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ビタミンEを十分に摂ることで薬剤性肝障害、脂肪肝を防ぐことができる

ビタミンB群ビタミンCが肝臓にとって欠かせないビタミンであることは説明したとおりですが、さらに肝臓にとって強力な助っ人となってくれるビタミンがあります。それがビタミンEです。アルコールの分解工場である肝臓を保護する作用を発揮します。
ビタミンEの働きというとイメージするのは強力な抗酸化作用ですが、肝臓にもこの作用が重要ということになります。

なぜ、ビタミンEが肝臓を守ってくれるのでしょう。まず、ビタミンEはなんといっても強力な抗酸化作用です。。すなわち、肝細胞の膜を傷つける過酸化脂質ができるのを防いでくれる働きです。

過酸化脂質とは、脂肪を構成している成分の一種である不飽和脂肪酸が酸化されてできる物質で、細胞膜を傷つけ、その働きを低下させるため、量がふえれば肝細胞も障害を受けます。

ところがビタミンEをとると、その抗酸化作用をフルに発揮して、過酸化脂質ができるのを防いでくれるのです。ビタミンEにはもう1つ、脂肪の代謝を高める作用もあります。脂肪の代謝がうまくいかないと、肝臓には処理しきれない脂肪がたまって、脂肪肝を引き起こす原因にもなりかねません。事実、脂肪肝の人たちの血液を調べてみると、ビタミンEが減少していることがわかります。

このようにビタミンEが不足すると、体内に過酸化脂質がふえて肝細胞も障害を受けやすくなり、しかも脂肪肝を起こしやすくなるのです。

ところで最近、薬剤性肝障害と呼ばれる問題が大きく取り上げられています。抗生物質、血圧降下薬、鎮痛消炎薬、便秘薬、抗結核薬などの薬のうち、ある種のものは人によって肝障害を起こすことがあるのです。

この薬剤性肝障害には先ほどの過酸化脂質が関係していることは、いまではもう学会の定説となっています。

実際、障害のある患者さんの血液を調べてみると過酸化脂質が多く、障害が改善されるとそれが少なくなってきます。ネズミを使った実験でも、ビタミンEが不足したネズミに肝障害を起こす薬を与えていると肝障害を起こし、一方その薬を与えてもEをいっしょに飲ませると過酸化脂質がふえないことが確かめられています。

いいかえれば、薬を飲むときには、ビタミンE をいっしょに服用すると肝障害を未然に防ぐことができるというわけです。

さて、では肝臓保護のためにはどれくらいの量のビタミンEをとればよいのでしょうか。よくl日に8~10mg程度がビタミンEの最低必要量といわれます。
しかし、これは必要にして十分な量というにはほど遠い量で、少なくとも3けた、つまり100mg以上はとらなければ期待するほどの効果は望めません。
ビタミンEはとりすぎても過剰症の心配はありませんから、お酒を飲む機会が多い年末年始などは、1日300~600mgほどとって肝臓の保護に役立てたいところです。

アルコール摂取の前後で3グラムのビタミンCを摂ると悪酔いや二日酔いをせずにすむ

ビタミンB群とともに、酒飲みの心強い味方となってくれるのがビタミンCです。ご存じのように、お酒を飲むと、吸収されたアルコールは肝臓に行きます。
肝臓でのアルコール処理能力は、1時間に8~10g程度。日本酒に換算するとコップ土2杯、ビールならコップ1杯といったところです。
これを超える量を飲んだ場合、余分なアルコールは血液中に残ってしまいます。

さて肝臓へと行き着いたアルコールは、すぐに分解され始めます。アルコールはまずアルコール脱水素酵素によっていったんアセトアルデヒドという物質になり、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素によって水と炭酸ガスにまで分解されます。
1本数万円以上の高級ブランデーも、行く末はただの水と炭酸ガスになって排泄されてしまうというわけです。

しかし、ここで問題なのは、先ほどのアセトアルデヒドが私たちの体に有害な物質であるということです。というのも、この物質は毒性が強く、血液中に残っていると頭痛や吐きけなどの二日酔い症状を引き起こすからです。

こんな二日酔いを避けるには、いうまでもなく、このアセトアルデヒドをすばやく処理することがいちばんです。ビタミンCが効力を発揮してくれるのはまさにこの段階です。

というのも、ビタミンC には先ほどふれた2つの分解酵素の働きを高める作用があり、アルコールの分解排泄を強力に推し進めてくれるからです。
つまり、アルコールの分解が滞るためにできる有害物質が肝臓に害毒を与えたり、悪酔いや二日酔いを起こしたりする危険を、かなり防止してくれるのです。

肝臓にはまた、チトクロムP450と呼ばれる酵素が含まれています。この酵素もやはり肝臓の解毒作用に重要な働きを持っています。

ビタミンCはこの酵素の働きを高めることが知られています。この点でも、ビタミンCは肝臓の解毒作用に大きく寄与しているわけです。

そのうえビタミンCには、二日酔いのもう1つの原因物質であると考えられるフーゼル油(風味を高めるために酒に添加される物質)の分解を早めるという効果もあります。
さらには、食べ物に含まれる食品添加物などの毒物や、アスピリンなどの薬物の無毒化 のためにも、ビタミンCは有効に働きます。

このようなビタミンCのすぐれた効果を得るためには、お酒を飲む前に3 g、飲み終わつたあとに3 gのビタミンCをとることがおすすめです。
これだけとっておけば、悪酔いはもちろん、二日酔いをすることは少ないでしょう。しかも、飲酒前にビタミンCをとっておくと、アルコールの分解が早まり、あまり酔わなくなります。ただし、そのためにかえって飲みすぎてしまうおそれもあるので注意が必要です。

ビタミンCを多く含む食品 を参考に前後で3g以上のビタミンCを摂るようにしましょう。

特効栄養素コリンは、お酒を飲みつつけてもしっかり肝臓を守ってくれる

コリンという栄養素を耳にしたことがあるでしょうか。実はこれもビタミンB群の仲間なのですが普通の食事をしている限り欠乏症になることはないため、ビタミンとは呼ばず、〝ビタミン様物質〞と呼んでいます。このコリン、酒量の多い人には、とても頼もしい良友です。何を隠そう、コリンには、脂肪肝を防ぐ働きがあるからです。

脂肪肝とは、肝細胞の中に多量の脂肪がたまることをいいます。これは、アルコールの飲みすぎや脂肪の多い食品のとりすぎによって起こる病気ですが、コリンが不足しても起こるのです。

