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膵臓がん すい管造影で世界最小のがんを発見

膵臓がん 現在の治療の方法や現状、症状、治療など。自覚症状などを紹介します。

膵臓がんの基礎知識

  1. 日本人には少ないがんだったが、食生活の変化などによって著しく増加している。
  2. ほかのの消化管(十二指腸など)に近いすい臓の頭部におこりやすい。
  3. 男女比は2二対1で男に発生しやすい。
  4. 60歳代がもっとも多く、高齢者はど注意がいる。
  5. すい炎、糖尿病などはかの病気とは直接的な因果関係はない。
  6. 多くの場合、がんによる二次的すい炎を併発している。
  7. きわだった自覚症状が痛みで、とくに背中から腰にかけての痛みが出る。
  8. 急激な体重の減少や黄疸が出ることも多い。
  9. 直径2cm以下の被膜内のものなら5年生存率は約50%に達している。
  10. 手術中の放射線照射(術中照射)で、痛みをやわらげることができるようになった

どこにおこるガンか

すい臓は、胃の裏側にあるバナナ状の細長い臓器である。からだの中央に近く、十二指腸と接している右側が太く、左にいくほど細くなる。太い部分を「頭部」、中央部を「体部」、細くなって脾臓と接している部分を「尾部」と呼ぶ。

このすい臓にはふたつの働きひぞうがある。与消化液のひとつ、「すい液」を作る働きである。これは十二指腸に分泌され、食物の消化に利用される。もうひとつは、血液中にある全身の言ルギー源である糖( 血糖)の量を調節しているホルモン(インスリソとグルカゴソの二種) を作る働きである。

すい臓がんは十二指腸に近い頭部におこりやすい。約七割が頭部から体部にかけてでき、残り3割が体部から尾部にかけておきている。
からだの奥深いところに雪臓器なので、がんができても発見や治療がむずかしい。欧米諸国では、すい騰がんが発見されても根本的な治療をおこなわないケースが少なくないほどである。
しかし、診断技術や治療法の進歩でかなりのものまで治せるようになってきた。とくに日本は、早期発見や手術方法で世界をリードする成績をあげている。早期に発見できれば、不治の病ではなくなりつつある。

どういう人に起こりやすいか

消化器のがんのなかでは胃、肝臓、大腸に続いて4番目に多く、年々増加している。年間死亡者数は1万人を突破している。昭和35年から56年の比較でも、約2.5倍増である。
男性が2倍多い。60歳代が発生のピークなので、高齢者のがんと考えてよい。原因として、慢性すい炎や糖尿病などほかの病気が引き金という説が唱えられてきたが、最近になって否定されている。欧米に多く日本に比較的少なかったことから、肉類など動物性脂肪の摂り過ぎに原因があるとされ、酒やタバコとの因果関係も否定できない。

自覚症状

すい臓がんの患者の4分の3は、なんらかの痛みを経験する。急激な痛みと鈍痛があり、進行するほど痛みも強まる。場所は背中から腰にかけて、上腹部、左の肋骨の下といったあたりが多い。
背中や腰の筋肉に異常がないのに強い痛みを感じるときは、赤信号である。すい臓の休部や尾部にがんが発生したときほ、急激な体重の減少がみられる。消化機能に異常がおこるほか、痛みで食事が十分とれないためである。ほかの消化器に異常がないのに急激に体重が減り始めたら、すい騰がんを疑う。
すい臓頭部のがんでは、黄痘も出る。痛み、体重減少、黄痘以外に、全身倦怠感、発熱、下痢、吐き気などが出ることもある。

診断方法

すい臓がんは、「すい液」の通り道である「すい管」に近いところに発生したものほど症状が出やすい。ここにがんがおこれば、すい液の流れが悪くなる。そこで、すい液の滞り状態から異常をつかむ診断方法が開発された。アミラーゼやエラスターゼといったすい臓が作っている酵素の血液中の量を測定するのである。

これで異常が発見されたら、すい管に造影剤を入れX線撮影をおこなう。この「すい管造影」は技術が向上し、かなり小さながんまで発見できるようになった。すい管造影によって直径8ミリのがんを発見し、切除することに成功している。世界でも最小のすい臓がんの発見、治療記録である。

すい騰がんは「すい炎」を併発していることが多いので、「すい炎」と診断されたら念のためにすい管造影を受けるのがよい。すい管造影は10分もあれば終る。すい炎だとすい管が拡張してすい臓全体が硬くなり、胃が圧迫されることがある。これは胃のX線撮影でも容易にわかるため、胃のX線検査で偶然にすい臓がんが早期発見されることもある。

