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硬くなってしまった血管もやり方次第で柔らかな血管に回復できる

血管が詰まる「梗塞」と破れる「出血」

私たちの体には網の目のように血管が巡っています。血管には「動脈」「静脈」そして「毛細血管」の3種類があります。これらをすべてつなぎ合わせると、およそ9~10万キロ。

これは、地球を約2周半する長さにもなります。動脈硬化に関係する「動脈」の長さだけを想像しても、いつ、どの場所でトラブルが発生するのか。事前に把握することは、現実的には難しいところです。
さまざまな重篤な病気を併発する大敵「動脈硬化」は、どこに進行するかによって、誘発される病気が変わります。

たとえば、心臓を養う冠動脈で起これば「心筋梗塞」「狭心症」を、脳の血管で起これば「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」などを発症します。

とくに脳の動脈硬化は、「脳血管性認知症」の原因にもなります。これら、動脈硬化が加齢現象を超えて進行し、誘発する病気をまとめて「動脈硬化症」と呼びます。血管が原因の病気なので、私はこれらの病気を「血管事故」と呼んでいます。
これらは、自覚症状がほとんどないままに進行し、発症したときには生命にも関わる致命的なケースが少なくありません。まさに、動脈硬化は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」なのです。

「血管事故」はここに起こる

動脈硬化が発生した血管の部位ごとに起こる病気を以下にまとめました。ぜひ参考にしてください。血管の病気はたくさんあるので、脳と心臓の病気について簡単にご説明します。

脳動脈
  • 脳梗塞(脳の血管が詰まる)
  • 脳出血(脳の血管が破れて出血する)
  • 脳血管性認知症(脳梗塞や脳出血などの後遺症として認知症になる)
大動脈
  • 大動脈癌(動脈硬化によって大動脈の壁がもろくなり内圧に負けて膨らむ)
  • 大動脈解離(大動脈壁が裂け、血液が流れ込んで壁が内側と外側に解離する)
冠動脈
  • 虚血性心疾患(冠動脈が狭くなったり、詰まったりする)
腎動脈
  • 腎硬化症(腎臓の血管に動脈硬化が生じ、腎臓が硬く萎縮して機能が障害される)
  • 腎不全(糸球体の機能60%以下まで低下した状態。10%以下になると人工透析治療が必要になる)
末梢動脈
  • 閉塞性動脈硬化症(下肢の血管の動脈硬化が進み内腔が狭くなったり詰まったりして血流が不足する)

意外と知らない動脈硬化「3つの起こり方」

1.アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)
血管壁の内膜に、コレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状物質(アテローム)がたまってコブのようなものができ、次第に大きくなることで動脈の内腔が狭くなる。大動脈や脳動脈冠動脈などの比較的太い動脈に起こる。
2.細動脈硬化
脳や腎臓の中の細い動脈に起き、3層になっている血管の壁(内膜・中膜・外膜)全体が厚くもろくなる。しなやかさが失われると血管壁は破れやすくなる。高血圧症が長く続いて引き起こされることが多いのが特徴。
3.中膜硬化(メンケルベルク型硬化)
血液中のカルシウムが血管の壁の中腰にたまって石灰化を起こす。中膜が硬くもろくなり、血管壁が破れることもある。大動脈や下肢の動脈、頸部の動脈に起こりやすい

すべての始まりは、「血管内皮細胞」の障害が原因

一般的に動脈硬化というと、1の「アテローム性動脈硬化」のことを指しています。「頚動脈エコー検査」で調べられるのは、主にこのタイプの動脈硬化です。それでは、アテローム性動脈硬化の起こり方を簡単にご説明していきましょう。

血管内皮細胞の障害と半球(白血球)の侵入
まず、生理的な加齢や高血圧、高血糖、脂質代謝異常などの危険因子により、血管の内側の「血管内皮細胞」が障害されます。傷ついた血管内皮細胞には単球(白血球)がくつつき、やがて血管内皮細胞の固から壁の内側へと侵入します。続いて内皮から血管壁の中へと侵入した単球は、輿物を貪り食うようにして処理する細胞「マクロファージ」へと変化します。
異物の侵入
傷ついた「血管内皮細胞」のバリア機能が弱まると、血管内に異物が侵入しやすくなります。異物の代表格が「LDLコレステロール」で、これが血管壁に入り込むと「活性酸素」の影響で「酸化コレステロール」となります。
LDLコレステロールとは、血液中の脂質の一種で、酸化すると動脈硬化を進行させるため「悪玉コレステロール」と呼ばれています。また、「活性酸素」とは、反応性の高い分子の総称で、体内でエネルギーをつくり出すときに発生します。ストレスや喫煙などで増えることもわかっています。

安定したコレステロール値のために積極的に摂りたい5つの栄養素

非常に不安定な物質で、「活性酸素によって体内が酸化する」などといった表現をよく耳にしますが、活性酸素によって細胞が傷つけられることを意味しています。血管内に活性酸素が増えると、血管が傷つけられやすくなり、動脈硬化が進行してしまいます。喫煙が「血管力」を下げるのは、体内の活性酸素を増やすことも関係しています。

免疫システム発動

LDLコレステロールが「酸化コレステロール」になると、私たちの体を守る免疫システムはそれらを異物とみなして攻撃します。免疫細胞である白血球の「単球」から分化した「マクロファージ」は、アメーバのような細胞で、病原菌などを自らの体内に取り込んで殺し、私たちの体を守っています。
「酸化コレステロール」はこうした異物とみなされて、マクロファージに処理されます。

限界まで働いた免疫細胞が破裂、蓄積

限界を超えるまで酸化コレステロールを取り込んだマクロファージは泡沫細胞となり、脂肪のかたまりとなって血管壁内に蓄積してしまい、やがてコブのように隆起します。これが、「プラーク」と呼ばれるもので、その内部に詰まったジュクジュクとした軟らかい脂肪のようなものが「アテローム」です。プラークは、その状態がおかゆに似ているため「粥腫」とも呼ばれます。

プラークが大きくなると血管の内腔が狭くなって、血液が流れにくくなってしまいます。また、動脈硬化によって血管壁が、もろくなり、切れてしまうこともあります。

「LDLコレステロール」が、どうして血管の内膜に侵入して酸化するのかはまだよくわかっていません。ただ、加齢や生活習慣病などによって血管内皮細胞の機能が低下し、傷つきやすくなった血管の内膜にコレステロールが侵入することはわかっています。動脈硬化は血管内皮細胞の衰えとともに発症するといってもいいでしょう。

ふさぐ・詰まる元凶「血栓」はなぜできる?

