしい。

Ⅰ期は、がんがいちばん上の粘膜(上皮)からその下の筋肉層にまで進んだ段階で、Ⅱ期は子宮を支えているワイヤーローにあたる椒帯までがんに侵されている。骨盤まで進むとⅢ期になる。

子宮外の他の臓器にまでがんが飛び火(転移)するとⅣ期である。

治療後、完治とされる5年生存率は、Ⅰ期で93パーセント、Ⅱ期で80パーセント、Ⅲ期でも50パーセントにのぼる。しかし末期のⅣ期では20パーセントになってしまう。

それでも多くのがんのなかでは治療しやすいガンの部類にはいる。専門医は、Ⅰ期までのがんを発見することを目標にしている。

治療は、0期からⅡ期までが手術、Ⅲ期以降は放射線治療が中心である。進行しても放射線が非常によく効くので悲観する必要はない。

手術は、0期からⅠ期のaまでは、子宮だけをとる。(単純性子宮全摘術)。Ⅰa期は、がんが上皮部分から筋層にⅢミリまで進んだ状態である。

卵巣は、卵巣がんの予防のため閉経後の人は子宮とともに摘出するが、閉経前の人は原則として摘出しない。Ⅰb期以降になると、がんが筋層に 入り込み、どこまでがんに侵されているのか、外側からの検査ではわからない。そこで子宮だけでなく、子宮を支えている靭帯や膣の一部さらに骨盤内のリンパ節をすべて摘出する(広汎性子宮全摘術)。

卵巣は、閉経後の人は摘出するが、若い人の場合は残す。全身のホルモンバランスに欠かせない臓器だからである。

骨盤にまでがんが進んだⅢ期以降の手術は難しい。骨盤は、網の目のように血管がはりめぐらされているので出血の危険が高くメスを入れられないため、放射線療法になる。子宮頸がんには、放射線が非常によく効く。

ガンの専門病院でのすべての子宮頸がんの5年生存率は、手術をした症例では94.9パーセントだが、放射線療法でも62パーセントにおよんでいる。
放射線療法のほとんどはがんがかなり進んだ人におこなわれるのだから、放射線療法がいかに効果があるかを物語っている。子宮の摘出後、いちばん気になるのが性生活への影響である。これは、単純性子宮全摘術を受けた人の25パーセントが「性感の減退」を訴えていた。しかし膣は残っているので、肉体的には性生活に支障がおこることはない。

手術で多少膣が短くなるため違和感を感じることもあるが、やがて傷跡もやわらかくなり長さも伸びる。性感減退感は、むしろ子宮を喪失したという意識にあるようだ。
性欲中枢は、子宮ではなくいや大脳にある。女性の心の痛手を癒せるのは夫のいたわりであり、夫婦の心の交流である。心とからだの回復には、夫のあたたかい手助けがいちばんである。それが、女性の性感を回復させ、充実した夫婦生活を取りもどしてくれる。そうやって、多くの方がいきいきとした人生をとり戻されている。

治療後のもう1つの心配は、卵巣を同時に摘出しておこるホルモン失調である。閉経前の女性が卵巣をとった場合、更年期障害のような症状が現れることがある。これには、個人差があり、実際は何の異常も感じない場合のほうが多い。万「更年期障害の症状がおこった場合でも、やがて解消されるので心配はいらない。症状が強い場合は、医師に相談する。

子宮体がん

起きる場所

子宮の内側(内膜)は、月経周期に応じて組織がはがれ落ち、また再生を繰り返している。子宮体がんはこの内膜におこる。とくに子宮の奥、子宮底部という部分に発生率が高い。

このがんは、女性ホルモンとの関係が濃い。月経時に月経血といっしょにはがれ落ち排泄された内膜は、卵巣から分泌されるエストロゲン(ホルモンの一種)の作用によってふたたび増殖し再生される。
子宮体がんは、このエストロゲソが何かの間違いで正常細胞ではなくがん細胞を作るのではと考えられている。

子宮体がんの発生率は、これまで子宮頸がんの9に対して1とといわれ、欧米の7対3に比べると日本ではとても少ないとされていた。

しかし最近は急増しており、子宮がんの20パーセント以上を占めるという報告もある。子宮頸がんのように、集団検診の対象になっていないところが多く、発見も頸がんより難しい。閉経後の高齢者に多いので、40歳を過ぎたら半年に1度はこの検査も受けてほしい。

どういう人に起きるか

子宮頸がんとは反対に、セックス経験の少ない人、出産経験のない人、は不妊症などの人に多い。つまり、性生活が活発で出産経験の多い人は未婚で妊娠経験のない人は「子宮体がん」の危険を抱えるわけで、いずれにしても女性は子宮がんの危険から逃れられない。
年齢的には40歳以→ にはまれで、50~80歳代がピークである。子宮頸がんに比べ、年齢層の高いがんである。

自覚症状

初期の自覚症状はほとんどない。あるていど進むと、頸がんと同じょうに出血と関連した症状が出てくる。ただし閉経後の出血が多いので、注意さえしていれば頸がんの出血より異常に気がつきやすい。

診断

検診は頸がんほど普及していないが、最近はどこの婦人科でも受けられるようになった。

方法は、器具を使ったものと指による内診である。かなり進んだがんの場合、熟練医師なじんたいら、内診だけでがんの大きさや靭帯まで侵されているかどうかも判断できる。

内診と同時に「内膜吸引細胞診」という検査がおこなわれる。細いチューブ状の器具を膣から子宮膣内に入れ、注射器で子宮の内面をおおっている内膜の組織を吸引する。こうして採取したそうは細胞を染色し顕微鏡でみて、がんと疑わしい場合ほさらに内膜を掻爬して組織をとり、さらに詳しく検査する。この他に、Ⅹ線断層撮影(CTスキャナー)やリンパ節転移の有無を調べる診断方法もある。

治療の成果

子宮体がんも治りやすいがんに入る。がんの進み方によって0期からⅣ期までに分類されているが、その分類のしかたは、頸がんとは、多少異なる。0期は、子宮体部に限定されたがんだが、はっきりした定義はまだない。しかしこの段階で発見できれば、100パーセント治せる。
子宮内膣の、長さが8ミリ以下で子宮体部に限局されたがんをa期、8ミリ以上になったものがⅠb期。Ⅲ期は、がんが頸部まで浸潤したもの、Ⅲ期は子宮を支える敬帯まで進んだものである。
Ⅳ期は頸がんと同じで、膀胱や直腸など骨盤内の他の臓器にまでがんが広がったⅣa期と、遠くの臓器まで飛び火(転移)してしまったⅣb 期とにわけている。