ここまで治る

すい臓がんの治療成績ほめざましく向上 している。直径2センチ以下のものの5年生存率は約50パーセントになった。胃がんなどに比べ悪い数字に思えるが、これはすばらしい数字である。すい臓はほかの消化器に取り囲まれており、血管やリンパ管も入りくんでいて手術がとてもむずかしい。それに、がんは小さくても臓器の内部に深く進み、リンパ節や神経などへの浸潤も多い。そういう悪条件下での、50%なのである。

すい臓がんの大半はほかの臓器に浸潤したり、リンパ管を通りリンパ節に転移しやすいというやっかいな性質をもっている。また、進行も早い。がんが直径3センチ以上になると、長期生存は期待できない。
ただ、全体の1割を占める「粘液産生がん」は、比較的浸潤が少なく、進行もゆっくりしている。このがんは、その大部分が昔は「慢性すい炎」と診断されていたほどである。
もちろんこのタイプでも、早期発見、早期治療を怠ってはいけない。治療は切除が中心だが、がんの手術でもっともむずかしいといわれる。「頭部」は十二指腸につながっているので、ここにおこったがんは十二指腸といっしょに切除する。
この手術は、消化器手術のなかでも約5時間を要する大がかりなものである。「体部」から「尾部」のがんでは、尾部側をすべて切除する。
ただ、すい臓全部を摘出するとホルモンが作られなくなり糖尿病が悪化するので、少し残す。すい臓がんは強い痛みがあるが、手術中に放射線を当てると 痛みが軽くなるので、試みられる機会が増えた。

ガン治療のポイントと現状

肝臓がん 肝硬変 から がん への変化

肝臓がん 肝硬変 から がん への変化 によるものが多いのが特徴です。

肝臓がんの基礎知識

  1. 肝臓のがんはほかの臓器から転移してくるものが多い。
  2. 原発性のがんは肝臓そのものをつくっている細胞にできるがんが大半を占める。わずかだが肝臓の中の胆管におこるものもある。
  3. 死亡者は男のほうが女の3倍近くにのぼる。
  4. B型肝炎の抗原が陽性の人は注意。
  5. 肝炎から肝硬変、肝臓がんと進むケースが多い。
  6. 腫瘍マーカー、超音波、CTなどで、直径5ミリくらいの肝臓がんでも早期発見できるようになった。
  7. 進行するとほかの臓器へ転移したり、静脈癌破裂による大量出血がおこることがある。
  8. かつてはほとんど手術が不可能だったが、最近は手術による治療も可能になってきた。
  9. 肝臓に分布する動脈に栓をしてがんを兵糧攻めにする「動脈塞栓術」は切除手術なみに延命効果がある
  10. 女性のはうが手術後の経過はよい。

肝臓がんはどの部位に発症するか

肝臓は消化に役立つ胆汁を作ったり、小腸から吸収した栄養分の備蓄と全身への供給、毒物の分解など、その機能は500をこえるといわれる重要な臓器である。
腹部の臓器としてはいちばん大きく、重量もおとなで1.1~1.2キログラムである。ここに発生するがんが肝臓がんで、大きく2種に分けられる。

最初から肝臓に発生するがん(原発性肝臓がん)とほかの臓器から転移してくるがんがある。肝臓がんで特徴的なのは、原発性のがんより転移してくるがんのほうが多い。
転移してできた肝臓がんは、原発性の肝臓がんより3倍も多い。これは肝臓がほかの臓器からの血液が多く集まってくるためがん細胞が流入しやすいことや、栄養分の貯蔵庫であるためがんも育ちやすいことなどが、理由として考えられている。
原発性のがんのなかでは、肝臓の細胞そのものに発生するがん( 肝細胞がん)が90%を占め、残りの1割が肝臓でできた胆汁を十二指腸へ送る通路、肝内胆管におこっている(胆管がん)。

どんな人に起こりやすいか

肝臓がんの死亡者をみると男性のほうが女性よりはるかに多い。このがんによる男性死亡者数は、女性の約3倍近くにもなる
。肝臓がんはがん全体のなかでも死亡者数が3番目に多い。男女とも警戒しなければならないが、とくに男性は要注意である。原発性の肝がんはいきなり発生するのではなく、はとんどが何らかの肝障害のあとにおこる。

なかでもB型肝炎ウィルスに感染した人は危険グループに入る。原発性肝臓がんの人のうち、B型肝炎ウイルスの抗原が陽性の人が30%を占めているからである。すでに肝炎や肝硬変を発病している人も、同じように危険度は高い。肝硬変で亡くなった人の約3分の1が、がんを併発していることもわかっている。肝炎、肝硬変と進み、最後に肝臓がんをおこすことが多く、このがんは「肝臓病の終着点」ということもできる。