というのは、アルコールや脂肪が肝臓で代謝されるときに、コリンが十分ないと、それが円滑に行われないからです。いわば不完全燃焼を起こすようなもので、そのため使いきれない脂肪が肝臓にたまると考えてよいでしょう。

このことはすでに、ネズミを使った実験でも証明されています。ネズミに低タンパク低コリンのえさと水にアルコールをまぜたものを与えると、脂肪肝になってしまいます。ところが、脂肪肝になったネズミにコリンを多量に与えると、肝細胞が正常に戻ることが実証されたのです。

コリンは人間の体内でもある程度はつくることができます。しかし、脂肪肝になるほど多量のお酒を飲む人には、食品からも積極的にとる必要があります。

コリンは、ピーナッツ、枝豆、大豆などの豆類、レバー、卵などにたくさん含まれています。ちなみに大豆の場合は、100g中に255gものコリンが含まれます。

また牛のレバーには、牛肉と比較すると約4倍ものコリンが含まれています。コリンは水にとけやすい性質がありますが、枝豆をゆでる程度なら問題ありません。
熱には強いので、大豆などはゆで汁や煮汁ごと食べるようにすると十分に摂取できます。幸いなことに、これらコリンを多く含む食品は、酒の肴に最適なものばかり。お酒を飲むときには、ぜひ一品とり入れることをおすすめします

肝臓の代謝促進に必要なビタミンはビタミンB群

肝臓の働きにとって大切なのは、たんぱく質だけではありません。

各種のビタミンも欠かすことのできない栄養素です。肝臓では、たとえばデンプンをブドウ糖につくりかえるなど、栄養素のつくりかえ作業や新しい物質の合成(これらを代謝といいます)、また不要な物質の分解・解毒などを行っています。

それらは主に酵素の働きによるもので、ビタミンは、その酵素の働きになくてはならない存在なのです。このため、肝臓に何か障害があると、たとえば体内でのビタミンの合成などはうまく行われません。

ビタミンの中でも、とりわけ肝臓と深い関係にあるのは、B群ビタミンです。これは、Bl、B2、B6 B12、ニコチン酸アミド(ナイアシン)、パントテン酸、葉酸などをさします。

これらのB群は、体内の代謝をスムーズにし、糖質や脂質、タンパク質などをエネルギー源に変えるのに欠かせないビタミンです。そして体の中では、肝臓の細胞のミトコンドリアという小器官に多く含まれています。ビタミンB群が不足すると、肝細胞の機能はたちまち低下し、代謝障害を起こして、だるさや食欲不振といった症状があらわれてきます。逆に、お酒の飲みすぎなどで肝臓に障害が起きると、多くの場合、ビタミンB群欠乏症が同時に進行することも確認されています。

最近、アルコール飲料の売而要は増加の一途ですが、アルコールの害とビタミンB群の関係については次のような実証例があります。
毎日5合以上のお酒を飲む120人を調べたところ、約6割がアルコール性肝硬変や肝炎、脂肪肝など、なんらかの肝臓障害がありました。そして、血液中のビタミン濃度を調べてみると、潜在的なビタミンB群欠乏症の人が非常に多いという結果が出たのです。

お酒をたくさん飲む人の肝臓をいたわるビタミン

では、なぜアルコールによる肝機能障害のある人に、ビタミンB群欠乏症が多く起こるのでしょうか。ビタミンB群はすべて小腸で吸収されて、肝臓でビタミンとして働くようになります。

ところがアルコールをとりすぎると、腸粘膜に障害が起こり、まずこの吸収が妨げられるのです。そして第二に、たとえ小腸でなんとかビタミンB群が吸収されても、肝臓の機能が落ちていると、せっかくのビタミンB群も働くことができないのです。

ビタミンB群が働かなければ、肝臓の細胞に影響して、B群の欠乏はいっそうひどくなります。その結果、この悪循環がどんどん広がっていくというわけです。これがまさに酒飲みにとってビタミンB群がいかに大切であるか、そして肝臓に対する重要性なのです。

実際、アルコール性肝炎や脂肪肝などの治療では、ビタミンB群を大量に補給する方法がとられています。代謝のかなめである肝機能の乱れを修復するには、どうしてもB群が必要なのです。酒飲みを自認しているかたは、日ごろからビタミンB群不足に陥らないようう食生活に注意を払い、お酒のおつまみにもB群を多く含む食品をたっぷりとるように心がけましょぅ。

ビタミンB群を豊富に含む食品は、主に次のようなものです。

肝臓を健康に保つには、良質なたんぱく質が必須

私たちの体に欠かせない栄養素には、たんぱく質、炭水化物(糖質)、脂肪、ビタミン、ミネラルなどがあります。中でも肝臓のためにいちばんたいせつな栄養素はなんといってもたんぱく質です。

なぜ、たんぱく質が肝臓にとってそれほど大切なのというと、たんぱく質は主に次のような重要な働きを持っているからです。

  • 酵素をつくる材料になる
  • 肝細胞の修復に必要

の2点です。

まず酸素をつくる材料になるという点からです。

肝臓は、食べ物からとったいろいろな栄養素を体内で利用したり蓄えたりするために、用途に応じてつくりかえる働き(代謝)をしています。
また有害な物質を分解して無害な物質につくりかえる働き(解毒)も行っています。

ところが、このような肝臓の仕事を請け負っているのが、たんぱく質からできている数多くの酵素であるため、たんぱく質が十分にないと肝臓の機能を正常に保つことができないのです。

お酒を飲む人は、アルコールを分解するために多くの酵素が必要ですから、その分よけいにたんぱく質を補給しなければなりません。
次に肝細胞の修復についてです。

アルコールを多量に飲むと、肝臓の細胞が壊されます。肝臓は、細胞が壊されてもすぐに細胞がふえて元に戻るという不思議な臓器ですが、細胞自体はタンパク質が主材料となって構成されているため、肝細胞の破壊と修復を繰り返している人は、たんぱく質がたくさん必要なのです。

かつては、肝臓病になったら低脂肪、低たんぱく質の食事にしなければならないといわれていた時期もありました。しかし、たんぱく質には以上のような役割があることがわかり、いまでは肝臓障害で肝細胞が壊されている人の治療には高たんぱくの食事が与えられるようになっています。

ところで、食べ物からとったたんぱく質は、そのままの形で体内で利用されるわけではありません。たんぱく質は腸から吸収されるときにアミノ酸という物質に分解され、肝臓でアルブミンをはじめとするさまざまなタンパク質に組みかえられます。というのも、肉や魚のタンパク質はそれぞれ特有のアミノ酸の組み合わせから成り立っていますが、私たちは人間ですから独自のアミノ酸の組み合わせによって人間特有のたんぱく質がつくられるのです。