Ⅱ期までの5年生存率は80%台だが、Ⅲ期になると、48%と急激に低くなる。しかしより重要なのは、リンパ節への転移の有無になる。リンパ節転移の有無によって、同じⅠ期でも治る率に大きな差が出る。

転移なしならⅠ期の5年生存率は約90%だが、転移があると約10%にまで低下してしまう。リンパ節転移がなけれは、Ⅲ期でもⅤ年生存率は80%以上が望める。

つまり子宮体がんは、Ⅱ期までのリンパ節転移がないうちに発見することが理想である。
治療は、やはり手術になる。ただし、手術範囲は頸がんの場合よりやや広い。つまり、Ⅰ期でも子宮摘出だけでなく卵巣も摘出し、さらに骨盤内のリンパ節の切除がおこなわれる。Ⅱ期~Ⅲ期では、靭帯も含めた「広汎性子宮全摘術」がおこなわれる。卵巣も必ず摘出するのは、体がんの原因とされるホルモンの分泌源を残しておかないためだ。Ⅳ期になると手術だけで完全に治すのは難しいので、放射線療法と抗がん剤の併用治療がおこなわれる。ただし、子宮体がんは頸がんほど放射線の効きはよくない。

がん組織には、「腺がん」と「扁平上皮がん」のⅡ種あり、扁平上皮がんは放射線がとてもよく効くが、腺がんは効きにくい。子宮頸がん90パーセント以上は「扁平上皮がん」なので放射線がよく効くが、子宮体がんは「腺がん」なので効きにくい。子宮体がんの治療成績がⅢ期以降になると急落する理由がここにある。子宮体がんはホルモン依存性の強いがんなので、手術後にはがんの再発を防止するためにホルモン療法もおこなわれる。

卵巣がん

生じる場所

子宮がんに比べると発生率はずっと少ないが、卵巣がんは早期発見が難しく手遅れになることが少なくない。からだの内部にある臓器なので外部から診察器具を挿入することができず、白覚症状もかなり進んでからでないと現れにくいためだ。発生年齢も、10歳代から80歳代のお年寄りまで非常に吾が広く、子宮がんのように検査対象をしばりにくいことも原因のひとつになっている。がんの種類からみても悪性度の高いものから低いものまで10種棟以上もあり、非常にバラエティに富んだ顔をもったがんである。しかし、最近は、超音波やCTスキャナーによる診断もおこなわれるようになり、強力な抗がん剤もできたので治療成凍も少しずつ向上してきている。

自覚症状

初期には自覚症状ははとんどない。出血、腹痛、微熱などの症状が出る場合もあるが、せいぜいおなかに少し肉が付いたかな、腹部が経れた感じがする、という程度のことが多い。

診断

検査は、内診が中心になる。膣と肛門から指を入れて、卵巣の腫れを触れて診察する。これによって卵巣の腫れが認められた場合には、開腹手術をおこない、直接卵巣の組織を採ってがんかどうかをみきわめる。

ここまで治る

治療は、手術と抗がん剤の併用が多い。手術では両側の卵巣の切除、さらに子宮と小腸や大腸の上に広がる大網と呼ばれる網のような膜を取るのが基本である。
場合によっては骨盤内のリンパ節もきれいに取る。卵巣は、腹膜や腸間膜などと接触しているので、完全にがんを叩くために、手術後も引き続き抗がん剤を用いることになる。
妊娠を希望する若い女性に対してほ、卵巣の表面にまだがんが出ていない場合に限り、正常と思われる片側の卵巣だけ残す方法もある。しかし、やほり再発の危険は高くなるので、慎重な検討が必要となる。

残念ながら、治癒蓮はあまりかんばしくない。最近、有効な抗がん剤が使われるようになった。

「肺ガン」高齢者、早期がんに即効のレーザー新療法

肺がんの現状

  1. 肺がんは男女とも胃がんの次に死亡者が多く、近い将来がん死亡数の1位になるかもしれない。
  2. 肺がん死亡者は、男性が女性の3倍程度。
  3. 肺のなかでは、気管支が細かく枝分かれしているが、このうち比較的太い気管支までに発ぶ生したものを肺門部肺がん、肺の末梢にできたものを肺野部肺がんと呼ぶ。
  4. 肺門部肺がんは、せき、たん、血たんが初期症状。
  5. 肺野部肺がんはレントゲン撮影で発見されやすいが、自覚症状はほとんどない。
  6. がんのうち契煙ともっとも関係が深いとみられるのは、扁平上皮ガンと呼ばれる種類のもの。肺門部に多い。
  7. 治せるポイントは、早期発見とがんの種類、発生場所である。
  8. 早期発見されたものでは、治癒率は80%をこえている。
  9. 手術は、がんの部位の肺葉を切除するのがおもな方法である。
  10. がんの種類によっては進行が遅いものがあり、治療後5年を経過しても定期検診を怠らないことが大事。

肺がんについて

肺がんによる死亡者は、すべてのがん死亡者のうち、男性で20%、女性で12%をしめる。その数はここ10年ほど毎年2000人ずつ増加しており、がん死亡の1位を占める。末期まで含めた治癒率は10%にすぎないが、早期であれば80%以上が手術で命をとりとめている。

ガンが起こる部位

肺のなかには空気が出入りする気道が木の枝のように走っている。その気道は、気管→主気管→葉気管支→区域気管支とと、20回ほど枝分かれをし、終点の「肺胞」に達してはいせついる。
肺胞は、血液に酸素を供給し二酸化炭素(炭酸ガス)の排泄をおこなう「ガス交換器」で、約2億もある。比較的太い区域気管支までの間にできるがんを「肺門部肺がん」と呼び、それより末梢にできるがんを「肺野部肺がん」と呼んでいる。

肺がんにかかりやすい人

肺がんの重要な危険因子は、喫煙です。日本では、紙巻タバコの消費量の増加に平行して、肺がん死亡数も急増しています。1日20本の煙草を吸う人は、吸わない人に比べて肺がんになる率は、4.7倍も高い。

当然のことだが、契煙本数が多く、また吸い始めてからの年数が長いほど、肺がんになる危険率は高くなる。しかし、喫煙を中止すると肺がんになる危険度は年ごとに低くなり、総喫煙本数(1日の喫煙本数×契煙日数) が19万本以下の場合、その低下は著しい。

