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血圧を上昇させる危険因子

血圧を病的に上げる要因は数多くあり、モザイク説(さまざまな要因が複雑にからみ合って起こる)が唱えられてきた理由でもあります。血圧を上げる要因は大きくふたつに分けることができ、遺伝的・体質的素質が30% 、環境要因が70% とされます。もちろん個人差はありますが、30歳ごろまでに徐々に血圧が高くなり、40歳ごろには初期の高血圧症、さらに50歳ごろには本格的な高血圧症に進展する人が多いのです。

初期の高血圧症の段階で生活習慣などを改善する努力により、正常血圧に戻る人もいます。しかし、高血圧症を放置すれば、合併症として悪性・進行性の経過をたどり、心臓、大血管、脳、じんぞう腎臓などに障害をきたすことは、これまでに説明したとおりです。

生活習慣の見直しなどでかなり改善される人も多く、この点は、まじめに高血圧と向き合えた人が降圧剤を服用しなくても正常な血圧を維持できるケースもたくさんあります。

等は、今日からでも実行できるので参考にします。

遺伝・体質

親から子どもに受け継がれていく特質です。子どもが高血圧症になる確率は、両親がともに高血圧症であれば約60%、片方の親が高血圧症であれば約30% 、両親ともに正常血圧で推移するようであれば5%という統計もあるほど影響を受けます。

環境因子

環境要因による血圧上昇には、次のような因子があります。

塩分(食塩)の過剰摂取

塩分の過剰摂取です。健康な人の塩分濃度は一定に保たれています。塩分をとりすぎれば、ナトリウムは尿中に排せつ泄されます。しかし、排泄にはある程度の時間が必要です。当面は、血管内に水分を貯留してナトリウム濃度を一定のレベルに維持します。水の貯留は血管系という入れものの中の水分量を増し、内圧を高めることになります。
かりに、全国民が食塩摂取量を現在の11 gから1 gだけ減らしたとすれば、高血圧症の患者は1000万人減ると言われています。

越後の上杉謙信は塩の不足した甲州の武田信玄に塩をくったとされます。「敵に塩をおくる」は、塩なしでは生きていけない人間の美談として語り継がれています。
塩は体にとって不可欠の電解質ではありますが、現代のように大量に口にする必要はまったくありません。
遺伝子が人類にきわめて近い類人猿は、われわれのように多量の食塩を手に入れることができません。1 日に口にする食塩量はごく微量にすぎないでしょう。それでもなんら苦痛を感じず健康に生存しています。そもそも人類が自由に好きなだけ食塩を手に入れることができるようになったのは、数千年前からとされています。これによって食料の味つけにも使われるようになったのです。給料を英語ではサラリー(salary)といいます。語源は塩(salt)です。古代ローマの兵士の給料は、塩で支払われたともいわれているほどです

運動不足

運動をすると体がほかほかと熱くなります。血管が開いて血液の循環がよくなるのです。汗もかきます。血管系という入れものの容積が開いて、同じ血液量であれば血圧は低下します。運動不足の人は、血管が収縮して血管系の容積が減ります。運動不足はストレスもためますから、血圧はいっそう高くなります。

ストレス

精神的あるいは身体的になんらかの負荷がかかると、ストレス反応が起こります。適度のストレスは、よい緊張感を維持するうえで悪いことではありません。しかし、過剰な負荷、たとえば過重労働や突然の事故などは山著しいストレスとなり、心身の緊張を高める交感神経系を活性化して、血圧や脈拍、体温などを上げるのです。いつも忙しいオフィス業務などでは、運動不足も加わりストレスを高め、血圧を上げます。

肥満・メタポリック症候群(内臓脂肪症候群)

肥満の弊害は、内臓脂肪の蓄積による高血圧、高血糖です。長い間には動脈硬化を進展させます。代謝が同程度であれば、肥満者では標準体重の人にくらべてエネルギー需要が大きいのです。このエネルギー需要をまかなうために、血流量は増加します。同程度の血管径であれば血流の抵抗は同じなので、血流の増加分だけ血圧は上がることになります。
(現在、太り気味の人はまずはコレステロールを下げる食習慣を実行します)

睡眠不足

睡眠不足も血圧を上げる大きな要因です。交感神経の緊張を高めるからです。週100時間以上の過重労働をして睡眠不足になっている人は、通常勤務の人にくらべ、脳・心血管系の重大Lなトラブルが倍以上になることが知られています。血圧の上昇にも大きな関係があるのです。
(快眠のためにクラシック音楽などのリラックスできる音楽を就寝前に聴く方法が人気です)

性格・環境

人の性格は、生まれつきの部分と環境の影響によって左右される部分があります。闘争心で几帳面、神経質な人とのんびりでおおらかな人とでは当然ながら神経質の人の方が高血圧になりやすいことが確認されています。当然、脳・心血管系の病気にもなりやすいのです。