できたばかりの「プラーク」は非常にもろく、血管の収縮などの刺激をきっかけに一部が破れてしまうことがあります。すると、それを修復しょうとして血小板が集まり、血液のかたまり(血栓)ができます。この血栓がやっかいで、血液の流れが滞るのはもちろん、血管をふさぐまで大きくなることもあります。
そこで詰まらなくても、血流に乗って別の場所に運ばれ、そこで動脈を詰まらせてしまうこともあるのです。

脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす血栓はこうしてつくられています。プラークが大きくなって血管の内腔が狭くなると、小さな血栓でも詰まることがあります。また、動脈硬化のリスクとなる喫煙習慣や生活習慣痛が放置されると、できたてのプラーク同様の、内部に脂がたまった傷つきやすいコブが、いつまでも血管の内壁にでき続けますので、注意が必要なのです。

厄介なプラークは、「安定性」がカギ

プラークは大きいから危険だとは限りません。むしろ、できたばかりでそれほど大きくもない小さなプラークでも、不安定で傷つきやすいことも多く、「血管事故」を起こしやすいことがわかっています。プラークは大きく2種類に分けることができます。

  1. 内部の脂質が多く、また表面を覆う膜が薄くてはがれやすい「不安定プラーク」。突然死を招きやすい
  2. 内部の脂質が比較的少なく、また厚く丈夫な膜に覆われ傷つきにくい「安定プラーク」

できて間もないプラークのほとんどは「不安定プラーク」で、時間をかけて段階的に成長したものが「安定プラーク」になります。もしも、悪しき生活習慣をそのまま放置し続けると、動脈硬化のコブは不安定プラークのまま次第に大きさを増していきます。

ところがある程度の大きさのところで、脂質を覆っているプラークの膜が傷つき、血管事故を発生することがあるのです。一方、生活習慣を改善したり、適切な治療を受けたりすることで「不安定プラーク」は「安定プラーク」へと変化します。不安定プラークは炎症を起こしています。たとえるなら、蚊に刺された直後の皮膚の状態と同じようなものです。蚊に刺された直後は炎症が起こり、ブワ一つと大きくはれ上がって強いかゆみをともないます。そして爪で引っ掻けばジクジクして容易に傷ついて出血してしまいます。ところが、引っ掻いて傷つけないようにしていれば、時間の経過とともにだんだん炎症がやんで、ふくらみも小さく固まるようにして治っていきます。

プラークも同じで、最初は炎症を起こしてジュクジュクしていても、時間がたつと徐々に固まっていきます。積極的な治療を施せば、プラークが小さくなってたいしゆくいくこともあるのです。これを動脈硬化の「退縮」と呼びます。

できたての「小龍包」プラークが大事故を招く

コレステロールなど脂肪がたっぷり詰まって破れやすい「不安定プラーク」は、中華料理でおなじみのク小龍包クのようなものです。熱々の小龍包を箸でつついて破れると、ジュワッとした肉汁があふれてきます。不安定プラークもこれと同じで、ちょつとした刺激で破れて中に詰まった脂が出てきてしまいます。そうすると、傷ついたプラークを修復するために血栓ができてしまいます。

一方、「安定プラーク」は「肉まん」にたとえられます。肉まんは、中身を包む皮がしっかりしていて、ちょっと触ったくらいで破れることはありません。また、中の肉汁は少なめでしっかりしています。安定プラークも、外側の膜が丈夫で内部の脂も少ないため、いきなり破れて血栓をつくることはほとんどありません。

プラークが大きい場合、血管の内腔は狭くなりますが、心筋梗塞などによる突然死のリスクはそれほど高くありません。事実、1998年の厚生省(現・厚労省)のデータによると、急性心筋梗塞の8割強はそれほど大きくなっていないク「龍包プラーク」が傷ついたことによって発症していたことがわかっています。「小籠包プラーク」つまり「不安定プラーク」こそ、突然死を招く黒幕といっていいでしょう。

ランニング中「突然倒れる人」に起きていること

困ったことに、できたばかりのプラークは小さく、血管内腔が狭くなっていないため、自覚症状がほとんどありません。みなさん、自分の血管がそのような危険な状態にあるなどと思いもよらないことでしょう。

マラソンなどで急性心筋梗塞を発症して亡くなる方は、こうした「小籠包プラーク」が、走っている間にバチッとはじけて、そこにできた血栓で冠動脈が詰まってしまうのです。マラソンは、汗を大量にかき、長時間体を動かすハードな運動ですから、そのストレスが一気に血管に襲いかかり、こうした「血管事故」が起こることが少なからずあるのです。

プラークの中には、ジュクジュクした不安定な状態のまま大きくなるものもありますし、膜が硬くなって安定するものもあります。ジュクジュクした状態のまま徐々に大きさを増す「小龍包プラーク」はとても危険です。血圧の上昇などちょっとした刺激で破れてしまいます。

「血管事故」を防ぐには、プラークを覆う丈夫な膜をつくり、安定させることが大切だとおわかりいただけたと思います。

「プラークの安定化」が突然死を防く最大のコツ

一方、「肉まんプラーク」、つまり「安定プラーク」ができた場合は、血管の内腔が狭くなっているので、血液が流れにくく、小さな血栓が詰まりやすいため、胸の痛みなどなんらかの自覚症状があります。深刻な状態に陥る前に医療機関で適切な治療を受ければ、突然死を迎えることなく、おだやかな状態でそのまま維持できます。

では、どうすれば、危険な「小籠包プラーク」を、丈夫な膜で覆われた「肉まんプラーク」に変えることができるのでしょうか。ここで活躍するのが「血管内皮細胞」です。

血管内皮細胞が正常に機能していれば、できてしまったプラークを、ある程度のところまで小さくすることもできます。大きくなってしまった「小籠包プラーク」をなくすことは難しいのですが、固めて少し小ぶりの「肉まんプラーク」にすることは可能です。