また、同じ肺がんでも、「扁平上皮がん」という種類のものが、契煙と大きく関係していることがわかってきた。禁煙は、肺がん予防の第一歩である。
大気汚染による発生もあるようだし、アスベスト(石綿)やニッケル、クロムなどの工場労働者にも発生率が高いことが知られている。
肺がんは、0歳以上の人に多く、他のがんに比べて「高齢者のがん」といわれる。

男女別では3対1で男性に多いが、これは契煙や生活環棲現などの影響が大きいと考えられており、女性の喫煙が増えているのでこの差は縮まってくるだろう。
禁煙はこちら。

せきとたん、特に血たんには注意しなくてはいけない。もっともこれらの症状は「肺門部肺がん」にかぎられる。がんによって気管支が刺激され、これらの症状が早くから出る。

レントゲンに異常が現れるより早いことが多い。がんが進むと、気管支ががんによって狭くなったり、つまるために、その部位の末梢肺に「閉塞性肺炎」や「無気肺」と呼ぶ異常がおこることがある。
このあたりまでに発見されれば治る率は高い。

「肺門部肺がん」とはちがって、初期にまず自覚症状が出ないのが「肺野部肺がん」である。がんが広がり、肺の外側を包む胸膜をがんが破って初めて胸痛やせきが出るが、ここまで進んでいるとかなり危険だ。もっともこの「肺野部肺がん」は直径1~1.5センチ前後の早期でもレントゲン写真に影をおとすので、定期検診さえ受けていれば早期発見が可能である。

肺がんの診断

肺がんの検査は、胸部レントゲソ撮影と、たんの細胞診が中心である。簡単で苦痛も少ない。CTスキャナーによる検査もおこなわれるが、これで9割は「疑わしきもの」が発見できる。

ただし、がんである「確定」には、気管支に気管支ファイバースコープを入れ、肉眼で観察し、さらに細胞をこすり取って検査をおこなう。肺門部より先の部分に「怪しいもの」がある場合は、細いブラシを肺に挿入して細胞をこすり取る。
以上の検査で、10割近く診断がつく。

肺がんの治癒

がんは正常な細胞が悪玉に変身したもの。そこで、どのような細胞、組織から変身したかによってがんの種類は区別される。また、それにより進行度や悪性度が異なる。肺がんの組織についていえば

  1. 扁平上皮ガン(35%)
  2. 腺ガン(45%)
  3. 小細胞ガン(15%)
  4. 大細胞ガン(5%)t

の4種類。

「肺門部肺がん」に多いのは扁平上皮がんで、これは比較的転移が遅くタチがよい部類に入る。「肺野部肺がん」に多いのは腺がんで、発育は遅いが転移しやすい。
もっとも、治癒率は扁平上皮がんと同じで治しやすい。とりわけ悪性度が高いのが、小細胞がんである。発育が早く、2週間で10%も大きくなることもある。
そのため半年に1度の定期検診では、網にひっかからないことが多い。
肺がんの進行は四期に分けられている。Ⅰ期はがんが肺の中に止まっているもの、Ⅱ期は肺門のリンパ節にまで転移しているもの、Ⅲ期は縦隔リンパ節という場所にまで転移しているもの、あるいは胸膜の外まで広がっているもの、Ⅳ期は遠くの臓器にまで転移してしまったもの。

治療は、手術が原則。手術ができるのは、Ⅰ期とⅡ期、Ⅲ期の一部までだが、小細胞がんの場合は、Ⅲ期までとされている。手術に際して大事なことは、患者さんの呼吸機能になる。
肺はいくつかの「葉」状のものからできているが、右肺は三業、左肺は二葉に分かれている。

手術はがんの含まれる「葉」の単位で切除する。範囲が広い場合は片肺全部を切除することもある。こうなると手術後は肺活量の低下が激しくなるので、もともと肺機能が弱い人やぼかに重い病気を抱えている人は手術ができない。

しかし最近では、がんを切除したあと残った健康な部分の気管支をつなぐ「気管支形成術」という方法もおこなわれるようになり、肺の機能低下を最小限に止められるようになった。

また、新しい試みとして注目されているのが、レーザー治療と温熱療法である。レーザー治療は、高齢者や手術が難しい早期の肺門部肺がんの人におこなわれている。
この治療では、あらかじめへマトポルフィリン誘導体という光に過敏に反応する薬物を注射しておく。この薬物はがん細胞によく取り込まれるので、鼻から挿入した気管支ファイバースコープで患部をのぞきながらアルゴンダイレーザーを照射すると、がんの部分にこの光エネルギーが集中し、酸化作用によってがんが殺せるというものだ。

気管支ががんでふさがりそうになったときに、アルゴンダイレーザーの100倍の出力をもつヤグレーザーで患部を焼き広げることもある。

温熱療法は、がんが熱に弱い性質を利用したもので、局部的加温と全身加温の2つの方法がある。しかし単独では効果が薄く、放射線療法や抗がん剤との併用なら効果があるとされるが、肺がんでの本当の評価はまだこれからである。

放射線療法や抗がん剤は手術できないケースでおこなわれているが、あまりよい成績は上がっていない。ただし小細胞がんについては、ときに抗がん剤がよく効くことがある。

肺がんの5年生存率は残念ながら手術できない人も含めて全体で約15%にすぎない。したがって、根治手術が可能な段階で発見することが大事。

おおざっばにいえば、肺門部肺がんはⅩ線写真にがんそのものの影が写る前、肺野部肺がんは直径1.5センチ以下で肺を包む胸膜に出ていないもの、それに転移がなければ5年生存率は80%以上にのぼる。

少なくとも「Ⅰ期」で手術を受けれは、5年生存率は62%と、半数以上は治る。

乳がん「大きさよりリンパ節」

乳がんの現状

  1. 乳がんは、この20~30年で発生数は3倍、発生率は2倍に増加した。
  2. 閉経後の高齢者の乳がんは、閉経前のがんよりやや生存率が低い。
  3. 自分で発見しやすいがんなので、日ごろから自分の乳房の状態をは把握しておく。
  4. 乳房のしこりは、60歳以上ではがん、25五歳以下では、良性の線維腺腫が多い。更年期前後には、乳腺症や嚢腫が多い。
  5. もっとも発生しやすいのは、乳房の外側上方である。
  6. 治療後の10年生存率は、進行がんも含めて約7割であり、他のがんに比べて治りやすい。
  7. 治療成績は、がんの大きさよりもリンパ節転移のあるなしが問題なので、と悲観する必要はない。
  8. 男性にも少ないながら乳がんがある。
  9. とくに高齢者は、肥満を防止することが乳がんの予防になる。
  10. 乳がんの経験者は、反対側の乳房にもがんが発生することが多いので、定期的な検診を続けること。

