間違いだらけの睡眠情報 正しい睡眠不足の解消方法

たった10分のうたた寝が心身を爽快にする

睡眠というのは、いったいどのような構造になっているのでしょうか。睡眠は、大別すると2つの様態に分類できます。1つを正睡眠と呼び、もうひとつを逆説睡眠と呼びます。正睡眠は別名をオルソ睡眠といいます。オルソとは英語のオーソドックスの略です。またこれは、徐波睡眠とも呼ばれています。正睡眠は、つぎにあげる4つの段階から構成されています。

1.第1段階=入眠期
限りについてから2~3分間の浅い眠りです。眠気を感じ、うつらうつらしてきて、外的刺激をちょっとでも受けるとハッと気がつく状態です。脈拍は起きているときよりもやや遅くなり、呼吸も低下し、眼球の動きは、大時計の振り子のようにゆっくりと左右に動いています。
2.第2段階=浅眠期
入眠期をすぎたあとの眠りです。これは約10分ほどつづくのが一般的です。この状態にはいると、小さな物音ぐらいでは気がつかず、かすかに寝息を立てるほどになります。
3.第3段階=中等度睡眠期
脳波はゆるやかになり、脈持もいちだんと遅くなり、意識はなくなって、眼球も動きません。外的刺激をあたえても、目が覚めにくい状態です。ふつう20~30分ほどつづきますが、1時間以上におよぶときもあります。
4.第4段階=深眠期
もっとも深い眠りの時期で、脳波は中等度睡眠期よりさらにゆるやかになり、脈拍は1分間に50~60ぐらいに落ちます。もちろん眼球も動かず、身体もほとんど動きません。丸太のように眠っているという状態が、まさにこの時期になります。筋肉もぐったりと弛緩し、声をかけたり、ちょっとつねったくらいでは目を覚ましません。揺り起こしてようやく目が覚めます。時間にして30~50分ぐらいです。睡眠のサイクルの中で、この時期の占める割合がもっとも多くなります。この深眠期は、やがて寝返りなどの身体の動きによって中断され、つぎの状態へと移っていきます。

以上が正睡眠のサイクルです。どんな人でも例外なく、このサイクルにしたがって、徐々に深い眠りへとはいっていきます。

これでわかることは、10分ぐらいのうたた寝は身体にとてもいい、ということです。なぜなら、2~3分の入眠期から10分程度の浅眠期のところで起きれば、目覚めがさわやかで、身体がすっきりするためです。

「あっ、眠ってしまったな」と感じるわずかな睡眠は、寝起きがとてもスムーズなので、目覚めてからしばらくのあいだ、頭脳も肉体もドロンとしているといったことがないのです。

昔の人はよく、「昼寝は1時間にしろ」といったのですが、これも実に理にかなっているということになります。つまり、第1段階から第4段階までの正睡眠のリズムに加えて、これから述べる逆説睡眠までが、ちょうど1時間30分前後で終わるからです。

もし、2時間の昼寝をしたらどうだでしょうか。1回日のサイクルを終えて、2回目の第3投階(中等度睡眠期)にはいったあたりで日を覚ますことになります。これはかなり寝起きのよくない状態ですから、目覚めても身体がだるく、すっきりしません。

60分の昼寝なら、たいていは探眠期の最中に目を覚ますことになります。深い眠りを経験した直後だから、バッと目が覚め、疲労が気持ちよくとれた実感を味わうことができる。もっともこの場合の寝起きは、深く眠ったばかりなので、10分ほどのうたた寝のときのように、すぐにすっきりするというわけにはいきません。起きてから数分間はだるさが残ることは避けられません。

睡眠中でも脳は目覚めている

眠りのサイクルには、正睡眠の第4投階のあとに、時間にして約20分ぐらい、もうひとつまったく変わった形態が続きます。これは、第1段階の入眠期と似ていて、脳の眠りは浅いのに肉体は深く眠っているという、不思議な睡眠形態です。
これを逆説睡眠といいます。なぜ「逆説」なのか。それは、脳波は入眠期と同じで眠りが浅いはずなのに、筋肉は極度に弛緩して、すこしぐらいの外的刺激では目が覚めないほど、深く眠っているからです。

正睡眠(オルソ睡眠)に対して、この逆説睡眠は、パラ睡眠と呼ばれています。

逆説睡眠はまた、レム睡眠とも呼ばれます。というのも、逆説睡眠が正睡眠と区別される最大の特徴が、睡眠中に眼球が、まるで起きているときのようにキョロキョロと動くからです。この眼球の動きを最初に発見したのは、大脳生理学の権威、クレイトマン博士でした。

彼は、ミルクを飲んでから、また眠った赤ん坊をじっと観察しているうちに、そのかわいい眼球がせわしなく動いているのを目にしました。博士は、入眠期に眼球が動くことは知っていましたが、赤ん坊のその動きはまるで違うものだということに気づきました。
まるで、起きているときに、なにかを目で追っているような動きでした。