たとえるなら、不発弾をセメントで固めて爆発しないようにする、不発弾処理のようなものです。

「血管内皮細胞」といえば、「NO」です。「NO 」は、「血管内皮細胞」の機能を維持します。「NO力」を高め、できてしまった「プラーク」も速やかに安定化できることを目指しましょう。
また、そもそも「血管内皮細胞」が正常に働いてくれてさえいれば、血管内皮細胞の障害から始まる、一連の動脈硬化のプロセスは抑制されます。血管内皮細胞の傷は、血管内皮細胞自らが出す「NO」によって修復されますし、また、血管壁への白血球や血小板などの沈着も起こりにくくなり、炎症や血栓の形成も抑制されるのです。
NOをたっぷり効率よく分泌させる3つの方法
「NO力」を高めることの大切さ、改めておわかりいただけたのではないでしょうか。

脳卒中のリスクを半分に減らせる食べ物

さらに、血管内皮細胞を助け、安定化を早めてくれるのが、青魚に含まれるEPA (エイコサペンタエン酸) です。EPAには血管内皮細胞の炎症をしずめ、血管の膜をつくる(コーティング)作用があります。魚が「血管事故」予防によいことは、さまざまな研究で明らかになっていて、魚に含まれるEPAは脳卒中のリスクを40~50%、心筋梗塞のリスクを約20%低下させるという研究結果もあります。

最近、中国などでマグロの買い占めが始まったことがニュースになりましたが、こうした研究結果に影響されているのではないでしょうか。治療の一環としてEPAの摂取をすすめているクリニックや病院も増えています。食事での摂取が難しいという方には、治療薬としての高純度EPA製剤を摂取していただいています。

脂質異常症の患者さん26人に、毎日、高純度EPA製剤(EPA 1800mg含有)を摂取していただいたところ、2ヶ月で血液中の脂質データが改善し、血管の壁がしなやかになって若返返りました。

ただし、市販されているサプリメントは純度が低いものもあるので注意が必要です。
血管の若返りにDHAたっぷりのマンボウの肝油」などがおすすめです。

EPAのほかに、ブルーチーズに含まれているLTP (ラクトトリベプチド)にも血管内皮細胞の機能を高める作用があることがわかっています。これには血管拡張作用とそれにともなう降庄作用がありますが、そのメカニズムのひとつとして血管内皮機能の改善が考えられています。

さらさら血液より「血管力」が健康に大事な理由

突然に切れる、詰まるの恐怖

大切なことなので、繰り返しますが、「血管力」とは
血管全体がしなやかさを保ち、内壁はなめらかで、血液をスムーズに循環可能な力のことです。

人間は、「血管力」こそ、あなたの健康や寿命を左右するということです。日本人の死因の上位を占める脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)、心疾患(心筋梗塞や狭心症) は、主に血管が詰まったり、切れたりして心臓や脳に大きなダメージを受ける病気です。これらはすべて血管の病気といってもいいでしょう。

困ったことに、こうした血管の病気は、何の前触れもなく、「ある日突然」やってきます。ついさっきまで元気だった人が倒れ、命を落としてしまうケースも少なくありません。

ある調査によると、心疾患の約2割、脳血管疾患の約1割はそのまま亡くなっています。また、一命を取り留めたとしても、言語障害、マヒ、脳の機能障害などの後遺症に悩まされることも少なくありません。なかには半身不随で寝たきりということだって起こり得るのです。

こうした血管の病気を防ぐには「血管力」を高くするのが一番です。一般的な健康診断などでは、高血圧、高血糖、脂質代謝異常など、血圧や血液の異常は指摘されますが、「血管が危険な状態ですよ」とはいわれません。

でも、こうした生活習慣痛が「よくない」とされるのは、血管に負担をかけ、血管の病気を引き起こすからに他なりません。それぞれの検査の異常値を改善することはもちろん必要ですが、それ以上に「血管」についても思いを巡らせていただきたい。そう考えてこの「血管力」という言葉を考案し、みなさまにお伝えしているのです。

「血管年齢=血管力」ではありません

血管というと「血管年齢」という言葉を思い浮かべる方も多いでしょう。健診や人間ドックなどにも取り入れられている検査なので、実際に調べたことがあるという方もいらっしやるでしょう。心臓から動脈へ向けて血液がリズミカルに送り出されると、そこにドッキンドッキンと「脈」が生じます。

この脈打つ血管にセンサーを当てて、その変化を波みやくは形として描いたのが「脈波」です。この「脈波」は、血管の状態に応じて変化し7 ます。それらを記録し数値化して、「血管が何歳相当にしなやかさを失い硬くなったか」を表わしたのが「血管年齢」です。血管年齢を調べる検査は大きく分けて2つあります。

加速度脈波検査
指先で脈波を記録し、その波形を数値化して血管年齢を推定する
脈波速度検査
四肢の血圧と脈波を計測して、動脈壁を伝わる脈波の速度を測る。動脈が硬化するほど脈波は速く伝わるのでその速さから血管年齢を推定する

一般的に普及しっつある「血管年齢検査」ですが、その結果に表われにくい動脈硬化があるのです。初期の動脈硬化では、とても軟らかいコブのようなもの(プラーク)が血管の内側の壁の表面にできます。その後、時間が経過し、プラークが大きくなったり、新たなプラークが次々とできるようになると、次第に血管の壁全体が厚く硬くなっていきます。ちょうど雪が降り始めると所々に軟らかい雪が積もり始め、やがて本格的に積もり、全体が硬くなつて行く様子に似ています。

ところで、「血管年齢検査」は、加齢とともに硬くなる動脈壁が、何歳相当まで硬くなったかを表わす指標です。ですから、軟らかいプラークができているけれど、血管の壁全体がそれほど硬くなっていないような段階の動脈硬化は、「血管年齢検査」では過小評価されてしまうという問題があるのです。

「血管年齢」= 「血管力」ではないことの理由はここにあります。前述の通り、血管力とは「血管全体がしなやかさを保ち、その内壁はなめらかで、血液をスムーズに循環させることのできる力」です。つまり、血管年齢検査では「血管全体がしなやかさを保っているか否か」のみを評価していることになるのです。「その内腔がなめらかで、血液をスムーズに循環させることができる」ことの評価において、なにか他に手段が必要なのです。そこで有用なのが、「頸動脈エコー検査」です。