乳がんのできる場所

乳房は、乳腺と脂肪、これらを支える支持組織の3つの部分によって構成されている。乳汁を作り分泌するのが乳腺で、乳房には乳腺が乳頭を中心に15~20の葉を放射状に並べたように構成されている。
その間を埋めて乳房のふくらみを作っているのが脂肪組織である。
乳がんは、乳腺にできるがんである。がんがおこる場所を乳房の正面からみると、乳房の外側上方が約5割で、あと、内側の上方、中央(乳頭、乳輪の下)、外側の下方、内側の下方、全体におよぶものの順になっている。

できやすい人

乳がんは、ここ20年ほどの間に急増している。大きさの大小にかかわりなく、転移の早いものもあり、早期発見が治療のきめてである。また、発病のピークは閉経前の40歳代後半が中心だが、最近は閉経後の乳がんが増えている。

乳がんの発生は遺伝的な要素があるといわれており、母親が乳がんだった場合に娘が発病する率は通常の2倍。しかしもっとも関係が深いのは、生活環境である。脂肪(とくに動物性脂肪)の摂取量が多い国ほど、乳がんの発生率は高い。

個人別でも動物性脂肪の摂取量の増加に応じて、乳がんの発生率も増えている。乳がんが独身者や出産経験のない人、子どもの数の少ない人、高齢出産者に多いのは、このがんが女性ホルモンと関係が深いためである。

妊娠・出産・授乳は、長期間にわたって生理(月経)を止め、女性ホルモンの分泌期間を短くすると同時に乳腺細胞を分化させる。その結果、女性ホルモンの影響でおこる乳がんの発生率を下げる。

しかし、現代の女性は初潮が早く閉経が高年齢化しているため女性ホルモンの分泌期間が長く、それだけ乳がんの発生を増やしていると考えられている。

肥満との関係もある。標準体重の人と比べ、20パーセント以上の肥満者では30~50歳代で、1.3倍も乳がんの発生率が高い。60歳以上になると、その率は2.5倍にはねあがる。

これもホルモンと関係がある。副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンの一部は、皮下脂肪のなかで女性ホルモンに変化する。そのため、肥満者の血液中の女性ホルモンの濃度は高くなるのである。
閉経期を迎えた60歳以上の女性は、卵巣からの女性ホルモンの分泌が止まるが、肥満があると女性ホルモン濃度が下がらず、乳がんの発生率をはねあげてしまうのである。

自覚症状

しこりの自己発見は簡単にできるので、自分の乳房の状態を定期的にチェックすることである。乳房の状態は生理周期にともなって変化するので、そのときどきの正常な状態をつかんでおく。

そうすれば、1センチ以下のがんでも自分で発見できる。乳房にクリクリしたしこりや硬いゴリッとした感触があれば、乳がんを疑う。
がん(cancer)の語源は「蟹」だが、これはは、乳房に硬いがんができて広がったさまがカニの姿に似ていたからである。
皮膚のひきつれ、エクボのような「くぼみ」、乳首のただれで発見されることも多い。
痛みが出たときには、すでにしこりができているのがふつうである。
もっとも若い人の乳房のしこりは線維腺腫が多く、中年期の人でも乳腺症や嚢胞によるものが多いので、むやみな不安を抱くより、診察を受けることだ。発見さえ早ければ、これはど治りやすいがんはない。

診断

専門医は、指でしこりにふれるだけで約70パーセントはがんと診断がつくが、確実な方法として「マンモグラフィ(乳房Ⅹ線撮影)」による検査がある。

レーガン大統領のナンシー夫人も、これによって乳がんを発見した。上下、左右から乳房を圧迫してレントゲン写真を2枚撮影する。
軟組織でできている乳房は通常のレントゲン撮影でほ内部のようすを鮮明にはとらえにくいが、マンモグラフィなら微妙な変化( 石灰化など)まで写すことができる。ただし、マンモグラフィに映らないガンもある。これはエコーで確認することができるので、健診はマンモグラフィとエコーをやってくれるところがよい。

疑いのある塊が発見されると、その部分をねらって超音波診断をおこなう。ここまでの段階で95パーセント、診断がつく。最終確認が、塊に針をさして採った細胞を顕微鏡でみる細胞診や、しこりの一部をとる組織生検である。

サーモグラフィという乳房の温度分布を赤外線でとらえる診断装置も使われる。がんは、正常部分より温度が高いので、温度差からがんを突き止める。
また、乳管に造影剤(胃検査のバリウムにあたる)を注入してレソトゲソ写真を撮ることやCT 、MRIの検査をすることもある。

がん治療の現状

治療成績はがんのしこりの「大きさ」よりも、「リンパ節転移のあるなし」と「転移したリンパ節の数」に左右される。乳がん全体の10年生存率は、転移のないものでは89パーセントだが、転移があると52パーセントと大きく減少してしまう。

リンパ節転移の数が多いほど10年生存率は低下する。それに対して、がんが「大きく」ても転移がなければ10年生存率はかなり高い。
乳がんの進行は、タイプによって若干異なる。乳がんのタイプは、周囲の組織を圧迫して波紋のように広がっていく「限局型」、包み込むように周囲を侵していく「浸潤型」(「硬がん」ともいう)、それらの「中間型」、の3つに分けられる。

このなかでどちらかといえは転移しやすいのが「浸潤型」で、治療成績もいくぶん低い傾向にある。閉経後の乳がんにこの硬がんが多いため、悪性度蓋いといわれるゆえん。

だがその「差」は問題にするほどのものではない。やはり、転移がおこる前に発見できるかどうかが治療成績を左右する。浸潤型は脂肪の間に木片があるように硬く触れるのに対し、限局型ほ硬がんよりやわらかいしこりが触れるが、こうした区別は素人にほむずかしい。乳がんが進行すると、乳房のなかで離れたところに新しいがんができることがあるが、なんといっても困るのは転移である。

血管ルートの転移では骨への飛び火がもっとも多く、ついで肺や肝臓、脳などへの転移がつづく。乳がんだから乳房だけの病気と思ったら大まちがいで、進行するにしたがって骨や脳までもがんに侵されていく。