さて、このたんぱく質は、人体のほとんどの器官に使われ、肝臓自体もたんぱく質からできています。しかし、肝臓の機能が低下するとたんぱく質をつくることができず、体の中でそれが減少してしまいます。そこで肝臓の働きを強くして、たんぱく質を積極的につくらせるよう栄養を補給してやらなければなりません。

では、どのような食品を食べて栄養を補給すれぼいいのでしょうか。肝臓がアミノ酸からたんぱく質をつくるとき、すべての種類のアミノ酸が欠かせません。

一部のアミノ酸は体の中で合成できますが、ほかに体内では合成できず、どうしても食べ物からとらなければならないアミノ酸もあります。
これを必須アミノ酸といい、8種類あります。つまり、人間に必要なタンパク質を得るためには、これらの必須アミノ酸を必要十分に含んだタンパク質をとることが望まれます。

必須アミノ酸をバランスよく含んでいる食品かどうか、それをはかる尺度にアミノ酸価があります。最も産想的なのは、アミノ酸価が畑かそれに近い価を示すもので、畑に該当する食品は卵や牛菰、肉類などです。

肝臓を強化するために必要たんぱく質(男性)

  体重 エネルギー(kcal) たんぱく質(g/日) 動物性たんぱく質
(g/日)
30~39歳 55kg 2080 94 94
60kg 2280 102 102
65kg 2480 111 111
40~49歳 55kg 2000 85 85
60kg 2160 93 93
65kg 2360 101 101
50~59歳 55kg 1880 77 77
60kg 2040 84 84
65kg 2200 01 91
60歳~ 55kg 1600 63 63
60kg 1750 69 69
65kg 1920 75 75

肝臓への良質なたんぱく質は今も昔もシジミです。

栄養のバランスが整った食事(良質のタンパク質とビタミン類をたっぷり)が肝臓には大切、カロリーオーバーはNG

肝臓を元気にするのはバランスのとれた食事

現在、肝臓病の治療の柱となっている基本はやぱり、食事療法です。治療というと、どうしてもイメージするのは薬ですが、肝臓病に限っては、薬物療法が中心にはなりません。

GOT、GPTが高い、さらに値が不安定ならシジミ(シジミの使用感、口コミ)に紹介されているのは、シジミでさまざまな肝臓の不調を改善した方々の体験談です。

なぜなら、薬という異物を代謝(体内にとり込んだある物質を他の物質に変化させること)するのも肝臓の役目の1つだからです。
肝臓は解毒する臓器なのです。

薬は風邪薬であれ、胃腸薬であれ、いったん肝臓で代謝され、それが全身に運ばれてはじめて薬としての効果をあらわします。

しかし、肝臓に障害があるということは、すでに肝臓が弱っていて、本来の働きさえおぼつかなくなっているということです。体を維持するための栄養代謝や解毒作用だけでフーフーいっているところへ薬を送り込めば、肝臓はさらに無理を重ねなければなりません。

しかも、人体にとっては、薬物もいわば「毒」の1つです。そんなわけで、肝臓病の場合はむやみに薬を使用できないのです。

結局、現在のところ、食事療法にまさる療法は開発されていません。この食事療法とは「高タンパク・高ビタミン・適正カロリー」食をとることです。実をいうと、ついひと昔前までは、肝臓病の食事療法では「高タンパク・高カロリー」食がすすめられていました。

しかし、最近の日本人の食生活を見ていると、明らかにカロリーの過剰摂取が目立ちます。現に、肝臓病が肥満や脂肪肝から起こるケースもふえており、糖尿病との合併も見られます。お酒の多飲以外にカロリー摂取過多が原因の脂肪肝がとても増えています。見た目にはスレンダーな女性でも脂肪肝という人も増えています。

したがって、あえて高カロリー食を心がける必要はありません。それよりも良質のタンパク質とビタミン類をたっぷりとり、カロリーオーバーにならない食生活が望まれます。

基本的には、栄養のバランスのとれた食事が第一です。そして、このことは肝臓病の人のみならず、肝臓の健康を心がける人にもそのままあてはまります。

肝臓を強くする食生活上の5つのポイント)

  1. 1日の必要エネルギー(カロリー)を過不足なくとる
  2. 肝臓の細胞の再生のためには十分なエネルギーが必要です。健康な成人の1日の必要エネルギー量は2200~2400kcalとされていますが、運動制限のある人はその90%程度に抑えましょう。

  3. 良質のたんぱく質をとる
  4. 1日最低90gのタンパク質をとります。

  5. ビタミン類をしっかり摂る
  6. ビタミン類は肝臓の機能を活発にします。お酒をたくさん飲む人の肝臓をいたわるビタミン
    なども参考にします。

  7. 食物繊維をしっかり摂る
  8. 便秘は肝臓に負担をかけます。食物繊維は便秘解消に効果大。

  9. 食事は規則正しく朝・昼・晩に分けて3回とる
  10. 規則的な食事が肝臓の負担を軽くします。朝食抜きは肝臓に悪影響

肝臓強化に必要な各種栄養素については、新しく発見されたものもあり紹介していきます。

「子供のガン」早期発見、早期治療は母親次第

子供のガン基礎知識

  1. 子供のガンは、胎児の時代にすでにその「芽」ができていることが多い。
  2. 大人のガンが皮膚や粘膜から発生しやすいのに対し、子どものがんは肉腫が多い。
  3. 子どもは細胞の成長が早いので、ガンの進行も早い。気づいたら、ただちに診察、治療を受ける。
  4. 乳幼児のおなかに大きなしこりができていたら、ウィルムス腫瘍か神経芽細胞腫を疑う。
  5. ガン特有の症状は少なく、元気がない、食欲がない、発熱、体重減少などの全身症状で気づくことが多い。
  6. 子どもは異常を訴えないので、お母さんの注意が大切。とくに、首のリンパ節のは腫れ、皐丸の腫れ、腹部の腫れ、眼の異常(猫の限のように光る)に注意。
  7. 子どものガンには、放射線や抗がん剤がよく効き、治癒率も向上している。
  8. 子供のガンは、治療後2年を経て異常がなければ、再発の危険は非常に低くなる。
  9. 子どもガンには、遺伝的素因や奇形と関係が深いものも多い。

子供のガン

15歳以下の子どもでガンになるのは年間約2000人あり、肺炎や疫痢などの感染症、症死亡者が抗生物質で激減している今日では、ガンは不慮の事故に次ぐ死因になった。とくにがんが多いのは4歳までの乳幼児である。お母さんのショックは大きいが、子どものガンの専門医ほ「多くのガンは治せる」という自信を持つようになった。よく効く抗ガン剤の登場など、治療成績の向上が著しいからである。