頸動脈エコー検査
首の動脈(頸動脈)に超音波を当てて、動脈の状態(血管の内腔にプラークなどが生じて狭くなっていないかなど)を調べる

この検査で、心臓から脳に血液を送る頚部の動脈壁を超音波で観察すると、プラークの状態や内腔が狭くなっていないかなどを確認できます。血管年齢の異常として検出されない、すなわちまだ軟らかいプラークもこの方法なら見つけることができるのです。

例えば、健診で「脂質異常」を指摘され、受診された50代男性の患者さんです。この男性は喫煙者でもあったことから、動脈硬化の進行が危倶されました。ところが「血管年齢検査」を行なってみると、血管年齢は年齢相応の50歳代の結果でした。

そこで、さらに詳しく調べるために「頸動脈エコー検査」を受けていただいたのですが、頸動脈の壁の内側にはプラークが数カ所検出されたのです。内腔はまだ十分に保たれていて、血流にも支障のない状態でした。

つまり、この男性は「脂質異常症」と「喫煙」というリスクによって、生理的な範囲を超えて動脈硬化が進行し、少なくとも頸動脈にはプラークができていました。しかし、まだ血管壁はそれほど硬くなっておらず、「血管年齢検査」では実年齢相当という結果だったというわけです。

このような例は決して少なくありません。これまでも、「血管年齢検査」で年齢相応だった患者さんでも、「頸動脈エコー検査」を行なうと、動脈硬化が進行してプラークがあり、血管の内腔が狭くなっていたケースも少なからずありました。

自覚症状なし!初期の動脈硬化は「サイレント・キラー」

心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に酸素と栄養を送っている「冠動脈」にできた動脈硬化の「コブ(プラーク)」が傷つき、そこに生じる血栓によって血流が途絶えて発症します。心筋に血液が流れなくなるとその部分が壊死してしまい、危険な不整脈や心不全を引き起こして命を奪うことも少なくありません。
心筋梗塞の治療はこちら

「心筋梗塞」を発症するとき、その直前の冠動脈のプラークはどのくらい大きくて、内腔はどの程度まで狭くなっているのでしょうか?血管の内腔に対して25%程度です。心筋梗塞は25%程度狭くなったときにもっとも起こりやすいことがわかっています。
最近は、無痛のまま突然死する「隠れ心筋梗塞」などもあり突然死の危険性は高まる一方です。

血管が狭くなると、血液が流れにくくなっているので「狭心症」(血流が不足することによって、心筋が酸素不足に陥り、痛みが生じる) を引き起こしている状態であると考えられます。狭心症は症状が出やすく発見されやすいので、は心筋梗塞になる前にすでに治療を受けていた可能性も考えられます。
狭心症と心筋梗塞の異なる点

ここで強調しておきたいことは、自覚症状のない動脈硬化が原因となって、急性心筋梗塞などの血管事故を突然発症するケースが多々あるのだということです。動脈硬化や、その原因となる生活習慣病が、サイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれる理由はここにあるのです。

あなたは大丈夫?「いつ詰まるか分からない血管」の調べ方

動脈硬化は、ごく初期であってもあなどることはできません。動脈硬化の初期段階の血管はまだ軟らかいといいましたが、血管の内側にできたコブも不安定で軟らかいのです。つまり、破裂して血栓ができやすく、血管がいつ詰まるかわからない状態といえるのです。

動脈硬化が進行していくと血管全体が厚く硬くなっていきます。さらに動脈硬化の原因となる悪しき生活習慣を改めずに放置すれば、血管内壁には、いつまでも脂ぎつてジュクジュクした内容物を有する、不安定で傷つきやすいプラークが存在し続けることになります。

動脈硬化の対策は、早ければ早いほどいいのです。前にも述べた通り、初期の動脈硬化は、「血管年齢検査」では発見しにくいのです。ごく初期の段階で発見するためにも、「加速度脈波検査」や「脈披速度検査」による「血管年齢検査」のみならず「頚動脈エコー検査」をあわせて行ない、血管の硬さとともに、血管内壁に生じた動脈硬化のプラークの有無を調べる必要があります。

そう、つまりご自分の「血管力」を知っておくことが大切なのです。

なんとなくだるい、がんばれなくなってきたような気がする…は「血管力」低下の黄信号

たとえば、普段の生活の中で揚げ物大好き、ラーメンの汁は飲み干してしまう人人は要注意です。
血管は「ものを言わぬ臓器」といわれます。血管の病気は、自覚症状がないまま進行し、最終的に突然、命を奪うことが多いからです。

本当に血管は「ものを言わない」のでしょうか。もちろん、なかには自覚症状があるケースもあります。動脈硬化は本当に自覚症状がないのか、それは別として、私は「血管力」の低下が出す「サイン」はある程度察知できると思っています。
それが、「末病」なのです。「未病」という言葉、最近よくテレビや雑誌などで取り上げられるので、耳にされたことがある人も多いのではないでしょうか。「未病」とは、東洋医学の考え方で、「病気ではないけれど健康でもない状態」のことです。漢方薬の考え方は「未病」という言葉が登場します。

日常の診療で目指しているのは、『病気をその一歩手前の「未病」でとらえ予防する「東洋医学」の考え方』と『「西洋医学」の最新のエビデンス(科学的根拠や治療法』を組みあわせることです。

古くて新しい予防医学の考え方

朝起きたときに体がだるい、最近疲れやすくなった、肩こりや腰痛、目の疲れがひどい、階段を上るのがつらい、手先や足先に冷えを感じるなど、ちょっとした不調を感じたことは誰しもあるのではないでしょうか。
これらは「未病」の最たるものです。一時的なことであれば、無理をしたから、睡眠時問が少なかったから、疲れていたなどの理由が考えられますが、ずっと続くようなら、残念ですが、あなたの「血管力」は低下していると考えられます。

「未病」と「血液」の切っても切れない関係

なぜなら、「未病」に大きく関わってくるのが血管や血液だからです。私たちが生命活動を維持するために必要な栄養素や酸素、水は、すべて血管を流れる血液とともに全身の細胞に運ばれます。それだけではありません。