したがって、肝障害はできるだけ早いうちに治しておくことががんの予防にもなる。アルコールの過飲が肝臓をいためることは知られているが、アルコールは肝臓がんの危険田子でもある。健康に害をおよばさない1日の飲酒量は、ウィスキーでダブルの水割り2二杯までである。ちなみにこれは、日本酒なら2合、ビール大瓶では2本分とほぼ同じアルコール量になる。

肝臓がんの自覚症状

肝炎や肝硬変と共通する症状が多い。比較的初期のものなら食欲不振、全身の倦怠感、体重の減少、上腹部の重苦しい感じなどの症状が出る。
鈍い痛みや微熱がみられることも少なくないが、胆管のがんでは発熱や痛みは少ない。進行すると、黄痘が出たり、腹水がたまったり、上腹部にしこりがあらわれたりする。とくに、肝硬変の人で黄痘が急激に悪化したり、腹水を出す利尿剤の効果が下がってきたときはがんの疑いが濃くなる。

また、がんが肝臓と腸を結ぶ静脈(門脈)にまで浸潤すると、血液のいき場がなくなり食道の静脈に押しよせ、食道の内側の細い静脈に風船ガムがふくらむようなコプをつくることがある。このコブが、ピーナッツなど固いものを食べるなどして傷つけられ破れると、突然の大出血をおこす。洗面器に1杯分もの吐血をみることも珍しくない(食道静脈癌破裂)。
食道からの出血だが原因は肝臓にある。緊急手術を受けないと命を失うこともある。

肝臓がんの診断

肝臓の機能検査でほ必ず血液中のさまざまな酵素の量の測定がおこなわれる。なかでもGOT 、GPTなどほよく知られている。肝臓が生産している酵素である。
肝臓の機能が悪化するとこれらの酵素も増える。しかしその異常だけでほ肝炎なのか、肝硬変なのか、がんなのかの判定はできない。それに小さながんではその異常が出ないことのほうが多い。

しかし原発性の肝臓がんは、特有のタンパクを血液中に放出することがわかっている。「胎児性タンパク(AFP = アルファフェトプロテイン)」である。このAFP を目安( マーカー) にして肝臓がんの有無を診断する。こういう血液検査によるがん検査法を、腫瘍マーカーによる診断という。

AFPでがんの疑いが濃くなったら、画像診断でさらにくわしく調べる。画像診断にはぞよノえい超音波検査、CTスキャナーによる断層撮影、Ⅹ線を使った血管造影などがある。超音波やCTは、直径10ミリ以上のがんはみつけられるが、それ以下のがんの発見は血管造影がすぐれている。
ふともものつけねにある動脈から長いカテーテル( 細い管)を挿入し肝臓の動脈まで通して、造影剤を注入する。造影剤は肝臓の血管のすみずみに広がるが、がんは血管が密集しているのでⅩ線撮影をすると造影剤の影が濃く写るのである。ふとももの動脈からカテーテルを挿入する方法は、抗がん剤を注入したり、手術の場所をはっきりつかむなど治療に際しても大いに役立っている。以前はカテーテルが太く患者さんに負担をかけたが、最近は細いものに改善されている。

肝臓がんはここまで治る

昔は、肝臓がんはほぼ半年の命と考えられていた。現在でも残念ながら、治療成績はよいとほいえない。肝臓がんと肝硬変を併発している人の5年生存率はわずか約2パーセントであり、肝硬変がない人でも約17パーセント前後。

しかし、治療技術の進歩はめざましく、延命期間は少しずつ長くなってきている。よほどの末期がんでないかぎり、半年の命などというケースは少なくなってきた。
原発性肝臓がんの大半を占める肝細胞がんは、1個の大きな塊を作るもの、あちこちに小さな塊(結節)を作るもの、肝臓全体に広がるもの、の3つの型がある。大きな塊を作る肝臓がんより全体に広がるもののほうが治療がやっかいで、予後も悪い。
肝臓には多くの血管が通じているが、がんが進行するにしたがって血管が遊離したがん細胞で詰ってしまったり、血液の流れにのってほかの臓器に転移することも少なくない。転移先でもっとも多いのは、肺である。

健康な肝臓はあるていど切除しても、トカゲのシッポのように再生能力がある。肝臓は全体の1割しか機能していなくても、健康な肝臓なみの働きをするといわれるほど余裕のある臓器である。このことが肝臓病の発見を遅らせる理由にもなっているが、余裕があるために思いきった切除も可能なのである。
治療も、がんの部分を中心とした切除手術が原則である。とはいえ肝臓は多くの血管が入りくんでいるため出血しやすく、また肝臓全体が機能を失っている肝硬変の併発が多いので、手術は簡単ではない。

