体のエネルギーと体脂肪の燃焼について

カラダを動かす3つの仕組み

ダイエットでは、「いかに脂肪を燃焼(分解と消費)させるか」が一番の課題です。そのためには、体脂肪を運動のエネルギーや基礎代謝のエネルギーとして上手に消費してしまえば良いわけです。
ではどうやったらそうできるのか。
人のカラダがどのようにエネルギーを発生させているのか、そのシステムについてです。単純に「脂肪を燃やす」という一言で言い表せない、複雑で精微なシステムがそこにはあります。

一番消費するのは筋肉

そもそも、体内で最大のエネルギー消費場所は、朝昼晩と年中動いている心筋と骨格筋です。とくに骨格筋は体内でもっとも量の多い筋肉組織で、この筋肉量を増やすことは自ずとエネルギー消費量も増えることとなります。つまり、筋肉を増やしていけば、それだけ体脂肪を減らしやすくなるということになります。

ATPの分解

人のカラダを動かすエネルギーは、筋肉の中にある( アデノシン三リン酸(ATP)という物質が分解される反応によって得られています。実はこの物質が、人のカラダを動かすエネルギー源としてとても重要なものなのです。
このAT Pは分解されると「無機リン酸(Pi)」を放出し、( アデノシンニリン酸(AD P))に変わります。その際に化学的エネルギーが発生します。筋肉は、このとき発生したエネルギーを用いて動かすことができるのです。
ところが、ATP自体は、筋肉中にわずかな量しか備蓄されていません。このため運動するとこのわずかなATPはすぐになくなってしまいます。運動を継続していくためには、エネルギー源である(ATPの合成)が必要になります。そして、ATPをつくり続けていくためには、他のエネルギー源を変化させてATPをつくり上げなければならないのです。カラダの中では、ATPを合成するための次の3つの方法が行なわれています。

  1. 筋肉中に蓄えられている「クリアチンリン酸(CP)を無酸素的に利用する方法「非乳酸シス」(ATP-CP系)
  2. 「糖質の無酸素的分解による方法(乳酸性システム)
  3. 「糖質と脂質の酸化」による方法(有酸素性システム)

運動を始めると最初にATPの合成を助けるのが、クレアチンリン酸です。クレアチンリン酸も筋肉中にある物質ですが、これがクレアチンと無機リン酸(Pi)に分解されるときに、生じた無機リン酸が、ADPと一緒になってATPが合成されます。これが無酸素性エネルギー供給の第一段階(非乳酸性システム)としてのATP-CP系です。
このATP-CP系は瞬発力(ハイパワー)を生み出すのですが、クレアチリン酸も筋肉中に無尽蔵にあるわけではありません。
実はきわめて短時間(8秒前後)でなくなってしまいます。そこで、次に使われ始めるのが、筋肉中にある糖質(グリコーゲン)です。
糖質は、筋肉中で分解されるときに、無酸素状態でもエネルギーを発生させることができます「解糖」。そしてこのとき、筋肉内に乳酸が蓄積していきます。これが、無酸素性エネルギー供給の第二段階(乳酸性システム)あるいは「乳酸系」です。
蓄積する乳酸は「疲労物質」とも呼ばれ、生成されるときに生じた水素イオンが筋肉を酸性に傾け、筋肉を働かせなくするので、長い時間の運動はできません。この(乳酸性システム)は、10秒から2分間という短時間に、ATPを合成し、ミドルパワーという大きな力を発揮させることができるのです。以上の2段階のシステムを用いるスポーツには、ハイパワ一系では100m走や砲丸投げ、ミドルパワー系では400m走やボクシングなどがあります。ごく短時間のスポーツから、数分あるいはもう少し長い時間のインターバルで行なう運動、そしてサーキットトレーニングが主にこれに含まれます。

有酸素性エネルギー供給システムとは

一方、呼吸で取り入れた酸素を利用してATPを合成していく有酸素性システム(酸化系)は、ATPを合成する際、食事でとった栄養素をエネルギー源とし、それにあわせて呼吸で取り入れた酸素を使います。
人間は比較的強度の低い運動(軽い運動)の場合、食事でとった糖質と脂肪や体内で貯蔵されていたグリコーゲンと体脂肪などを、酸素と反応させながら、新しいエネルギーの生成を始めます。糖質や脂肪は酸素と反応してATPを合成し、最終的には(TCA回路(クエン酸回路、クレブス回路とも呼ばれる))を通過することによって、水と炭酸ガスになります。
これが、(有酸素性システム)です。持続的にATPを合成しやすく、疲労物質である乳酸の発生が少ないこともあり、出力は低いのでローバワーと呼ばれますが、長時間にわたってエネルギーの供給が可能になります。
このシステムで行なう運動(有酸素運動)としては、マラソンやジョギング、ウォーキング、そしてエアロビクスなどがあります。ただし、個人の体力レベルによって、同じエアロビクスでもローインパクトと感じる人もいますし、きついハイインパクトと感じる人もいます。この段階に来て、体脂肪がようやくエネルギー産生のl翼を担うわけです。

体はハイブリッドカー?