乳がんは「転移の多彩さが特徴」といわれるほどである。治療は、手術による「乳房切除」が中心で、放射線療法や化学療法、ホルモン療法などがあわせておこなわれる。

もっとも最近は、ごく早期の小さいがんが発見されるようになったこともあり、小さな切除ですむ場合も出てきている。乳がんの手術には、次の3種がある。

乳がん手術後の最大の問題は、女の証である乳房を取り戻したいという願望である。補正用パットも各種市販されているが、注目を集めているのが乳房再建術である。
シリコンなどを胸の筋肉下に挿入したり、背中や腹部の筋肉を胸に移植して乳房をつくる。だが、筋肉の移植手術はかなり大がかりになるし、期待が大きいだけに手術結果に失望するケースも少なくない。
このため、再建手術を受けるときはほ、事前に手術方法や手術後の回復程度などを医師と十分に話し合っておく。また、がんの再発は3年以内が多いが、5年以後というケースもあるので、手術後の定期検診を欠かさないことだ。
乳がんについてさらに詳しい情報は
サイト名:乳がんの教科書
URL:https://malignant-tumor.com/breast/

乳ガンの治療は、リンパに転移する前に治療してしまう

他のガン同様に早期発見が重要です。ブレストケアグローブは乳房をチェックする自己検診補助用具です。3ヶ月ごとに入浴の際にチェックしましょう。

ブレストケアグローブは乳房をチェックする自己検診補助用具。グローブを着けることにより、指とバストの摩擦を減らし指先の感覚を非常に敏感にすることができます。
「乳房に痛みも、違和感も無いから大丈夫!」そんな方も要チェック。

乳がん改善例

喉と甲状腺のガンを治すポイント 酒、たばこの害が大きい

喉のガン、甲状腺のガンの状況

  1. 喉頭ガン、咽頭ガンは男性に、甲状腺がんは女性におこりやすい。
  2. のどのガンは全般的に見れば治りやすいものが多い。
  3. 喉頭ガン、咽頭ガンはタバコが、咽頭ガンは酒の飲み過ぎが重大な危険因子。
  4. 喉頭ガンは声が変化し、咽頭ガンは食物を飲み込むときののどの感触に違和感がある。
  5. 甲状腺ガンは女性に多いが比較的良性で、男性は数は少ないが悪性のものが多い。
  6. 甲状腺がんは年齢が高いほど悪性になる傾向がある。
  7. 喉頭ガン、咽頭ガンは放射線がよく効くが、甲状腺がんほあまり効かず、手術中心。
  8. のどのガンは、声帯を取るケースが少なくないので、手術後のリハビリが重要になる。

のどと甲状腺のガン

のどのガンには、喉頭ガンと咽頭ガンがある。咽頭がんの一部ほ鼻の奥にできるものもあるがひとつながりの器官なのでいっしょに述べる。喉頭ガンも咽頭ガンも男性の死亡者が圧倒的に多く、男性の死亡者ほ女性の3.1倍~7.9倍にものぼる。のどに近い甲状腺におこる甲状腺がんは、女性が圧倒的に多く、死亡数は男性の2倍を超える。

咽頭ガン

場所

首の真ん中、男性ではのどぼとけの部分にあるのが咽頭である。喉頭は軟骨でできていて、声を出すための器官、声帯を包んでいる。
この咽頭や声帯におこるのが喉頭ガン。
咽頭がんにはガンができる部位によっていくつかの種類があり、もっとも多いのが声帯にできる「声門ガン」である。声帯の上をおおう喉頭蓋にできるのが「声門上部ガン」、気管に近い喉頭の下の部分におこる「声門下部ガン」などもある。

男女比

男性が女性の10倍も多い。同じ咽頭ガンでも国や地域で起こるガンの種類が異なる。先進国では、声門ガンが多く、開発途上国では声門上部がんが多い。日本では昭和40年代に入って先進国の声門ガンが増えはじめ、現在では6割がが声門がんで、残りが声門上部がん。

声門下部がんはほとんどない。最大の原因がタバコであることはまちがいない。このがんの患者の9割以上が1日に16本以上のタバコを吸うヘビースモーカー。

女性の喉頭がん患者では、ほぼ100パーセントが喫煙者で。

タバコ指数(1日の喫煙本数× 喫煙年数)が800を超える人、10代からタバコを吸い始めた人はこのがんになる可能性がある。大声の出しすぎ、大気汚染などもー困と考えられている。
喉頭ガンの発生と、患者の住所、職業、学歴などの関連を調査し、このガンが関西に多いことを明らかにした調査もある。関西人は大声でしゃべるためではないかという指摘は興味深い。

自覚症状

もっとも多い「声門がん」の初期症状は、声の変化になる。しわがれ声、声がれがおこる。風邪やのどを酷使しても同じ症状が出るが、がんの場合ほ2~3ヶ月以上も続き、だんだんひどくなる。

大きさが米つぶ大のがんでも、声がれほおこる。進行すると呼吸困難になったり、血痰がでる。「声門上部がん」は症状が出にくく、声がれがない人もある。
人によっては初期に食物を飲み込む時に痛みや異物感を覚える場合もあるが、だれもにそういう症状が出るわけでほない。

診断

「声がかれる」と、通常は耳鼻咽喉科を受診する。ここでは、間接咽頭鏡という器具で診断する。声帯の形状を詳しくみるが、喉頭がんの発見率ほ高い。
話し声をマイクで採りソナグラムという機械で声の質の分析もする。同じに聞こえるしわがれ声でも、機械で分析すると、がん、ポリープ、カゼなどの区別がハッキリする。ファイバーースコープで直撃みたり、Ⅹ線診断が併用されることもある。

治療の成果

喉頭がんの5年生存率は7割を超える。進行がんを含めてだから、かなり治りやすい。半分以上を占める声門がんは、放置しても2~3年は生きられるので遅れても絶望的になることほない。
転移も少ないが、声門上部がんのはうは手術後にくびのどこかに転移することが多く、治療成績もやや悪い。喉頭がんほ進行するにつれて声帯を圧迫するので、しわがれ声になる。したがってこのがんは、声帯や声門にどれくらいにがんが浸潤しているかで進行度がはかられる。Ⅰ~Ⅱ期ではがんが声帯から声門に浸潤し、次第に声帯の動きが悪くなる。Ⅲ期になると声帯がほとんど動かなくなり、声がれがひどくなる。Ⅳ期になるとがんほ喉頭を突き破って食道近くまで浸潤する。

頭がんは、放射線治療がよく効く。Ⅰ期なら放射線だけで約9割は治る。Ⅱ期でも、やほり放射線治療が中心である。レーザー光線でがんを焼いて小さくし、その後に放射線を照射することもおこなわれている。
Ⅲ期以上になると放射線はあまり有効ではなくなり、切除手術が必要になる。声帯を全部摘出するが、5年生存率は、6割以上である。
この場合、声帯が失われるので、声の回復訓練が必要となる。一般的なのほ、食道を使って声を出す方法(食道発声という)で、3ヶ月の訓練で日常生活に支障のない程度まで発声が可能になる。