細胞で生じた老廃物や体に有害なものは、血液とともに回収されて無害なものに代謝されたり、体外に排泄されたりしています。それが、なんらかの理由で血液の流れが滞ってしまうと、酸素や栄養の受け渡しや老廃物の排泄がスムーズにできなくなり、疲れやすくなったり、だるさがとれなくなったり、肩こりや冷え性といった「未病」に悩まされることになるのです。

つまり「未病」がある人は、多かれ少なかれ「血管力」が低下していると考えられるのです。私が「未病」にこだわるのには理由があります。血管力をあげると多くの方が血管がよみがえって元気になる方が多いのです。みなさん、「肌の調子がよくなった」「朝、すっきり目覚められるようになった」「だるさと腰痛、肩こりが解消した」なにかしら体調の改善を実感されています。

「血管力」が上がると「未病」も解消される、それを実際に患者さんが証明されているからです。最初は半信半疑、またはご家族が心配しているからと、なんとなく「血管力」アップに取り組んでいた患者さんも、体調の変化を実感されると、「もっと血管力を高めたい」というモチベーションが生まれます。そのまま続けていると、そのうちに血液状態が改善し、血管年齢が若返るなど、数値に結果が表われて、もっといい状態を目指してさらに続けたくなるという、とてもよい循環が生まれるケースをたくさん見ています。

未病の解消という、うれしい結果がついてくる「血管力」アップによる変化を、あなたも実感してください。

男性9年、女性12年!「寝たきり期間」をなくすために知っておきたいこと

最近、よく耳にするようになった「健康寿命」ですが、正しく理解されていますでしょうか?

日本は世界でもトップクラスの長寿国です。厚生労働省の発表によると、2012年の日本人の平均寿命は女性が86.41歳(世界第1位)、男性が79.94歳(世界第5位)とすばらしい数字です。ただ、「平均寿命=死因にかかわらず、生まれてから亡くなるまでの年数」をあらわしているのに対し、「健康寿命=WHOが2000年に提唱した指標で、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間」のことです。

つまり、健康寿命は、病気や認知症、衰弱などの健康上の問題がない状態で、自分で好きなところに出かけるなど自立して過ごせる年齢を表わしています。単なる寿命の長さだけではなく、「日常の生活の質が大切」という考えに基づいて提唱されました。

寝たきりで生活するよりも、元気で生き生きと暮らしたほうがいいに決まっています。健康長寿を実現するためには、「平均寿命」ではなく「健康寿命」を参考にしたほうがいいでしょう。ちなみに、厚生労働省が2010年のデータを基に算出した「健康寿命」は、男性70.42歳、女性73.62歳です。

同じ年の平均寿命は男性79.55歳、女性86.3歳ですから、男性は約9年、女性は約12年もの介護や寝たきり期間があるということになります。この期間をできるだけ少なくするためにも、「血管力」を上げることが大切だと私は考えます。

健康長寿の3つのカギ「血管年齢」「骨年齢」「腸年齢」

では、「血管カ」がどうして健康長寿を左右するのでしょうか?答えはいたって簡単です。「血管力」が高ければ、動脈硬化の進行をある程度抑えることができます。それは生命にかかわる血管の病気をかなり防げる、ということにつながるからです。

実際、国がすすめる「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、健康長寿を左右するものとして「血管年齢」「骨年齢」「腸年齢」の3 つが挙げられています。

血管年齢が重視されているのは、寝たきりの大きな原因となる認知症に脳卒中が大きく関係しているためです。寝たきりになる二大要因は脳卒中と骨折ですから、骨年齢が入っているのもそのためです。腸年齢は、腸内環境をよくすることで、感染症やガンのリスクを低減させることを目的としています。これも健康長寿には大切ですね。

30代でも早すぎない!「血管にいいこと」始めましょう!

繰り返しになりますが、「人は血管とともに老いる」のです。たとえば、あなたが30代、40代だとしたら。まだ若いので、血管について考えたことも、ましてや血管の老化なんて想像すらできないかもしれません。

生活習慣によって異なりますが、もしも、あなたが好きなものを好きなだけ食べ、体を動かすこともなく、タバコをスパスパ吸っているとしたら、たとえ30代、40代であってもかなり「血管力」が低下しているでしょう。

血管の老化が始まり、気づかない問に動脈硬化はどんどん進行していきます。さらに、朝起きられない、なんとなくだるい、気力がわかないなど、「未病」に心当たりがあれば、もう黄色信号が点滅しているようなものです。
仕事は波に乗って責任あるポストをまかされ、子育ても忙しく、マイホームの購入なども検討する時期でしょう。男性も女性もとても忙しく、自分の体のことまで考える余裕がをい人がほとんどではないでしょうか。

すでに血管の老化が始まっていても、それが表面に出てくるまではもう少し時間がかかります。若く、体力や健康に自信があるので、無理をしてストレスや疲労をため込んでしまいがちです。また、忙しさから遅い時間に食事をするなど、暴飲暴食して太ってしまい、メタポリックシンドロームが増えてくる年代でもあります。

最近、お腹まわりが出てきた、体重が一気に増えた、睡眠時間があまりとれていない、健康診断で血圧や血糖値などに異常が出てきた…。そんな人も少なくないでしょう。こうなると、50歳を過ぎるころには、モノを言わないはずの血管が主張を始めます。「ささやき声」で気づくことができればいいのですが、突然「大声」で騒ぎ出すこともけっして少なくありません。

血管が限界を迎え、大声を上げるときには、心筋梗塞、狭心症、脳卒中をはじめ、深刻な血管の病気を発症してしまうでしょう。その先は、突然死、重い後遺症など健康長寿とはほど遠い結果が待っています。

そうならないためにも、あなたの生活習慣を見直して、血管の老化を防ぐ「血管力」を高める生活を送っていただきたい、そう願っています。50歳になって血管事故が起こってから「しまった!」と思うのではなく、30歳を超えたら、血管にやさしい生活を送る。

それが、突然死を防ぐ階段への第一歩となります。もし、あなたが50歳を過ぎていたとしても、遅すぎることはありません。70歳になっても血管は若返るのですから、あきらめる前にぜひやってみてください。
ひと昔前、心筋梗塞や脳卒中は50~60代以降の病気でした。いまは30代で発症する人が増えてきています。
20代という例もありました。「血管力」を高めるのは、遅すぎることも早すぎることもありません。