「体脂肪を燃焼させて肥満解消」のためには、「有酸素運動をやればいい」というのが、ちょっと前までの運動でやせるダイエットの考え方でした。しかし運動する際のエネルギー獲得方法は、実は(無酸素性)と(有酸素性)とにきれいに分けることができるわけではないのです。
運動強度と運動の持続時間に応じて、徐々に、そして色々な割合で組み合わされていくものです。人のカラダの中で、非乳酸性、乳酸性、有酸素性が単独で行なわれるということはまずありません。
また、無酸素運動と有酸素運動とl応分けていますが、これらのエネルギー産生の過程は、運動開始後、ある時点でクルッと全面的に切り替わるのではなく、両者の割合が、時間的経過とともに徐々に無酸素性から有酸素性へとその比重が変化していくことを意味します。
乳酸性は無酸素性と言っても、筋肉の中には酸素は存在しますから、全くの無酸素ではあり得ません。このようなシステムはまるで、省エネやエコロジー時代を意識して、最近増えているエンジン(ガソリン)とモーター(電気)を併用したハイブリッド・カーのようです。
ダイエット目的で有酸素運動系のスポーツ種目をしていても、無理にべースを上げてがんばり過ぎると、呼吸による酸素供給が間に合わず、無酸素運動が主体となり、「脂肪によるエネルギーの獲得」「脂肪の燃焼」にならなくなって、運動早々にへばってしまったり、思ったようなダイエット効果が出ない場合もあります。
トレーテ/グ用エアロバイク( エクササイズマシン)などで、脈拍をモニターする理由は、無理な運動をしないという意味もありますが、ダイエットとしては、有酸素( エアロビックな)運動の範囲でエネルギーを消費しているかどうかをモニターするという理由があることを知っている方も多いと思います。有酸素運動による理想的なダイエットとしては、脂肪を燃焼しやすい有酸素性の運動を、適度な時間、適度な負荷で筋肉に課し、効率よく体脂肪を消費することです。
それは無理なく自分のペースで呼吸ができ、20〜40分間は続けられる運動です。その際のポイントとして、運動の強度を設定します。これは運動中の心拍数を基準にすると良いでしょう。

自分に適当な心拍数を算出するためには、次のような方法を用います。なお、年齢や心肺機能の強弱などによって同じ運動をしていても、適当な負荷は個別に違います。220から年齢を引いた数字を最高心拍数(100%)とし、それに対する運動中の心拍数の比率で表します。一般に、体脂肪が燃えやすい運動強度は、体力レベルによって、最亭心拍数の60〜75% ぐらいとされています。つまり、ダイエットにふさわしい無理のない有酸素運動中の心拍数は、次のように導き出されます。

    運動習慣がある場合

  • 「(220-年齢)-安静時の脈拍×運動強度75%+安静時の脈拍=有酸素運動時の心拍数の基準
  • 運動習慣がない場合

  • 「(220-年齢)-安静時の脈拍×運動強度60%+安静時の脈拍=有酸素運動時の心拍数の基準

エネルギー代謝を活発にさせるため、TCA回路をスムーズに回すポイント

ダイエットには、ある程度の食事制限のほか、運動することが大切ですが、あまりに運動が激しい場合や、その運動が長時間にわたる場合は、エネルギー代謝のための栄養の供給とその分解がスムーズに進まなくなります。
運動のエネルギーを発生させるシステムのひとつとして、ATPを合成する( TCA回路(クエン酸回路、クレブス回路))という仕組みがありました。このシステムにおいてブドウ糖や脂肪が分解され、そのとき発生するエネルギーがATPとして供給されて、筋肉のパワーになります。ところが、実はこのシステムを回転させ続けていくのには、さまざまな栄養素が必要です。
それは多くのビタミンや酵素です。もし、これらのうち一種類でも不足が生じていれば、このシステムは効率よく回りません。そうなれば、TCA回路で処理すべき中間の物質がスムーズに流れることができなくなるため、とくに糖質を分解する際の中間の物質が蓄積していくことになります。
こうしてできる中間物質は、筋肉痛の元凶となる乳酸やピルビン酸です。乳酸が血液中に流出すると、血液の叩ハランスが酸性側に傾き、細胞の活動が低下し、全身的な疲労感を生じるようになります。したがって、普段の食生活でビタミンやタンパク質(アミノ酸類)などを十分にとることと同時に、乳酸が滞って筋肉痛が起きないように、長時間にわたる運動を行なう際には各種栄養素の補給が必要になります。また、酸素を運ぶ赤血球にあるヘモグロビンは、タンパク質と鉄からできています。鉄は不足しがちなミネラルですから、ダイエットをする場合には、鉄の摂取にも気をつけましょう。