胃・十二指腸ガン「食生活・食習慣が重要」

胃がんの基礎知識

  1. 胃壁は塩酸とペプシンからなる消化液( 胃液)にさらされているが、ストレスなどにあうと胃壁が胃液に侵され潰瘍をおこす。その連続が、がんにつながっているといわれる。
  2. 胃には食べたすべての食品が必ず滞留する。そのため、胃がんの発生が食生活と深い関係にあることは間違いない。
  3. 発がん性をもつ食品のみならず、胃のなかで化学反応をおこし発がん物質が作られてしまっているケースもある。
  4. 塩からいものや炭水化物の摂り過ぎは胃がんを増やし、契煙も胃がんの発生率を高める。
  5. 胃がんで死亡する人は減少傾向にあるものの年間約5万人以上でトップ。がん死者の4分の1は胃がんである。なかでも若い人の胃がんは治りにくい。
  6. 胃がん特有の症状はないが、定期検診によって直径5ミリ以下のがんも発見できるようになっており、そういう早期がんは、ほぼ100%治る。
  7. 胃がんの治療は、なによりも手術である。患部をできるだけ大きく摘出するが、それは周囲浸潤が取り残しや転移による再発を絶対にさせないためにおこなわれる
  8. 胃がんの治癒成績は、がんの深さ、広がり、転移の有無などによって大きく異なる。
  9. 一部の早期がんでは内視鏡で覗きながら高周波で切除する新しい手術法が始まっている。

胃がんの場所

胃は、消化管で.はもっとも膨らんだ臓器で、食道のあとに続いている。約1.4リットル、ビールびん2本以上の容量をもっている。
送り込まれた食物は、ここでペプシンという消化酵素と塩酸からなる胃液によってドロドロの粥状に溶かされ、腸から吸収されやすいかたちに変える。これを、消化という。消化中の胃は、ゆっくりとまるで独立した生き物のように蠕動運動をおこなっている。

もっとも、ごはんなどの炭水化物(デンプン質)の消化は唾液に含まれるアミラーゼにカよっておこなわれるので、よく噛まないと唾液が十分に分泌されず消化不良をおこす。

胃がもたれるのは、そのためでもある。消化を、「胃」だけにまかせればいいというものではない。まずよく噛んで食べることが大事である。胃は、アルコールやビタミンB12などわずかなものをのぞいては、栄養素の吸収はしない。
ひたすら溶かす(消化)のみである。胃液は、そのまま手のひらにのせると、皮膚がジクジクと溶けるはど強い消化作用をもっている。

だが不思議なことに、これほど強烈な消化液にみまわれている胃自身は、その胃液で溶かされることがない。胃の内側の粘膜は、常時ベタベタの粘液が分泌され覆われている。胃液に対するバリアが作られ、守られているのである。ただし胃はストレスに弱く、ストレスによってこのバリアが破られやすい。

1965年に胃・十二指腸潰瘍で治療を受けた人は、10万人あたり88だったが、オイルショックがおこった1973年には同149人と増加している。

現在でも、日本人が1一年間に飲む胃薬はおよそ2000億円分以上に達している。胃に悩まされている人は、とても多い。第一次大戦後のドイツはひどいインフレにみまわれたが、やはり胃潰瘍が急増した。その直後、救国の指導者として登場したヒトラーは、「ドイツの胃薬」とすらいわれたほどだった。胃は、社会や個人のストレスを正直に映す鏡なのである。

ストレスを受けると顔が青ざめるが、同じことが胃にもおこっている。ストレスがおこると、胃をとりまく毛細血管が収縮。すると胃壁のバリアである粘液の分泌が途絶え、胃壁の粘膜がむきだしになる。そこに強力な消化作用をもつ胃液が触れると、たちまち粘膜がえぐれてしまう。これが胃潰瘍である。こういう胃潰瘍は知らぬうちにできては治っていることが多いが、この繰り返しが、胃がんの原因のひとつではないかといわれている。

ところで、他の臓器におこったがんが胃に転移することはきわめてまれである。そのため胃のがんの原因は、ほとんどが胃そのものにあると考えてよい。

胃は、食べたあらゆる食物がまず送り込まれる場所である。よって、胃がんは食物との関係がとても深い。胃は、食物に含まれるあらゆる発がん物質が必ず滞留し、触れ続ける場所だからである。
また、単独では発がん性がないはずの食物の成分どうしが胃の中で化学反応をおこし、発がん物質を作ってしまうこともある。
食べた漬物や野菜に含まれる硝酸塩がバクテリアなどの働きで、亜硝酸塩となり、それに魚や肉、ハム、ソーセージなどに含まれる二級アミンと結びつくと「ジメチルニトロアミン」という物質を作る。胃の中でおこる化学反応である。