そこで、こんどは大人の被験者を調査しました。睡眠中に眼球運動がはじまると、すぐに被験者を揺り起こすことにしたのです。この結果、レム睡眠にはいると夢を見ることがわかりました。また、眼球が動くたびに脈搏が増え、呼吸も不規則に乱れることがわかったのです。さて、この逆説睡眠は、必ず毎晩、どんな人にも正睡眠のつぎに訪れます。その後、再び正睡眠へともどっていくのです。

つまり、人は誰でも毎晩、夢を見ているということです。「夢なんかめったに見ないよ」と口にする人もいますが、それは見ていないのではなく、目が覚めたときには忘れてしまっているだけです。
夢を見る。これは、眠りのメカニズムからいうと、大脳が完全には眠っていないということになります。

正睡眠のときには大脳は眠っていますが、逆説睡眠になると、大脳はいくらか目を覚ましていることになります。にもかかわらず、逆説睡眠の最中は身体はほぼ完全に弛緩しており、眠りとしては深いのです。こんなところから、「正睡眠は大脳の眠りで、逆説睡眠は身体の眠りである」と、専門家は表現します。

この一種不思議な睡眠形態は、全睡眠時間の中でどのくらいの割合を占めているのでしょうか。ふつうの人の平均睡眠時間(7~8時間) で計算してみると、1時間半から2時間は逆説睡眠が占めていることになります。

眠りの20%は脳が眠っていない逆説睡眠なのです。

その意味からいうと、バタンキューと寝て、朝までぐっすり眠りっばなしということは、どんな人でもありえないのです。学者の研究によると、この逆説睡眠は人間だけでなく、すべての哺乳動物に見られるものです。とくに、犬や猫は、生まれたてのころは逆説睡眠ばかりです。人間の赤ちゃんでも、生後6ヶ月ぐらいまでは、逆説睡眠が全睡眠の50%を占めているのです。

夢は中断されればどんどん増える

ところで、この逆説睡眠を取り除くと、どうなるのでしょうか?。20年ほど前に、アメリカの学者がこんな実験を行なっています。被験者を暗い部屋に入れて自然に眠らせ、脳波を調べ、レム(逆説睡眠の眼球運動) がはじまるとすぐに揺り起こします。そして、また眠らせ、再びレムがはじまるやいなや、同様の「拷問」を繰り返します。

4~5日つづけてこの実験を行なった結果、大変おもしろいことがわかりました。逆説睡眠は、妨げられれば妨げられるほど、簡単に起こるようになったのです。さらに、3日目、4日目と進むにつれて、逆説睡眠ははっきりとあらわれ、しかも、ふつうに揺り動かした程度では目が覚めないくらい眠りが深くなっていきました。

「まるでモグラたたきゲームをやっているようだ」大学教授は形容形容しました。つまり、逆説睡眠は野に生える雑草と同じようなもので、踏みつければ踏みつけるほどたくましく生えてくるということです。この実験が終わって、被験者がいつもどおり7~8時間眠ると、なんと、逆説睡眠は3時間以上にもおよんだのです。

人間の睡眠にとって、逆説睡眠が必要不可欠なものだということが、この実験によって証明されたのです。

少し似たようもので夢見の多い人間がそれをどの程度覚えているかといったことを調べた実験がありました。その人と仕事で3~4日旅行したさい、ホテルのツインルームにわざと一緒に泊まりました。短時間睡眠人間だから、3時間も眠ればたちどころに疲労は回復します。
明け方には目を覚まし、その人が夢を見はじめるのをじっと待ちかまえていました。彼は、夢を見るとうわごとをいうことが多くなりました。声を出さないときでも、眠っている状態を注視していれば、夢を見ていることはだいたいわかります。

「いまだ」と思うと、私はすぐ彼を揺り起こし、つぎのように聞きました。「君はいま、うわごをいっていたぞ。どんな夢を見ていたのかな?」三晩ほどつづけて、私はそんな試みを繰り返しました。彼はそのつど私の質問に答えてくれたのですが(一晩に数回ということもあったので、3日で計10回ほど)、ムニャムニャと半分ねぼけながらも、いま見ていたのがどんな夢だったのかをちゃんと話せる場合と、話しても要領を得ない場合と、「覚えていないんだ」という場合とがありました。

ただひとつ、興味深かった事実をここにつけ加えておきます。旅行から帰る飛行機の中で、彼は、しかめっ面を私に向けながら、こう口にしました。
「お陰様で夢ばっかり見るようになりました!」

「ゆうべなんか、夢、また夢。どうしてくれるんですか」私もまた、逆説睡眠は妨げられれば妨げられるほど増えてくるものだということを、この実験ではからずも立証していたのです。