気がついたいまがチャンスです。いくつになっても元気で充実した生活を送るために、「血管力」を高めましょう。すでに血糖値が高い状態なら高い血糖値、ヘモグロビンA1Cをテンペ菌発酵茶が下げてくれて合併症にも負けないを参考に日頃から血糖値を下げるお茶を飲むようにしましょう。

NOをたっぷり効率よく分泌させる3つの方法

NO=一酸化窒素のすばらしさを知るとどうすればくさん出すことができるのか、具体的な実践方法が知りたくなります。

「NO力」を高めるために必要なこと-それは、ズバリ「血流をよくすること」です。「NO」がパンパン出る→血管が拡張し血流がよくなるというわけですから、その逆もしかり。血流をよくする→「NO」がパンパン出るのです。
これから「N O力」を高める3つの方法をご紹介します。即、実践あるのみです。

動脈を刺激する「NO体操」

「血流をよくする」というと、もんだりさすったりするマッサージを思い浮かべる人も多いことでしょう。確かに、リンパや静脈はもんだりマッサージしたりすることで流れがよくなりますが、動脈を拡張させて血液循環をよくするには、「有酸素運動」による筋肉の収縮がより効果的です。

ウォーキングなどの「有酸素運動」は、動脈にとっては、やさしくもみほぐしてくれる「リラックスマッサージ″」のようなものです。反対に、短時間で一気に筋肉に負担をかける「無酸素運動」は力まかせにギュウギュウと押しっける「暴力的なマッサージ」のようなもので、血管にはむしろ負担がかかります。「NO力」を高めるにはおすすめできません。「有酸素運動」によって筋肉を動かすと、酸素や栄養が消費されます。

体はそれらを補うため、心拍数を増やしてより多くの血液を全身の細胞に送りだします。このとき、筋肉からは「ブラジキニン」という物質が放出されていますが、これが「血管内皮細胞」を活性化させて、「NO」の分泌を促します。
ブラジキニンには、筋肉に存在する「グルット4 (糖輸送担体)」という物質を細胞膜に移動する作用もあります。グルツト4 には血液中のブドウ糖を細胞内に取り込みやすくして、運動などで必要とされるエネルギーがスムーズにつくられるよう促して、高血糖状態を改善する働きがあります。

ある研究によると、座っている時間が長い人ほど心臓の病気が多いというデータがあります。この′背景には、有酸素運動の不足による「NO力」の低下があるのかもしれません。ここからは、「NO力」を高める有酸素運動「NO体操」を行うことで回避できます。

NO体操その1「歩くことは血管再生の薬」

有酸素運動の代表といえば「ウォーキング」です。健康のためには歩きましょうとよくいわれますが、「NO力」アップにも役立ちます。そして、歩くときにちょっとした工夫をすると、その効果をさらに高めることができます。

まず、お腹と背中をくつつけるようなイメージで下腹をぐっと凹ませます。そのまま背スジを伸ばした状態で歩きます。これは「ドローイン」というトレーニング法で、お腹を凹ますだけで、体の奥にある筋肉(インナーマッスル)を鍛えることができます。インナーマッスルを鍛えると、姿勢がよくなり、胃や腸など内臓の機能を助けることにもつながります。

通勤電車でこの「ドローイン」を意識して立つだけでも、体にとってはちょうどよい「有酸素運動」になります。ドローインの姿勢のまま歩くと、さらにその効果はアップします。歩くときには、いつもより「少し早め」に、「歩幅は5 cmほど広く」を心がけるといいでしょう。
ちょっとした移動時間に効率のよい有酸素運動を取り入れることができます。ただし、ひざの痛みなどがある方は無理しないようにしましょう。歩幅を小さめにして歩くか、痛みが強い場合には、ウォーキングではなく、これから紹介する「ふくらはぎ体操」や「手クロス体操」など、ひざに負担のかからない体操を行なうようにしてください。

NOウォーキングのやり方
  1. お腹と背中をくっつけるようなイメージで下腹部を凹ませる。
  2. 1の姿勢を意識したまま、いつもより少し早足で、歩幅は5センチ多くとるようにして歩く。

NO体操その2 下半身の大渋滞であるむくみも解消できる「ふくらはぎ体操」

「ウォーキングをする時間がない」「ひざが痛くて歩けない…」という方には、より手軽にできる「ふくらはぎ体操」がおすすめです。

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど、血液循環に関係しています。心臓は全身に血液を循環させるために新しい血液を送り出します。ただ、体の末端、とくに心臓より遠く離れ、低い位置にある足の血液を心臓に戻すのはなかなか大変です。
そのためふくらはぎの筋肉が収縮することでポンプのような役割を果たし、下半身の動脈や静脈の血流をよくするのです。しかし、運動不足の現代人は、足を動かす機会が減っているため、この循環が滞っていることが多いのです。

そこで、この「ふくらはぎ体操」の出番です。ふくらはぎの血液循環がよくなつて「血管内皮細胞」が刺激されると、「NO」の分泌が確実に促されます。実際にこのふくらはぎ体操を実践していただいたところ、たった4 日間で「NO」の量が増えていました。

立ったまま「ふくらはぎ体操」のやり方
  1. 足を軽く開き、デスクやイスなどに片手を置いて、体を安定させる。
  2. ゆっくりとかかとを上げて、つま先で立つ。ひざを曲げないよう注意する。
  3. ゆっくりとかかとをおろし、つま先をゆっくり上げてかかとで立つ。
  • 1~3を2分間繰り返す。
  • 朝・昼・夜に1 セットずつ、1日3回行なう
座ったまま「ふくらはぎ体操」のやり方
  1. ひざをまっすぐ伸ばして座り、両手で上半身を支える。
  2. つま先を体から遠ざけるようにゆっくりと足首を倒し、足の前側を伸ばす。
  3. つま先を元に戻すようにゆっくりと体に引き寄せるようにして、ふくらはぎなど足の裏側を伸ばす。
  • 1~3を2分間繰り返す。
  • 朝・昼・夜に1セットずつ、1日3回行なう。

「ふくらはぎ体操」は、いつでも、どこでもできる体操です。できれば、朝・昼・夜にそれぞれ1セットずつ、1日3回行なってください。立って行なうふくらはぎ体操は、食器を洗いながら、歯みがきをしながらでもできます。座って行なうふくらはぎ体操は、入浴時に浴槽の中でやってもいいでしょう。足の疲れやむくみの解消にもなりますので、ぜひお試しください。