また、手術中の麻酔や輸血で肝機能が急激に低下し、がんの切除に成功しても肝臓本体がだめになってしまうこともある。したがって切除は、がんを切り取った後どれくらい肝臓の機能が残るかを慎重にみきわめなければならない。

手術につぐ治療法で注目されているのが、肝動脈塞栓術である。がん細胞に栄養を供給している動脈に栓をして血流を遮断し栄養を絶つ方法である。兵糧攻めでがんを殺すのだが、正常な肝細胞は塞栓術の影響を受けにくいところからおこなわれるようになった。
この方法で、切除と変らないほどの生存率が得られるようになったのは望ましい進歩である。とくに、結節型の肝細胞がんには効果がある。手術不能の肝臓がんにほ抗がん剤による化学療法もおこなわれるが、単独ではあまり成果が上がっていない。

また、超音波でがんの位置を観察しながら無水アルコールを直接注入する治療法がいくっかの大学で試みられ、好成績が期待できるとして今後のなりゆきが注目されている。

肝臓がんでは、手術後の経過も女性のほうが成績がよい。理由はほっきりしないが、女性にほ肝硬変を併発している人が少ないことが一因ともされる。肝臓がんほ手術に成功しても、急速に悪化することがしばしばある。よって手術後に退院できても、2~3週間に1度は通院して注意深く経過をみなくてはならない。

胆道がん

どの部位に起こるがんか?

消化に役立つ胆汁をつくっているのは肝臓だが、その胆汁の量を調節する袋状の器官が胆のうである。また、その胆汁を十二指腸に運ぶのが胆管である。これら胆のう、胆管にたんどうできるがんが「胆道がん」である。
もっとも胆管は、肝臓の外(肝外胆管) にできるものだけを指し、肝臓のなかを通る胆管(肝内胆管) にできるものは肝臓がん(肝内胆管がん) に分類している。

どういう人に起こりやすいか

「胆道がん」で亡くなる人は年間約1万人以上もいて、決して少ないがんではない。なぜか、女性のほうがやや多い。もっとも女性に多いのは「胆のうがん」で、「肝外胆管がん」ほむしろ男性に多い。
このがんは胆石とかかわりが深い。とくに胆のうがんでは70%に胆石がみられる。胆石ができると、胆のうや胆管は炎症をおこしやすく、その炎症の刺激でがんもおこりやすくなると考えられている。

コレステロールの摂り過ぎは胆石を誘発するといわれているので、血中コレステロール値の高い人も気をつけなくてはいけない。30歳代、40歳代で胆石持ちの人は、たとえ自覚症状がなくても早いうちに胆石や胆のうを摘出しておけば、がんへの進行を予防できる。

胆道がんの自覚症状

胆石の症状は、大部分が痛みである。右上腹部に差し込むような痛みがおこる。とくに、油濃いものを食べると痛みの発作がおこりやすい。

胆汁は脂肪の消化を助ける液であるため、油濃いものを食べると胆のうが収縮して胆汁をしぼり出そうとし、痛むのである。同時に発熱もおこる。この発作ほ30分ほど続く。専門医なら右上腹部を触診して、しこりなどから胆のうがんを発見できることもあるが、患者さん自身では無理。がんが進行すると、黄痘や腹部の持続的な痛み、体重の減少、食欲不振などがみられる。

診断

以前は、発見が困難だったが、診断技術の進歩で小さなものまでみつけられるようになった。十二指腸ファイバースコープを使いながら胆管に造影剤を注入したり、CTスキャナーで検査したりするが、もっとも大きく貢献しているのほ超音波診断である。超音波による画像診断は、患者さんへの負担が小さく、造影剤で写らないような部位までみられるので、このがんの診断にさかんに使われる。隆起型のがんなら、超音波で早期発見も可能である。たんなる胆石症も超音波による追跡検査を続けていれは、早期発見につながる。

ここまで治療できる

胆のうがん、肝外胆管がんとも治療成績ほよくない。がんが小さくて、発見しにくいからである。発見時には手術不能のことが多く、手術可能なのは今のところ患者さんの3分の1ていどである。胆のうがん、肝外胆管がんともに手術による切除が原則である。ただし、切除は簡単ではない。

胆道がんで全身状態などから切除不能の人に対しては、レーザーを使って焼き切る方法がとられるようになった。これは小さながんに限られるが、今後の研究の進歩が期待されている。肝外胆管がんでほ、胆管内に細い管を通してアイソトープの針を入れ、放射線の一種であるイリジウムを照射する治療法も一部ではおこなわれている。

肝臓がん関連情報

ガン治療のポイントと現状