治療も手術による器管や臓器の摘出をできるだけ避け、化学療法や放射線で治す方向に進んでおり、大人のガン以上に理想的な治療が確立されつつある。これは、子どものガンがおとなのガンとはかなり異なるためでもある。

大人のガンは、皮膚や粘膜などからだを包む、あるいは管の内面をおおう組織から発生するものが多いが、子どものガンはその内部から発生する「肉腫」が多いという特徴がある。また、おとなのガンは老化と関係が深いとされ るが 、子 ども ガンは からだ の発育と関係が深い。胎児期に消えるはずの細胞が残ってガン化することがある。発生異常がガン結びついている場合にほ、奇形との合併がしばしばみられる。
これらのがんは、胎児期から増殖を始めているようだ。遺伝に原因があるものも少なくないが、母体の中にいる間に「がん誘発因子」と出あった可能性も高い。

子どものがん細胞は、増殖スピードが早く、大人のガンの10倍ともいわれる。治療が1日遅れたために後遺症が残ったり、生命を左右するおそれもある。

一刻も早い発見と治療が必要である。「様子を見て 」という余裕はないと知らなければならない。だが、子どもは異常を訴えないし、ガン特有の症状も少ない。元気がない、食欲がない、発熱した、体重が減ったなどちょっとした変化に母親が気づき、見つかるのが子どものガンである。
お母さんが、日ごろから子どもの様子に注意し、入浴時などにからだのすみずみまで手で触れていることがたいせつである。くびのリンパ節、おなか、睾丸の腫れなどにほとくに注意する。

ガンになっても、子どもには旺盛な自然治癒力が備わっているし、子どものガンに対しては、放射線や抗ガン剤がよく効く。たとえ転移があってもおとなのがんより治る望みは高いので、あきらめずに子どもの生命力と治療の進歩を信じて見守っていくことである。

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)

腎臓にできる子ども特有のガンで2歳に多く、約80%が5歳までに発病する。子どものガンのほぼ10%を占める。奇形との合併率が高い。
眼の虹彩が欠損している「無虹彩症」、手足が異常に肥大する「半身肥大」などにはとくに高率に合併する。これらの奇形は、遺伝子の座である染色体の2番目の異常が原因とわかったが、ウィルムス腫瘍もその染色体異常と関係しているらしい。

初期症状はない。お腹にガンの大きなしこりができて、ようやくお母さんが気づくことが多い。そのためしこりが1kg以上になっていることが珍しくない。
発熱、食欲不振、腹痛などの全身症状で発見することもある。超音波診断で90%はわかるが、CT、血管造影によるレソトゲン撮影や腎孟尿管撮影などの画像診断がおこなわれる。

このガンはおとなのがんとは異なり、周囲の組織にくいこんでいくことが少ないため、かなり大きなものでもすっきりと取り切れることが多い。
そのおかげで、2年生存率は腎臓に限定したがんならば80%以上が期待できる。周囲に広がっていても、完全に切除できれば65%以上にのばる。

補助的に抗ガン剤と放射線療法が実施されるが、抗ガン剤が効きやすい子どものガンのなかでも、ウィルムス腫瘍ほとくに効果が高い。治療後2年間異常がなければまず安心してよく、おとなのがんを含めてもっとも治しやすいガンである。ただ、放射線の後遺症で骨の発育不良や別のガンになりやすい体質もまれにあるので、定期検査は受けてほしい。

神経芽腫

内臓や血管など臓器の働きをコントロールしている交感神経の細胞におこる。くびや、胸の縦隔洞、副腎、大動脈周辺、骨盤内のなかの神経におこりやすい。
0~2歳の幼児に多く、ウィルムス腫瘍と同じようにおなかのしこりや全身症状が発見のきっかけになる。骨に転移しやすいので、足の痛みや頭のコプ、眼の周辺の腫れなどの骨転移で気づくこともある。
低年齢で発見されるほど治癒率( 2年生存率) が高いため、最近は乳児の6ヶ月検診時に「VMA検査」が導入されている。このガンは早期のものでも、尿中に「VMA」という物質が出ることを利用している。

早期例では手術で取り切ることが可能だが、進行した例では手術による切除が難しいので、強力な化学療法が中心になる。しかし、そのため副作用として骨髄の造血機能の低下がおこりやすいので、骨髄移植によって骨髄の働きの回復がほかられる。

リンパ節や骨に転移してしまうと治癒率は低くなってしまうが、広がっていなければ2年生存率は90%近い。

肝臓、皮膚、骨髄など特定の場所に広範に転移しているケースもあるが、この場合の2年生存率ほ不思議と高く60%をこえる。そのため、これは転移ではなく「多発性のガン」ではないかという説がある。また、「VMA検査」で早期発見されたものでは生存率は96%という成績もでているが、神経芽腫にほ自然治癒するものがあり、本来はほっておいても治ったほずのものが発見され治療されたため高い治療成績が得られているのでほないかという説もある。

肝芽腫

肝臓におこるがんで、0~2歳が発病のピークである。おなかのしこりで気づくことが、ほとんどだが、黄痘が出ることはない。おとなの肝臓がんは肝硬変の併発が多く治しにくいが、子どもの肝臓ほ回復力が大きいので思い切ってガンを切除できる。ガンを完全に切除できれは、生存率はかなり高い。
抗がん剤がよく効くので、これでがんを小さくしてから切除することも試みられている。

横紋筋肉腫 (おうもんきんにくしゅ)

筋肉にできるガンで、からだ中どこにでも発生する。膀胱、膣など泌尿器や生殖器に多い。症状は、膀胱の場合は尿が出にくくなったり血尿がある。膣の場合ほ膣から肉腫がの最近は抗がん剤や放射線療法が発達したおかげで、手術前にガンを小さくしてからの切除が可能になった。
ガンが子どもの頭大になった膀胱を、放射線照射で握りこぶし大まで縮小することも可能である。この方法によって摘出範囲も小さくてすみ、生存率も10年前の2倍になっている。

悪性奇形腫

おもにお尻の仙骨周囲(尾てい骨)におこる不可思議ながんである。卵巣や睾丸に発生することもあり、2歳以下に多い。「体の発生」に関係したさまざまな組織がありえない場所に発生する。良性のものでは髪の毛や骨、歯、皮膚などが生えてくることもあるが、放置すると悪性化する危険があるので手術によって切除する。
抗がん剤が有効で、肺などに転移があっても助かる例が、年ごとに増えてきている。