NO体操その3「上半身のコリもほぐす「手クロス体操」」

「座っている時間が長い人」ほど、動脈硬化のリスクが高いといわれています。仕事中は座りっぱなしであまり体を動かす機会がないという人は、仕事の合間などに前項の「ふくらはぎ体操」にプラスして、この「手クロス体操」を取り入はかどれましょう。

気分転換にもなり、仕事も捗ります。血流を一時的に止め、その後流すことで血管を収縮・拡張させるこの体操は、上半身の血流改善に効果的で、肩こりの改善にもつながります。下半身の筋肉を動かす「ふくらはぎ体操」と合わせて毎日行なえば、全身の血流がよくなり、「血管内皮細胞」が刺激されて「NO力」がさらにアップします。

手クロス体操のやり方
  1. イスに深く腰かけ、へその下に力を入れて上半身を安定させる。
  2. こぶしをぎゅっと強く握り、両腕を抱え込むようにして胸の前で15秒間クロスさせる。
  3. 握った手を大きくぱっと開きながら、両腕を開放するように大きく広げる。

ポイント

  • キャスターつきのイスで行なう場合は、転ばないように注意する。
  • 朝・昼・夜に1セットずつ、1日3回行なう。

「締めて→ゆるめる」だけで血流量が増す、人体の法則

血管も、「NO」も目に見えるものではありません。本当に「NO」は出ているの? 効果はあるの? など最初は半信半疑の方もいるでしょう。実は、「NO」がたくさん出ているときに特有の「サイン」があります。それは、みなさん誰でも一度は感じたことのある、あの、「おなじみの痛み」なのです。

それは何かというとー。たとえば、正座をしたあとで立ち上がったときに、足がジーンとしびれたことはないでしょうか?または、雪合戦をしていて、雪を握っていた手があとになってジンジンしませんでしたか?そう、この「ジーン」もしくは「ジンジン」が「NO」がパンパン出ているサインなのです。

正座をしているときには、体重がふくらはぎにかかっているので血行がふだんよりも滞っています。そのため、立ち上がったときに、一気に血管が開放されて血液がどっと流れ、「血管内皮細胞」が刺激されて、「NO」の分泌が促されます。雪に触ったときも同様です。冷たさから手の血管が収縮して血流が極端に減りますが、その後暖かい部屋に戻ると手先の血管が開いて血流が流れはじめ、「NO」が増加して血流が増すのです。

私たちの体は、体温が上がりすぎず、下がりすぎないよう、一定に保たれるようになっています。そして、それをコントロールしているのが主に自律神経による血管の収縮と拡張なのです。
外気温が低いときには血管を収縮させて体表の血流量を減らし、体温を下げないようにし、外気温が高いときには血管を拡張して体温が上がりすぎないように血流量を増やしています。
この血管の収縮・拡張によって「NO」がパンパン出てきます。
このように、血管が拡張して一気に血流がよくなりジンジンしているときは、「血管内皮細胞」からの「NO」の分泌が増えています。増加した「NO」はさらに血管を開き、血流を促進します。

血液循環がよくなったことで与えられる「血管内皮細胞」への刺激は、血液による内側からの「血管マッサージ」のようなものです。さらに、血流がよくなることで酸素や栄養、老廃物の運搬が促されて全身の組織が浄化されます。「NO力」ひいては「血管力」を高めるわかりやすく、手軽な方法1 血液循環をよくして血管をジンジンさせるよ「血管マッサージ」をご紹介します。

血管マッサージその1「シンプルだけど、即効果「1分間正座」

いつでもできるもっとも簡単な「ジンジン」は、そう、「正座」です。長い間正座する必要はありません。むしろ、あまり長時間正座をしていると、ふくらはぎの血行が滞ってしまいます。足がしびれて立てなくなるほど座らなくてもいいのです。せいぜい1分程度、立ったときに足がジンジンするくらいの正座がおすすめです。

1分間正座のやり方
1分間正座したあと、足を伸ばしてリラックスする。
ポイント
1分間の正座で足がジンジンしない場合は、正座をしている時間をもう少し長くするとよい。

血管マッサージその2「意外!血圧を測りながら「NO力」もアップ

一般的には、血圧を何回も測るのはよくないとされています。ただ、「NO力」という点からみると、血圧を何回も測っている人のほうが「NO」は出ていると考えていいでしょう。

血圧を測るときには、腕の付け根のあたり(心臓と同じ高さ) に駆血帯というベルトを巻きます。血圧測定は、駆血帯をギエツと締めつけて腕の動脈の血流を一度止め、そこから徐々に駆血帯をゆるめて血流を再開させながら行ないます。

つまり、血圧測定は、血管の収縮・拡張を繰り返す、とてもお手軽に血管をジンジンさせる方法なのです。血圧を測れば測るほどジンジンして、「NO」がドドン出るようになるでしょう。

「えー、本当なの?と思われるかも知れませんが、アメリカの研究では、心筋梗塞の人を救急車で運ぶ際には、血圧を測る駆血帯をギューッと締めつけて開放する、締めつけて開放することを繰り返す処置を行なうと、予後がいいという報告もあります。

このことからも血圧測定は「NO」分泌を促すおすすめの方法といえます。血圧を毎日測定するだけで、高めだった血圧が次第に下がってくるという「医学都市伝説」があります。しかし、血圧測定時に行なう血管の締めつけと開放が、その都度「NO」を分泌する刺激になることを考えると、この現象は医学的に根拠のあるものと考えられます。

「体を温める」と血管も健康になる

有酸素運動や血管をジンジンさせること以外にも、血液循環をよくするものはあります。とくに、「冷え性の改善」によいといわれるものは、ほとんどが血管を拡張させるので、「NO力」アップにも効果的なものばかりです。
「冷え性の改善に効く」といわれると、最近では「しょうが」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。これは間違いありません。しょうがは、手足の冷えにも効くのでおすすめです。しょうが含まれている辛み成分(ジンゲロール・ショウガオールなど) には、血管を拡張させて血液循環をよくする作用があります。体を温めるのはもちろん、「NO」の分泌も促します。とうがらしに含まれているカブサイシンという辛み成分にも、しょうが同じような作用があります。
生姜の冷え取り力の実力はこちら。