わが国では喉頭がんで声を失った人たちが「銀鈴会」という組織を作り、お互いに声の回復訓練をしているが、なかには大勢の聴衆を前に演説ができるまでに声を取り戻した人もいる。
最近は、ほとんど訓練を必要とせず、小さな声を増幅する電気喉頭や、声帯を摘出した穴と食道を小さなプラスチックのチューブでつないで話す相手に声がよく聞こえるようにする「TEシャント」という装置も開発され、普及し始めている。

咽頭ガン

咽頭ガンができる場所

鼻と口は、舌のつけ根の奥、頸椎の前で合流し1本の管になる。この合流地点が咽頭( のどぼとけ)。咽頭の下は食物の通路(食道)と空気の通路( 喉頭と気管)に分かれる。

咽頭がんは、この鼻と口の奥の合流点を中心におこる。鼻の奥の上部におこるのが「上咽頭がん」、その下、舌のつけ根の奥、へんとう腺におこるのを「中咽頭がん」、食道に近い下のほうに発生するのを「下咽頭がん」と分けている。発生部位によってがんの性質が異なり、治療法もかなり異なってくる。

かかりやすい人

女性の2倍おこりやすい。下咽頭がんの死亡者では、男性346人に対して女性74人と、男性のほうが約5倍も多い。上咽頭がんは中国、台湾、香港、中国系住民の多いシンガポールなどにとても多いため、「ホンコソ・キャンサー(香港がん)」と呼ばれる。

この地域は「EBウィルス」というウィルスのキャリア( 保有者)が多いので、それと関係があるのではないかといわれている。

下咽頭がんは、酒好きの男性や肝臓障害を持つ人に多く、酒がかかわっているとされる。女性では、鉄欠乏性貧血が疑われている。この健康異常が続くと、のどや食道の上が狭なるため、食物を飲み込むときのどに刺激が加わり続け、がんの引き金になると考えられている。

自覚症状

鼻の奥にできるので、鼻づまりがひどいような感じがある。飛行機が高度を下げたとき、耳がつまる感じがあるが、それと似た症状も多い。耳のなかが痛い、聞こえにくいといった中耳炎と似たような症状もおこる。そのため軽い中耳炎と誤診されることが少なくない。ちゆユノじえん下咽頭がんでは、のどの通過障害がおこる。のどに軽度の痛みや食物を飲むときにつかえる感じがあり、長く続くようだったらこのがんを疑う。
こうして診断する上咽頭がんでは、「後鼻鏡」という小さな鏡を使った上咽頭部の視診がまずおこなわれる。
細いファイバースコープを挿入しての視診も、広くおこなわれるようになった。ガンが頭蓋底にまで広がると脳神経に影響が出るので、脳神経の機能検査もたいせつな診断である。
がんの疑いがあれば、Ⅹ線撮影や組織の一部を切り取って調べる生検(バイオプシー)もおこない、診断を確定する。下咽頭がんも、まず鏡やファイバーースコープでの視診が第一だが、下咽頭は構造が複雑で、ちょっとした刺激にも反応しやすいので、先にⅩ線撮影をおこない、がんの疑いの部分をハッキリさせてからファイバースコープなどでみることが多い。

治療の成果

上咽頭がんの5年生存率は5割だが、下咽頭がんは3割にとどまみぶんかっている。この治りぐあいの差は、上咽頭がんが「未分化がん」という種類であるため放射線治療で治しやすいのに対し、下咽頭がんは「分化がん」という放射線が効きにくいタイプのがんだからである。

上咽頭がんのなかには、がんが上部に広がり、限の運動をコントロールしている神経(外転神経を侵し、視力低下や眼球圧迫をひきおこすものもある。
脳にまで進むと、脳神経に異常をもたらす。肝臓などへの転移も珍しくない。下咽頭がんはくびのリンパ節への転移がとても多く、6~7割にみられる。上咽頭がんには放射線治療がたいへんよく効く。
進行がんでも、かなり効く。台湾では、医者は放射線治療用のコバルト照射機械を一台持っていると、一生メシが食えるといわれるほど。

鼻の奥で摘出がほとんど不可能なため、手術はまずおこなわれない。咽頭から離れた部分に転移がある場合は抗がん剤が併用されるが、5年生存率は5割を割ってしまう。

下咽頭がんは放射線治療が効きにくいので、切除手術が中心になる。下咽頭から喉頭、食道の上の部分までを大きく切除することが多く、がんが広がっているときは食道を全部切除する場合もある。
こういう大きな切除手術では、同時に再建手術もおこなわれる。切除部分に腸の表を移植して、のどの機能を代用させるのである(空腹移植)。
発声に重要な喉頭を摘出するので、残った組織や、移植した組織による発声訓練が欠かせない。

甲状腺がん

甲状腺ガンの場所

甲状腺は、喉頭を囲む臓器である。正常では人差し指の第2関節の先ほどの大きさで、形は蝶や西洋の楯に似ている。英語では「サイロイド」(楯)と呼ばれ、小さな臓器だが、役割は、大きい。
脳から指令を受けて、甲状腺ホルモンを分泌しているからである。このホルモンは、人間の発育や成長、エネルギー代謝を司っている。

甲状腺の活動がにぶり、ホルモン分泌が減少すると、からだがだるくなったり、成長が阻害される。反対に機能が異常に克進すると、発育異常をおこす。甲状腺はまた、「カルシトニン」というホルモンを分泌している。

これは、からだのなかのカルシウムのバランスを保つ働きをしている。よって、甲状腺の機能が低下し、カルシトニンの分泌が減るとカルシウムのバランスが悪くなり、骨がもろくなる。ここにがんがおこり手術を受けると、甲状腺ホルモンの分泌の異常がおこり、さまざまな障害をひきおこすことがある。

甲状腺ガンにかかりやすい人

きわめて多いがんで、日本人の10人にひとりはこのがんをおこすともいわれている。もっとも大半は、自然に消失してしまう。ごく小さな甲状腺がんが、はっきりがんといえるまでに成長するのは、そのうちの100分の1、つまり1000人に1人程度で、しかも実際に症状が現れるようながんはさらに少なくなる。

男女比では、女性に多く、男性の7倍にもなり「甲状腺がんは女のがん」とさえいわれる。だが男性の甲状腺がんは悪性のものが多いため、男性の発生率は、小さいのに死亡者数では、女性の2倍弱と多い。