「血液とリンパのガン」白血病は治る時代になった

血液とリンパのガンの基礎知識

  1. 白血病や悪性リンパ腫は不治のがんと思われてきたが、よく治っているケースもある。
  2. 子どもの白血病は、複数の抗がん剤を用いる計画治療で3三割以上が永久治癒している。
  3. 0~14歳の小児白血病は増えていないが、60歳以上の白血病が増える傾向にある。
  4. 白血病の原因としてウィルスが疑われてきたが、ATLについてほそれが証明された。
  5. 原因不明の高熱、口内の腫れ、出血、手足や腰の痛み、くびや顎の下などの腫れなどがあったら急性白血病を疑う。
  6. 悪性リンパ腫の死亡者は男性が女性の2倍で、50~60歳代に多い。
  7. 悪性リンパ腫の症状は、リンパ節が腫れて触れるが痛みはない。次に発熱、だるさ、食欲不振や体重の減少がおこる。
  8. 悪性リンパ腫の治療は10週間1単位の複数の抗がん剤の大量投与が中心。また悪性リンパ腫は放射線がよく効くため、完全寛解率が70%にものばる例が出ている。

血液とリンパのがん

血液のガン、リンパ組織のガンで亡くなった人は年間1万2258人で、ガン死亡者の約6%を占める。死亡者の約60%が男性である。これらのがんはお涙ちょうだいの小説などで劇的に描かれることが多いため、不治のガンと思っている人が少なくないが、かなり治りやすくなってきている。血液に含まれる細胞がガン化するのが白血病などの血液ガン。リンパ節などにおこるのがリンパ組織のガンである。

血液のガン

ガンが起きる場所

人のからだのなかにほ、体重の12分の1から22分の1の血液が循環している。体重60kgの人ではビール瓶で7本前後の4.6~5トルになる。この血液は、色濃く沈澱する部分と透明な上澄みの部分に分かれる。濃い部分を「血球成分」、上澄みを「血漿」と呼ぶ。血球成分には、赤血球と白血球と血小板などが含まれているが、このなかにガン化した細胞が増えていくのが血液ガンである。血液ガンは、ガン化した細胞の種類や病気の進みぐあいなどによって「急性非リンパ球性白血病」、「急性リンパ球性自血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」などに分けている。

赤血球や白血球、リンパ球などの血液細胞ほいずれも骨の中心にある骨髄で作られているが、そのおおもとは同じ細胞である。その共通の細胞が成長とともに、さまざまな役割をもった血液細胞に変身していく。血液ガンはその血液細胞の成長過程で、おかしな血液細胞ができ、増殖していく病気である。

どんな人に起きやすいか

白血病は少しずつ増えており、なかでも治りにくい急性白血病(急性リンパ性白血病)が目立っている。もっとも0~14歳の小児白血病は増えていないのに、60歳以上の白血病が増える傾向にある。

子どものガンの約半数ほ白血病だが、小児白血病の発生のピークは3~4歳なので、この年齢の子どもをもつお母さんは注意する。年間1200人の子どもが白血病になっていると推定されている。子どもの血液ガンの種類としては、骨髄性白血病とリンパ性白血病で70%を占める。白血病の原田ほまったく不明だが、南西日本に多い成人T細胞白血病(ATL)にかぎっては、ウィルス(HTLV-1 ) が原因であることが証明された。人の間ガンでウィルスが原因であることがわかったのはこの白血病が初めてで、世界に大きな衝撃を与えた。ほかの白血病がウィルスと関係しているかどうかは、まだわかっていない。遺伝が関係しているという説もある。

自覚症状

急性白血病では、ほとんどが原因不明の高い発熱がおこる。口のなかや歯ぐきの腫れや出血、皮下の出血、下血や鼻血なども多い。
脳内出血がおこる例もある。繰り返しおこる風邪のような症状(風邪の症状はこちら)や原因不明の貧血も要注意である。骨に異常がおこるため、手足や腰に痛みを覚えることがあるが、X線撮影では異常が発見されないことが少なくない。
子どもの白血病では、発熱や手足の痛みからリウマチ熱と間違えることがある。また、くびや顎あごの下などのリンパ節の腫れも出やすい。慢性骨髄性白血病では、これらに加えて上腹部(脾臓) 腫れに触れて気づくことが多い。この腫れの影響で胃に圧迫感がおこりやすい。

診断方法

血液ガンが疑われてまずおこなうのは当然ながら血液検査で、白血球の数や種類の割合いなどが調べられる。同時に赤血球や血小板の数も調べる。
また、リンパ球細胞の表面の特性を生化学的に調べる検査法もー般的になった。骨髄の組織を採取する骨髄穿刺もおこなわれる。血液ガンのおおもとがここにあるため、診断はかりでなく治療の効果をみるためにも骨髄穿刺による検査がしばしばおこなわれる。
採取した細胞を染色して、顕微鏡で調べるのである。こうした検査によって、きわめて緻密な血液細胞の鑑別が可能になり、もっとも効果的な治療方針が選べるようになっている。

治療の成果

治療は、抗ガン剤を用いる化学療法が中心になる。シクロホスファミド、ピンクリスチソ、6MP 、アドリアマイシソなど数多くの化学療法剤が開発されており、それらの複数を組み合せて投与されるのが一般的である。
白血病細胞の増殖の速度は、正常細胞よりも若干遅い。その増殖速度に合せて、それぞれの段階の弱点にもっとも効果的な抗ガン剤を与えていくのである。このため、いつどの薬をどれだけ与えるかの厳密な治療計画が立てられる。これによって、多くの白血病が治せるようになった。
これらの抗ガン剤には副作用があり発熱や食欲不振、脱毛などがおこりやすい。貧血もお‘】な多いが、これは輸血によって補う。また、抗ガン剤の作用で細菌感染に対する免疫能力が低下する。何らかの感染症をおこすと、防衛力が低下しているため症状が悪化しやすく、初期の治療中は無菌室に隔離することが多い。抗ガン剤による治療のはか、脾臓摘出による生存期間の延長が試みられることもある。また、急性骨髄性白血病などでは健康着から採取した骨髄を注射する骨髄移植も効果的な治療としておこなわれるようになった。

ガンは5年生存を治癒のメドとするため「5年生存率」という言葉を用いるが、血液ガンではこれに加え、症状が消え骨髄が正常の状態になったときを「完全寛解」と呼んで治療のひとつの目標にしている。
急性非リンパ球性白血病は治しにくく、平均生存期間ほ完全寛解後、1.5~2年である。
急性リソパ性白血病では成績は向上している。特に子どもの白血病でほ、完全寛解率は90%を超え、5年生存率も50~70%に達し、30%以上の子どもが永久治癒するようになった。