ジメチルニトロアミンは、強力な発がん物質なのである。胃にがんをおこすおそれがある食物として専門書は必ず、ソテツ、フキ、ワラビなどをあげているが、通常の食べ方でこれらががんの原因になっているとは思えない。ソテツやフキ、ワラビなどを大量に毎日食べている人などいないからだ。胃がんは、こういう特定の食物によって起こるのではなくさまざまな発がん原因が重なって長い時間の後におこるのである。

胃は大きな釣り針型をしているが、食道と接する上部の入口を「噴門」、十二指腸と接する下部の出口を「幽門」という。中央の広がった部分は「胃体」、左にせりあがった部分は「胃底」、胃小弯の下 のほうを「胃角」とも呼ぶ。
これらの中でがんがおこりやすい部位は、「胃角」や「幽門前庭部」に集中している。もっとも若い人の胃がんは、「胃体」や大雪にもおこりやすい。また、がんがおこった部位によってがん細胞のリンパ節への転ひんど移の頻度などに差があり、どこにできたかによって治り方がある程度、予測できる。

どういう人に起こりやすいか

今から30年ほど前に胃がんで死亡した日本人は5万人弱でガン死亡者全体の23.3%だった。胃がんは減っているといわれるが、がん死者の約4分の1が胃がんで、日本人にとってもっとも危険ながんであることに変りはない。

男女別死亡者数では、男性が約63パーセントを占める。胃がんになる人の数は当然ながら死亡者数よりはるかに大きく、年間7万人と推計されている。この発病数の男女比も、死亡数とほとんど同じで、胃がんは男性に多いがんである。年齢別では、20歳代以下は約2%だが、40歳代になると約15%、、60歳代は30~40%を占めるようになる。

胃がんが中高年のがんである理由は、それだけ長く発がん因子にさらされてきたということに理由があると考えられる。60歳代がもっとも多く、胃がんは老年病であるともいわれるが、欧米と比べて日本は若い世代の胃がんがかなり多いのだということも忘れてはならない。

若年層の胃がんは進行が早く、発見されたときには手遅れになっていることが多いので気をつけなければならない。若年層の胃がんは家系的な関連があるという考え方があり、そういう人は胃のぐあいがおかしいというときには早めに検査を受けることである。
自宅で検査できるものも最近はあるので忙しい人などはやっておくといい。
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胃がんの原因のかなりの部分が生活環境にあることは、間違いない。これは、ハワイに移住した日本人が、日本在住の日本人と比べるとはるかに胃がんの発生率が低いことからも明らかである。また日本国内では日本海側の東北、北陸地方に多い傾向がある。こういう事実から、胃がんは環境、とくに食生活に深いかかわりをもっているとされる。

ハワイの日本人では、アメリカ人同様、胃がんよりも大腸がんが多い。日本でも大腸がんが多くなり始めており、食生活の欧米化が胃がんを減らしていることは間違いない。

胃がんは、塩分の多い食事との関係が強い。塩分の多い漬物や塩漬けの魚の多食などが、危険因子になる。ごほんなどの炭水化物を多く摂る人も、胃がんが多い傾向がある。

ごはんを多く食べる人は醤油や塩味の強いものを多く摂る傾向にあるため。米国でもかつては胃がんが多かったが、冷蔵庫の普及とともに減少したという事実がある。冷蔵庫が普及する前は食品の保存に塩が多用されたため塩分の摂豊が多かったが、冷蔵庫の普及は塩分の摂取量を減少させ、また発がん性をもつかびの摂取もなくなったためである。
塩分の過剰摂取はガンのリスクを高める

緑黄色野菜や乳製品の摂取が多いと、胃がんは減る。日本の胃がんが減少傾向にあるのは、漬物でごほんをかきこむような日本型食生活がすたれているためだろう。
熱い食事も胃がんの原因になる。そのたびにひきあいに出されるのが奈良地方の「茶がゆ」だが、こういうものを毎日摂る時代も終りつつある。