生姜もとうがらしも香辛科なので、一度にたくさん食べるものではありません。料理の薬味として活用しましょう。しょうが、とうがらし以外にも、冷え性によい、体を温める食べ物は「NO」を出す食べ物といっていいでしょう。
適量のアルコールも血液循環をよくするので、「NO力」アップにおすすめです。ただし、飲みすぎは厳禁です。食べ物以外にも、冷え性も改善しっつ「NO力」アップを図る方法をご紹介します。

突然死のリスクをカット、NO力アップ「賢い入浴法」

全身の血流がよくなる「半身浴」も「NO力」アップにつながります。

ただ、血管に負担がかからない入浴法を心がけましょう。高齢の方やふだんから血圧が高めの方はとくに注意が必要です。熱めの湯(42~43度くらい)につかった場合、末梢血管が収縮して血圧が上昇する「驚愕反応」が引き金となって脳卒中や心筋梗塞を発症することがあり、そのうちの1割がそのまま亡くなるという調査報告もあります。

また、ぬるめの湯に長時間つかっていてそのまま眠ってしまったなんて経験がある人もいるかもしれません。長湯をしすぎると、血管の過度な拡張と発汗による脱水によって収縮期血圧(上の血圧)が110mmHG以下まで下がり、脳に送られる血流が減少して意識を失ってしまうこともあるので、入浴時間はほどほどにしましょう。

38度くらいのぬるめの湯に、みぞおちから下のあたりまでつかり、15~20分程度入浴する「半身浴」がおすすめです。湯につかりながら両足首を曲げたり伸ばしたりすれば「NO力」倍増です。冬場に入浴するときには、浴室と脱衣所の室温差に気をつけてください。

寒いところから急に熱い湯に入ると、血管が一気に収縮して血圧が急上昇してしまいます。心臓や血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことがあります。脱衣所に暖房機を設置して暖めておく、洗い場に湯を流して冷たいタイルを温めておくなどすると心筋梗塞や脳卒中の予防になります。入浴後は水分を補給して脱水を予防しましょう。入浴や運動などで汗をたくさんかいたあとは、血圧が下がって脳の血液循環が低下して立ちくらみを起こしたり、血液が水分不足で固まりやすい状態になったりするので、これらの予防のために、入浴前後には水分補給を忘れないようにしましょう。

半身浴は血管の詰まりに効果大

気分もスッキリ!「副交感神経」をONにする

末梢の細い動脈は「自律神経」の影響を受けているので、ストレスを感じたり、あるいはリラックスしたりといった気分の変化が血液循環を左右します。基本的に、ストレスを感じたときは、「交感神経」が緊張して、心臓はドキドキと動きを強めて全身に血液を送り出します。

ところが、末梢の動脈は交感神経の緊張によってギュッと締まるので、手足の先は一時的に血流が減少します。ちなみにこのときは血圧が高くなります。逆に、リラックスしているときには、「副交感神経」が優位になり、心臓の動きは穏やかになります。末梢の血管は緊張が解けて、しなやかにひろがり、手足の血流は増加します。このとき、血圧は低くなるのです。

常にストレスを感じて「交感神経」の緊張が続くと、血圧の高い状態がずっと続くことになり、血管に負担がかかり、傷つきやすくなります。少しだけドキッとして、すぐにほっとするようなサプライズのドキドキ感が、末梢の血管の収縮とそれに続く拡張を引き起こし、一気に増加した血流によって内皮細胞が刺激され、「NO」が分泌します。このように、適度なドキド辛が「NO力」アップに役立ちます。一瞬、顔の血の気がひき、その後すぐに赤みが増すような、胸をキュンキュンさせるときめきをたくさん体験すれば、それだけ「NO力」も高まります。アイドルの追っかけや、趣味に没頭しているときのときめきに近いでしょうか。

失恋のようにずっと落ち込むドキドキは、「交感神経」がずっと刺激されっばなしになるので「NO力」は低下してしまいます。かつ最近、泣ける映画などを観てポロポロと涙をこぼす「涙活」が話題になりました。これは、気持ちはすっきりするけれど、高まった「交感神経」の緊張をほぐすまではいきません。

「副交感神経」のスイッチをオンにして「NO力」を高めるには、オイオイと大きな声を出してポロボロ涙を流す「大泣き」のほうが適しています。ひと昔前の青春ドラマに、砂浜を泣きながら走るというシーンがありました。
実はこれが高まった交感神経をしずめ、副交感神経を優位にするためのもっとも効果的な方法です。砂浜を泣きながら走り、海に向かって思いのたけをぶつければ、気持ちがスッキリして自律神経も安定すること請け合いです。

そんなに都合よく、泣きながら走れる砂浜が近くにない人のために、自宅でおすすめのリラックス法が2つあります。ひとつめは、「腹式呼吸」です。ストレスを感じているときには、交感神経の働きが活発になって呼吸は浅く、回数が多くなり、このことがまた不安感につながって悪循環に陥ってしまいがちです。そんなときにはゆったりとした深呼吸をすると副交感神経の働きが高まってリラックスできるのです。

2つめが「筋デレ運動」です。不安や心の緊張があると体の筋肉も硬くなってしまいます。そんなときには、わざと筋肉を緊張させてから一気に脱力することによって神経の緊張、すなわち心の緊張がとれるのです。脱力したときに、手足がジンジンと温かくなる感じがするはずです。このときには、手足の血流が増加し、「NO」が分泌されているので「血管力」アップにはとても効果的なリラックス法といえます。

リラックス腹式呼吸のやり方
  1. 椅子に背筋をのばして座る
  2. へその下に両手を当ててお腹を凹ませながら口をすぼめて息を6秒かけてゆっくhリ吐き出す。
  3. 1~2秒息を止めて、今度はお腹を膨らませてから3秒かけて鼻からゆっくり吸い込む。

1~3を3回繰り返す。息を吐きながら体を前に倒し、息を吸い込みながら体を起こす動作を加えると尚いい。

筋デレ運動のやり方
  1. イスに座り両手を胸前で合わせる。
  2. 互いに手のひらを押し合う。このとき両膝も同じように押し合う。
  3. 10秒間両手、両膝を押し合ったら、今度は一気に脱力する。

1~3を3回繰り返す。呼吸は止めないようにする。