リンパのガン

発症する部位

血球成分と血漿からできている血液は血管網を流れているが、このうち血漿だけは血管網とは別の体液循環網へも連絡している。そのもう1つの循環網をリンパ系と呼ぶ。ここを流れている体液ほ血漿よりも少し水っぽく「リンパ液」と呼ばれる。リンパ系には赤血球は入り込めないので透明だが、白血球の一種であるリンパ球は流れている。このリンパ系は、からだの外から侵入してくる細菌や異物を叩きつぶす防衛機能を担っている。その戦いがおこなわれる砦が、リンパ節である。
リンパ組織のガンは、おもにこのリンパ節におこっている。これらリンパ組織におこる悪性腫瘍を総括して「悪性リンパ腫」と呼んでいる。これにはきわめて多くのタイプがあって、その分類などほまだ明確にはされていない。細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病などの種類がある。

どういう人に起こりやすいか

悪性リンパ腫による死亡者は男性が女性の2倍で男性にきわだっており、50~60歳代に多い。白血病のように子どもには、ほとんどみられない。
原因ほ不明だが、ハワイに移住した日本人のホジキン病の発生率ほ国内の日本人よりも高く、死亡率が白人と同水準にあることから、環境に原因があるのではないかといわれてきた。動物の悪性リンパ腫では病因ウィルスとの因果関係があきらかにされているが、人間でほまだ証明されていない。

自覚症状

リンパ節におこるガンであるため、そのリンパ節が腫れて触れる。はじめは、痛みもないが、やがて発熱、だるさ、食欲不振や体重の減少がおこる。進行するにしたがってあちこちに飛び火して、腹部にしこりが触れたり、発疹が出たりする。リンパ節のがんではあるが、約40%はリンパ節以外の部分におこる。特にのどの周囲に多い。胃や腸におこり、胃墳瘍や胃がんと似た症状をおこしたり、皮膚では皮膚病と間違えることもある。

診断

どういうタイプの悪性リンパ腫なのか、進行度がどこまでいっているかをみきわめることが重要である。それによって治療方針が大きく異なるから。
リンパ管に造影剤を入れて行うX線撮影、腫瘍にとり込まれやすい放射性同位元素を注射し集中している部位を発見するシンスキャンなどがおこなわれる。
また、腫れている部分の組織を採って調べる生検もおこなわれる。進行度は、ある1つの領域のリンパ節にとどまっているのがⅠ期、2つ以上に広がっているのがⅡ期、横隔膜の両側にまで広がっているのがⅢ期、さらに多くの臓器へ広がっているのがⅣ期である。

脳腫瘍「集学的治療によるめざましい成果」

脳腫瘍の基礎知識

  1. 脳腫瘍は、良性、悪性をとわず頭蓋骨で閉まれた内部におこる腫瘍である。
  2. 脳組織および脳に付属する組織からおこるものを「原発性脳腫瘍」とよぶ。一般に「脳腫瘍」とはこれをさす。肺や乳房のがんから脳に転移したものは、「転移性脳腫瘍」と呼んで区別している。
  3. 原発性脳腫瘍の半分が「グリオーマ」を中心とする悪性腫瘍(がん)で、残りの半分は良性腫瘍である。
  4. 原発性脳腫瘍は1万人に1人の割合で発生しており、けっして少ない病気ではない。
  5. 悪性の脳腫瘍は、女性より男性、若年者より高齢老に発生しやすい。
  6. 症状は、腫瘍ができた部分の機能低下(運動麻痺、言語障害、性格の変化、けいれん発と作など) と、腫瘍によって頭蓋骨の内部の圧力が高まるための異常(激しい頭痛、嘔吐、意識喪失、視力低下)がある。頓死することもある。幼児では頭囲の拡大がおこることもある。
  7. 診断は症状からおおよそのことはわかり、CTによってほぼはっきりする。脳血管造影や、最近では腫瘍を立体的にとらえるM RIによる診断も始まった。
  8. 治療の第1は腫瘍の摘出手術である。その手術は、手術用顕微鏡で患部を見ながら緻密に進められる(マイクロサージェリー)。
  9. 悪性腫瘍では、手術ですべてをとることは難しい。そのため放射線治療と抗がん剤の併用治療、あるいほ手術後の抗がん剤治療がおこなわれる。
  10. すべての脳腫瘍の半分以上、グリオーマでも3分の1は治るようになった。

どの部位に起こる腫瘍か

頭蓋骨の中におさめられている脳は、成人男子で1350グラム、成人女子で1250グラムあり、人体では最大の臓器である。この脳という臓器を大きくわけると、情報処理をになう「大脳」、協同運動をになう「小脳」、全身の環境維持や意識を支える「脳幹」の(間脳、中脳、橋、延髄) の3つになる。脳全体は、三重の膜で包まれていて、いちばん内側が「軟膜」、真ん中が「くも膜」、外側の強靭な膜が「硬膜」。

これらの三十の膜を「髄膜」とよんでいる。また、脳をつくっている細胞には2種類あり、全身の指令をだすのが「ニューロン」(神経細胞)で約140億個あるといわれている。ニューロンのすきまを埋めている「グリア」(神経膠細胞)である。グリアは、ニューロンの働きを助ける細胞である。

脳腫瘍ほ脳にできる腫瘍だが、「脳がん」とは呼ばない。これは、脳腫瘍という病気が悪性腫瘍(がん)ばかりではなく良性腫瘍も含んでいるためだ。
良性腫瘍はがんと比べて増殖のスピードが遅く転移もしないが、不完全摘出の場合は再発することが少なくない。そのつど手術を繰り返さなければならないので、良性であっても治しにくいことがある。
脳は閉鎖した頭蓋骨のなかにきっちりおさまっているので、小さな腫瘍でもまわりの脳を圧迫して異常を起こす。つまり、良性でも悪性でも脳に障害をもたらす経過は同じである。
脳腫瘍でもっとも多いのはグリオーマ( 神経膠腫)で、脳腫瘍の約3分の1を占めている。これは、脳組織の固有の細胞から発生するいわば真性の脳腫瘍で、しかも悪性(がん)である。グリオーマに続いて多いのが脳に付属する組織からの腫瘍で、脳を覆う膜(髄膜)に発生する「髄膜腫」、下垂体に発生する「下垂体腺腫」15%、12対ある脳神経におこる「神経鞘腫」8% と続いており、そのほか、数は少なくなるが、種類はきわめて多い。

