「泌尿器のガン」増加する前立腺がんに有効な治療

泌尿器のガンの基礎知識

  1. 日本人の前立腺がんはホルモン療法がよく効くので、手術をしないですむことも多い。
  2. 前立腺がんは、尿が出にくい、排尿の勢いが悪いなど前立腺肥大の症状と似ている。
  3. 前立腺がんの五年生存率は、早期ならば90%以上にのばっている。
  4. 前立腺がんは、進行がきわめてゆっくりとしているので、気づかないまま天寿を全うする人も少なくない。
  5. 腎臓のがんは、3cm以下で発見できれば治る率がとても高い。
  6. 40歳以上の人で血尿があったら、腎臓か膀胱のがんをいちおう疑ったほうがいい。
  7. 膀胱がん、腎臓がんは、男性が女性の3~4倍も多い。
  8. 膀胱がんは、おなかを切らないで、尿道から器具を入れて切除することもできる。
  9. 膀胱がんには、切除を繰り返しながら、がんと共存できるものもある。
  10. 睾丸のがんは、睾丸の発育異常や萎縮が原因の1つとされる。

泌尿器にできるがん

腎臓、膀胱のがん、男性生殖器にできる前立腺がん、華丸腫瘍、陰茎がんなどがある。腎臓のがんも膀胱がんも、男性の方が3対1から4対1の割合で多い。陰茎がんをのぞきいずれも少しずつ増えており、とくに前立腺がんの増加が目立つ。膀胱がんは放射線も効き、前立腺がんはホルモン療法が効くなど、それぞれ特徴的な攻撃法があるおかげもあっちゆて、最近は、どのがんも治癒率が確実に向上しているのは嬉しいことである。

前立腺がん

前立腺は、男性だけがもつ器管で、精液の「液体」成分をつくり貯蔵しておくクルミ大の臓器である。膀胱と尿道境目で尿道をぐるりと取りかこむように位置している。精子をつくるのは睾丸だが、その精子は前立腺へ送られて液体成分とまじりあってはじめて運動できるようになる。前立腺がんは、ここにおこるがんである。

どういう人に起こりやすいか

60歳代以降の高齢者に多い。驚いたことに、80歳以上の男性の3分の1が前立腺がんをもつといわれる。がんと気づかぬままに、生涯を終えている人が多い。発病率は人口10万人に対しわずか2.32人。とても少ないがんだったが、最近、急増傾向にある。

自覚症状

初期には排尿回数が多くなり、夜、何度もトイレにおきる。尿が出にくく勢いが悪いことも多い。こうした症状は、主に高齢者に多い前立腺肥大と同じで、がんの可能性は小さい。進行すると血尿が出たり、骨転移によって座骨神経痛のような痛みを覚えることもある。初期症状での自己発見は難しいが、50歳すぎてからの年1度の人間ドックで発見できる。

診断方法

専門医が肛門に指を入れ前立腺を指で触れ(触診)、しこりなどを確かめれば、前立腺肥大症かがんかの判別はおおよそつく。がんが疑われたら、血液中に含まれる前立腺がんが分泌する特殊なタンパク(特異抗原) を調べる「腫瘍マーカー法」や造影剤を注入してレソトゲソをとる「尿道造影法」、前立腺の組織を少し切除し顕微鏡でがん細胞を調べる「生検」をおこなう。

ここまで治る

前立腺がんは、3つに分類される。「高分化がん」と「低分化がん」、その中間の「中分化がん」の3種である。ホルモン療法がよく効き進行も遅いのが高分化がん。

いっばう低分化がんは、進行や転移が早い。日本人の前立腺がんは、タチのよくない低分化型が増加傾向。治しやすい高分化がんも、進行すると低分化型のがん細胞が増えて、骨やリンパ節に転移をおこしやすくなる。治療は、女性ホルモン剤の長期服用が主である。前立腺がんは男性ホルモンによって悪化し、女性ホルモンによってよくなる性質があるためだ。女性ホルモン剤の服用によって、乳房が少しふくらんだりヒゲが薄くなることがあるが、それ以上の副作用の心配はない。

ホルモン療法は、がんの活動を抑えるだけで「治す」わけではないが、これで患者さんはがんによる死をまぬがれる。もっとも数年で効果がなくなることもあり、定期的なチェックはいる。初期例では放射線照射や前立腺の摘出手術がおこなわれる。

腎がん

起きる部位

腎臓はソラマメ型の臓器で左右に1つずつある。らだの外に捨てる働きをもつ。血液中の老廃物を濾過し外に排出する。構造は、「実質部分」と尿をためておく「空隙」とに分けられるが、その「実質部分」にできるのが腎がんである。「空隙」の壁をつくる腎孟にできるがんがあり、これを腎孟がんと呼ぶ。おとなの腎臓がんの9割は腎がんで、腎孟がんは1割程度。40歳以上に多く、4対1の割合で男性に多い。

自覚症状

ある程度進行してから、突然の血尿をみる。血尿は2~3日で自然におさまるが、また出血ということを繰り返す。やがて腎臓が腫れ、おなかの上から触れるとしこりが触れたり、痛みを感じるような場合もある。

診断方法

超音波でがんの有無を確かめる。尿にまじっている血液や尿の中にがん細胞があるかないかを調べることも大切である。詳しい検査のためには、造影剤を使ったレソトゲソ撮影やCTが用いられる。

ここまで治療ができる

初期(第Ⅰ期)には腎臓をおおう腎被膜の内側に止まっているが、第Ⅱ期になると周囲の脂肪組織にまで広がる。第Ⅲ期になると腎臓周囲のリンパ節にまで拡大。第Ⅳ期になると、隣接する臓器や遠くの臓器に転移をおこす。第Ⅰ期のうちに発見し、がんの大きさが3センチ以下なら、5年生存率はかなり高い。

腎がんの治療は、腎臓と膀胱に続く尿管を途中まで摘出する手術がおこなわれるが、腎孟がんでほ尿管をさらに膀胱まで摘出する。また、両側の腎臓に同時にがんがおこることが2~3パーセントあり、このときは進行している側を摘出し、残した側ほ部分切除にとどめる。腎臓は片方を摘出しても残った側が十分に機能をはたしてくれるので、通常の生活を送ることができる。

膀胱がん

どこにおこるガンか

尿の貯蔵所、膀胱は筋肉質の袋で、牛乳びん1.5本分(約300ミリリットル の尿をためることができる。底の部分には腎臓からくる2つの尿管が接続していて、その前方に尿道への出口がある。尿が約200~300ミリリットルたまると尿意を感じ、膀胱の壁の筋肉が収縮して排尿がおこなわれる。膀胱がんはこの膀胱の内側をおおっている「上皮」に発生するがんで、泌尿器のがんの中ではもっとも多い。