紙巻きタバコの喫煙も胃がんの危険因子である。吸い込んだタバコの煙は肺に入るのみならず唾液にとけて胃にも送り込まれているためだ。たばこはすぐに禁煙です。

自覚症状

特徴的な胃がんの症状ほなく、他の胃の異常と似ているために見過ごしやすい。多くみられるのは、みぞおちのあたりの痛みや重苦しさである。腹部が張るようなも感じもる。

これといって原因が思い当たらないのに、やせてくることもある。吐き気や食欲減退もおこりやすい。もっともこれらの症状ほ、胃炎などでもおこる。吐血や下血をみることもあるが、それは胃潰瘍や十二指腸潰瘍でもおこるので、それだけで胃がんと判断はできない。

がんがおこった部位によって異なった症状がおこることもある。胃が食道と接するあたりの噴門部がんでは食物を飲み込むときにひっかかる感じが出たり、みぞおちが詰まる感じがする。
この噴門がんでは、みぞおちの重苦しさや吐きもどすことがおこりやすくなる。

んが進行しやや大きな塊をつくるようになると腹部の上から触れるようになる。また、腹水がたまって腹が膨れることもある。こういう症状が出たときほもう手遅れであることが多い。

胃がんは早期に発見さえすれば100%近く治るまでになっている。そのためには、症状が出ないうちに検診によって見つけることである。

診断方法

胃がんのかたちは、「早期胃がん」と「進行胃がん」、それぞれ次のように分類されている。
「早期胃がん」は隆起が目立つⅠ型、粘膜表面に平坦にガンがⅡ型(Ⅱa、Ⅱb、Ⅱcの3種類に分類)、陥凹している3型に分けられる。日本人にはⅡ型が多い。

「進行胃がん」は、ボールマンの四分類が一般的。Ⅰ型はポリープのようにもり上がっている。
Ⅱ型は胃潰瘍のようにえぐれている。
Ⅲ型は一部潰瘍化しているが粘膜下にがんがかなり広がっている。
Ⅳ型は潰瘍化していないが粘膜内に相当広範囲にがんが広がっている状態である。Ⅰ、Ⅱ型は比較的高齢者に多くタチのよいがんで(分化型)治りやすいが、Ⅲ、Ⅳ型は若い人に多く治りにくい。これは、がんがどんどん周囲の胃壁に広がっていくタイプ(未分化型)で、がんが小さくても腹膜の広範囲への飛び火(腹膜播種) をおこしやすいことなどによる。

なお、早期胃がんをボールマン分類の0型とし、早期胃がんに似た進行がんをⅤ型とすることもある。また、ボールマン分類のⅣ型と似たがんにスキルス(硬性がん)があるが、Ⅳ型が胃の粘膜内に広範囲にがんがちらばっているのと同時に、スキルスは粘膜内で硬い塊をつくっていることが多い。これも治りにくいがんとなる。

胃がんの診断は、まずⅩ線撮影によってどの種類のがんがどこにあるかが突きとめられる。Ⅹ線診断では、空腹時にⅩ線が透過しない造影剤(硫酸バリウムなど)を飲んでⅩ線撮影をし、胃の変形を見る(充盈像)。
専門医ほ、わずかな胃のかたちの変化からもがんを見つけ、種類や広がりをみきわめる。もっとも胃の内側にはひだが多く、ひだに隠れている小さながんはⅩ線写真に写らないことがある。

その問題を解決したのが「Ⅹ線二重造影法」という日本人が開発した消化器のⅩ線撮影法である。これほまず造影剤とともに胃に空気を送り込み、風船のように膨らませ、胃のひだをのばして小さな病変を見つける。
造影剤と空気の2つの像の境界を見るため「二重造影」の名がついている。この方法によって、米粒ほどの早期胃がんも発見できるようになった。胃のⅩ 線診断は、日本が世界でもっとも高い水準にある。

X線撮影とともに内視鏡検査もおこなわれるが、これも日本ほ世界のトップレベルの技術力をもっている。がんの部位を直接見ることができ、より正確な診断がつけられる。
細いチューブをのどから胃にまでさし入れていく内視鏡検査は、のどなどに局部麻酔をはどこすのでそんなに苦しくほない。もっとも胃がんの種類によっては、Ⅹ線撮影や内視鏡検査でほがんなのか潰瘍なのか、どのタイプのがんなのかの区別がつけにくいことがある。
その場合にほ、ファイバースコープを用いて疑いのある部位の組織を2~3か所、ごくわずかつまみとって、その組織を顕微鏡で調べる生検がおこなわれる。