原発性脳腫瘍のほかに、からだの他の部分にできたがんが脳に飛び火する転移性脳腫瘍も少なくない。だが、原発性脳腫瘍が脳以外の臓器に転移することはほとんどない。

どういう人に起きやすいか

原発性の脳腫瘍の発生率は、人口10万人に対して12.5人から15.5人といわれる。おおむね人口1万人に1人の割合で発生すると考えればよい。
人口1200万人の東京では年間1200人が脳腫瘍を、そのうち3分の1の4000人がグリオーマということになる。脳腫瘍の発生率は肺がんの10分の1だが、けっして少ない病気でほない。

このグリオーマのうち悪性度の高いものほ35歳以上の人に多く、しかも男性にやや多い傾向がある。まれに子どもにもみられる。もっとも、治りやすさに男女差はない。
グリオーマにはさまざまな種類があるが、「アストロサトーマ」(星細胞腫)、「悪性アストロサトーマ」(悪性星細胞腫)「グリオブラトーマ」(膠芽腫)の3種類でほとんどをしめる。この3種のグリオーマは、それぞれおこりやすい年齢に差がある。アストロサイトーマは二25~40歳、悪性アストロサイトーマは、35~50歳、グリオブラトーマは、45歳以上に多い。

脳をおおっている膜、髄膜におこる髄膜腫は30~50歳の成人に多く、その6割が女性である。神経鞘腫も30~55歳の成人に多く、やはり約6割が女性である。
下垂体腺腫では20~50歳の成人に多くやはり女性に多い。これら、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫は良性である。

転移性の脳腫瘍では、肺がんからの転移が多い。肺がんの少なくとも3割が脳に転移することほあまり知られていない。肺と脳は近いために、肺から離れたがん細胞が血液にのって脳に入り、細い血管に詰って居座り、そこで増殖をする。やや男性に多いようである。
脳に転移すると治療をあきらめてしまうケースが多いが、治療のチャンスは残されていることを申し上げたい。

子ども( 15歳未満)の脳腫瘍では、小脳にできるものが約3割をしめ、もっとも多い。

症状

症状は2つにわけられる。第1は、腫瘍ができた部分の脳の機能の低下である(神経機能脱落症状)。運動麻痺、言語障害、性格の変化、けいれん発作などが、腫瘍のできた場所に応じておこる。

第2に、腫瘍によって閉鎖された頭蓋骨の内部の圧力が高まり、それによる症状がおこる(頭蓋内圧先進症状)。激しい頭痛と嘔吐が代表的なもので、頭痛は起床時におこりやすい。最初は軽度で持続時間も短いが、進行するにしたがって激痛が長く続くようになる。からだの位置を変えたときなどに発作的に頭痛がおこったり、意識を失うこともある。

このほか、ものが二重に見えたり、視神経が圧迫されて視力が低下したり、視野が狭くなることもある。頓死するケースもある。幼児では、頭囲が大きくなることがある。

診断

頭蓋内の圧力の高まりは、眼の検査で簡単にわかる。眼底の乳頭という部分がうっ血するからだ。視野が欠ける度合やからだの麻痔が少しずつ進行しているのなら、脳腫瘍が疑われる。
25五歳以上になって初めててんかん発作がおこった場合も、脳腫瘍の可能性が高い。こういった症状からの診断(神経学的検査) に加えて、CTによる脳の断層撮影が有力な診断法である。
直径1cm以上の腫瘍なら99%発見できる。脳は、各部位でのX線の吸収の度合が異なっていて、そのデータが詳細にわかっている。ⅩX線の吸収の度合から、脳腫瘍の存在ばかりか種頬もあるていどわかる。

血管内に造影剤を送り込んで脳の血管の様子をみる脳血管撮影もおこなわれる。血管の豊富な腫瘍では、かたちをくっきりと描き出し、また腫瘍によって周囲の血管の走行が曲がっているようすもわかる。

最近では、MRIの画像診断方法も成果をあげている。腫瘍の位置やかたちを立体像としてとらえることができるので、欠かせないものになりつつある。

脳から脊髄へと循環している「髄液」を採取して、含まれている腫瘍細胞を顕微鏡で観察して種類を確認することもある。また、腫瘍組織がつくりだしている特有のタンパク質やホルモンの量を血液や髄液で調べて腫瘍の判別をする診断(腫瘍マーカー)もおこなわれている。

なお、脳腫瘍は他の臓器への転移がほとんどないので、他のがんのような進行度を示す分類はない。

ここまで治る

脳腫瘍の治療の第一は、手術である。頭蓋骨の一部を蓋をあけるように切り、手術用顕微鏡で手術部位を拡大して見ながら腫瘍の摘出をおこなう。

こういうミクロの外科をマイクロサージェリーと呼ぶ。脳は細い血管や神経が集中しているので、わずか数ミリの損傷を与えるだけでも障害がでてしまうことがある。
そのため、脳の健康な部分の損傷を最小限にしながら腫瘍を摘出する必要がある。マイクロサージェリーなら、直径1ミの血管やきわめて細い神経でも傷つけずに操作をすすめることが可能で、手術の安全性は飛躍的に向上した。手術中は、脳の内部を探るレーダーともいえる超音波発信棒(プローブ)を当てながら、切れる部分を確認して進める。

良性腫瘍は周辺の組織を押しのけるようにして一方向に増殖しているので摘出は、比較的容易だが、グリオーマのような悪性腫瘍は周囲の組織を壊しながらしみこむように広がっていくので(浸潤)、悪性細胞の完壁な除去は難しい。

脳は、胃がんや子宮がんのように臓器まるまる摘出することができないので、どうしても腫瘍細胞のとり残しがでてしまう。そのため、手術後に放射線照射が必ずおこなわれる。米国のデータによって、放射線照射があきらかな延命効果をもたらすことが証明されている。もっとも放射線治療後も、多くの患者さんでは腫瘍がまだ残っている。そこでさらにACNUなどの制がん剤による治療が欠かせない。

脳腫瘍の治療後の経過は、一般に考えられているよりかなりよくなっている。原発性脳腫瘍の5年生存率は、58.7パーセントと、半分以上が完治している。悪性腫瘍であるグリオーマでも、5年生存率は29.9パーセントと約3分の1は助かるようになった。転移性脳腫瘍の5年生存率は10.4パーセントで、治る可能性は残されていることを知ってほしい。

ちなみに、グリオーマは種類によって経過が異なる。アストロサイトーマでは2年生存率はほぼ100パーセント、5年生存率は50パーセントだが、もっとも悪性度の高いグリオブラストーマの2年生存率は20~0パーセント、5年生存率は10パーセント以下である。もっとも、若年者ほど治りやすい傾向にある。