どの年齢層にもおこるが、高齢者ほど悪性で治りにくい。このがんは、スイス、オーストリア、ドイツ南部などアルプスの山岳地帯に多かった。これは甲状腺の機能を正常に保つヨードが不足しがちだったからで、最近、食塩にヨードを加えるなどした結果、患者数は減ってる。日本人はヨードを多く含む海藻をよく食べる。そのため甲状腺がんが少ないとされるが、

ヨードの摂り過ぎもがんの危険因子となることがある。コンプやワカメも、そこそこに食べるのがいい。このがんは甲状腺の機能が低下していると発生しやすいため、慢性甲状腺炎の人の約2割が甲状腺がんになる。

放射線の被ばくも原因としてあげられる。放射線照射を経験した人は、未経験者に比べて高い。広島や長崎の原爆被ばく者の二〇パーセント以上に甲状腺がんがみられるといわれている。_、つこよノぎい高血圧などの治療に使われる「カルシウム括抗剤」を長期服用している人も、甲状腺がんの危険があるといわれる。この薬によってカルシウム代謝と関係深い甲状腺が機能変調をきたし、がんがおこりやすくなることがあると考えられている。また

甲状腺がんは、なやすい家系がある。とくに「膵臓がん」(がん組識はがん細胞とそのすきまを埋める問質からできているが、膵臓がんはとくにがん細胞がきわめて多い悪性のものを指す) になった者が家系にいるときは、注意しておいたほうがいい。

甲状腺がんは、がんの細胞の種類によって「分化がん」甲状腺の細胞とよく似た比較的良性のがんが「分化がん」と「未分化がん」に大別される。で、7割以上を占める。この分化がんは治りやすい。だが、細胞がギッシリ詰まり、巨大化してさまざまな悪さを働く「未分化がん」では、生存率は低くなる。

癌研病院での甲状腺がんの治療成績はきわめて高いが、未分化がんでは2年生存率がやっと7パーセントにすぎない。一般病院での未分化がんの治癒成績は、統計にもならないほど低いようである。このやっかいな「未分化がん」は「分化がん」が年齢を重ねるにつれて移行していくこともあるので、若い人の甲状腺がんは早期発見が高い治癒率のきめてになる。

男性の甲状腺がんが治りにくいのは、この未分化がんが多いからである。高齢者の場合もこれが多い。転移の危険性はがんが大きくなるにつれて増すが、はかのがんほど心配する必要はない。肺への転移後10年以上生存している人も珍しくないからである。一般に甲状腺がんは、おとなしいがんなのである。

自覚症状

自覚症状は少ないが、中年女性では、のどがいがらっぽい、声がかれるといった慢性甲状腺炎に似た症状がよく現れることがある。
だが、男性では自覚症状はほとんどでない。せいぜいのどぼとけのあたりに軽いしこりが出るていどである。男性は、女性に比べて甲状腺が低い場所にあってさがしにくいこともあり、発見は遅れがちになる。

診断方法

患部を触れる触診のみで、熟練医師は悪性のがんか良性の腫瘍かが判断できる。しかし早期のがんはしこりがはっきりしないので、診断はやはりむずかしい。
そこで、Ⅹ線撮影や細胞診、超音波診断などがおこなわれる。最近は細胞診と超音波撮影の組み合せで、直径5mm以下の微小ながんまで発見できるようになった。

甲状腺ガンの治療成績

ここまで治る手術で治す。放射線療法や抗がん剤による化学療法は、あまり効果がない。甲状腺がんにかぎらず、「おとなしいがん」は、放射線や抗がん剤が効きにくい傾向がある。

切除手術は、がんの部分を中心に甲状腺の大半を切り取る亜全摘が多い。甲状腺と副甲状腺は、ホルモンを分泌したり、体内のカルシウムの代謝に欠かせない臓器なので、摘出後は機能を補う必要がある。甲状腺ホルモン剤やカルシウム剤、カルシウムを作るビタミンD剤などの薬の服用を左続けなけれはならない。

副甲状腺とともに気管や声帯を摘出した場合は、組織の再建術や、手術後に発声のリハビリテーションをおこなう。甲状腺がんは治りやすい。したがって医師としては、患者さんにがんであることを伝え、自信を持って治療を受けてもらいたいと思う。癌研病院でも、甲状腺がんの約6割の人にはがんであることを伝えている。

口・鼻のガンを治すポイント 男性に多い原因

口・鼻のガンの状況

  1. 口では舌がん、鼻では上顎洞がんが多く、いずれも男性に多い。
  2. 舌がんは舌の側縁部に発症するものが大半で、そこが硬くなっていたら赤信号。
  3. ヘビースモーカー、酒飲みは舌のがんになる危険度が高い。
  4. 舌がんは放射線治療がとてもよく効き、初期ならそれだけで治ることが多い。
  5. 鼻のがん(上顎洞がん)は自覚症状は出にくいが、鼻の片詰りや鼻汁がおもな自覚症状である。
  6. 蓄膿症や慢性的な副鼻腔炎が上顎洞がんになることがある。

口・鼻のガン

口に発生するがんで圧倒的に多いのは舌がんで、口のがんの約6割を占める。舌がんによる死亡者数は、2002年時点での死者は1147名と30年前の2.7倍にまで増加で、男性のほうが女性の約2倍も多い。
鼻のがんの9割以上を占めるのが上顎洞がんで、鼻のがんといえばこれを指すほど。かつては、年間1000人以上の死亡者があったが、減少傾向にある。これも、とくに男性に多い。

舌ガン

およそ9割が舌の側縁側に発生。また、側縁でもやや後方で舌を前に出さないと見えないような部分に多い傾向がある。男性におこりやすいのは、お酒、タバコに関係がある。このがんがとても多いインドやスリランカでは、タバコの葉にビンロウジュの実や石灰を混ぜてムのようにかんだり、火のついたはうを口に入れて吸う習慣があり、タバコ原因説は有力である。
酒の飲みすぎ説も強い。また、歯との関係も濃い。虫歯でかけた歯の角や治療で装着したブリッジが舌に刺激を加え続けて、がんをおこすことがある。舌の側縁に多いのは、そのためといわれる。口内の不衛生も誘因とされている。