胃がんと診断されて、それがどの程度進行しているかの判別基準にはさまざまな尺度がある。この進行度は、おもにがんの転移の度合によってⅠ~Ⅳ期までに分けられる。腹膜や肝臓、リンパ節などへの転移がなく、がんが胃袋の外側( 凍膜)にまでおよんでいなければⅠ期。リンパ節転移があり、わずかでも凍膜にまでがんが広がっているとⅡ期。リンパ節転移がもう少し広く、がんが凍膜に明らかに出ているとⅢ期。これに腹膜や肝臓への転移が加わっているとⅣ期になる。

治療でここまで治る

袋状の胃は6つの層でできている。一番内側から「粘膜」、「粘膜筋板」、「粘膜下層」、「筋層」。外側は「漿膜下層」と「凍膜」である。

胃がんの治りやすさは、がんがこの胃壁のどこまで広がっているか、胃以外の部位への転移の度合いによって決まる。粘膜までのがんであれはほぼ100セント治り、粘膜下層まででも90パーセントは治る(5年生存率)。

これらは、先の進行度ではⅠ期にあたる。Ⅰ期なら胃がんほ完全に治せるのだから、早期発見、早期治療がきわめて重要なのである。Ⅱ期になるとⅤ年生存率ほ約85パーセント、Ⅲ期では65パーセント、Ⅳ期では28ーセントになる。

治療は、早期がんであれ進行がんであれ、早期切除が原則である。

切除手術は、がんのある部分を中心に胃を大きく摘出する。同時に、がんがおこった部位に連絡しているリンパ節の切除も必ずおこなわれる。
リンパ節への転移は肉眼でほ確認できないので、この効果的な手術のためいがんの統計資料がどうしても必要になる。そうして世界に例のない「がん手術マニュアル取扱い規約」が完成した。リンパ節転移ほ見えないが、見て確認しているのと同じように手術が進められるのである。

放射線療法はあまりおこなわれないが、手術前後にマイトマイシンCや5FUあるいはアドリアマイシソやシスプラチンなどの抗がん剤は用いられる。
さらにBRM(生物学的効果増強剤) が用いられることもある。

胃がんは、早期発見技術の向上ともあいまって手術によって80~90パーセントは治るようになった。この治る早期がんは1950年代は全手術の4パーセントにすぎなかったが、1960年代に17パーセント、70年代に32パーセント、80年代には42パーセントにものばるようになった。これほど早期がんが多くなると、手術をしないでも治るケースも増えている。

症状

胆汁やすい液が流れこんでくる部位、「乳頭部」に発生するものが約90%を占めている。がんができるとその流出口がふさがれて胆汁が胆のうなどにたまり、発熱する。
最初は、原因不明の発熱とされる。さらに進むと黄痘がおこる。すい液の流れがとどこおるとすい臓が炎症をおこし、みぞおちから背中にかけて激痛が走ることがある。
吐き気やお腹の張りといった症状がみられることもある。十二指腸潰瘍ほ珍しくない病気だが、それががんに進むケースはない。したがって、がんがあっても十二指腸潰瘍の主症状である空腹時の腹痛がおこることはない。

診察

バリウムを飲み、Ⅹ線撮影で通過障害がないかどうかを調べる。また、乳頭部にがんの疑いがあるときほ、「十二指腸ファイバースコープ」を使って精密に調べる。このファイバースコープが登場したのは20年以上も前だが、そのおかげで乳頭部のがんの発見が容易になった。
また、がんが発生するとすい液と胆汁の流れが滞りすい管や胆管が拡張するので、超音波で拡張のぐあいを調べる方法もおこなわれる。

ここまで治る

珍しいがんなので、発見は遅れがちになる。十二指腸だけの検診はおこなわれていない。そのためもあって十二指腸がんの治癒率ほ、残念ながら40%程度である。

もっとも大半を占める乳頭部のがんだけでいえば治しやすく、5年生存率は約40%をこえている。

治療は切除手術をおこなう。十二指腸からすい頭部にかけてを切除する手術がもっとも多い。この手術はすい臓がんのときにもおこなわれる。十二指腸とすい頭部を切り取ったくあと、残ったすい臓と小腸の一部である空腸をつなぐ。このとき、すい液がもれないよぅにすい臓を腸で包み込むように重ねてつなぐ。黄痘が出ているときの手術は危険が大きいが、最近ほ黄痘を改善してから手術するので、治療成績は向上した。化学療法や放射線療法がおこなわれることほほとんどない。
すい臓の一部を切り取るので、すい臓の機能が低下し「糖尿病」をおこすおそれがあり、手術後に注意しなくてはならない。再発や転移がおこりやすく、半年から1年以内に肝臓への転移がおこることが多い。

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