こういう数字をあげると、悪性度の高い脳腫瘍になったらあきらめるしかないと思いがちだが、手術、放射線、抗がん剤など脳腫瘍の治療技術は年ごとに驚くほど進歩しているので、あきらめないでほしい。脳腫瘍の治癒率の数字は、毎年書き変えなければならないほどめざましい向上を続けている。

「眼のガン」どこに注意すべきか

眼のガンの基礎知識

  • 眼のがんは、乳幼児の眼球の内側におこる網膜芽細胞腫がもっとも多い。
  • 乳幼児の眼が猫の限のように光ったら、網膜芽細胞腫を疑う。
  • ほとんどの子どもほ自覚症状を訴えないので、お母さんの注意がたいせつ。
  • 片眼だけでなく、両眼に同時におこることがある。
  • 遺伝するがんではあるが、それほ5~6%にすぎない。
  • 親が網膜芽細胞腫を経験していると子どもが発病する率はかなり高く、また兄弟姉妹も発病することがある。
  • 早期に発見すれば、治療後の5年生存率は90%をこしているので心配しすぎない。
  • 万一「眼球を摘出する場合でも、片眼であれば子どもはおとなが思うほど不自由するものでほない。
  • 治療後も再発防止のため、定期的に検診を受ける。

網膜芽細胞腫

どこの部位におこるか

眼でいちばん重要なのは「レンズ=水晶体」だと思いがちだが、水晶体はほ摘出してもメガネで代用できることが多い。だが、限の奥にひろがるカメラのフィルムにあたる「網膜」が破壊されると、回復する手だてはない。
網膜芽細胞腫は、このたいせつな部分の細胞ががん化して失明させる。片眼だけにおこる場合と両眼にほぼ同時におこる場合がある。ししんけい進行するにしたがって、がんは視神経を侵しながら脳へと進んだり、眼球の外側をおおさようまくっている強膜から外にまでつき出ることもある。ふくれあがった眼球がゲソコツのようにとびだす悲惨な姿もかつてはみられた。

どういう人におこるか

1年に100人以上の子どもがこのがんに冒されており、増加傾向にある。増加の理由は、この病気が「遺伝にかかわっている」ことと、「医療の進歩により、このがんで死亡することが少なくなった」という2点にある。このがんをおこす遺伝子をもった人が発病しても、治療によって死亡をまぬがれるようになった。そのため、子孫にその遺伝子が伝2えられることが増え、このがんを増加させているのである。

発病は、1~3歳が中心だが0歳から5~6歳に多く、遺伝性の場合には兄弟姉妹にも発病する可能性が大きい。このがんのうち遺伝に原因があるのはわずか5.6パーセントだが、親がこのがんの遺伝素因をもっている場合にほ、かなりの高率で子どもにこのがんがおこる。その確率などが正確にわかってきたため、「発症の予知」や「早期対策」がとれるようになった。とはいえ、遺伝性は少数である。「遺伝、遺伝」と思いこまないことだ。

自覚症状

このがんの最大の症状は、「子どもの眼が猫の眼のように光る」こだ。網膜にできた白色のがんが拡がるにつれて、眼に入った光がそれに反射して白く光ってみえる。

この症状を、「白色瞳孔」とか「猫眼症状」とよんでいる。眼の位置がおかしくなったり(斜視)、充血や眼病などもある。がんによって眼の内部に炎症がおこったり、眼圧が上昇するための症状である。もっとも眼圧がゆっくりと上昇していくと痛みを覚えないケースもあるし、視覚障害がおこっても、乳児は「世の中はこんなもの」と思っているので、自覚症状を訴えないことのほうが多い。

よってこの病気ほ、ほとんどがお母さんの発見による。子どもの健康状態を注意深く見守っているお母さんほど早く発見している。

診断

検眼鏡で眼の内部を直接みる「眼底検査」をおこなう。簡単に診断がつくこともあるが、網膜が剥れ(網膜剥離)その下にがんが隠れていると、すぐには診断がつきにくいし、がに向かって増殖し、その表面がくずれて白くなっている場合も診う断が難しい。「白色瞳孔」は先天性白内障や、未熟児網膜症の末期でもみられる。そこで、超音波診断や、CTによるⅩ線断層撮影、MRIなどで確かめる。遺伝性の場合は、採血し染色体検査がおこなわれる。いずれの検査も難しいものでほないが、乳幼児におとなしく検査を受けてもらうことは、とても難しい。そのため、検査にあたって睡眠剤を投与したり全身麻酔をほどこすことが多い。

ここまで治る

1960年代までほ眼球摘出がふつうだったが、現在は、眼球を残す治療が多く試みられるようになった。もっとも、がんが大きく眼球全体に拡がっていたり、硝子体中にちらばっている時は、ためらいなく眼球の摘出がおこなわれる。白色瞳孔の症状が出ている場合もかなり進行しているので、やほり摘出の対象になる。

進行度は、1~5群にわけた「レーゼ(Reesseの分類」によることが多い。2群までほ摘出せずに完治できるが、3群では治せても視力障害が残ることが多くなる。4群以上では、眼球の摘出が必要になる。両眼性の場合は、片限の進行が遅れていることが多く、片眼は摘出しても片限は保存治療することが試みられている。

眼球を摘出しない治療では、比較的大きい腫瘍の場合は放射線治療が試みられるが副作用がある。小さい腫瘍でほ、光のエネルギー(アルゴン・レーザー光線)でがんをたたく治療法(光凝固)や冷凍凝固で治療することが多い。レーザーのスポット光線を、入墨をするようにがんの周囲から中心部に向かってうちこんでいく。直径5ミリのがん全体にうちおわるには、30分ほどかかる。小さながんであれば光凝固だけで治る。

治療法が進み、網膜芽細胞腫は死なないがんになったが、発見が遅れると、眼球摘出し、失明することになる。生存率は90パーセントをこえているが、失明を防ぐ意味で、早期発見、早期治療という鉄則は、このがんではことさら重要である。このがんの男女差はほとんどない。

やむなく眼球摘出した場合ほ、義眼を入れる。子どもは成長するので、成人までには2~3回の交換が必要。「失明」と聞くと、大人は、子どもが大変な不幸におちいったと衝撃を受けるが、幼いうちに片眼を失った場合は、その片眼の世界がごくあたりまえのことと受けとめている。
病院で「おめめ、とろうね」と医師が語りかけると、子どもは、ごく自然に義眼をとり出してくれる。周囲が、深刻な顔をしないことがたいせつ。
このがんは、再発や、片眼の場合にはもういっぽうの限に発症するおそれがあるため、追跡検診を欠かさないようにする。遺伝性の場合もあるので、発病していない兄弟や姉妹も一緒に検診を受けなければならない。