気温

脳・心血管系の病気の発症率は、夏を1とすると、寒い冬には1・5倍になります。寒さは交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上げます。高血圧の人では、冬のほうが夏にくらべて平均で5 mmHG前後高くなります。寒い冬には厚着をすることも重さを増し、心血管系の負荷になります。また、暖かい部屋から突然、寒い戸外へ飛び出したりすれば、血圧が一気に高くなります。ヒートショックと呼ばれる発作を引き起こすことさえあるのです。

高血圧の国際基準

高血圧の合併症は命にもかかわるで説明したとおり、命まで及ぶことから国もガイドラインを厳格に定めています。
では、血圧の数値はいくつまでなら正常で、いくつ以上だと高血圧になるのでしょうか。日本高血圧学会が発表している「高血圧治療ガイドライン」では、成人の血圧を以下のとおり7つの段階に分類しています。
世界保健機関(WHO)や国際高血圧学会(ISH)、血圧に関する米国合同委貞会(1NC)などでも140/90mmHg以上を高血圧としています。国際的に通用する基準とすることができます。7つもの段階に分かれているため、複雑でわかりにくいと感じるかもしれませんが、高血圧症かそうでないかの目安は、以下のとおりです。

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
Ⅲ度高血圧 180以上 110以上
Ⅱ度高血圧 160~179 100~109
Ⅰ度高血圧 140~159 90~99
正常高血圧 130~139 85~89
至適血圧 130未満 85未満


以前は最高血圧が135mmHgでも正常とされていましたが、高血圧の善が国際的に認識されるに従い、基準値は厳しくなってきています。年齢とともに血圧が高くなるのはしかたがないから放置するという考えは、もはやまったく通用しないのです。合併症を考慮すると、厳格な血圧管理が必要なのは言うまでもありません。

ところが、実際は高血圧症なのに、測定してもなぜか正常値しか示さない場合があります。これを「仮面高血圧」といいます。血圧測定の結果を評価する難しさと、高血圧症の発見・管理の問題点を象徴するケースといえるでしょう。
早朝高血圧
いつもは正常範囲なのに、起床直後に急に血圧が上昇するケース。早朝は脳卒中や心筋梗塞を起こしやすい危険な時間帯なので、特に警戒が必要です。
夜間持続型
夜間から早朝にかけてだけ血圧が上昇し、日中は正常なタイプ。
ストレス型
たまの健診で仕事から解放され、平時より血圧が下がってしまうタイプ。
ヘビースモーカー型
チェーンスモーカーのため常に高血圧なのに、検査時は禁煙のため、一時的に血圧が下がるタイプ。

その他にもこのほかにも「職場高血圧」「白衣性高血圧」などもあります。

変動が激しい血圧を正確に測定するには

血圧というと、病院の検査などで医師や看護師に測定してもらうものと思っている人も多いかもしれません。病院では、血圧を非常に重要視します。実はこうした測定は必ずしもその人の血圧の実態を表すものとはいえません。人間の体には、約5Lの血液が流れています。
これが必要なときに体内の臓器や組織に分配されます。
運動中であれば、脳や手足の筋肉、食事中なら胃や腸、夜中には肝臓や腎臓などに優先的に配分され、活動や消化、疲労回復に役立つようになっています。時間帯や行動の内容によって、血液の流れの分布は変わり、血圧も変動します。このような血圧の日内変動は、一人ひとり固有なものです。

たとえば、仕事で大きなミスをした、人間関係で不快な思いをしたなどの際には、精神状態も変わります。そうしたストレスに対応して血流と血圧は変動します。年に1回、健康診断で血圧を測定しても、何時ごろ測ったのか、心身の状態がどうだったかなどによって、まったく別の結果が出る可能性があるわけです。このような検査だけでは血圧の実情を知るには十分とはいえません。

最近は、自分で簡単に測れる性能のよい血圧計が数多く出回っています。種類も二の腕で測定するタイプ、手首で測定するタイプ、指で測定するタイプなどさまざまです。基本的に太い部分で測るほど正確な数値が得られますが、JIS親格をクリアしたものなら、まず問題はないでしょう。
健康診断で血圧が高めという結果が出た人はひとつ購入し、日常的に血圧測定をする習慣を身につけたいものです。自分の血圧の実情を知るには、起床後や就寝前など1 日に2 〜3 回、時間を置いて測定し、それを週に2〜3 回、期間にして1〜2か月続けることです。血圧の変動のパターンなどもつかむことができますから、日常生活で気をつけるべき点もわかってきます。なお、血圧は15分ほどの安静後に測定します。もちろん、随時に測定した数値も意味があります。そういった場合測定したのであれば、どのような条件、たとえば、飲酒後、入浴後、食事後などストレスが高いときなどのメモをつけておくといいでしょう。

オムロン 上腕式血圧計 Sures(シュアーズ) HEM-1025
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