舌ガンの自覚症症状

初期では、熱いもの、冷たいものを食べると、舌、とくに側線部がしみる。もう少し進行すると、傷もないのに舌の特定の部分が痛む。
さらに進むと表面が崩れて出血したり、口臭が強くなったり、また強い痛みが続く。
舌の一部が白い(白坂症)は、舌がんの初期か前がん状態の可能性がある。舌がんでは、がんの部分が硬くなる。舌は傷がついても硬くなることは少ないので、異常を感じた部分が硬いかどうかががんの判定材料になる。
舌は誤っかて噛んで傷つけることが多いため、がんを見過しやすい。痛みがあったが半年も放置していたという人も多い。

舌がんの診断

舌は目で直接みることができるので、まず視診。がんの疑いのある部分や色のチェック。初期がんは擦過傷と判別がつきにくいが、ていねいな触診によって周囲より硬いかどうかを調べる。
がんの疑いがあれば、患部の細胞をとって顕微鏡でがんかどうかを確かめるここまで治る舌がんは、表面にとどまる「表在型」、外側に増殖する「外方性増殖型」、内部に浸潤する「内方浸潤型」の3つに分けられる。

表在型は、比較的進行が遅く、進行しても深くまで達しない傾向にある。全体の約6割を占めるのが外方性増殖型で、患部に硬いコブを作ることが多く、周囲が白くなりやすい。
もっとも大きさの割には内部に浸潤することは少ない。3割が、内部に深く浸潤する内方浸潤型だが、たいした症状がないままに内部に深く広がる。。

舌の筋肉の深くにまで入り込むと、舌が動かなくなったり、舌の神経麻痺をおこすおそれがある。舌がんは、治療技術が進歩しており治るがんになりつつある。

直径2センチ以下の初期なら5年生存率は、8割~9割に達しており、舌の根元にまで進んだり下顎の骨に食い込んだ中期でも3~4割パは助かっている。

もっとも進行すると、命は助かっても舌を全部摘出することが少なくない。がんが4センチ以下なら放射線治療だけでよく治り、手術でも舌の全部摘出は避けられるので、早期発見が重要。

放射線治療は、針状容器に放射線の一種、ラジウムをつめたものを、がんを取り囲むように刺し込んでおく方法が早くからおこなわれ、効果があがっている。がんを放射線で格し子状に取り囲み、とろ火で焼き殺すのだと考えていい。この治療は1週間で終る。がんが4センチ以上になったものでは、手術になることが多い。Ⅲ期以上の進行がんでは舌を縦半分切除することが多いが、がんの広がりぐあいによっては、舌のほかに頬や顎まで切除しはおあごなければならないこともある。

舌がんは約半分が転移するので、Ⅲ期やⅥ期の進んだものの手術では舌の切除とともに頸部のリンパ節も同時に郭清することが多い。
舌を切除すると日常生活に大きな支障が出るので、再建手術があわせておこなわれる。体の皮膚の表を血管をつけたまま切り取り、舌の欠けた部分を補てんするのである。
切除が舌の半分までなら再建手術で完全に社会復帰ができる。また、舌を完全に摘出しても、軟らかいものなら食べられるようになるし、会話も理解できるていどまで回復が可能だ。

上顎洞がん

上顎洞がんが起こる場所

鼻の奥には、とても大きな空洞が広がっている。これを副鼻腔と呼ぶ。副鼻腔の内側は粘膜でおおわれているが、風邪などで炎症がおこりやすい。また、副鼻腔に慢性的な炎症が続いているのが蓄膿症(副鼻腔炎)である。副鼻腔は大小いくつかの部屋に分かれているが、最大の空洞が上顎洞である。
鼻の奥の両側面、目の下、ちょうど頬の骨の奥にある。上顎洞がんは、この上顎洞の壁の粘膜にできる。
上顎洞は顔の両側にあるが、がんは両側同時にできることはきわめて少ない。

上顎洞がんになる人

鼻のがんの約9割が上顎洞がんで年間約700~1000人あまりが死亡しているが、死亡者数は年々減少している。これは、治療技術の進歩もあるが、発生率が減少していることが大きい。

年代では50~60歳代に多いが、男性の発生率は女性の1,5倍にのぼる。この男女差の理由は不明。上顎洞がんは欧米に少なく日本に多い。そのため、日本人の鼻の構造ががんになりやすいのではと考えられている。
日本人は鼻が低く、鼻腔がやや上を向いている人が多いので、粘膜刺激物を吸い込みやすいためとされる。

また、慢性的な刺激や炎症もがんの危険因子である。たとえば、慢性副鼻腔炎や蓄膿症を放置しておくと、がんになるおそれがある。昔はよく「あおばな」をたらした子どもをよくみたが、あれは蓄膿症の症状なのである。はなたれ小僧の減少とともに、上顎洞がんも比例して減少。

上顎洞がんの自覚症状

初期の自覚症状ほはとんどない。しかし、自覚症状が現れたときほかなり進行している。奥の方に増殖すると三叉神経を圧迫し、の歯の痛みが出るので虫歯と間違えやすい。
顔の前方に増殖すると目の下の頬がはれる。ひどくなると、お岩さんのような容貌になる。顔の方に向かうと眼球を押しあげるので、眼球の位置が左右で違ってくる。
鼻の奥に増殖すると鼻汁といっしょに血膿が出たり鼻がつまるが、この症状は蓄膿症と区別がつきにくい。もっとも蓄膿症は両方の鼻に同じ症状が出るが、ガンは片方だけのことが多い。

上顎洞がんの診断

頻のはれ、歯の痛み、鼻井汁の膿などの症状を聞き、頬や口の中を観察し、触れてみれは、ほぼ診断がつく。がんの疑いが濃厚ならⅩ線による撮影によって診断を下す。また、蓄膿症の手術のときに、偶然にがんが発見されることがある。

治療による効果

これまでは発見の遅れが多く死亡率が高かったが、治療法が進歩したため生存率は5割前後にまで向上した。長いこと 上顎洞部全部を摘出する治療が主流だったが、手術がむずかしく治療成績もよくなかった。手術でほ、顔の皮膚を大きく切り上顎の骨を切り離してから摘出するが、顔の奥は重要な神経や血管が複雑に走っている。

それらを傷つけず、きれいに取り除くのほきわめて困難だったのである。そこで最近は、放射線療法や抗がん剤による化学療法でがんを小さくしておいてから摘出する手術が効果をあげている。

化学療法は「動注療法」がよく用いられる。耳の前を通っている動脈にカテーテル(細い管)を通すが、そこから抗がん剤を注入して上顎洞がんを治療する。

手術後の日常生活への影響は少なくなった。かつては上顎洞の手術を受けると、悲惨なはどの容貌の変化を覚悟しなければならなかったが、それもかなり食いとめられるようになっている。